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平和RE Research Memo(6):「着実な成長」と「持続可能な利益」により、投資口の流動性向上を推進(2)

注目トピックス 日本株
■平和不動産リート投資法人<8966>の中長期の成長戦略

4. 財務戦略
財務戦略で分配金向上+15円/口を達成するために、「財務基盤の強化」「適切なLTVのコントロール」「資金調達手段の多様化」「金融コストの低減」を運用方針とする。「財務基盤の強化」としては、有利子負債の長期化、固定化及び満期の分散化を進めることで市場金利変動の影響を受けにくい財務基盤を構築することに加え、AA格への格上げによる信用力改善と長期安定投資家の拡大を目指す。なお、格付については、2021年11月期の期初にA+(安定的)から、A+(ポジティブ)に改善したことで、将来のAA格到達に一歩近づいたと言えよう。格上げにより、外国人投資家、日本銀行、地域金融機関など幅広い投資家層への訴求力の向上、投資口の流動性改善、投資口価格への好影響が期待される。「適切なLTVコントロール」では、金融環境に左右されない安定した物件取得、ポートフォリオと収益の持続的な拡大を図る。このほか、「資金調達手段の多様化」を図り、公募増資によるエクイティ調達、幅広い業態からなるレンダーフォーメーション、投資法人債等、様々な性格の資金へのアクセスを構築する。また、現在の低金利環境が将来にわたって財務コスト削減に寄与できるように、「金融コストの低減」を図る。

借入余力を図る基準としている鑑定LTV(期末の鑑定評価額(帳簿価額+含み損益)に対する有利子負債の割合)は、39.0%の低水準を維持している。その結果、鑑定LTVを45%までとした場合、借入余力は252億円となり、同REITの資金調達力は安定している。

また、2021年11月末時点の有利子負債残高は90,857百万円であるが、金利の高い借入金の満期借り換えに伴い平均調達金利は0.739%と過去最低金利を更新しており、平均調達年数は7.11年である。加えて、コロナ禍で懸念される不測の事態に備えて、2020年11月期より大手銀行からの融資枠のコミットメントラインを、従来の60億円から70億円に拡大している。2021年11月期には、レンダー数が15社から16社(2022年1月18日現在で17社)に増加したほか、資金調達手段の拡充のため、投資法人債の発行も実施済である。また、将来の金利上昇リスクに対しては、長期借入金固定化比率は91.3%と高く、目安の80%を上回っている。このように、今後も健全な財務体質維持により、同REITの成長を下支えすることが期待される。

5. サステナビリティ
サステナビリティについては、Environment(環境活動)への取り組みとして、再生可能エネルギー電力の導入割合100%を「NEXT VISION」の1つに掲げている。具体的には、2021年11月までに、保有するすべての物件で使用する電力を再生可能エネルギー由来に切り替えることを目指す。実際、2021年11月期末には、対象106物件すべてについて切り替え手続きが終了している。また、同REITの資産運用会社である平和不動産アセットマネジメントは、2021年12月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に対する賛同を表明した。TCFDは、民間主導による気候関連財務情報の開示に関するタスクフォースであり、同REIT及び平和不動産アセットマネジメントでは、気候変動に関するリスクと機会への対応や気候関連課題への事業・戦略のレジリエンス(強靭性・回復力)に取り組んでいくため、TCFDが提言する情報開示フレームワークに即した開示を目指す方針だ。

これに加え、地域社会との共働、ガバナンス強化、ESGレポートの発行と開示情報の拡充にも取り組む。なお、2021年に実施されたGRESB(グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク:Global Real Estate Sustainability Benchmark)リアルエステイト評価において、同REITは5年連続で「Green Star」の評価を取得している。同様に、(株)日本政策投資銀行のDBJ Green Building認証、(一財)建築環境・省エネルギー機構のCASBEE認証、(一社)住宅性能評価・表示協会のBELS評価も取得している。これらのサステナビリティへの積極的な取り組みは、世界的なESG投資の拡大に対応する動きと考えられる。

弊社では、同REITが特化する東京都区部をメインとする市場は投資機会が豊富にあることから、今後も同REITの潜在的な成長力は高いと評価する。東京都区部では、主なテナント層である中小規模の事業所数が多く、オフィスビルに対して引き続き豊富な需要がある。また、東京都では2021年はコロナ禍に伴うテレワーク普及などにより25年ぶりに人口減少に転じたが、コロナ禍が収束すれば再び人口増加傾向となることが予想され、居住用マンションについても堅調な需要が見込まれる。

また、強力なスポンサー・サポートの活用によって、着実な成長戦略の推進が可能と考える。すなわち、平和不動産の保有・開発物件、仲介物件、先行取得物件等の情報ソースを活用したり(外部成長サポート)、情報の共有化によって稼働率の向上を図ったり(内部成長サポート)、財務方針、資金調達等のかかる支援や指導を仰ぐこと(財務サポート)ができることが、同REITの大きな強みと言えよう。

既述のとおり、コロナ禍による賃料への影響は軽微にとどまっている。コロナ禍はいずれ収束に向かうと考えられるが、同REITでは、十分な内部留保やコミットメントラインの設定などの対策を講じている。その他の一般的なリスク要因としては、他のREITと同様、稼働率の低下、賃料の下落、金利の上昇等が考えられる。実際、東京都区内において2018年から巨大ビルが大量供給されており、稼働率の低下や賃料の下落が懸念されていた。ただ、同REITでは、オフィス稼働率は既に高水準に達しているものの、対象とする中規模以下のオフィスでは供給が限定的であり、今後も高稼働率の維持が可能と見ている。また、市場賃料の上昇が契約賃料の更改ペースを上回っていること(ポジティブギャップが拡大)から、オフィス賃料はさらに引き上げ可能と見られる。レジデンスにおいても、リニューアル工事の実施によって、物件競争力の強化と資産価値の維持向上を図っており、今後も高稼働率の維持と賃料水準の改善につながると見る。当面は金利の高い借入の借り換えに伴い、金融コストはさらに低下する見通しだが、将来の金利上昇リスクに対しては、金利の固定化によりリスクヘッジを進めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)




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