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テリロジー Research Memo(6):企業理念に裏打ちされたビジネスモデルを構築(1)

注目トピックス 日本株
■特色と強み

1. 「顧客重視」の企業理念を実践するために必要な事業バリューチェーンを構築
テリロジー<3356>のビジネスモデルには「常にお客様のニーズに対応し、お客様の満足を実現する」という企業理念を事業として実践するための工夫が読み取れる。すなわち、「常にお客様のニーズに対応」するためのプロセス(技術・製品の調査/発掘等)と「お客様の満足を実現」するためのプロセス(複数製品を組み合わせたソリューションの提案や保守体制の整備等)を核に据えた事業バリューチェーンの構築であり、バリューチェーンの各プロセスでパートナリング戦略を活用していることである。

企業理念に裏打ちされたビジネスモデル/バリューチェーンを構築するためには、まずは企業理念をベースに自社のミッション(使命)とビジョン(将来像)を定め、次にそれらを実現するためのアクションプラン(手段・計画)に落とし込む必要がある。同社(単体)では、自社のミッションを「デジタル社会において、独自の価値あるセキュリティテクノロジーを提供し、あらゆるビジネスシーンでの安心・安全を実現」、ビジョンを「お客様の課題を価値ある技術の組み合わせにより、独自の最適解決を提案・実現するテクノロジーソリューションオーガナイザーになる」と定め、事業バリューチェーンのプロセスにフィットする形のアクションプランに落とし込んでいる。

具体的なアクションプランは、「シリコンバレーやイスラエルの先進・先端技術動向に関する継続的な調査・発掘活動」「発掘した技術と日本市場及び顧客が抱える課題との適合性の継続的な調査・照会・検証活動」「市場導入のための複数技術の組み合わせや適合化開発アレンジによるソリューションへの発展、デリバリー・サポート体制の構築、価値ある提案営業教育、新市場の創造活動」となっており、まさに「常にお客様のニーズに対応し、お客様の満足を実現する」という企業理念に沿った内容と言える。

2. 「目利き力と市場対応力」がすべての強みのベース
同社は、自社の強みとして、1)目利き力と市場対応力〜先進・先端技術を発掘する目利き力とそれを市場化し顧客に提供するカルチャライズ力、2)ソリューションラインナップ〜ネットワーク基盤からエンドポイントまであらゆる利用シーンをカバーする多様なセキュリティ&セーフティ・ソリューションラインナップ、3)サービス提供の多様性〜先進技術製品取り扱い、保守、自社開発ソフトウェア商材、サービス化までプロダクトミックス対応による柔軟な商品提供形態、4)実績に裏打ちされた技術力〜創業来(30年超)長年にわたる顧客本位をベースにした安定した実績ある技術力、5)グローバル対応力〜成長著しいアジア新興市場にも展開するグローバル市場対応力を列挙している。いずれも、実績に裏打ちされたものだろうが、とりわけ「目利き力と市場対応力」がすべての強みのベースとなるコアコンピタンスだと見て良いだろう。

3. 「顧客ニーズ」を満たすために磨かれてきた「目利き力」
同社の「目利き力」とは、「時代の流れを的確に捉え、事業領域を絞り込んだうえで、海外新興企業の最新技術を発掘し、代理店契約等に結び付ける力」であり、海外新興企業の最新技術を発掘してきた実績には事欠かない。ここでは、ブロードバンド領域における米国Wellfleetと米国Infoblox、セキュリティ分野における米国TippingPoint(2010年に米国ヒューレット・パッカードが買収、2015年にはトレンドマイクロ<4704>が買収)、ベルギーOneSpan、米国Lastline(2020年に米国VMwareが買収)の事例を紹介する。

同社の企業向けIPネットワーク事業は、1990年に米国Wellfleetと代理店契約を締結し、IPネットワーク構築における主力製品の1つであるルータ(2つ以上の異なるネットワーク間を中継する通信機器)の提供を開始したことに始まる。Wellfleetは今でこそ存在しないものの、1984年創業で世界最大のコンピュータネットワーク機器会社である米国Cisco Systemsに対抗するため、業界2番手のNortel(カナダ)が1998年に買収に踏み切った企業であり、1990年時点でWellfleetを見出したことは同社の「目利き力」を示す好例と言えるだろう。なお、同社は現在、Cisco製ルータを取り扱うことで供給者責任を果たしている。

ブロードバンド領域では、1999年にADSL接続ソフトウェアの提供を開始、その後1,000万超のユーザーに展開するヒット製品に育ち、大手通信会社向けビジネスの橋頭堡となった。また、1999年には米国Redback Networksとの代理店契約も締結、ブロードバンドアクセスサーバー等の導入を通じ、電力各社のFTTH網構築にも貢献した。また、モバイル関連としては、米国Infoblox製のDNS/DHCPアプライアンス(必要に応じてIPアドレスを発行する機器)やネットワークをモニタリングする自社開発ソリューションがスマートフォン普及に伴って主要プロダクトに成長している。なお、1999年創業のInfobloxと同社は2003年に日本初の代理店契約を締結したわけだが、現在においてInfoblox製のDNS/DHCPアプライアンスは国内で多くのIT企業が取り扱うデファクトスタンダード(事実上の標準)の地位を占めており、これもまた、同社が持つ「先見の明」を示す一例として評価できるだろう。

セキュリティ分野への取り組みは、2004年の当時独立系であった米国TippingPointとの日本国内総販売代理店契約締結を皮切りに、2007年にはOneSpan(旧Vasco Data Security、ベルギー)、2012年に米国Lastline、2015年に米国RedSeal、2016年に米国Tempered NetworksとイスラエルKELA、2018年に米国Nozomi Networksと販売代理店契約(Tempered Networksとは国内独占販売契約)を締結し、幅広いソリューションの提供を実現している。

TippingPointは2015年にトレンドマイクロが約3億ドルを投じて買収したIPS(不正侵入防止システム)を得意とするサイバーセキュリティ企業だが、同社は買収の11年前(2004年)にTippingPointと日本国内総販売代理店契約を結び、実績を積み上げてきたことから、トレンドマイクロからも頼りにされる存在であり続けている。また、同社が2007年に日本で初めて取り扱ったOneSpanのワンタイムパスワード技術は、今では日本のメガバンクにそろって採用され、インターネットバンキングに不可欠な存在となっている。さらに、同社は2012年に米国Lastlineの標的型攻撃対策クラウドサービスの販売を開始したわけだが、警察庁が把握している標的型メール攻撃の件数推移(2014年:1,723件→2015年:3,828件→2016年:4,046件→2017年:6,027件→2018年:6,740件→2019年:5,301件→2020年:4,119件、その後公表なし)から明らかなとおり、マルウェア等による標的型攻撃が大きな脅威として認識されたのは近年のことである。なお、標的型メール攻撃の件数は2018年以降ピークアウトしているものの、同庁に公表しているサイバー犯罪の検挙件数は2018年:9,040件→2019年:9,519件→2020年:9,875件→2021年:12,209件と増加傾向に拍車が掛かり、企業に対するサイバー攻撃の脅威はむしろ増大している。

こうした事例は、同社が事業領域を的確に絞り込むことで注目すべき技術トレンド・最先端技術を明確に捉え、「先見の明」を持って「目利き力」を発揮してきたことを端的に示すものだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)




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