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森六 Research Memo(1):2030年に向けた新たな価値創出で、さらなる収益力強化を目指す

注目トピックス 日本株
■要約

森六ホールディングス<4249>は、東京証券取引所プライム市場に上場し、2023年に創業360年を迎える日本最古参の化学専門企業グループの持株会社である。傘下に、自動車部品の「メーカー」機能を果たす森六テクノロジー(株)を中核会社とする樹脂加工製品事業と、化学分野における「商社」機能を果たす森六ケミカルズ(株)を中核会社とするケミカル事業を有する。また、世界13ヶ国に事業所を持ち、売上高の約7割を海外が占めるグローバルグループでもある。同グループは、2022年5月に新たな長期ビジョンと中期経営計画を策定し、各拠点の収益性の向上や事業領域の拡大を進めるとともにサステナブルな社会の実現に向けた取り組みを加速している。

1. 2022年3月期の業績概要
2022年3月期業績は、売上高は128,842百万円だが、旧基準※では175,999百万円(前期比13.2%増)で実質増収であった。自動車関連は新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の再拡大や半導体不足による減産の影響が続く一方、ナフサ価格の高騰や円安の効果が大きかった。また、営業利益は2,846百万円(同49.8%減)となった。前期に「新型コロナウイルス感染症による損失」を特別損失に振り替えていたことに加え、今期は半導体不足による減産の影響が続き減益となった。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は4,259百万円(前期は375百万円の利益)に増加した。これは、コロナ関連の特別損失がなくなったことに加え、投資有価証券売却益を計上したことによる。以上の結果、自己資本比率51.6%と東証1部化学業界の平均並みの安全性を確保するが、ROEは6.1%と業界平均を下回り、収益性の改善が課題といえよう。他方、1株当たり年間配当金を前期の50円から2020年3月期までの94円に戻し、また2021年12月より自己株式の取得を実施するなど、株主還元にも十分に配慮していると評価できる。

※2022年3月期より「収益認識に関する会計基準」等を適用している。


2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の業績見通しについては、2022年8月4日に期初予想を減額修正し、売上高141,000百万円(前期比9.4%増)、営業利益3,000百万円(同5.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,620百万円(同62.0%減)を予想する。期初予想では半導体不足やロシア・ウクライナ問題など、事業環境に不確定要素が多いなか、同社ではIoTによる設備管理やAIを駆使して生産台数の変化に対応するフレキシブル生産体制を進化させることで収益性を高め、増収増益を確保する計画であった。しかしながら、2023年3月期第1四半期では半導体不足に加えてコロナによる中国・上海のロックダウン(都市封鎖)の影響等により、自動車メーカーの減産・生産調整が続いたことで、計画を下回って推移したことから下方修正したものだ。ただ、1株当たり配当金は当初予想を維持し、期末に創業360周年記念配当の6円を加えた年間100円を予定しており、引き続き株主還元には十分に配慮をしている。

3. 中期経営計画
同社では、中長期的な企業価値向上を目指して、2022年5月に「CREATE THE NEW VALUE」と題した長期ビジョン「2030年ビジョン」を策定した。2023年3月期からスタートする3か年の第13次中期経営計画は、そのビジョン達成に向けたステップ1という位置づけでに、I 安定した財務基盤の確立・収益力の強化、II研究開発の強化による価値創造と、2030年に向けた種まき、IIIサステナビリティ活動の推進による経営のレジリエンス向上の3つを基本戦略として推進する。また、2025年3月期の連結業績目標として、売上高1,430億円、営業利益110億円、ROE 9.1%などを掲げる。基本戦略・業績目標の実現に向けた、新中期経営計画の今後の進捗状況に注目したい。

■Key Points
・2023年に創業360年を迎える日本最古参の化学専門企業で、メーカー機能と商社機能を持つ
・2022年3月期は、半導体不足が響き営業利益は減益だが、特別利益の計上により親会社株主に帰属する当期純利益は大幅増益。大幅増配で従来水準に戻し、自己株式の取得も実施するなど、株主還元にも配慮
・2023年3月期は、半導体不足や中国のロックダウンなどによる自動車メーカーの減産・生産調整の影響から、期初予想を下方修正。配当は期初予想を変えず、創業360周年を迎え、記念配当を計画
・第13次中期経営計画をスタートし、意欲的な業績目標を掲げる。(1)収益力の強化、(2)研究開発の強化、(3)サステナビリティ活動などの基本戦略を推進

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)



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