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サイバネット Research Memo(6):無借金経営で金融資産は約160億円と財務基盤は盤石

注目トピックス 日本株
■サイバネットシステム<4312>の業績動向

2. 財務状況
2021年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比1,027百万円増加の23,270百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では親会社である富士ソフト向けの短期貸付金(キャッシュ・マネジメント・システムによる取引)が890百万円、有価証券が1,000百万円それぞれ減少した一方で、現金及び預金が3,010百万円増加し、これらを合計した金融資産は前期末比1,120百万円増加の16,009百万円と過去最高水準に積み上がった。固定資産は、基幹業務システムの導入に伴い無形固定資産が87百万円増加した一方で、投資その他の資産が340百万円減少した。

負債合計は前期末比224百万円減少の7,538百万円となった。流動負債では買掛金が171百万円減少し、未払法人税等が184百万円、前受金が264百万円増加した。また、固定負債では退職給付に係る負債が191百万円減少した。純資産合計は前期末比1,252百万円増加の15,732百万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が946百万円増加したほか、円安の進展に伴い為替換算調整勘定が204百万円増加した。

経営指標を見ると、自己資本比率が66.3%と60%を超える水準で推移しているほか、無借金経営で金融資産が160億円に達するなど、財務内容は極めて良好な状況にあると判断される。一方、収益性についてはROAで12.4%、ROEで12.0%、売上高営業利益率で12.5%といずれも10%台で推移しており、高収益体質を構築していると言える。ただ、Synopsysとの契約終了に伴い、2022年12月期は一旦、収益性も低下することが見込まれている。同社では2023年12月期以降のV字回復に向けた体制構築に取り組んでいく方針であり、潤沢な金融資産を活用したM&Aも成長戦略の1つとなっている。


2022年12月期はSynopsys関連ビジネスの喪失で一時的に減収減益となる見通し
3. 2022年12月期業績見通し
2022年12月期の連結業績は、売上高で前期比11.9%減の20,000百万円、営業利益で同36.4%減の1,800百万円、経常利益で同36.2%減の1,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同35.6%減の1,150百万円と減収減益を見込んでいる。Synopsysとの販売代理店契約終了の影響で関連売上がなくなることが主因だ。

Synopsys製品及び付随するハードウェア等の売上高(日本及びアジア)は2020年12月期で4,657百万円となっており、利益率は全社平均以上の水準だったと見られる。2022年12月期の減収要因になると見られるが、自社開発製品やDX事業、ITソリューションサービス事業の増収により、落ち込み幅を可能な限り小幅にとどめていく方針だ。

また、同社は光学系ソリューションについて2021年10月2日付でAnsysと販売代理店契約を締結し、「Ansys Speos®」(3次元光学解析ソフトウェア)、「Ansys VRXPERIENCETM」(VRソリューション)、「Ansys Lumerical」(フォトニクス解析ソフトウェア)の販売を開始したほか、2022年2月にはAnsysのグループ会社である米Zemax,LLCの「OpticStudio」(光学設計ソフトウェア)の販売も開始するなどラインナップを拡充している。製品の性能や機能についてはSynopsys製品とほぼ遜色はないが、一般的に開発ツールを他社製品からリプレースするのは、性能面や機能面で明確な差がない限り難しい。ただ、CAEを効果的に使用するためには、知識、経験が必要であり、同社は長年蓄積してきたノウハウを生かした顧客満足度の高いサポート力を強みに、徐々に導入実績を積み重ねながらシェアを拡大していくことは可能と弊社では見ている。例えば、顧客企業でSynopsys製品を10ライセンス契約している場合、1〜2ライセンスを試験的にAnsys製品に置き換えてもらい、顧客サポートを強化しながらライセンス数を増やしていく考え方だ。既に導入実績も数件程度出ているほか、一部のSynopsys製品ユーザーからは同社のサポートが受けられないことに対する不安の話も聞こえてきており、同社にとってはチャンスとなる。

自社開発製品については、欧米子会社の各種ソフトウェア製品の拡販に加えて、「EndoBRAIN®」シリーズの成長を見込んでいる。同製品はオリンパスを通じて販売されているが、国内では保険適用の対象となれば需要が増加するものと期待される。また、海外市場ではインド等で販売を開始したほか韓国でも販売を開始する予定となっている。ヨーロッパでも規制当局の認可が下り次第、販売していくものと予想される。DX事業についてはAR/VRソリューションやIoTプラットフォーム構築ソリューションなど、先進のデジタル技術を活用したソリューションの需要拡大が期待される。また、前期に大きく伸長したITセキュリティ分野についても、年々巧妙化するサイバー攻撃への対策として、クラウド・セキュリティソリューションのラインアップ拡充を図り、売上高を伸ばしていく計画となっている。

なお、営業利益率が前期の12.5%から9.0%に低下するのは、減収による売上総利益の減少に加えて、人財投資を積極化することによる人件費の増加、基幹システムの刷新に伴う費用増等により販管費比率が上昇することが要因となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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