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アーバネット Research Memo(3):設計事務所をルーツとするマンションデベロッパー

注目トピックス 日本株
■会社概要

2. 会社沿革
アーバネットコーポレーション<3242>は、一級建築士である現代表取締役社長の服部信治氏によって1997年7月に設立された。マンション専門の設計事務所に共同経営者として勤務していた服部氏は、自らのデザインによるマンションの企画・開発を行うことを目的として独立した。

設立当初は、企画や設計、コンサルティングを中心に実績を積み上げ、設立3年後の2000年12月に、当初の計画どおり、マンション開発販売事業を投資用ワンルームマンションでスタートした。

投資用ワンルームマンションを主力としたのは、そのころからJリートや不動産ファンドなど、賃貸収益物件への投資事業が拡大し始めたことや、自社開発物件を販売専門会社へ任せる製販分離型の業界構造となっていることが、少人数の経営を目指していた同社にとって参入しやすかったことによる。同社の得意とする設計・開発に特化したことで、入居者ニーズを実現した人気の高い物件を開発できたことに加えて、都内のワンルームマンションに対する需給ギャップ(需要が供給を上回る状況)や個人投資家からのニーズ拡大など、外部環境も同社の成長を後押しして、2007年3月にはJASDAQ市場へ上場を果たした。2008年のリーマンショックによる金融引き締め時には開発物件の凍結を余儀なくされたが、損失を1期に集中させることと、金融機関やゼネコンとの良好な関係を続けることを前提とした徹底的な資産縮小の経営計画の下、資本増強やそれまで保有していなかった販売部門を販売員の新規採用により新設し、他社物件の買取再販事業に全社を挙げて参入したことにより、厳しい環境を乗り切ることができた。その時期に培われた販売ノウハウなどは、現在の中古分譲マンションの買取再販事業や分譲用マンションの販売等に生かされている。

また、安定収益源の確保を目的としたストックビジネスの強化にも取り組んでおり、賃貸収益物件の自社保有に加えて、2017年7月にはホテル事業へも参入した(自社開発プロジェクト第1号「ホテルアジール東京蒲田」は2020年10月にオープン)。

さらに2021年12月には、オリックス銀行(株)、(株)メイクスとの協働により、業界初となるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様マンションの開発にも着手し、脱炭素社会への貢献と新たな事業機会の創出に取り組んでいる。

2022年7月14日付けで社長交代を含む、新しい経営体制への移行を決議(2022年9月28日開催予定の株主総会及び、その後に行われる取締役会で正式に決定予定)。服部信治氏に代わって田中敦氏(現取締役副社長)が代表取締役社長に就任するとともに、服部信治氏は代表取締役会長兼CEOへ就任する予定である。

3. 企業特長
同社の特長(強み)として、優れたデザイン性や機能性、好立地へのこだわりによる差別化、アウトソーシングを最大限に利用した少人数体制により固定費を圧縮する効率的な経営を挙げることができる。

(1) 優れたデザイン性や機能性、好立地へのこだわり
同社は、得意とする設計・開発に経営資源を集中しており、デザイン性や機能性に優れた「ものづくり」による差別化をはじめ、用地取得の可否を短時間で決定できる自社内プラン設計体制に強みを有する。特に、「ものづくり」への「5つ」のこだわりとして、1)モノトーンでインパクトのある外観、2)アンケートによるユーザーニーズの徹底分析、3)空間を最大限に生かした収納スペース、4)自社開発までするこだわりのファシリティ「ユノバース」※、5)アートのある居住空間、を掲げており、それらが一体となった価値提供により、ターゲットとなる若い世代からの支持を受けてきたと言える。また、立地に関しては、都内23区内で駅から徒歩10分以内の用地を基本としている。

※自社開発の、足を伸ばせるユニットバス。


同社は、(一社)全国住宅産業協会(全住協)※1優良事業審査会による優良事業賞において数多くの受賞実績を持っている。最近では2022年4月に「ステージグランデときわ台アジールコート」が、同社プロジェクトとして7年連続9回目の受賞をした。このほかのプロジェクトとしては、2020年1月に自社開発の投資用ワンルームマンションに台風対策を取り入れた「アーバネット防災プログラム」※2を導入。経営理念である「人々の安全で快適な『くらし』の提案を行い、豊かで健全な社会の実現」に通じる取り組みを進めている。気候変動によって発生する台風等の防災対策として、SDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献や商品価値の向上にもつなげていく考えである。さらには、業界初となるZEH仕様マンションの開発にも着手した。

※1 中堅企業を中心に上場企業も含む全国1,700社を擁する団体で、会員は首都圏並びに北海道から沖縄まで各地域において、マンション及び戸建住宅の供給や住宅をはじめとする不動産流通事業等を行っている。優良事業賞は2010年から始まり、同協会協会員が企画・開発したプロジェクトの中から、特に優秀なプロジェクト(事業及び企画・開発)を表彰するものである。
※2 防災倉庫の設置や電気室の地上階設置など設計面に加え、強風対策、豪雨対策、停電対策など設備面での対策を施すものである。


また、アートと住空間の融合による社会貢献活動(CSR)の一環として、学生のみを対象とした立体アートコンペティション「アート・ミーツ・アーキテクチャー・コンペティション(AAC)」を2001年より毎年開催し、若手アーティストの発掘、支援、育成を行っている※1。この活動は(公社)企業メセナ協議会※2からメセナ(芸術文化支援)として認定されるとともに、同協議会が主催する「メセナアワード2017」にて優秀賞「アートの玄関賞」を受賞している。

※1 21年目を迎えた今回は2021年10月12日に最終審査が行われ、最優秀賞(1名)及び優秀賞(2名)が決定した。最優秀賞の作品は、実際に同社施工の新築マンションのエントランスに常時展示されている。
※2 企業による芸術文化支援活動の活性化を目的とした中間支援機関。


(2) 少人数体制による効率的な経営
同社は、投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売(卸売:BtoB)をビジネスの核としているが、アウトソーシングを最大限に利用した少人数による効率的な経営を実現している。2022年6月期末における連結社員数(契約社員等を含む)は52名、1人当たりの売上高が約377百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が約25百万円と高い生産性を示している※。

※期末の連結社員数(規約社員等を含む)で割り算した指標。


特に固定費を低く抑えることで、高い収益性の確保と景気変動にも柔軟に対応できる体制を堅持している。加えて、1棟での卸売は売れ残りリスクが少なく、竣工から短期間での資金回収を可能としており、不動産業界にあって安定性の高い事業構造と言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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