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アンジェス Research Memo(1):2022年12月期は複数のパイプラインで新たな開発ステージに進む可能性

注目トピックス 日本株
■要約

アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発のバイオベンチャー。遺伝子医薬に特化した開発を進めており、長期ビジョンとして「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目指している。新薬候補品を開発し、販売パートナーとの販売権許諾契約によって得られる契約一時金や、開発の進捗状況などによって得られるマイルストーン収入、上市後の製品売上高にかかるロイヤリティ収入を獲得するビジネスモデルとなる。2020年12月に米国で先進ゲノム編集技術の開発を行うEmendBio Inc.(以下、Emendo)を子会社化している。

1. 新型コロナウイルス感染症ワクチン及び治療薬の開発状況について
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するDNAワクチンの開発については、2021年8月より国内で進めてきた高用量製剤での第1/2相臨床試験の接種が同年11月に完了し、順調に進めば2022年夏頃にも試験結果が判明する見通しとなっている。その内容が良好であれば第2/3相臨床試験、第3相臨床試験に進むべくPMDAと協議を進めていくことになる。ただ、大規模な臨床試験を行う場合は多額の資金が必要となるため、国による補助金が付くことが前提となる。一方、カナダのVasomune Therapeutics(以下、Vasomune)と共同開発中の治療薬「AV-001」(中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者を対象)は、2022年1月より前期第2相臨床試験を米国で開始(南米でも行う予定)、2022年内の後期第2相臨床試験入りを目指している。後期第2相臨床試験の結果が良ければ、早期承認制度を活用して販売承認申請を行う可能性もある。

2. その他開発パイプラインの動向
慢性動脈閉塞症を対象としたHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の国内における市販後調査※並びに適応拡大のための第3相臨床試験は2021年末に予定症例数の患者登録が完了した。2023年にも結果が判明する見通しで、2024年の本承認取得を目指している。また、米国で実施している後期第2相臨床試験も順調に被験者登録が進んでいる。椎間板性腰痛症を適応症としたNF-κBデコイオリゴDNAの開発については、大手製薬企業とのライセンス契約も視野に入れながら第2相臨床試験の開発計画を策定している状況にあり、米国だけでなく欧州や日本での臨床試験も進めていく可能性が出てきている。オーストラリアで実施している高血圧DNAワクチンの開発については、第1相/前期第2相臨床試験結果で安全性に問題がなく、同ワクチン接種者から抗アンジオテンシンII抗体が得られたことが確認されており、今後は対象患者のグレードなども考慮に入れた開発戦略を策定していく計画となっている。また、米子会社のEmendoでは独自技術である先進的なゲノム編集ツール「OMNI(オムニ) Platform」を用いて、希少遺伝性疾患であるELANE関連重症先天性好中球減少症(以下、SCN)を対象とした臨床試験の開始に向けた協議をFDAと進めていくほか、複数の企業と「OMNI Platform」のライセンス提供に向けた交渉も進めており、今後の動向が注目される。

※「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善」を効能として、厚生労働省から条件及び期限付製造販売承認を2019年3月に取得し、同年9月より提携先である田辺三菱製薬(株)を通じて販売を開始すると同時に、市販後調査(2021年末に患者登録を完了)を実施している。同調査の結果を持って本承認の申請を行うことになる。


3. 業績動向
2021年12月期の売上高は前期比60.4%増の64百万円、営業損失は15,632百万円(前期は5,599百万円の損失)となった。売上高は「コラテジェン®」の販売高が前期比5百万円減の34百万円となったものの、新たに開始した希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査の手数料収入で29百万円を計上した。営業損失の拡大要因は新型コロナウイルス感染症ワクチンの研究開発費用増加に加えて、Emendoの子会社化に伴うのれん償却額2,407百万円の計上や人件費等の増加が要因となっている。なお、新型コロナウイルス感染症ワクチン関連の開発費用については国の補助金等で賄われているが、損益計算書上では研究開発費として計上し、国の監査・認定が下りた段階で営業外に補助金収入として計上し、未認定分については前受金として流動負債に計上している。2021年12月期は営業外収益として1,399百万円、前受金として5,119百万円を計上しており、2022年12月期以降、前受金が営業外収益に振り替わることになる。2022年12月期の業績見通しは、開発プロジェクトの状況によって研究開発費が変動すること等から現時点では未定としているが、研究開発費については100億円程度と前期並みの水準を見込んでいる。なお、2021年12月期末の現金及び預金は約17,899百万円となっており、当面の事業活動を進めていくうえでの資金は確保されている。

■Key Points
・新型コロナウイルス感染症予防用ワクチンは第1/2相臨床試験の結果が2022年夏頃判明する見通し
・新型コロナウイルス感染症治療薬「AV-001」は前期第2相臨床試験を米国で開始
・HGF遺伝子治療用製品の市販後調査並びに日米での臨床試験は順調に進捗
・EmendoはELANE関連SCNを対象とした臨床試験入りを目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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