サンワテクノス Research Memo(5):前中期経営計画「NEXT1800」の業績目標は利益ベースで達成
[22/06/30]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■サンワテクノス<8137>の長期ビジョンと中期経営計画
2. 前中期経営計画の振り返り
(1) 前中期経営計画の振り返り
2020年3月期から2022年3月期までの3ヶ年中期経営計画「NEXT1800」について振り返ると、1年目は米中貿易摩擦の影響による投資の一時的な冷え込み、2年目はコロナ禍による世界的な景気悪化が影響して業績目標値を下回るペースが続いた。3年目に中国市場を中心として市場環境が好転したことにより一気に挽回し、営業利益は当初目標の4,800百万円を達成、経常利益率も2.8%の目標に対して3.0%と上振れて着地した。売上高については目標の180,000百万円に対して旧会計基準ベースで171,457百万円と未達となったが、これは2年目までの下振れ要因に加えて、2022年3月期は半導体の供給不足の影響が出たことによる。売上高の未達に対して利益面で目標を達成できたのは、ICT活用による業務効率の改善や、コロナ禍において出張自粛及び各種経費の抑制等に取り組んだことで、販管費を想定以上に削減できたことが要因である。
また、前中期経営計画で掲げた重点施策とその成果については以下のとおりである。概ね順調な成果を得られたものと評価される。
a) 「コアビジネスの強化でお客様のものづくりに貢献する」
コアビジネスの強化として、エンジニアリング事業の拡大と売上総利益率の向上、グローバルSCMソリューション事業の拡大に取り組んできた。
このうち、エンジニアリング事業については売上総利益率が2019年3月期の12.2%から2022年3月期は14.0%まで上昇したものの、当初目標としていた25〜30%の水準には届かなかった。エンジニアリング事業とは、従来、単品で販売していたものを同社が各商材を組み合わせてシステム化し、顧客最適を行ったうえで販売する事業となる。エンジニアリングという付加価値を付けることで収益性を高めると同時に、1件当たりの受注規模を大型化していくことを狙いとしていた。当初は同社がある程度システム化したものを顧客に提案営業することで利益率を高めていく戦略であったが、実際には顧客の要求に合わせてシステム化する案件が多く、結果的に利益率の大幅な向上には至らなかった。商談の場となる東京テクニカルセンターを2020年に開設したが、コロナ禍が続くなかで営業活動が思うように進まなかったことも一因である。同事業の売上規模も2019年3月期は約124億円であったが、より採算重視の方針に切り替えたことから2022年3月期は100億円未満の水準にとどまったものと見られる。
一方、グローバルSCMソリューション事業の売上高については、2019年3月期の約100億円から2022年3月期は約134億円に拡大した。同事業は、顧客企業が今まで独自で各サプライヤーから電子部品や設備機器等を調達してきた機能を一括して同社で引き受けるアウトソーシングサービスとなる。顧客企業は同社に調達機能を集約することで、調達コストの低減やリードタイムの短縮、担当部署のコスト削減といったメリットを享受できる。2021年3月期までは外部環境の悪化もあり低迷していたが、2022年3月期に入って半導体不足等によるサプライチェーンリスクの高まりもあり、アウトソーシングサービスのニーズが一段と高まったこともあり、売上高も大きく伸長した。また、同事業部の発足と同時にグローバル物流インフラの見直しと改善に取り組み、その一環としてWMS(倉庫管理システム)の本格運用を開始した。WMSの運用によって案件ごとの物流コストの可視化を実現しており、物流効率の改善による収益性の維持向上につなげている。グローバルSCMソリューション事業については、コロナ禍で顧客の生産拠点分散化が進む可能性があり、既存顧客との取引規模拡大だけでなく、新規顧客獲得につながる取り組みとして期待される。
b) 「グローバル事業を拡大し、市場の需要をサポートする」
前中期経営計画ではグローバル事業の拡大を図るため、海外拠点の増設に取り組んできた。2019年8月にベトナム・ホーチミン市に同国内で2拠点目となる営業所を開設したほか、2021年1月にマレーシアのペナン、同年5月に中国の厦門にそれぞれ現地スタッフによる営業所を開設し、販売体制の強化を図ってきた。
また、現在13ヶ国28拠点に展開している海外現地法人では日系企業が顧客の大半を占めていることから、日本人がマネジメントに携わってきたが、事業規模をさらに拡大していくためには現地スタッフのマネジメント登用による組織力の一段の強化が重要との考えから、2020年に「グローバルネクストリーダー研修制度」を開始し、幹部候補生約10名の研修を定期的に実施してきた。2022年3月に第1期生の研修を終えており、今後も継続して人材育成に取り組む方針となっている。マネジメント人材のグローバル化が進めば、現在売上構成比で10%程度(中国市場では約35%)にとどまっている外資系企業の顧客開拓も進み、海外売上高も一段と拡大するものと予想される。
一方、国内でも2019年から新たな営業拠点として地方都市にスマート営業所の開設を進めてきた。スマート営業所とは、営業スタッフ(2名程度)だけで構成する小規模な営業所のことを指す。地方の中小都市に点在している優良顧客との関係をより強固なものとし取引深耕を図るほか、新規顧客の開拓にもつなげていくことを目的としている。事務スタッフなどは置かず、内勤業務は遠隔地にある支店でサポートするため、営業所に係る経費や内勤スタッフの人件費を抑えることが可能となる。コロナ禍でWeb商談を行うケースが増えているが、FA・産業機器などのBtoB市場では顧客要望も多種多様であり、直接面談して話を聞くことで信頼関係を構築し、新たな商談につなげていく場合が多い。実際、2019年に開設した四国営業所(愛媛県新居浜市)や2021年3月期に開設した長岡営業所(新潟県)、甲府営業所(山梨県)では顧客との商談件数が増加している。直近では2021年10月に金沢営業所(石川県)、同年12月に北九州営業所(福岡県)を開設しており、今後は盛岡営業所(岩手県)の開設も検討している。また、海外でもインドや中国の武漢や青島に営業所を開設することを検討している。
c) 「新事業領域へ挑戦し持続的成長を加速する」
新事業領域として、健康関連事業の拡大に取り組んできた。具体的には、AED(自動体外式除細動器)の導入・拡販や、コロナ禍における感染症対策として空間除菌消臭装置等の販売を行ってきた。そのほか、脱炭素ビジネスとしてLED照明機器の販売にも取り組んだ。いずれも業績面での影響は軽微だが、社会貢献につながるビジネスとして今後も継続する方針だ。
d) 「持続可能な社会の実現への取り組み」
SDGsの取り組みとしては、重要課題を設定し、推進活動のためのSDGs推進委員会やSDGsアンバサダーを設置し、個々の社員に対してもSDGsに関する目標を持たせて意識付けを行うようにした。事業面では、脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして太陽光パネル等の再生可能エネルギーや電気自動車関連など、クリーンエネルギーをテーマとしたビジネスやCO2排出量削減に貢献する省エネルギー関連ビジネスをテーマに掲げて、営業活動を強化した。また、ICT活用による働き方改革についても取り組んできた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>
2. 前中期経営計画の振り返り
(1) 前中期経営計画の振り返り
2020年3月期から2022年3月期までの3ヶ年中期経営計画「NEXT1800」について振り返ると、1年目は米中貿易摩擦の影響による投資の一時的な冷え込み、2年目はコロナ禍による世界的な景気悪化が影響して業績目標値を下回るペースが続いた。3年目に中国市場を中心として市場環境が好転したことにより一気に挽回し、営業利益は当初目標の4,800百万円を達成、経常利益率も2.8%の目標に対して3.0%と上振れて着地した。売上高については目標の180,000百万円に対して旧会計基準ベースで171,457百万円と未達となったが、これは2年目までの下振れ要因に加えて、2022年3月期は半導体の供給不足の影響が出たことによる。売上高の未達に対して利益面で目標を達成できたのは、ICT活用による業務効率の改善や、コロナ禍において出張自粛及び各種経費の抑制等に取り組んだことで、販管費を想定以上に削減できたことが要因である。
また、前中期経営計画で掲げた重点施策とその成果については以下のとおりである。概ね順調な成果を得られたものと評価される。
a) 「コアビジネスの強化でお客様のものづくりに貢献する」
コアビジネスの強化として、エンジニアリング事業の拡大と売上総利益率の向上、グローバルSCMソリューション事業の拡大に取り組んできた。
このうち、エンジニアリング事業については売上総利益率が2019年3月期の12.2%から2022年3月期は14.0%まで上昇したものの、当初目標としていた25〜30%の水準には届かなかった。エンジニアリング事業とは、従来、単品で販売していたものを同社が各商材を組み合わせてシステム化し、顧客最適を行ったうえで販売する事業となる。エンジニアリングという付加価値を付けることで収益性を高めると同時に、1件当たりの受注規模を大型化していくことを狙いとしていた。当初は同社がある程度システム化したものを顧客に提案営業することで利益率を高めていく戦略であったが、実際には顧客の要求に合わせてシステム化する案件が多く、結果的に利益率の大幅な向上には至らなかった。商談の場となる東京テクニカルセンターを2020年に開設したが、コロナ禍が続くなかで営業活動が思うように進まなかったことも一因である。同事業の売上規模も2019年3月期は約124億円であったが、より採算重視の方針に切り替えたことから2022年3月期は100億円未満の水準にとどまったものと見られる。
一方、グローバルSCMソリューション事業の売上高については、2019年3月期の約100億円から2022年3月期は約134億円に拡大した。同事業は、顧客企業が今まで独自で各サプライヤーから電子部品や設備機器等を調達してきた機能を一括して同社で引き受けるアウトソーシングサービスとなる。顧客企業は同社に調達機能を集約することで、調達コストの低減やリードタイムの短縮、担当部署のコスト削減といったメリットを享受できる。2021年3月期までは外部環境の悪化もあり低迷していたが、2022年3月期に入って半導体不足等によるサプライチェーンリスクの高まりもあり、アウトソーシングサービスのニーズが一段と高まったこともあり、売上高も大きく伸長した。また、同事業部の発足と同時にグローバル物流インフラの見直しと改善に取り組み、その一環としてWMS(倉庫管理システム)の本格運用を開始した。WMSの運用によって案件ごとの物流コストの可視化を実現しており、物流効率の改善による収益性の維持向上につなげている。グローバルSCMソリューション事業については、コロナ禍で顧客の生産拠点分散化が進む可能性があり、既存顧客との取引規模拡大だけでなく、新規顧客獲得につながる取り組みとして期待される。
b) 「グローバル事業を拡大し、市場の需要をサポートする」
前中期経営計画ではグローバル事業の拡大を図るため、海外拠点の増設に取り組んできた。2019年8月にベトナム・ホーチミン市に同国内で2拠点目となる営業所を開設したほか、2021年1月にマレーシアのペナン、同年5月に中国の厦門にそれぞれ現地スタッフによる営業所を開設し、販売体制の強化を図ってきた。
また、現在13ヶ国28拠点に展開している海外現地法人では日系企業が顧客の大半を占めていることから、日本人がマネジメントに携わってきたが、事業規模をさらに拡大していくためには現地スタッフのマネジメント登用による組織力の一段の強化が重要との考えから、2020年に「グローバルネクストリーダー研修制度」を開始し、幹部候補生約10名の研修を定期的に実施してきた。2022年3月に第1期生の研修を終えており、今後も継続して人材育成に取り組む方針となっている。マネジメント人材のグローバル化が進めば、現在売上構成比で10%程度(中国市場では約35%)にとどまっている外資系企業の顧客開拓も進み、海外売上高も一段と拡大するものと予想される。
一方、国内でも2019年から新たな営業拠点として地方都市にスマート営業所の開設を進めてきた。スマート営業所とは、営業スタッフ(2名程度)だけで構成する小規模な営業所のことを指す。地方の中小都市に点在している優良顧客との関係をより強固なものとし取引深耕を図るほか、新規顧客の開拓にもつなげていくことを目的としている。事務スタッフなどは置かず、内勤業務は遠隔地にある支店でサポートするため、営業所に係る経費や内勤スタッフの人件費を抑えることが可能となる。コロナ禍でWeb商談を行うケースが増えているが、FA・産業機器などのBtoB市場では顧客要望も多種多様であり、直接面談して話を聞くことで信頼関係を構築し、新たな商談につなげていく場合が多い。実際、2019年に開設した四国営業所(愛媛県新居浜市)や2021年3月期に開設した長岡営業所(新潟県)、甲府営業所(山梨県)では顧客との商談件数が増加している。直近では2021年10月に金沢営業所(石川県)、同年12月に北九州営業所(福岡県)を開設しており、今後は盛岡営業所(岩手県)の開設も検討している。また、海外でもインドや中国の武漢や青島に営業所を開設することを検討している。
c) 「新事業領域へ挑戦し持続的成長を加速する」
新事業領域として、健康関連事業の拡大に取り組んできた。具体的には、AED(自動体外式除細動器)の導入・拡販や、コロナ禍における感染症対策として空間除菌消臭装置等の販売を行ってきた。そのほか、脱炭素ビジネスとしてLED照明機器の販売にも取り組んだ。いずれも業績面での影響は軽微だが、社会貢献につながるビジネスとして今後も継続する方針だ。
d) 「持続可能な社会の実現への取り組み」
SDGsの取り組みとしては、重要課題を設定し、推進活動のためのSDGs推進委員会やSDGsアンバサダーを設置し、個々の社員に対してもSDGsに関する目標を持たせて意識付けを行うようにした。事業面では、脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして太陽光パネル等の再生可能エネルギーや電気自動車関連など、クリーンエネルギーをテーマとしたビジネスやCO2排出量削減に貢献する省エネルギー関連ビジネスをテーマに掲げて、営業活動を強化した。また、ICT活用による働き方改革についても取り組んできた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>