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アンジェス Research Memo(6):NF-κBデコイオリゴDNAは計画策定とライセンス契約交渉を進行中

注目トピックス 日本株
■アンジェス<4563>の主要開発パイプラインの動向

3. NF-κBデコイオリゴDNA
NF-κBデコイオリゴDNAは、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を担う「転写因子NF-κB」に対する特異的な阻害剤となる。主にNF-κBの活性化による過剰な免疫・炎症反応を原因とする疾患の治療薬として、研究開発を進めている。

(1) 椎間板性腰痛症(注射投与)
椎間板性腰痛症の患部にNF-κBデコイオリゴDNA(開発コードAMG0103)を注射投与することによって、慢性腰痛に対する鎮痛効果とともに、椎間板変性に対する進行抑制や修復を促す効果が期待される。新タイプの腰痛治療薬として2018年2月より米国で後期第1相臨床試験(25症例)を実施し、全症例の投与後12ヶ月間におけるトップラインデータを2021年4月に発表した。

発表資料によれば、12ヶ月間の観察期間を通じて重篤な有害事象は認められず高い安全性が確認されたこと、有効性についても投与早期に腰痛が大幅に軽減し、腰痛の抑制効果も投与12ヶ月後まで継続したことが確認されたとしている。また、患者自身からも高い満足度が得られており、良好な結果が得られたものと同社では評価している。

治験責任医師からも、「AMG0103は素晴らしい安全性プロファイルを有し、12ヶ月にわたり腰痛を有意に軽減しており、慢性椎間板性腰痛症に苦しむ患者に対して画期的治療薬となる可能性があると考えています。さらに、腰痛の軽減に加えて、椎間板の高さを回復させる可能性が示唆されたことは注目に値します。」とのコメントを得ている。現在、慢性椎間板性腰痛症に関しては、一般療法としてステロイド注射(対処療法)が使用されることが多いが、同治療薬との比較においても同等以上の効果が得られたとしている。ステロイドが一時的な対処療法であるのに対してAMG0103は炎症を抑制する効果があり、その結果として腰痛の症状が改善することが理由と考えられる。

椎間板性腰痛症は慢性的な腰痛疾患で、特に中高年層を中心に患者数は多い。米国では治療法として椎間板内注射が一般的であり、手技に習熟している医師も多くAMG0103の導入が進む環境は整っている。ただ、価格面を考えると鎮痛効果だけでは既存治療法と差別化が難しいため、椎間板変性に対する進行抑制効果や修復促進効果などが今後の臨床試験で確認できれば開発成功に向けて大きく前進するものと思われる。

現在、FDAと第2相臨床試験のプロトコルについて協議を進めている状況にあるが、トップラインデータの発表を受けて国内外の製薬企業からの注目度も高まっており、ライセンス契約等の交渉も同時並行で進めている。第2相臨床試験では米国だけでなく欧州や日本での実施も新たな検討項目として上がっているもようで、第2相臨床試験の開始前にライセンス契約が決まる可能性も出てきている。なお、AMG0103の開発に成功すれば、慢性椎間板性腰痛症に使用される世界初の核酸医薬品となる可能性がある。

(2) 次世代型「キメラデコイ」
同社は2016年7月に次世代型「キメラデコイ」の基盤技術の開発を完了し、製品開発を進めている。従来のNF-κBデコイオリゴDNAと比較して、「NF-κB」と「STAT6」という炎症に関わる2つの重要な転写因子を同時に抑制する働きを持つため、炎症抑制効果も格段に高まることが期待される。実際、動物実験ではNF-κBデコイオリゴDNAよりも強い炎症抑制効果を持つことが確認されている。また、次世代型「キメラデコイ」は生体内での安定性に優れ、NF-κBデコイオリゴDNAよりも分子量が3〜4割少ないため、生産コストを低く抑えることが可能といった長所も持つ。

同社は具体的な対象疾患として喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病(炎症性腸疾患)などの炎症性疾患を想定している。既に開発が進行中の椎間板性腰痛症については既存のNF-κBデコイオリゴDNAで開発を継続するが、今後の新たな開発は、「キメラデコイ」に移行していくことになる。現在、適応疾患の選定中で非臨床試験の開始時期は未定となっている。


高血圧DNAワクチンの開発はモディファイすることも含めて戦略を策定中
4. 高血圧DNAワクチン
プラスミドDNA製法を用いたワクチンの1つとして、高血圧症を対象としたDNAワクチン(AGMG0201)の開発を進めている。同ワクチンは大阪大学の森下竜一(もりしたりゅういち)教授の研究チームにより基本技術が開発されたもので、血圧の昇圧作用を有する生理活性物質アンジオテンシンIIに対する抗体の産生を誘導し、アンジオテンシンIIの作用を減弱させることで長期間安定した降圧作用を発揮するワクチンとなる。

現在販売されている主な高血圧治療薬としてはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬(経口薬))があるものの、毎日服用する必要があるため、長期的に見た患者1人当たりの治療コストは高くなる。このため、発展途上国では医療経済上の問題から使用が限定的となっている。同社が開発するDNAワクチンは既存薬よりも高薬価になると想定されるが、薬効期間次第ではトータルの治療コストが既存治療薬を下回る可能性も出てくる。

同社は2018年4月よりオーストラリアで安全性と有効性を評価する第1相/前期第2相臨床試験(症例数24例)を開始し、2020年3月にすべての患者への投与を完了した。同試験結果についは、2021年10月17日付でHypertension Researchに論文として掲載されたほか、第43回日本高血圧学会総会でも発表されている。要旨としては、安全性に問題がなく、DNAワクチンを投与した患者では、特に高用量群で抗アンジオテンシンII抗体の産生が多く認められ、全体として同ワクチンに対する忍容性は良好であるとの結果であった。ただ、抗体価については被験者ごとでバラつきがあり、今後分析する必要があるとしており、血圧降下作用といった有効性についても別の形でデータをまとめていく予定にしている。

同社では、今後データの詳細分析を行いながら開発方針をモディファイする余地がないかどうかも含めて検討し、策定することにしている。例えば高血圧症のなかでも重度のグレードの患者をターゲットにした開発を進めるケースが想定される。このため、今後の開発方針次第では再度第1相/前期第2相臨床試験を実施する可能性もある。なお、高血圧DNAワクチンに関しては2020年6月に日本で、7月に米国でそれぞれ製剤特許及び用途特許を取得している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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