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ジェイ・エス・ビー Research Memo(7):中期経営計画初年度は当初計画を超過達成、目標数値を上方修正(1)

注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略

1. 中期経営計画の概要
2021年10月期からスタートした中期経営計画「GT01」(2021年10月期〜2023年10月期の3年間)は、2030年長期ビジョン「Grow Together 2030」の第1ステージという位置付けである。長期ビジョンでは、2030年の「ありたい姿」として、「アビリティ(総合的人間力)」の芽を育て社会課題の解決に貢献すること、人間性とテクノロジーの融合によるジェイ・エス・ビー<3480>だけの価値を創出すること、「UniLife」をグローバル・トップブランドにすることを掲げており、2030年に向けてさらなる事業領域の拡大を目指している。この長期ビジョン達成に向けて不動産賃貸管理事業では、新たな価値提供により学生マンション分野で唯一無二の存在を目指す。また高齢者住宅事業では、多様なQOL(Quality of Life:生活の質)を目指すスマートコミュニティを実現する。さらに新規事業では、UniLifeでしかできない学びを提供し続ける計画である。

第1ステージの中期経営計画「GT01」では、売上高622億円(当初目標619億円)、営業利益67億円(同60億円)、経常利益65億円(同58億円)、親会社株主に帰属する当期純利益43億円(同38億円)とし、過去最高の達成を目指す。同社では、2021年10月期の好決算を反映して、中期経営計画の計数目標を上方修正した。修正計画では、売上高は2020年10月期実績比29.5%増、営業利益も同55.4%増を目指すことで、営業利益率は9.0%から10.8%への上昇を見込む意欲的な計画である。

施策として、「両利きの経営」(新しい領域に挑戦する「探索」と、既存事業の成長を図る「深化」のバランスの取れた経営)と「社員全員の経営」(チームワークをより強め、一人ひとりの知識を生かし新たな知識を生みだす、社員全員の経営)を推進する。これによって資本効率ではROE15%以上、ROIC(投下資本利益率)8%以上、財務安全性では自己資本比率40%以上、流動比率120%以上を確保する。それらの目標達成に向けて、入居関連指標として物件管理戸数85,000戸、契約決定件数30,000件を想定する。また、成長投資として自社物件開発の計画を250億円に引き上げ(当初目標200億円)、戦略的エリアで独自ノウハウを投入した新規物件開発に注力する。同様に、システム投資も7億円に増やし(同6億円)、DXの推進や新規事業推進を計画する。

実際、同社グループの経営環境は、長期的には今後も成長機会に恵まれており、同社の成長戦略に対する少子高齢化進展の影響も限定的であると考えられる。不動産賃貸管理事業では、4年制大学のうち特に女子学生の増加が顕著であること、国の政策サポートにより留学生も増加を続けることなどから学生マンションの供給は不足しており、学生マンション市場は拡大傾向を続けると予想される。

また同社グループは、学生マンション業界のパイオニアとして高い知名度や信頼を築いている。加えて、超高齢社会の進行を見据えて高齢者住宅事業にも布石を打っている。今後も学生マンションや高齢者住宅の供給不足が続くと予想されることから、グループの成長余地は大きいと言えるだろう。弊社では、アフターコロナを見据えた中期経営計画の推進により同社グループのさらなる成長が可能であると考える。

2. 成長戦略
(1) 不動産賃貸管理事業
同社グループでは中期経営計画の意欲的な目標数値を達成するための成長戦略として、主力事業の不動産賃貸管理事業では、学生マンションの収益力向上を目指して以下の3点を実施する。

第1に、DX推進を目指す。実現のための施策として、1)マンション企画のDX推進による不動産オーナーサポートの充実化及び営業効率化、2)マンション賃貸のDX推進による入居者の利便性向上、非対面接客の推進、3)DX推進による入居者・不動産オーナー・巡回点検担当者サポートの充実化、管理業務効率化、コスト削減などを計画する。この計画について、2021年10月期は新規物件開発が順調に推移し、物件管理戸数、利益率ともに超過達成していること、コロナ禍による留学生の入国制限はあったもののUniLifeブランド・コンセプトを持った食事付きや家具家電付き物件の促進や、Web広告・学校との提携における募集活動が奏功したことから、同社による5段階の進捗評価(S〜D)はBで予定通りに進捗している。

学生マンション事業におけるDX推進としては、マンション企画のDX、マンション賃貸のDX、マンションメンテナンスのDXを計画している。マンション企画のDXでは、情報活用による営業効率化、スピーディーな事業提案やシミュレーション提示による不動産オーナーサポートの向上、物件開発の促進などを図る。また、マンション賃貸のDXでは、CRM/電子契約システムが連携して一気通貫の顧客管理を実現、基幹システムとWebページの連動、部屋紹介から申込み手続きまでオンラインで完結するツール展開など、入居者の利便性向上と非対面接客の推進を図る。マンションメンテナンスのDXでは、オーナー向けアプリ導入により不動産オーナーの満足度向上や管理業務効率化・コスト削減、巡回アプリ導入により巡回・設備点検の標準化やデータ化、入居者向けアプリの導入によって入居者の満足度向上などを実現することで、管理業務効率化やコスト削減を目指す計画だ。こうしたDX推進は、中期経営計画の目標達成のカギを握る最重要戦略と言えるだろう。同社ではDX推進の手ごたえを十分に感じており、今後も対面・非対面双方を活用した営業戦略を推進する方針としている。

第2に、バリューチェーンの強化を目指す。実現に向けた施策として、時代のニーズに即した物件を開発する「企画・開発・提案力」、全国ネットワークと多彩なメディアを駆使した「募集力」、迅速かつきめ細かなサポートができる「管理力」など、同社グループの強みを活用した「三位一体」の「一気通貫」サポート体制の確立を計画する。コロナ禍において物件紹介からクロージングをオンラインで一気通貫して行うことで顧客ニーズに応えることに成功したことで、進捗評価はSと予定を上回る大変順調な進捗状況として、今回の施策のなかで最も高い評価としている。

具体的な成果として、同志社大学初の教育寮である「継志寮」の管理受託がある。この寮は、人種、性別、障がいの有無、文化等の様々な違いや背景を持つ学生が混住・交流する環境のもと、多文化共生、地域社会との異世代共生を実践する生活を通して多様な価値観を理解し合い、その違いを新たな創造へ導く力を持つ人物の養成を目指すものだ。同志社大学まで徒歩5分の立地で、全180戸(国内学生向け96戸、留学生向け84戸)、国内学生向け3戸、留学生向け2戸で1ユニットを形成し、リビングルームを共有する。そのほか、三重県で初の食事付き学生マンションである「(仮称)学生会館 Uni E’meal 三重大学前」、富山県での学生マンションに初進出である「(仮称)学生会館 Uni E’meal 富山大学前」など、高機能マンションの新地域への展開も行っている。

第3に、学生の価値創造を意図したビジネス拡大を目指す。実現のための施策としては、1)マンションに成長支援設備の設置、2)学生に知の交流・創造機会の提供、3)地域創生への貢献などを計画する。三位一体による物件企画開発や仲介責任・管理責任による24時間365日の入居者アフターサービスについてさらなる充実を目指すが、学びのマンションとして食堂又はオンラインを活用した人間力・社会人基礎力向上に向けた企画を実施しており、進捗評価はAで予定を上回る順調な進捗をしている。

地方中核都市や地方都市における学生・社会人マンション「UniLife」を通じた、地方創生への貢献の具体的な展開事例としては、盛岡市と協定を結ぶ東日本旅客鉄道<9020>に同社グループが協力して、2022年春入居予定のJR盛岡駅西口と、2023年春入居予定の同駅東口における食事付き単身者向け賃貸マンションでは、地元での就職支援や若い世代の移住定住を促進し、中心市街地の活性化や地方創生につなげる計画である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)



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