クリアル Research Memo(3):主力の「CREAL」は1万円から投資可能、不動産投資の民主化を実現(1)
[22/07/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業内容と特長
不動産投資とは、本来ミドルリスク・ミドルリターンの投資対象として大きな魅力のあるものである。にもかかわらず、業界の閉鎖性や情報の不透明性、資金や専門知識の不足を背景に、個人投資家にとってはハードルが高いものであった。こうした不動産投資を、資産運用プロセスのDXによって広く門戸を開放したことがクリアル<2998>の最大の特長である。
不動産投資業界は、証券や保険など他業界と比較し、いまだにFAX文化が残るなどDXが遅れている業界である。同社は、ソーシング(不動産の仕入れ)、運営、エグジット(不動産の売却)といった不動産投資における運用プロセスの多くにDXを推進することで、不動産投資を大きく変えることを目指している。
具体的には、ソーシング(不動産の仕入れ)、運営・賃貸管理レポーティング、エグジット(不動産の売却)といったこれまでの典型的な不動産投資プロセスを、DXによって同社独自のプラットフォームとして築き上げている。ソーシング(不動産の仕入れ)では、従来の担当者の個人的なネットワークに頼っていた手法だけでなく、AIを活用した24時間体制のソーシングと適正評価を行うことができる。運営・賃貸管理レポーティングでは、紙媒体の資料送付などマニュアルで運用されていた状況を変革し、オンライン上でスピーディーかつ低コストで収支報告と管理報告を受け取ることが可能である。エグジット(不動産の売却)においても、これまでの担当者の個人的なネットワークに限定されず、Webとアプリを活用したN対Nのマッチングが成立する。さらに、クラウドファンディングを利用した少額オンライン投資を可能にしたことによって、こうした不動産投資そのものを、従来の機関投資家や富裕層から、個人を含むすべての投資家に拡大することに成功している。
1. 事業の概要
同社グループでは資産運用プラットフォーム事業として、投資主体、投資金額、投資対象ごとに1)「CREAL」、2)「CREAL Partners」、3)「CREAL Pro」の3つのサービスを展開している。各サービスで対象顧客の投資、運用方針に沿った事業コンセプトを追求しつつも、各サービス間でのシナジー創出を念頭に、有機的に一体となって運営しているため、事業セグメントとしては単一セグメントとなっている。サービス別の売上構成比は、「CREAL」が44.1%、「CREAL Partners」が43.9%、「CREAL Pro」が12.0%となっている。
2.各サービスの特長
「CREAL」「CREAL Partners」「CREAL Pro」の各サービスの特長は以下のとおりである。
(1) 「CREAL」
同社の主力事業であるクラウドファンディングを活用した、個人投資家向けの不動産ファンドオンラインマーケットサービスで、1万円からの資産運用ができる。余剰資金を短期的(5年以内)に運用する目的にマッチしている。岸田政権の下、「資産所得倍増計画」「貯蓄から投資へ」と謳われる中で、円ベースの運用で短期で4-5%内外の利回り商品の獲得を期待できる運用商品は少なく、市場としても追い風と言える。その中で、資産運用のプロが運営していること、保育園などESG不動産からレジデンス、ホテル、オフィスと多様な不動産へ投資ができることが競合との大きな差別化要素である。「CREAL」の売上総利益はGMV×Take Rate※から成り立っており、GMVの成長が同サービスの利益拡大に大きく寄与する収益構造となっている。
※GMVに対して運営企業が得られる収益の比率のこと。
「CREAL」では、同社があらかじめ設定した想定配当利回りをリターン目標として、投資家が1口1万円から様々な不動産へ投資することができ、投資家登録から投資実行に至るまですべてオンラインで完結する。投資後の物件の管理から運用、そして売却に至る運用プロセスについては、高度な不動産投資ノウハウとIT技術によって高度化された投資システムを有する同社に一任し、投資家は余計な手間や時間、高度な知識を要することなく不動産投資のリターンを得ることが可能となる。
「CREAL」の業務の流れは以下のとおりとなっている。
a) 物件供給の業務提携契約締結先のマンション開発会社、ホテルや保育園の運営者、仲介会社等から収集した投資物件情報からスクリーニングを行い投資適格物件の選定を行う。
b) 同社が選定した投資適格物件についてファンドの組成を行い、不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」上に公開する。
c) 投資家は掲載されたファンド情報及びファンドに応じて設定された利回りを考慮のうえ投資金額を決定する。
d) ファンドが成立した場合には、同社が「CREAL」にて募集完了した投資資金及び同社による劣後出資金を用いて対象不動産を売主より購入する。その際、同社はファンド組成費用として一定の手数料(アップフロント・フィー)を受領する。
e) ファンド運用期間中に不動産を賃貸することにより賃借人から得られる賃料を基にして、投資家へ配当を行う。その際、同社はファンド運用期間中の管理手数料(アセットマネジメント・フィー)を受領する。
f) ファンド運用終了時に不動産を売却することにより得られた売却代金を基にして、投資家へ最終配当及び元本償還を行う。ファンド運用終了時において、同社は不動産売却手数料(エグジット・フィー)を受領し、さらに同社が物件を売却して利益が生じた場合には、同社は当該売却利益または当該売却利益の一部(プロフィット・シェア)を受領する。
同サービスでは、情報の透明性を重要視しており、募集金額や想定利回り(インカムゲイン、キャピタルゲイン内訳)、想定運用期間、想定初回配当日 ・投資対象の不動産についての詳細情報や、運営者へのインタビュー動画を掲載している。 対象となる不動産の概要や所在の明示のみならず、プロジェクトにおけるリスクの内容とその手当のほか、不動産調査報告概要やエンジニアリングレポート等の第三者レポートを開示している。また、物件の運営者の概要・投資対象が所在するエリアや市場のマクロマーケットの概況情報を発信している。投資リターンの参考となる類似物件についての賃貸事例や売却事例の提示のほか、ファンドにおける調達資金とその使途・投資リターンのシミュレーション・投資後の毎月のプロジェクト進捗報告をまとめたモニタリングレポートの提供も行っている。
「CREAL」ではサービス開始以来、社会にとって必要な不動産であるにもかかわらず、資金供給が難しいとされてきた保育園や学校、地方創生関連などのESG不動産領域への投資案件創出にも注力してきた。ESG不動産は投資規模が小さく、資産運用対象としての実績に乏しいため、これまで機関投資家から注目されにくいという課題があった。同社では「CREAL」のクラウドファンディングを活用して個人投資家からの投資資金を供給するパイプ、インターフェースとしての役割を果たし、社会性と投資商品性の両立を成功させている。「CREAL」における初めてのESG不動産への投資は2019年4月で、対象は東京都豊島区駒込に所在する保育園だった。以降、教育分野、地方創生分野、既存建築物の有効活用等で実績を積み重ね、「CREAL」におけるこれまでの投資金額に占めるESG不動産の割合は34%※となっている。
※サービスローンチから2022年3月末日時点における「CREAL」にて投資した全不動産の投資金額のうちESG不動産が占める金額の割合(出所:同社決算説明資料)。
このことは、同社がSDGsの実現のためのESG不動産の運営を支援する機能を発揮しており、同社がSDGsを重要視した経営方針であることを明示していると言えよう。このようなコンセプトで主力事業を展開し、そのESG企業としての展開が良好な運用実績とともに個人投資家を含む幅広い投資家の支持を得て奏功している資産運用支援企業は限られると弊社では見ている。同社及び「CREAL」の特徴の1つであり、大きな魅力となっている。
また、「CREAL」では、投資家保護の観点から、出資持分を優先部分とファンド組成会社の出資による劣後部分に分けている。CREALの投資家は優先部分に投資し、同社が出資する劣後部分よりも優先的に配当等を受け取る仕組みを構築している。こうした構成により、想定どおりに収益が生じなかった場合のリスクを、同社が劣後出資額を上限として負担することになる。同社が劣後出資で顧客投資家と共に投資することは、優先部分への配当及び元本償還等の確実性を高め、顧客投資家の安心感を醸成し、同社への信頼を高める大きな要素となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中村昌雄)
<ST>
不動産投資とは、本来ミドルリスク・ミドルリターンの投資対象として大きな魅力のあるものである。にもかかわらず、業界の閉鎖性や情報の不透明性、資金や専門知識の不足を背景に、個人投資家にとってはハードルが高いものであった。こうした不動産投資を、資産運用プロセスのDXによって広く門戸を開放したことがクリアル<2998>の最大の特長である。
不動産投資業界は、証券や保険など他業界と比較し、いまだにFAX文化が残るなどDXが遅れている業界である。同社は、ソーシング(不動産の仕入れ)、運営、エグジット(不動産の売却)といった不動産投資における運用プロセスの多くにDXを推進することで、不動産投資を大きく変えることを目指している。
具体的には、ソーシング(不動産の仕入れ)、運営・賃貸管理レポーティング、エグジット(不動産の売却)といったこれまでの典型的な不動産投資プロセスを、DXによって同社独自のプラットフォームとして築き上げている。ソーシング(不動産の仕入れ)では、従来の担当者の個人的なネットワークに頼っていた手法だけでなく、AIを活用した24時間体制のソーシングと適正評価を行うことができる。運営・賃貸管理レポーティングでは、紙媒体の資料送付などマニュアルで運用されていた状況を変革し、オンライン上でスピーディーかつ低コストで収支報告と管理報告を受け取ることが可能である。エグジット(不動産の売却)においても、これまでの担当者の個人的なネットワークに限定されず、Webとアプリを活用したN対Nのマッチングが成立する。さらに、クラウドファンディングを利用した少額オンライン投資を可能にしたことによって、こうした不動産投資そのものを、従来の機関投資家や富裕層から、個人を含むすべての投資家に拡大することに成功している。
1. 事業の概要
同社グループでは資産運用プラットフォーム事業として、投資主体、投資金額、投資対象ごとに1)「CREAL」、2)「CREAL Partners」、3)「CREAL Pro」の3つのサービスを展開している。各サービスで対象顧客の投資、運用方針に沿った事業コンセプトを追求しつつも、各サービス間でのシナジー創出を念頭に、有機的に一体となって運営しているため、事業セグメントとしては単一セグメントとなっている。サービス別の売上構成比は、「CREAL」が44.1%、「CREAL Partners」が43.9%、「CREAL Pro」が12.0%となっている。
2.各サービスの特長
「CREAL」「CREAL Partners」「CREAL Pro」の各サービスの特長は以下のとおりである。
(1) 「CREAL」
同社の主力事業であるクラウドファンディングを活用した、個人投資家向けの不動産ファンドオンラインマーケットサービスで、1万円からの資産運用ができる。余剰資金を短期的(5年以内)に運用する目的にマッチしている。岸田政権の下、「資産所得倍増計画」「貯蓄から投資へ」と謳われる中で、円ベースの運用で短期で4-5%内外の利回り商品の獲得を期待できる運用商品は少なく、市場としても追い風と言える。その中で、資産運用のプロが運営していること、保育園などESG不動産からレジデンス、ホテル、オフィスと多様な不動産へ投資ができることが競合との大きな差別化要素である。「CREAL」の売上総利益はGMV×Take Rate※から成り立っており、GMVの成長が同サービスの利益拡大に大きく寄与する収益構造となっている。
※GMVに対して運営企業が得られる収益の比率のこと。
「CREAL」では、同社があらかじめ設定した想定配当利回りをリターン目標として、投資家が1口1万円から様々な不動産へ投資することができ、投資家登録から投資実行に至るまですべてオンラインで完結する。投資後の物件の管理から運用、そして売却に至る運用プロセスについては、高度な不動産投資ノウハウとIT技術によって高度化された投資システムを有する同社に一任し、投資家は余計な手間や時間、高度な知識を要することなく不動産投資のリターンを得ることが可能となる。
「CREAL」の業務の流れは以下のとおりとなっている。
a) 物件供給の業務提携契約締結先のマンション開発会社、ホテルや保育園の運営者、仲介会社等から収集した投資物件情報からスクリーニングを行い投資適格物件の選定を行う。
b) 同社が選定した投資適格物件についてファンドの組成を行い、不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」上に公開する。
c) 投資家は掲載されたファンド情報及びファンドに応じて設定された利回りを考慮のうえ投資金額を決定する。
d) ファンドが成立した場合には、同社が「CREAL」にて募集完了した投資資金及び同社による劣後出資金を用いて対象不動産を売主より購入する。その際、同社はファンド組成費用として一定の手数料(アップフロント・フィー)を受領する。
e) ファンド運用期間中に不動産を賃貸することにより賃借人から得られる賃料を基にして、投資家へ配当を行う。その際、同社はファンド運用期間中の管理手数料(アセットマネジメント・フィー)を受領する。
f) ファンド運用終了時に不動産を売却することにより得られた売却代金を基にして、投資家へ最終配当及び元本償還を行う。ファンド運用終了時において、同社は不動産売却手数料(エグジット・フィー)を受領し、さらに同社が物件を売却して利益が生じた場合には、同社は当該売却利益または当該売却利益の一部(プロフィット・シェア)を受領する。
同サービスでは、情報の透明性を重要視しており、募集金額や想定利回り(インカムゲイン、キャピタルゲイン内訳)、想定運用期間、想定初回配当日 ・投資対象の不動産についての詳細情報や、運営者へのインタビュー動画を掲載している。 対象となる不動産の概要や所在の明示のみならず、プロジェクトにおけるリスクの内容とその手当のほか、不動産調査報告概要やエンジニアリングレポート等の第三者レポートを開示している。また、物件の運営者の概要・投資対象が所在するエリアや市場のマクロマーケットの概況情報を発信している。投資リターンの参考となる類似物件についての賃貸事例や売却事例の提示のほか、ファンドにおける調達資金とその使途・投資リターンのシミュレーション・投資後の毎月のプロジェクト進捗報告をまとめたモニタリングレポートの提供も行っている。
「CREAL」ではサービス開始以来、社会にとって必要な不動産であるにもかかわらず、資金供給が難しいとされてきた保育園や学校、地方創生関連などのESG不動産領域への投資案件創出にも注力してきた。ESG不動産は投資規模が小さく、資産運用対象としての実績に乏しいため、これまで機関投資家から注目されにくいという課題があった。同社では「CREAL」のクラウドファンディングを活用して個人投資家からの投資資金を供給するパイプ、インターフェースとしての役割を果たし、社会性と投資商品性の両立を成功させている。「CREAL」における初めてのESG不動産への投資は2019年4月で、対象は東京都豊島区駒込に所在する保育園だった。以降、教育分野、地方創生分野、既存建築物の有効活用等で実績を積み重ね、「CREAL」におけるこれまでの投資金額に占めるESG不動産の割合は34%※となっている。
※サービスローンチから2022年3月末日時点における「CREAL」にて投資した全不動産の投資金額のうちESG不動産が占める金額の割合(出所:同社決算説明資料)。
このことは、同社がSDGsの実現のためのESG不動産の運営を支援する機能を発揮しており、同社がSDGsを重要視した経営方針であることを明示していると言えよう。このようなコンセプトで主力事業を展開し、そのESG企業としての展開が良好な運用実績とともに個人投資家を含む幅広い投資家の支持を得て奏功している資産運用支援企業は限られると弊社では見ている。同社及び「CREAL」の特徴の1つであり、大きな魅力となっている。
また、「CREAL」では、投資家保護の観点から、出資持分を優先部分とファンド組成会社の出資による劣後部分に分けている。CREALの投資家は優先部分に投資し、同社が出資する劣後部分よりも優先的に配当等を受け取る仕組みを構築している。こうした構成により、想定どおりに収益が生じなかった場合のリスクを、同社が劣後出資額を上限として負担することになる。同社が劣後出資で顧客投資家と共に投資することは、優先部分への配当及び元本償還等の確実性を高め、顧客投資家の安心感を醸成し、同社への信頼を高める大きな要素となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中村昌雄)
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