アジア投資 Research Memo(8):日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社(1)
[22/06/15]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
1. 事業概要
日本アジア投資<8518>は、日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社として、PE投資のほか、再生可能エネルギーなどプロジェクト投資も手掛けている。豊富な投資経験とブランド、ネットワーク、人材、事業パートナーなどの事業基盤を生かしながら、革新的な技術やビジネスモデルを持ち、高い成長力を有するベンチャー企業及び中堅・中小企業等への投資や成長支援を通じて、日本とアジアの両地域における産業活性化や経済連携の拡大などに貢献してきた。
同社グループは、自己資金(自己勘定)による投資のほか、金融機関等の出資者からの出資及び同社グループ自身の出資により組成される「投資事業組合(ファンド)」からの投資を行っている。同社グループが管理運用等を行っているファンド運用残高は16,463百万円(10ファンド)、同社グループの自己資金及び運用ファンドによる投融資残高は13,784百万円の規模となっている(2022年3月末現在)。
事業セグメントは投資事業の単一であるが、投資種類別には、「PE投資」と「プロジェクト投資」の大きく2つに区分される。
投資種類別の概要は以下のとおりである。
(1) PE投資
日本及びアジア(特に中華圏)における成長企業等に対して、自己勘定及び同社グループが管理運営するファンドからの投資(PE投資)を行うとともに、投資先企業に対しては、同社が持つ様々なリソースやネットワークを活用し、投資先企業と一体となって事業拡大に取り組み、キャピタルゲイン(投資差益)等の獲得を目指すものである。また、同社グループが組成した投資事業組合(ファンド)からの管理運営報酬等※も収益源となっている。なお、各投資先企業が事業を拡大し利益が計上された場合でも、同社の業績に直接的な影響を与えることはなく、投資先企業の株式売却時にキャピタルゲインとなって初めて影響を与える点に注意が必要である。
※経常的な管理・運営に対する管理報酬のほか、ファンドの運用成果(パフォーマンス)に応じて受領する成功報酬の2種類がある。
2022年3月末の同社グループの自己資金及び運用ファンドによるPE投資残高は7,440百万円(86社)となっている。VC業界を取り巻く環境が変化するなかで、新たなファンド設立には苦戦しており、ファンド運用残高は既存ファンドの満期到来等により年々縮小傾向にある。もっとも、投資方針(本体投資分)の抜本的な見直しにより、既存の資産から事業テーマ※に関連するパートナー企業への戦略投資へと入れ替えを進めている。
※同社が取り組むべき事業テーマとして、再生可能エネルギー、ヘルスケア(介護施設・障がい者グループホーム)、スマートアグリ(植物工場)、ディストリビューションセンター(物流施設)などを選定し、後述するプロジェクト投資を推進するとともに、プロジェクトの開発や運営を手掛けるパートナー企業へのPE投資(戦略投資)にも注力している。
(2) プロジェクト投資
メガソーラープロジェクトを中心とした再生可能エネルギー(バイオマス、バイオガス、風力等も展開)に加え、ヘルスケア(介護施設、障がい者グループホーム)、スマートアグリ(植物工場)、ディストリビューションセンター(物流施設)等のプロジェクトへ投資を行っている。発電所、工場、住居施設、倉庫といった設備を保有するSPC(特別目的会社)に対して投資を行い、これらの設備を建設し、完成後の設備の運営により生み出される利益から投資に対する分配を受けるほか、完成後に設備を売却して利益を得ることもある。
2022年3月末の同社グループの自己資金及び運用ファンドによるプロジェクト投融資の残高は6,344百万円となっている。これらのプロジェクトでは、同社及びその他投資家からの出資金に加えて、金融機関からのプロジェクトファイナンス等でも資金調達をしており、同社はレバレッジ効果により投資した資金の収益性を高めている。また、プロジェクトの企画や開発に精通したベンチャー企業とパートナーシップを組んでいるところも特徴的である。これまでは長期保有による安定収益獲得を目的としたプロジェクトを中心に積み上げてきたが、今後は、短期での売却を前提としたプロジェクト投資に軸足を移し、長期と短期の厚みのある収益構造の確立を目指していく方針である。
地域別の投融資残高は、日本が約80%、中華圏(中国、香港、台湾)他が約20%である。投資種類別では、再生可能エネルギー等の「プロジェクト投資」の投融資残高が約46%、未上場企業に投資を行う「PE投資」が約54%である。「PE投資」のうち、プロジェクト投資のパートナー企業への戦略投資が10%、その他が44%となった。
2. 沿革
同社の前身である日本アセアン投資株式会社は、1981年7月に経済同友会を母体として設立された。日本とASEAN間の民間投資を促進することが設立の経緯である。1985年12月には、海外経済協力基金(OECF)の資本参加により、半官半民の体制となった(ただし、1989年10月にOECFによる保有株式は民間企業へ売却されている)。
1988年頃からは、当時の政府が公約した「貿易黒字の資金還流」の一翼を担うべく、ASEAN各国に拠点を設立してASEANでの投資事業を開始した後、1991年6月には、現在の日本アジア投資株式会社に商号変更し、次第にASEANに限定していた投資対象地域を、日本・台湾・韓国にも拡大した。その後も順調に業績を拡大すると、1996年9月に日本証券業協会に店頭売買銘柄として株式を登録した。2005年からは中国での投資事業に本格参入し、2007年12月には中国子会社を設立した。2008年6月に東京証券取引所市場第1部へ上場を果たした後、2012年には安定収益の拡大のため再生可能エネルギープロジェクトへの投資も開始した。その後、ヘルスケア(介護施設・障がい者グループホーム)、スマートアグリ(植物工場)、ディストリビューションセンター(物流施設)と、投資をするプロジェクトの種類を多様化してきている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 事業概要
日本アジア投資<8518>は、日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社として、PE投資のほか、再生可能エネルギーなどプロジェクト投資も手掛けている。豊富な投資経験とブランド、ネットワーク、人材、事業パートナーなどの事業基盤を生かしながら、革新的な技術やビジネスモデルを持ち、高い成長力を有するベンチャー企業及び中堅・中小企業等への投資や成長支援を通じて、日本とアジアの両地域における産業活性化や経済連携の拡大などに貢献してきた。
同社グループは、自己資金(自己勘定)による投資のほか、金融機関等の出資者からの出資及び同社グループ自身の出資により組成される「投資事業組合(ファンド)」からの投資を行っている。同社グループが管理運用等を行っているファンド運用残高は16,463百万円(10ファンド)、同社グループの自己資金及び運用ファンドによる投融資残高は13,784百万円の規模となっている(2022年3月末現在)。
事業セグメントは投資事業の単一であるが、投資種類別には、「PE投資」と「プロジェクト投資」の大きく2つに区分される。
投資種類別の概要は以下のとおりである。
(1) PE投資
日本及びアジア(特に中華圏)における成長企業等に対して、自己勘定及び同社グループが管理運営するファンドからの投資(PE投資)を行うとともに、投資先企業に対しては、同社が持つ様々なリソースやネットワークを活用し、投資先企業と一体となって事業拡大に取り組み、キャピタルゲイン(投資差益)等の獲得を目指すものである。また、同社グループが組成した投資事業組合(ファンド)からの管理運営報酬等※も収益源となっている。なお、各投資先企業が事業を拡大し利益が計上された場合でも、同社の業績に直接的な影響を与えることはなく、投資先企業の株式売却時にキャピタルゲインとなって初めて影響を与える点に注意が必要である。
※経常的な管理・運営に対する管理報酬のほか、ファンドの運用成果(パフォーマンス)に応じて受領する成功報酬の2種類がある。
2022年3月末の同社グループの自己資金及び運用ファンドによるPE投資残高は7,440百万円(86社)となっている。VC業界を取り巻く環境が変化するなかで、新たなファンド設立には苦戦しており、ファンド運用残高は既存ファンドの満期到来等により年々縮小傾向にある。もっとも、投資方針(本体投資分)の抜本的な見直しにより、既存の資産から事業テーマ※に関連するパートナー企業への戦略投資へと入れ替えを進めている。
※同社が取り組むべき事業テーマとして、再生可能エネルギー、ヘルスケア(介護施設・障がい者グループホーム)、スマートアグリ(植物工場)、ディストリビューションセンター(物流施設)などを選定し、後述するプロジェクト投資を推進するとともに、プロジェクトの開発や運営を手掛けるパートナー企業へのPE投資(戦略投資)にも注力している。
(2) プロジェクト投資
メガソーラープロジェクトを中心とした再生可能エネルギー(バイオマス、バイオガス、風力等も展開)に加え、ヘルスケア(介護施設、障がい者グループホーム)、スマートアグリ(植物工場)、ディストリビューションセンター(物流施設)等のプロジェクトへ投資を行っている。発電所、工場、住居施設、倉庫といった設備を保有するSPC(特別目的会社)に対して投資を行い、これらの設備を建設し、完成後の設備の運営により生み出される利益から投資に対する分配を受けるほか、完成後に設備を売却して利益を得ることもある。
2022年3月末の同社グループの自己資金及び運用ファンドによるプロジェクト投融資の残高は6,344百万円となっている。これらのプロジェクトでは、同社及びその他投資家からの出資金に加えて、金融機関からのプロジェクトファイナンス等でも資金調達をしており、同社はレバレッジ効果により投資した資金の収益性を高めている。また、プロジェクトの企画や開発に精通したベンチャー企業とパートナーシップを組んでいるところも特徴的である。これまでは長期保有による安定収益獲得を目的としたプロジェクトを中心に積み上げてきたが、今後は、短期での売却を前提としたプロジェクト投資に軸足を移し、長期と短期の厚みのある収益構造の確立を目指していく方針である。
地域別の投融資残高は、日本が約80%、中華圏(中国、香港、台湾)他が約20%である。投資種類別では、再生可能エネルギー等の「プロジェクト投資」の投融資残高が約46%、未上場企業に投資を行う「PE投資」が約54%である。「PE投資」のうち、プロジェクト投資のパートナー企業への戦略投資が10%、その他が44%となった。
2. 沿革
同社の前身である日本アセアン投資株式会社は、1981年7月に経済同友会を母体として設立された。日本とASEAN間の民間投資を促進することが設立の経緯である。1985年12月には、海外経済協力基金(OECF)の資本参加により、半官半民の体制となった(ただし、1989年10月にOECFによる保有株式は民間企業へ売却されている)。
1988年頃からは、当時の政府が公約した「貿易黒字の資金還流」の一翼を担うべく、ASEAN各国に拠点を設立してASEANでの投資事業を開始した後、1991年6月には、現在の日本アジア投資株式会社に商号変更し、次第にASEANに限定していた投資対象地域を、日本・台湾・韓国にも拡大した。その後も順調に業績を拡大すると、1996年9月に日本証券業協会に店頭売買銘柄として株式を登録した。2005年からは中国での投資事業に本格参入し、2007年12月には中国子会社を設立した。2008年6月に東京証券取引所市場第1部へ上場を果たした後、2012年には安定収益の拡大のため再生可能エネルギープロジェクトへの投資も開始した。その後、ヘルスケア(介護施設・障がい者グループホーム)、スマートアグリ(植物工場)、ディストリビューションセンター(物流施設)と、投資をするプロジェクトの種類を多様化してきている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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