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セルム Research Memo(4):アフターコロナに向けた戦略投資ニーズが伸長、業績は堅調。過去最高の売上高を達成

注目トピックス 日本株
■セルム<7367>の業績動向

1. 2022年3月期業績の概要
2022年3月期業績は、売上高が6,471百万円(前期比40.6%増)、EBITDAが945百万円(同73.0%増)、営業利益が729百万円(同121.5%増)、経常利益が697百万円(同102.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が373百万円(同152.0%)となった。市場全体としてアフターコロナに向けた戦略投資ニーズが伸長、同社グループ業績に対する大きな追い風となった。2021年3月期に実施が見送られた階層別研修やミドルマネジメントの早期取り込み、アフターコロナを見据えた顧客側の様々な戦略投資ニーズに対し、テーラーメード型の企画・実行支援の構築が可能な同社の強みが合致し、売上高及び各段階利益は前期を大幅に上回る着地となった。加えて、案件のオンライン化により新たな成長機会が生まれている。若手を対象とした新たなカフェテリア研修(選択型の必須研修)の増加、役職者手前までの中堅層(階層別研修の狭間層)を対象とした研修の増加、この領域における新規事業である越境型リーダーシップ研修であるTEXの増加などが業績伸長に大きく寄与した。販管費については、2023年3月期以降の成長を見据えて人材採用体制と営業DXを強化した。営業DXの強化では、CRM、ナレッジシェア等を見直すことで、全体の最適化と一層の効率化を実施した。

各サービスの2022年3月期末における累計業績については以下のとおりである。なお、業績について同社では担当企業ごとに経営塾・経営メンタリング、ミドルマネジメント革新、組織人材開発コンサルティングを「セルム」、ファーストキャリア開発を「ファーストキャリア」で分類している。

2. 人材開発・組織開発事業
「セルム」では、経営塾及びミドル革新を目的としたコンサルティング案件の増加があり、売上高は前期比44.6%増の5,471百万円となった。コロナ禍が拡大するなかで、集合研修のオンライン比率は高水準で推移した。KPIである「上位150社の1社当たり平均年間売上高」「経営塾の実施社数」もともに好調に推移。準大手市場では、コーポレートガバナンス・コードの改訂を起点とした経営人材育成やHRトランスフォーメーションの支援が拡大し、売上高・取引企業数ともに拡大傾向にある。

同社を取り巻く事業環境としては、独立社外取締役比率の増加傾向に伴う人材投資需要が追い風となっている。独立社外取締役比率増加の背景には、大企業の市場に対する説明責任として、「次世代の経営人材育成」「継続的に付加価値を創出する組織の構築」がより一層求められていることがある。コーポレートガバナンス上の説明責任の中核は、透明性の高い経営人材の育成計画を整備することであり、独立社外取締役は取締役会でのモニタリングの担い手として重要な役割を果たす。このような背景から、次世代経営幹部育成に関するアカウンタビリティーとして、経営人材育成の投資予算を拡大させる傾向が強まっている。コーポレートガバナンス・コードでの上場企業の意識変化が、人材投資を積極化する企業と同社との結び付きを強固にしていくものと弊社でも見ている。

3. ファーストキャリア事業
「ファーストキャリア」は、新たな公募・選択型研修ニーズの取り込み、SDGsや越境型リーダーシップの開発を目的とした、企業・学生・地域のそれぞれのリーダーたちがチームを組んで難易度の高い地域の課題解決に取り組む新プログラムである、TEXの実績拡大により売上高は過去最高値を更新し、前期比25.7%増の948百万円となった。

4. 財務状況とキャッシュ・フロー
2022年3月期末の資産合計は、前期末比2,060百万円増加の6,004百万円となった。流動資産は2,145百万円増加し3,616百万円となった。主な要因は、現金及び現金同等物が2,005百万円、売掛金が133百万円増加したことによる。固定資産は85百万円減少し、2,388百万円となった。主な要因は、繰延税金資産が66百万円増加した一方で、のれんが188百万円減少したことによる。現金及び現金同等物や売掛金の増加は、売上高の増加に伴うものである。同社は、所要運転資金が比較的少ないビジネスモデルであるのに加えて、MBOによるのれん償却により売上高に比例して手元資金が潤沢となる傾向にある。負債合計は同91百万円減少の2,069百万円となった。流動負債は142百万円増加し1,706百万円となった。主な要因は、未払金が185百万円、未払法人税が214百万円、その他の流動負債が162百万円増加した一方で、短期借入金が490百万円減少したことによる。固定負債は233百万円減少し362百万円となった。主な要因は、長期借入金の流動負債への振替により242百万円減少したことによる。長期借入金はMBOの実行時に調達したものが主である。純資産合計は同2,151百万円増加の3,935百万円となった。主な要因は、東証スタンダード市場への上場に伴う公募増資により1,395百万円、第三者割当増資により324百万円の資金調達を行い、資本金及び資本剰余金が増加したこと、親会社株主に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が373百万円増加したことによる。

2022年3月期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比2,005百万円増の2,933百万円となった。営業活動によるキャッシュ・フローが1,106百万円の収入となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、20百万円の支出であった。財務活動によるキャッシュ・フローは、908百万円の支出であった。これは主に、株式の発行による収入が1,710百万円あった一方、短期借入金及び長期借入金の返済による支出(ネット)が838百万円あったことによる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)




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