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クオールHD Research Memo(5):調剤薬局は処方箋応需枚数の回復と技術料の上昇で薬剤料単価の低下をカバー

注目トピックス 日本株
■クオールホールディングス<3034>の業績の動向

2. 保険薬局事業の動向
(1) 調剤売上高の状況
保険薬局事業の売上高は、調剤薬局の調剤売上高と売店やEC等の商品売上高で構成されている。このうち、2022年3月期の調剤売上高は前期比4.0%増の142,311百万円となった。出店期・タイプ別内訳を見ると、自力出店店舗のうち、既存店については前期比7.8%増、金額ベースで3,181百万円の増収となった。また、M&A等で取得した店舗については、既存店と新店を分けていないためわかりにくい面もあるが、前期比3.1%増、金額ベースで2,964百万円の増収となっている。

調剤売上高を処方箋応需枚数と処方箋単価に分解すると、処方箋応需枚数は前期比6.0%増の14,176千枚、処方箋単価は同1.9%減の10,039円となった。これらも出店期やM&A等の要因による影響を受けているため、以下ではそれぞれについてもう少し詳細に見る。

処方箋応需枚数の実態に近いと考えられる既存店の増減率は前期比9.5%増となった。2021年3月期にコロナ禍による受診控えや長期処方の影響で大きく落ち込んだ反動によるところが大きく、おおむね想定の範囲内だったと見られる。2022年3月期もコロナ禍が続いたが、病院や薬局での感染防止対策が進んだことで、受診控えなどの動きは限定的なものにとどまった。全店ベースの月次動向を見ても処方箋応需枚数についてはおおむね前年同月を上回った水準で推移した。

一方、既存店の処方箋単価は前期比1.6%の低下となった。薬剤料と調剤技術料に分けると、薬剤料は薬価引き下げや長期処方が減少傾向となった影響で数%低下したと見られる。一方、店舗の付加価値分に相当する調剤技術料に関してはGE医薬品の取扱いや在宅調剤の取り組みを推進したこと等により前期から上昇した。

GE医薬品の取扱い比率(数量ベース)については、グループ全体で2021年3月時点の85.9%から2022年3月時点では84.0%と若干低下したものの、厚生労働省が目指しているGE比率8割の水準は超過している。また、最高点数となる28点(取扱比率85%以上の店舗)を取得した店舗の構成比は、2021年3月の64.7%から、2022年3月は69.6%に上昇しており、技術料単価の上昇要因の1つとなっている。なお、数量ベースでの取扱比率が低下した要因としては、2021年夏以降、複数の後発医薬品メーカーに業務停止命令が下され、供給不足が続いていることが要因となっており、今なおその状況が続いている。業績面への直接的な影響は無かったものの、供給不足になった医薬品の代替品を調達する必要が生じるなど生産性の面で少なからず影響が出たものと考えられる。

そのほか、調剤基本料や地域支援体制加算についても、それぞれ最高点数の取得店舗比率が上昇しており、技術料単価の上昇に寄与した。特に地域支援体制加算については、地域のかかりつけ薬局としての機能を強化することで取得できるもので、同社においても在宅調剤の取り組みを推進したことで取得店舗数が増加している。在宅調剤売上に関しては2021年3月期実績の約30億円から約50億円と順調に増加した。

なお、2021年8月から新たに薬局の機能別認定制度が導入された。機能別認定制度とは、薬局を機能別に「地域連携薬局」※1及び「専門医療機関連携薬局」※2の2分類とし、それぞれ一定要件を満たした店舗を都道府県知事が認証する制度となる。店舗によっては「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の両方で認証取得することも可能で、逆にいずれの要件も満たさない場合は、認定外薬局となる。超高齢社会の到来に向けて課題となっている在宅医療への対応として、医療や介護を含めた「地域包括ケアシステム」構想を確立していくための施策で、患者自身が適した薬局を選択できるようにすることを狙いとしたものだ。

※1 入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局。
※2 がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局。


同社はもともとマンツーマン薬局を主力とし、地域のかかりつけ薬局としての取り組みを推進してきたことから、認定取得を順次進めており、2022年3月末時点では「地域連携薬局」で146店舗、「専門医療機関連携薬局」で9店舗が認定取得店舗となった。また、「地域連携薬局」と同様のコンセプトで2016年度よりスタートしている「健康サポート薬局」は前期末比5店舗増の159店舗となっている。

同制度の導入によって現状直接的な収益への影響はないが、新型コロナウイルス治療薬の取扱ができる店舗としてこれら認定店舗が指定されたこともあり、2年後の診療報酬改定では調剤技術料の算定にも影響する可能性があると弊社では見ている。このため同社では今後も認定取得を推進し、将来的にはすべての薬局で「地域連携薬局」あるいは「専門医療機関連携薬局」の認定を受ける計画となっている。

(2) 出退店とM&Aの状況
2022年3月期末の店舗数は834店舗となり、前期末比で23店舗の増加となった。2021年3月期が6店舗の純増だったので、直近2期間はやや増加ペースが緩やかだったと言える。これはコロナ禍の状況が続くなかで、M&A交渉が長引いたことに加えて、2022年度の診療報酬改定を控えて案件の精査を慎重に進めたことが要因となっている。

新規出店の内訳を見ると、15店舗がオーソドックスな自社出店(マンツーマン型)、15店舗がM&Aによる取得で、1店舗が病院内売店の出店となっている。また、自社出店のうち1店舗は良品計画<7453>の「無印良品 直江津店」にオープンした「まちの保健室」において協業パートナーとして参画した店舗となる。「まちの保健室」は地域の生活者の“健やかな暮らし”に貢献するために、定期的な健康をテーマとしたイベントの開催や、健康維持及び疾病予防などのための商品を販売する場となっており、医薬品や一般用医薬品を同社店舗で販売している。地域密着型の新たな店舗形態として注目される。

一方、退店は8店舗となり、うち2店舗はローソンとの連携店舗となっている。2021年3月期は28店舗の退店となっており、退店数については減少に転じている。

(3) 利益率改善要因
保険薬局事業の営業利益率は前期の6.5%から7.7%に上昇した。利益率の改善要因は、処方箋応需枚数の回復と調剤技術料単価の上昇による利益増効果と、生産性向上による効果となっている。同社はここ数年、店舗の生産性を高めるため各種自動化機器の導入を進めてきたことで店舗当たりの薬剤師数の最適化が進み、地方店舗では派遣薬剤師が不要となるなどで人件費率が低下した。例えば、従来は手作業で行っていた薬剤のピッキングや調合作業を自動化機器の導入によって省力化している。2021年3月期以降、薬剤師数(正社員)は微増ペースが続いている一方で、臨時雇用者数の減少が続いているが、この大半は派遣薬剤師の減少によるものと弊社では見ている。なお、薬剤師が1日に対応できる患者数の上限が40人と決められていることや、処方箋応需枚数が回復してきたこともあり、店舗当たり薬剤師数については現状からさらに引き下げることは難しいようで、今後は現状を維持していくことになりそうだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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