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日本電技 Research Memo(3):空調計装は安定収益源、成長ドライバーは産業システム

注目トピックス 日本株
■事業内容

1. 事業内容
日本電技<1723>の事業は空調計装関連事業と産業システム関連事業に大別され、2022年3月期の売上高構成比はそれぞれ89.4%、10.6%となっている。空調計装関連事業は、建物の建設時に空調計装工事を行う新設工事と、既設建物のメンテナンスやリニューアル工事を行う既設工事に分けることができる。空調計装の新設工事はサブコンから受注することが多く、既設工事はビルオーナーなどと直接契約して同社が元請になることが多い(直接契約なので収益性が高い)。産業システム関連事業は、工場の生産ラインや搬送ラインなどの制御から産業用ロボットのセットアップなど、工場全体の自動化・省エネ化が事業領域である。また、産業システム関連事業ではシステム開発力を強化しており、AIやIoT、クラウドといった最新技術を積極的に取り込むことで、「計装エンジニアリング」企業として付加価値の高い新たなサービスの提供を目指している。現状、新築のビルが続々と建てられる時代ではなくなってきたため、空調計装の市場はこれ以上大きく広がらないと見られ、競争も激化している。一方産業システムは、工場のデジタル化(スマートファクトリー化)が追い風となって市場が大きく広がると予測されている。このため同社は、長期的に空調計装関連事業について企業を支える安定収益源、産業システム関連事業については成長ドライバーとみなしており、開拓余地が大きい産業システム分野に積極的に資源を投入し、産業システム関連事業の成長に弾みをつける考えである。


建物の空調自動制御システムをトータルプロデュース
2. 空調計装関連事業
空調計装関連事業では、熱源制御、空調制御、動力制御、中央監視装置などによって、非居住用建築物の空調自動制御システムをトータルでプロデュースしている。最適な自動制御システムにより快適な空間を実現し、また、設備・機器の更新提案や建物のエネルギー管理のサポート、省エネ化提案などを行うことで、顧客の建物資産の保全やライフサイクルコストの低減を支援している。空調計装関連事業は、ビルシステム事業とソリューション事業に分けられる。ビルシステム事業は同社の主軸であり、建物の建築時に導入される空調設備のシステム設計から施工、引き渡し前の試運転・調整、引き渡し時の取扱説明までをワンストップで行っている。また、熱供給設備(地域冷暖房プラント)におけるエネルギー供給のための各設備機器の自動制御に関わるシステムの構築も行っている。ソリューション事業では、建物が完成した後、空調設備の保守や保全から設備の更新に携わる一方、エネルギー効率の改善や設備の運用状況を監視・管理・運用改善することにより省エネ化、省コスト化するサポートもしている。


広がるマーケットで事業部独自の戦略を展開
3. 産業システム関連事業
産業システム関連事業では、「計装エンジニアリング」を背景に、小規模工場から大規模工場まで、生産プロセス(生産工程)や搬送ラインにおいて、ロボットなど機器をセットアップし、自動制御するシステムを構築するといったサービスを提供している。具体的には、電気計装工事のほか特殊仕様のユーティリティ設備(冷温水、蒸気、圧縮空気等)における自動化・省エネ化、工場などで排出される廃温水や廃熱などの有効活用による環境負荷の低減及び省エネ化や運用コストの削減、安全性の確保や仕分け作業の精度・効率向上などのサポート、箱詰め・検査・荷捌といった人手のかかる工程におけるロボット導入などによる生産性の向上、人が介在しないことによる安心・安全(フードディフェンス)の確保など、食品や医薬品などの製造現場がそれぞれに抱える様々な課題に応えることで、顧客のバリューチェーンの最適化を図っている。また、産業システム関連事業では、広がるマーケットで成長を加速するため事業部制を導入したほか、サービスサイトの開設や展示会への出展など事業部独自の戦略を推進している。


計装技術にAIなど最先端技術を融合して新たなサービスを創出
4. 研究開発の取り組み
IoT(Internet of things)とは「モノのインターネット」と呼ばれ、センサと通信機器が組み込まれたモノがインターネットを通じて相互につながり情報交換を行うことで、新たな価値やサービスを提供する仕組みのことである。同社は、次世代の空調計装や産業システムの確立を目指し、強みである計装エンジニアリング技術にAIやクラウドなどの最先端技術を融合した「Building IoT」や「Industrial IoT」の開発を進めている。

(1) 「Building IoT」
「Building IoT」では、ビル最適化運用、エネルギー管理サービス、遠隔保守サービスといったアプリケーションとサービスの提供を目指している。ビル最適化運用は、ビルのエネルギー需要予測とデマンドレスポンス信号に応じて、熱源空調設備及び電気設備(太陽光発電+蓄電池)の最適運用を図るアプリケーションである。エネルギー管理サービスでは、ビルの室内環境や電気・ガスなどのエネルギー消費の見える化アプリケーションによって、データ分析に基づいた省エネサービスを提供している。遠隔保守サービスは、管理員が常駐しないなか、小規模ビル向けに、点検業務の自動化などによって遠隔から設備などを保守するサービスである。これらにより、例えば、天気予報と過去の運用実績データ(ビッグデータ)から人工知能がビルの冷暖房などに必要なエネルギー量を予測し、熱源設備や蓄電池設備などの運転計画を作成している。

(2) 「Industrial IoT」
「Industrial IoT」では、生産状況管理や品質管理、エネルギー管理など工場生産設備向けのアプリケーションを開発し、新たなサービスとして提供を目指している。生産状況管理アプリケーションは、生産設備・装置の稼働状況や製品の生産状況をモニタリングし、計画と実績の比較など生産活動をリアルタイムに把握できるアプリケーショである。品質管理アプリケーションは、生産設備・装置の異常発生や製品の検品状況をモニタリングし、異常発生の原因特定や改善サポートを行うアプリケーションである。エネルギー管理アプリケーションは、生産設備・装置及びユーティリティ設備のエネルギー消費状況をモニタリングし、製品の生産状況と合わせて、工場全体のエネルギー利用効率などを分析するアプリケーションである。これらにより、例えば、コンベア上を流れる製品をカメラで撮影し、AIを用いた画像診断で製品の識別を行い、自動仕分や良否判定につなげることができる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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