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テクマト Research Memo(7):クラウド型セキュリティ対策製品の成長続き、情報基盤事業は2ケタ増収増益(2)

注目トピックス 日本株
■テクマトリックス<3762>の業績動向

(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業の売上収益は前期比18.2%増の11,802百万円、営業利益は同19.3%減の679百万円となった。旧PSPの連結化による影響(売上収益1,270百万円、営業利益170百万円)と本社移転関連費用244百万円を除いたベースでは、売上収益で同5.5%増の10,532百万円、営業利益で同10.3%減の754百万円となり、いずれも会社計画(売上収益10,000百万円、営業利益700百万円)を上回って着地した。

売上収益は医療分野、ソフトウェア品質保証分野、ビジネスソリューション分野でそれぞれ2ケタ増となり過去最高を更新したが、利益面では新規事業となる教育事業への先行投資や、CRM分野での受注の遅れに起因する売上・利益の未達が響いて、減益となった。一方で、同分野の受注実績は堅調に推移しているため、今後の業績の復調は期待できると見ている。同セグメントにおける受注高については、前期比21.6%増の12,850百万円と2期ぶりに増加に転じ、受注残高も同47.7%増の14,030百万円と大幅に積み上がった。受注残高の増加分の大半は旧PSPの連結化による影響と見られるが、既存事業ベースでも10億円程度積み上がったものと思われる。

なお、ストック型売上比率(単体のアプリケーション・サービス事業及び旧NOBORIの売上収益に占める比率)は前期の55.1%から60.0%に上昇した。「NOBORI」を中心にクラウド型サービスが順調に成長していることや、ソフトウェア品質保証分野でもサブスクリプション型のライセンス販売が増加していることなどが要因となった。

a) 医療分野
医療分野の売上収益は旧PSPを除いたベースでも前期比2ケタ増と好調に推移した。クラウド型PACS「NOBORI」の既存顧客の更新や新規受注、他社からのリプレイス案件がいずれも堅調に増加したことが主因だ。「NOBORI」に保管している検査件数は前期比17.7%増、画像を保管している患者数は同14.0%増と2ケタ成長が続き、シェアの拡大が着実に進んでいるものと見られる。

また、新規事業として取り組んでいるPHRサービスについては地域連携医療機関など大規模病院を中心に導入が進み利用者数も増加しているが、業績への影響は軽微となっている。ただ、超高齢化社会の進展とともに地域医療連携の重要性が高まるなか、個人(患者)の医療情報を共有化できるPHRサービスは医療連携を円滑に進めるツールになると同社では見ており、今後は旧PSPの顧客基盤も含めて導入施設数を増やし、収益化を目指していく考えだ。また、PHRをタッチポイントとしてクラウド型PACSの顧客開拓にも取り組んでいく。

医知悟の遠隔読影サービスについては健診需要が堅調に推移し、計画を上回って推移した。A-Lineが提供する医療被ばく線量管理サービス「MINCADI」については、2020年4月より病院でのデータ管理が義務化されたことで需要拡大が期待されたが、コロナ禍により規制当局の監査が厳しく実施されていないこともあり伸び悩んだ。

そのほかAIベンチャーやエムスリーなどと協業して取り組んでいるAI画像診断支援サービスについては、脳腫瘍や肺炎の診断支援で利用が着実に進んだ。保険適用も条件付きで認められるなど、徐々に普及に向けた環境は整いつつある。同サービスについては2022年4月にPSPとエムスリーが合弁で設立したエムスリーAIに販売・マーケティング機能が引き継がれることになり、今後はエムスリーが持つ幅広い顧客基盤や営業力を生かして、事業展開を加速していくことになる。

b) CRM分野
CRM分野の売上収益は前期比1ケタ減となった。2021年3月期まで継続していた既存顧客のシステムバージョンアップ等の更新需要が一巡したことや、コロナ禍により商談が長引き受注回復の時期が下期にずれ込んだことが影響した。このため、受注ベースでは会社計画を達成したものの売上収益・営業利益は未達となった。

なお、同社は受注拡大施策として周辺サービスを手掛けるベンダーとの連携を国内外で積極的に進めている。海外では2021年7月にタイのソーシャルデータ分析クラウドサービス最大手であるWISESIGHTを傘下に持つTZO Company Ltd.に出資し、WISESIGHTと業務提携を行った。WISESIGHTはタイのローカル企業だけでなく、日系企業やグローバル企業など約300社を顧客に抱えており、これら既存顧客や新規顧客に対して「FastHelp」を販売していく。既に受注実績もあり、タイだけでなく東南アジア地域での拡販も協業して進めていく予定だ。また、WISESIGHT以外にも同様にシナジーが見込める企業があれば提携し、販売ネットワークを拡充しながら事業展開を加速していく方針となっている。

c) ソフトウェア品質保証分野
ソフトウェア品質保証分野は前期にコロナ禍の影響で冷え込んでいた製造業からの受注が回復し、売上収益は前期比2ケタ増となった。自動車業界を中心に組み込みソフトウェアの品質向上を目的としたテストツールの受注が増加した。また、サブスクリプション型ライセンス契約の増加により受注残高も増加した。

d) ビジネスソリューション分野
ビジネスソリューション分野は受注・売上ともに計画を上回り、売上収益は前期比2ケタ増となった。既存顧客である学術系公共機関向けのシステム開発案件が堅調だったほか、金融機関向けリスク管理分野においてLIBOR※廃止に対応した開発案件の需要を取り込めたことが増収要因となった。また、2022年3月期上期に発生した不採算案件の損失を下期の収益増でカバーし、営業利益も増益となり計画を達成した。

※LIBOR(London Interbank Offered Rate):ロンドン金融市場における銀行間取引金利のこと。本指標の恒久的な公表停止が確定しており、同指標を参照してシステム取引を行っていた金融機関や企業は代替金利指標への移行などの対応を進める必要がある。


子会社の状況については、山崎情報設計が売上収益・営業利益ともに計画どおりに推移し、カサレアルはIT分野のオンライン研修サービスやクラウド関連技術に関するコンサルティングサービス、受託開発等が順調に推移し、売上収益・営業利益ともに計画を上回った。

e) 教育分野
教育分野では「ツムギノ」の垂直立ち上げを目指すべく、営業・マーケティング活動を大幅に強化するなど積極的な投資を実施した。2021年4月に主体的な学びを重視する先進的な私立学校で複数導入されたほか、国立大学付属小学校や一部の公立校でも導入された。販売体制の強化にも取り組んでおり、2021年10月には教育機関向けにGoogleソリューションの豊富な販売実績を持つシネックスジャパン(株)※と再販パートナー契約を締結している。同事業に関しては2023年3月期が損失のピークとなる見込みで、事業開始5年目となる2026年3月期の黒字化を目指している。

※政府のGIGAスクール構想において学校へのパソコン導入のうち約25%の導入(Chromebook)に関わった実績を持つ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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