クオールHD Research Memo(9):CMR派遣は専門性の追求と取引者数の拡大に注力
[22/07/04]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■クオールホールディングス<3034>の中長期の成長戦略と進捗状況
3. 医療関連事業の成長戦略と進捗状況
医療関連事業の成長戦略として、「専門性の深化」と「グループシナジーの最大化」を掲げ、それぞれ売上規模の拡大とともに収益力を高めていく方針となっている。
(1) CSO事業
CSO事業におけるCMR市場の現状認識として、新薬の主軸が顧客ターゲット(医療施設や医師)の多いプライマリー薬(生活習慣病等)から、顧客ターゲットが限られるスペシャリティ薬(抗がん剤等)にシフトするなかで、製薬企業におけるMR人材の削減が進む一方で、専門性の高いMRやITリテラシーの高いMRについての需要は拡大しており、そうしたなかで専門性の高いCMRの需要については旺盛なことが挙げられる。
実際、「2021年度版MR白書」によれば国内のMR人員は2013年度の6.5万人をピークに2020年度は5.3万人まで減少しており、特に2017年以降は毎年2千人以上のペースで減少している。一方、CMRについては2016年度の4,054人をピークに2018年度に3,614人まで減少していたが、その後は増加に転じ2020年度には3,923人となっている。MRに占めるCMRの比率についても2017年度の5.9%から2020年度は7.3%まで上昇している。欧米では10%台の水準となっていることから、国内でもさらにCMR比率が10%台まで上昇する可能性は十分にある。
こうした状況を背景に、同社はCMR人員を2022年3月期末の約600名から、2024年3月期には1,000名まで拡大し、業界シェアを現在の約15%から20%超に引き上げていくことを目標としている。このため、専門性の追求と取引社数の更なる開拓に注力していく。同社のCSO事業の強みとして、MRを教育するためのスタッフが20名と業界トップクラスの陣容を誇り、基礎分野から高度な専門分野に至るまで幅広く充実した教育カリキュラムを構築している点が挙げられる。特に、最近はオンコロジー領域、炎症性腸疾患、中枢神経疾患領域のほか新型コロナウイルス感染症等のニーズが高く、こうした専門分野のCMRを育成していくことで事業規模の更なる拡大を図っていく戦略だ。また、CRO事業についても同社が強みを持つ食品分野での受注獲得や、専門性の高い分野の強化を推進していく方針となっている。
(2) 医療系人材紹介派遣事業
医療系人材紹介派遣事業については、薬剤師、保健師、登録販売者等の医療従事者の派遣サービスの拡大に加えて、薬局の事業承継コンサルティングや法人向けの健康経営に関するコンサルティングなどサービスラインナップの拡充を図っている。今後はM&A等も活用しながら事業領域を拡大し、成長を目指していく方針となっている。
(3) 医薬品製造販売事業
同社が医薬品製造販売事業に進出を決めた背景には、総合ヘルスケアカンパニー構想がある。国内トップクラスの調剤薬局チェーンである同社は、一方で、医薬品の営業担当者であるCMRの派遣(CSO事業)や、医薬品の研究開発をサポートするCRO事業等も行っている。医薬品製造販売事業に進出することで研究開発から製造、販売、調剤を経て患者に至る、ヘルスケア分野において切れ目のないサービスを提供することが可能となる。
グループシナジーとしては前述のとおり、グループの調剤薬局で藤永製品の取扱店舗数を拡げていく。また、新たなGE医薬品の開発を計画しており、工場への設備投資やM&A等も進めながら事業規模を拡大し、次のステップとして大手製薬企業からの受託製造等にも展開していく方針となっている。後発医薬品に関しては2021年に大手メーカーの製造工程における不正問題が明らかとなり、品質管理体制の強化が一段と求められるなか、同社においては製造工程の可視化と作業者への支援を行う生産実行システムの更新を進めていく予定にしている。品質管理体制を盤石にしたうえで、事業拡大を進めていく方針だ。中期目標としては新規事業の育成やM&A等も視野に入れながら、売上高で300億円を目指しており今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. 医療関連事業の成長戦略と進捗状況
医療関連事業の成長戦略として、「専門性の深化」と「グループシナジーの最大化」を掲げ、それぞれ売上規模の拡大とともに収益力を高めていく方針となっている。
(1) CSO事業
CSO事業におけるCMR市場の現状認識として、新薬の主軸が顧客ターゲット(医療施設や医師)の多いプライマリー薬(生活習慣病等)から、顧客ターゲットが限られるスペシャリティ薬(抗がん剤等)にシフトするなかで、製薬企業におけるMR人材の削減が進む一方で、専門性の高いMRやITリテラシーの高いMRについての需要は拡大しており、そうしたなかで専門性の高いCMRの需要については旺盛なことが挙げられる。
実際、「2021年度版MR白書」によれば国内のMR人員は2013年度の6.5万人をピークに2020年度は5.3万人まで減少しており、特に2017年以降は毎年2千人以上のペースで減少している。一方、CMRについては2016年度の4,054人をピークに2018年度に3,614人まで減少していたが、その後は増加に転じ2020年度には3,923人となっている。MRに占めるCMRの比率についても2017年度の5.9%から2020年度は7.3%まで上昇している。欧米では10%台の水準となっていることから、国内でもさらにCMR比率が10%台まで上昇する可能性は十分にある。
こうした状況を背景に、同社はCMR人員を2022年3月期末の約600名から、2024年3月期には1,000名まで拡大し、業界シェアを現在の約15%から20%超に引き上げていくことを目標としている。このため、専門性の追求と取引社数の更なる開拓に注力していく。同社のCSO事業の強みとして、MRを教育するためのスタッフが20名と業界トップクラスの陣容を誇り、基礎分野から高度な専門分野に至るまで幅広く充実した教育カリキュラムを構築している点が挙げられる。特に、最近はオンコロジー領域、炎症性腸疾患、中枢神経疾患領域のほか新型コロナウイルス感染症等のニーズが高く、こうした専門分野のCMRを育成していくことで事業規模の更なる拡大を図っていく戦略だ。また、CRO事業についても同社が強みを持つ食品分野での受注獲得や、専門性の高い分野の強化を推進していく方針となっている。
(2) 医療系人材紹介派遣事業
医療系人材紹介派遣事業については、薬剤師、保健師、登録販売者等の医療従事者の派遣サービスの拡大に加えて、薬局の事業承継コンサルティングや法人向けの健康経営に関するコンサルティングなどサービスラインナップの拡充を図っている。今後はM&A等も活用しながら事業領域を拡大し、成長を目指していく方針となっている。
(3) 医薬品製造販売事業
同社が医薬品製造販売事業に進出を決めた背景には、総合ヘルスケアカンパニー構想がある。国内トップクラスの調剤薬局チェーンである同社は、一方で、医薬品の営業担当者であるCMRの派遣(CSO事業)や、医薬品の研究開発をサポートするCRO事業等も行っている。医薬品製造販売事業に進出することで研究開発から製造、販売、調剤を経て患者に至る、ヘルスケア分野において切れ目のないサービスを提供することが可能となる。
グループシナジーとしては前述のとおり、グループの調剤薬局で藤永製品の取扱店舗数を拡げていく。また、新たなGE医薬品の開発を計画しており、工場への設備投資やM&A等も進めながら事業規模を拡大し、次のステップとして大手製薬企業からの受託製造等にも展開していく方針となっている。後発医薬品に関しては2021年に大手メーカーの製造工程における不正問題が明らかとなり、品質管理体制の強化が一段と求められるなか、同社においては製造工程の可視化と作業者への支援を行う生産実行システムの更新を進めていく予定にしている。品質管理体制を盤石にしたうえで、事業拡大を進めていく方針だ。中期目標としては新規事業の育成やM&A等も視野に入れながら、売上高で300億円を目指しており今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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