NECキャピ Research Memo(7):社会課題の解決は、これまでに蓄積してきたノウハウが大きな力を発揮する
[22/07/01]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2023年3月期業績予想
NECキャピタルソリューション<8793>の2023年3月期業績予想については、リース事業の持続的な成長と新事業の収益化を図るものの、インベストメント事業における収益計上が一部2022年3月期に前倒しとなったことにより、売上高250,000百万円(前期比0.0%増)、営業利益11,000百万円(同5.3%増)、経常利益11,000百万円(同3.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益6,500百万円(同6.3%減)を見込んでいる。コロナ禍は、ビジネスや日常生活の在り方に大きな影響を与え、且つ、今後もその影響は継続していくものと想定されているなか、同社の事業活動においては、新たな社会価値を創出する機会とすることも可能と考えている。非接触、非対面、三密回避など、ウィズコロナ、アフターコロナにおける社会課題の解決には、NECグループの金融サービス会社として同社がこれまでに蓄積してきたノウハウが、大きな力を発揮できるものと考えている。
リース事業においてGIGAスクール構想による特需は一巡したものの、経済活動が正常化に向かうなかにおいてもテレワーク需要は引き続き伸びが見込まれると弊社では考えている。また、非接触技術で強みを持つNECとの連携により、ニューノーマルでの社会ニーズを取り込むことが見込まれる。さらに2021年9月1日に創設されたデジタル庁については、デジタル庁発足時から事務方トップのデジタル監を務めていた石倉洋子氏が22年4月に退任するなど、主だった成果よりは様々な問題点が指摘されるなど混乱している状況が窺える。もっとも、日本の成長戦略の柱となる省庁としての位置付けとして体制強化が期待されるほか、政府と民間が共同してデジタルトランスフォーメーション(DX)についても本格的に動き出すと見られ、官公庁向けに強みを持つ同社の活躍の場も出てくることになると弊社では考えている。
2. 中期計画
同社はグループビジョンとして、「お客様と共に、社会価値向上を目指して、グローバルに挑戦するサービス・カンパニー」を掲げている。このグループビジョンは、目の前の変化に対応するだけではなく、中長期的に目指す揺るぎない方向性を定め、全社員が心を一つにして経営を進めていくことが重要であると考え、2013年10月に策定されたものである。10年後の「ありたい姿」を明確に描き、その達成に向け3段階に分けたロードマップを作成した。中期計画を3回積み重ねることで、事業活動そのものが社会価値を創造すると同時に、企業として求めるべき経済価値を創出し、社会と企業双方に共通の価値を生み出すCSV経営を目指すものである。同社は、このCSV経営実現に向けた事業を推進しており、グループビジョンは10年間で3つの中期計画を積み重ねることで実現する。2023年3月期の会社計画は中期計画2020の計画には届かないように見えるが、これは当初2023年3月期に収益計上を計画していたファンドのEXIT等が2022年3月期に前倒し計上されたためであり、3ヶ年の利益水準は、中期計画2020における累計当期純利益計画値の累計(17,000百万円)を上回る17,500百万円となる。
「中期計画2014」では「コア領域の基盤再構築」と「仕掛けを構築」、「中期計画2017」では「コア領域の完成」と「新事業立ち上げ」、そして「中期計画2020」では、2つの中期計画で積み重ねてきた取り組みをさらに進化させ、「コア領域の拡充」と「新事業の収益化」を戦略として掲げている。2020年3月期で第2段階である「中期計画2017」が終了し、「中期計画2020」はグループビジョンを実現していくという壮大な流れの中の最終段階と言える。
「中期計画2020」では、ウィズコロナ、アフターコロナ時代における新たな社会課題の解決をビジネスチャンスとして確実に捉え、金融とICTで社会の変革を先導する企業を目指す。収益性を重視しながら各種取り組みの推進により、2023年3月期には、営業利益11,000百万円、経常利益11,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,500百万円を目指す。
3. 中期計画2020進捗状況
「コア領域の拡充」においては、ベンダーとの新たなサービスの確立として、サービス化で先行することが見込まれる米国のNECFS社を買収、北米における新たな事業機会を獲得した。北米拠点を確保することで今後の事業成長に向けた取り組みが期待される。NECグループの連携強化によるGIGAスクール、消防案件の取り組みが大幅に伸長。GIGAスクール案件はピークアウトするも、消防分野においては新規取引の横展開が見込まれる。その他、外資系ICTベンダーと新規取り組み開始による取引を拡充・拡大し、医療向けやICT機器におけるサービスモデル確立に向けた取り組みが進展。さらに、官公庁や自治体向けのサービス案件の取り組みが具体的に進展しているほか、デジタルアセット分野におけるプラットフォーム企業への出資参画。インベストメント事業における高収益の実現として、リサ事業において、IPOを含む大型EXITを複数行ったほか、ベンチャーファンドにおいて、複数のIPOによるEXITを実現し、新たなファンドを組成している。なお、2012年から取り組んできた先のベンチャーファンドは、投資回収フェーズを迎え新たなファンドを設立している。
「新事業の収益化」の領域では、ヘルスケア分野で、REITへの物件売却を実行するなど、ウエアハウジング事業が着実に進展しており、収益に貢献している。エネルギー分野では収益化に向けPPAサービスの取り組みを拡大しており、NECプラットフォームズと契約を締結。2022年4月より再生可能エネルギー本部を設置した。「事業戦略を支える経営基盤の強化」としては、全従業員へのテレワーク環境の整備、働き方の見直しを実施。ウィズコロナにおける業務環境のさらなる整備を進めている。また、(株)日本政策投資銀行のDBJ環境格付融資で18年連続最高ランクを獲得。これはDBJが独自に開発したスクリーニングシステムにより企業の非財務情報を評価して優れた企業を選定し融資するものである。また(株)三井住友銀行ESG/SDGs(ポジティブ・インパクト金融原則適合型)評価融資AAAを獲得。これは国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)により策定されたポジティブ・インパクト金融原則に適合した融資商品である。観光について、(一財)民間都市開発推進機構や地域金融機関等と連携して「アセットリノベーションファンド」を組成。奈良県御所市において銭湯事業及び古民家(複数棟)を活用した宿泊事業・飲食事業である「GOSE SENTO HOTELプロジェクト」を運営する(株)御所まちづくりに対する投資をはじめ、複数の投資を実行している。
「事業戦略を支える経営基盤の強化」においては、総合マネジメントコンサルティングファームであるアビームコンサルティング(株)が、2022年2月にリース業界全体のビジネス変革を支援する共同利用型ビジネスプラットフォーム「ABeam Cloud Asset & Finance Platform」を発表。本取り組みの最初の導入予定先である同社と協同で開発に着手。2022年4月には経済産業省が定めるDX認定制度における「DX認定事業者」に認定された。DXを推進し、社会課題の解決を図りながら着実な成長を推進させている。また、調達資金全てがグリーンプロジェクトやソーシャルプロジェクトの初期投資またはリファイナンスのみに充当される「サステナビリティボンド」を発行しており、資金調達手段の多様化を進めるとともに、社会・ICTインフラ整備、地域社会・経済の活性化、地球温暖化の防止、高齢化社会への対応等、社会課題の解決に貢献する。また、同社のCSV経営の実現に向けた取り組みの1つに、従業員満足度の向上があり、従業員がイキイキとやりがいを持って働くことのできる環境づくりを推進している。女性活躍推進法に基づく認定制度で、行動計画の策定及び届出、申請をした企業のうち、取り組み状況等が優良な企業を厚生労働大臣が認定する「えるぼし」認定について、2017年に2段階目の認定を取得し、2021年10月には5つの基準(「採用」「継続就業」「労働時間」「管理職比率」「多様なキャリアコース」)を満たし、上位認定の3段階目を取得している。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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1. 2023年3月期業績予想
NECキャピタルソリューション<8793>の2023年3月期業績予想については、リース事業の持続的な成長と新事業の収益化を図るものの、インベストメント事業における収益計上が一部2022年3月期に前倒しとなったことにより、売上高250,000百万円(前期比0.0%増)、営業利益11,000百万円(同5.3%増)、経常利益11,000百万円(同3.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益6,500百万円(同6.3%減)を見込んでいる。コロナ禍は、ビジネスや日常生活の在り方に大きな影響を与え、且つ、今後もその影響は継続していくものと想定されているなか、同社の事業活動においては、新たな社会価値を創出する機会とすることも可能と考えている。非接触、非対面、三密回避など、ウィズコロナ、アフターコロナにおける社会課題の解決には、NECグループの金融サービス会社として同社がこれまでに蓄積してきたノウハウが、大きな力を発揮できるものと考えている。
リース事業においてGIGAスクール構想による特需は一巡したものの、経済活動が正常化に向かうなかにおいてもテレワーク需要は引き続き伸びが見込まれると弊社では考えている。また、非接触技術で強みを持つNECとの連携により、ニューノーマルでの社会ニーズを取り込むことが見込まれる。さらに2021年9月1日に創設されたデジタル庁については、デジタル庁発足時から事務方トップのデジタル監を務めていた石倉洋子氏が22年4月に退任するなど、主だった成果よりは様々な問題点が指摘されるなど混乱している状況が窺える。もっとも、日本の成長戦略の柱となる省庁としての位置付けとして体制強化が期待されるほか、政府と民間が共同してデジタルトランスフォーメーション(DX)についても本格的に動き出すと見られ、官公庁向けに強みを持つ同社の活躍の場も出てくることになると弊社では考えている。
2. 中期計画
同社はグループビジョンとして、「お客様と共に、社会価値向上を目指して、グローバルに挑戦するサービス・カンパニー」を掲げている。このグループビジョンは、目の前の変化に対応するだけではなく、中長期的に目指す揺るぎない方向性を定め、全社員が心を一つにして経営を進めていくことが重要であると考え、2013年10月に策定されたものである。10年後の「ありたい姿」を明確に描き、その達成に向け3段階に分けたロードマップを作成した。中期計画を3回積み重ねることで、事業活動そのものが社会価値を創造すると同時に、企業として求めるべき経済価値を創出し、社会と企業双方に共通の価値を生み出すCSV経営を目指すものである。同社は、このCSV経営実現に向けた事業を推進しており、グループビジョンは10年間で3つの中期計画を積み重ねることで実現する。2023年3月期の会社計画は中期計画2020の計画には届かないように見えるが、これは当初2023年3月期に収益計上を計画していたファンドのEXIT等が2022年3月期に前倒し計上されたためであり、3ヶ年の利益水準は、中期計画2020における累計当期純利益計画値の累計(17,000百万円)を上回る17,500百万円となる。
「中期計画2014」では「コア領域の基盤再構築」と「仕掛けを構築」、「中期計画2017」では「コア領域の完成」と「新事業立ち上げ」、そして「中期計画2020」では、2つの中期計画で積み重ねてきた取り組みをさらに進化させ、「コア領域の拡充」と「新事業の収益化」を戦略として掲げている。2020年3月期で第2段階である「中期計画2017」が終了し、「中期計画2020」はグループビジョンを実現していくという壮大な流れの中の最終段階と言える。
「中期計画2020」では、ウィズコロナ、アフターコロナ時代における新たな社会課題の解決をビジネスチャンスとして確実に捉え、金融とICTで社会の変革を先導する企業を目指す。収益性を重視しながら各種取り組みの推進により、2023年3月期には、営業利益11,000百万円、経常利益11,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,500百万円を目指す。
3. 中期計画2020進捗状況
「コア領域の拡充」においては、ベンダーとの新たなサービスの確立として、サービス化で先行することが見込まれる米国のNECFS社を買収、北米における新たな事業機会を獲得した。北米拠点を確保することで今後の事業成長に向けた取り組みが期待される。NECグループの連携強化によるGIGAスクール、消防案件の取り組みが大幅に伸長。GIGAスクール案件はピークアウトするも、消防分野においては新規取引の横展開が見込まれる。その他、外資系ICTベンダーと新規取り組み開始による取引を拡充・拡大し、医療向けやICT機器におけるサービスモデル確立に向けた取り組みが進展。さらに、官公庁や自治体向けのサービス案件の取り組みが具体的に進展しているほか、デジタルアセット分野におけるプラットフォーム企業への出資参画。インベストメント事業における高収益の実現として、リサ事業において、IPOを含む大型EXITを複数行ったほか、ベンチャーファンドにおいて、複数のIPOによるEXITを実現し、新たなファンドを組成している。なお、2012年から取り組んできた先のベンチャーファンドは、投資回収フェーズを迎え新たなファンドを設立している。
「新事業の収益化」の領域では、ヘルスケア分野で、REITへの物件売却を実行するなど、ウエアハウジング事業が着実に進展しており、収益に貢献している。エネルギー分野では収益化に向けPPAサービスの取り組みを拡大しており、NECプラットフォームズと契約を締結。2022年4月より再生可能エネルギー本部を設置した。「事業戦略を支える経営基盤の強化」としては、全従業員へのテレワーク環境の整備、働き方の見直しを実施。ウィズコロナにおける業務環境のさらなる整備を進めている。また、(株)日本政策投資銀行のDBJ環境格付融資で18年連続最高ランクを獲得。これはDBJが独自に開発したスクリーニングシステムにより企業の非財務情報を評価して優れた企業を選定し融資するものである。また(株)三井住友銀行ESG/SDGs(ポジティブ・インパクト金融原則適合型)評価融資AAAを獲得。これは国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)により策定されたポジティブ・インパクト金融原則に適合した融資商品である。観光について、(一財)民間都市開発推進機構や地域金融機関等と連携して「アセットリノベーションファンド」を組成。奈良県御所市において銭湯事業及び古民家(複数棟)を活用した宿泊事業・飲食事業である「GOSE SENTO HOTELプロジェクト」を運営する(株)御所まちづくりに対する投資をはじめ、複数の投資を実行している。
「事業戦略を支える経営基盤の強化」においては、総合マネジメントコンサルティングファームであるアビームコンサルティング(株)が、2022年2月にリース業界全体のビジネス変革を支援する共同利用型ビジネスプラットフォーム「ABeam Cloud Asset & Finance Platform」を発表。本取り組みの最初の導入予定先である同社と協同で開発に着手。2022年4月には経済産業省が定めるDX認定制度における「DX認定事業者」に認定された。DXを推進し、社会課題の解決を図りながら着実な成長を推進させている。また、調達資金全てがグリーンプロジェクトやソーシャルプロジェクトの初期投資またはリファイナンスのみに充当される「サステナビリティボンド」を発行しており、資金調達手段の多様化を進めるとともに、社会・ICTインフラ整備、地域社会・経済の活性化、地球温暖化の防止、高齢化社会への対応等、社会課題の解決に貢献する。また、同社のCSV経営の実現に向けた取り組みの1つに、従業員満足度の向上があり、従業員がイキイキとやりがいを持って働くことのできる環境づくりを推進している。女性活躍推進法に基づく認定制度で、行動計画の策定及び届出、申請をした企業のうち、取り組み状況等が優良な企業を厚生労働大臣が認定する「えるぼし」認定について、2017年に2段階目の認定を取得し、2021年10月には5つの基準(「採用」「継続就業」「労働時間」「管理職比率」「多様なキャリアコース」)を満たし、上位認定の3段階目を取得している。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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