ファンペップ Research Memo(2):大阪大学発のバイオベンチャーで抗体医薬品の代替医薬品の開発に取り組む
[22/09/16]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
1. 技術概要
ファンペップ<4881>は大阪大学大学院医学系研究科にて確立された機能性ペプチド※1のデザイン、創製、最適化の技術を実用化する目的で2013年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーである。社名のファンペップの由来は、機能(function)を持つペプチド(peptide)の可能性を追求し、新たな医薬品等の開発によって社会に貢献する企業になるとの想いを込めて名付けられたものである。同社の機能性ペプチドはヒト由来の抗菌ペプチド「AG30」※2
を起源としており、安定性や製造コストの最適化に取り組むなかで現在の主要パイプラインの一つである「SR-0379」が開発された。また、アジュバント※3機能の最適化を進めるなかで、抗体誘導ペプチドのキャリアとなる「AJP001」※4が開発されている。なお、抗体誘導ペプチドは同社の登録商標となっている。
※1 ペプチドとはアミノ酸が2〜50個程度つながった化合物の総称で、アミノ酸がさらに多くつながった化合物をタンパク質と呼ぶ。ペプチドのなかにはインスリン、グルカゴンなど、ホルモンとして体内の器官の働きを調整する情報伝達を担う物質もあり、特定の機能があるペプチドを人工的に合成したものと機能性ペプチドと呼び、医薬品としても開発されている。
※2 「AG30」はアミノ酸を30個つなげたペプチドで、血管新生作用や抗菌活性の機能を持つ。
※3 アジュバントとはワクチン製剤に含まれ、免疫反応を増強する物質を指す。
※4 「AJP001」は抗体誘導ペプチドを作るためのキャリア(自己タンパク質に対して抗体を産生させる役割を持つ)となり、標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープと組み合わせることで、多様な抗体誘導ペプチドを作ることが可能となる。
同社では「AJP001」を用いた抗体誘導ペプチドの創薬プラットフォーム技術を「STEP UP(Search Technology of EPitope for Unique Peptide vaccine)」と呼んでいる。具体的には、「AJP001」と標的タンパク質のエピトープを組み合わることで抗体誘導ペプチドを創製し、この抗体誘導ペプチドを体内に取り込むことで、標的タンパク質の働きを阻害する抗体が生み出され、疾患の症状を沈静化させるメカニズムとなる。それまで、ペプチドだけで抗体を作り出すということは免疫学の常識で考えられなかったことで、新たなモダリティ(創薬技術)として注目されている。
抗体医薬品との違いは、抗体医薬品が「体外」で製造した抗体で高い薬効が見込めるものの、製造コストや薬価が高額となっているのに対して、抗体誘導ペプチドは化学合成による大量生産が可能なため製造コストを低く抑えることができるほか、「体内」で免疫細胞が一定期間持続的に抗体を産生するため、薬効が長期間(数ヶ月間)持続する可能性のあることが優位点となる。即効性はないものの患者にとっては安価に治療でき、投与回数も少なくて済むといったメリットを享受できる。特に、製造コストについては抗体医薬品の1割程度の水準に抑えることが可能になると見られ、患者負担や医療財政負担の面からもメリットは大きい。
また、抗体誘導ペプチドの競合技術との比較では、既存の生物由来のキャリア(高分子)が抱えている課題点を解消できることも、「AJP001」の優位点として挙げられる。生物由来の既存キャリアについては、反復投与時に効果が減弱する可能性があること(標的タンパク質よりもキャリアに対して抗体が産生されるリスクがある)、製造上の品質確保の難易度が高いこと(生物由来で高分子のため品質管理が難しく、また、キャリアとエピトープの制御も難しい)、副作用リスクがあること(アレルギーやアナフィラキシー等が生じる可能性)などが挙げられる。
知財戦略も進めており、「SR-0379」については日米、欧州の主要国で特許を取得しているほか、「FPP003」等のその他のパイプラインについてもそれぞれ日米、欧州の主要国で特許が成立または出願中となっている。なお、「AJP001」に関する特許は大阪大学が保有し、独占的使用権を大阪大学発ベンチャーのAAPが有しており、同社はAAPからサブライセンスを受ける格好となっていた。このため、同社は2022年10月にAAPを株式交換※により完全子会社化し、知財戦略を強化することを発表した。抗体誘導ペプチドの開発品については「AJP001」の特許が含まれるため、ライセンス契約交渉において、同特許がサブライセンス契約の形となっているのは好ましくなく、子会社化することで契約交渉面でも今後有利に働くと見られる。
※株式交換にあたって普通株式238.55万株を新たに発行し、AAPの既存株主に割り当てる格好となり、総発行株数は約13%増加することになる。
AAPは科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業大学発新産業創出プログラムに基づき、大阪大学の中神教授の研究成果であるAJP001及び機能性ショートペプチド群の実用化を図るために2016年4月に設立され、現在は主にアンチエイジング機能を持つ機能性ショートペプチド「OSK9」※を、大手化粧品会社へ提供している。ただ、役員のみの会社であり、2021年12月期の業績も売上計上はなく、営業損失1百万円である。子会社化以降のグループ戦略としてAAPをどのように位置付けていくかは現在、経営陣で議論しており、今後決定していくことにしている。例えば、同社が手掛けている化粧品や除菌スプレー向けペプチド原薬の販売事業を、AAPに移管して医薬品事業以外をAAPで行うなどの案が考えられる。
※「OSK9」は、繊維芽細胞の増殖を促進し、ヒアルロン酸やコラーゲンの産生を促進する作用が確認されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 技術概要
ファンペップ<4881>は大阪大学大学院医学系研究科にて確立された機能性ペプチド※1のデザイン、創製、最適化の技術を実用化する目的で2013年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーである。社名のファンペップの由来は、機能(function)を持つペプチド(peptide)の可能性を追求し、新たな医薬品等の開発によって社会に貢献する企業になるとの想いを込めて名付けられたものである。同社の機能性ペプチドはヒト由来の抗菌ペプチド「AG30」※2
を起源としており、安定性や製造コストの最適化に取り組むなかで現在の主要パイプラインの一つである「SR-0379」が開発された。また、アジュバント※3機能の最適化を進めるなかで、抗体誘導ペプチドのキャリアとなる「AJP001」※4が開発されている。なお、抗体誘導ペプチドは同社の登録商標となっている。
※1 ペプチドとはアミノ酸が2〜50個程度つながった化合物の総称で、アミノ酸がさらに多くつながった化合物をタンパク質と呼ぶ。ペプチドのなかにはインスリン、グルカゴンなど、ホルモンとして体内の器官の働きを調整する情報伝達を担う物質もあり、特定の機能があるペプチドを人工的に合成したものと機能性ペプチドと呼び、医薬品としても開発されている。
※2 「AG30」はアミノ酸を30個つなげたペプチドで、血管新生作用や抗菌活性の機能を持つ。
※3 アジュバントとはワクチン製剤に含まれ、免疫反応を増強する物質を指す。
※4 「AJP001」は抗体誘導ペプチドを作るためのキャリア(自己タンパク質に対して抗体を産生させる役割を持つ)となり、標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープと組み合わせることで、多様な抗体誘導ペプチドを作ることが可能となる。
同社では「AJP001」を用いた抗体誘導ペプチドの創薬プラットフォーム技術を「STEP UP(Search Technology of EPitope for Unique Peptide vaccine)」と呼んでいる。具体的には、「AJP001」と標的タンパク質のエピトープを組み合わることで抗体誘導ペプチドを創製し、この抗体誘導ペプチドを体内に取り込むことで、標的タンパク質の働きを阻害する抗体が生み出され、疾患の症状を沈静化させるメカニズムとなる。それまで、ペプチドだけで抗体を作り出すということは免疫学の常識で考えられなかったことで、新たなモダリティ(創薬技術)として注目されている。
抗体医薬品との違いは、抗体医薬品が「体外」で製造した抗体で高い薬効が見込めるものの、製造コストや薬価が高額となっているのに対して、抗体誘導ペプチドは化学合成による大量生産が可能なため製造コストを低く抑えることができるほか、「体内」で免疫細胞が一定期間持続的に抗体を産生するため、薬効が長期間(数ヶ月間)持続する可能性のあることが優位点となる。即効性はないものの患者にとっては安価に治療でき、投与回数も少なくて済むといったメリットを享受できる。特に、製造コストについては抗体医薬品の1割程度の水準に抑えることが可能になると見られ、患者負担や医療財政負担の面からもメリットは大きい。
また、抗体誘導ペプチドの競合技術との比較では、既存の生物由来のキャリア(高分子)が抱えている課題点を解消できることも、「AJP001」の優位点として挙げられる。生物由来の既存キャリアについては、反復投与時に効果が減弱する可能性があること(標的タンパク質よりもキャリアに対して抗体が産生されるリスクがある)、製造上の品質確保の難易度が高いこと(生物由来で高分子のため品質管理が難しく、また、キャリアとエピトープの制御も難しい)、副作用リスクがあること(アレルギーやアナフィラキシー等が生じる可能性)などが挙げられる。
知財戦略も進めており、「SR-0379」については日米、欧州の主要国で特許を取得しているほか、「FPP003」等のその他のパイプラインについてもそれぞれ日米、欧州の主要国で特許が成立または出願中となっている。なお、「AJP001」に関する特許は大阪大学が保有し、独占的使用権を大阪大学発ベンチャーのAAPが有しており、同社はAAPからサブライセンスを受ける格好となっていた。このため、同社は2022年10月にAAPを株式交換※により完全子会社化し、知財戦略を強化することを発表した。抗体誘導ペプチドの開発品については「AJP001」の特許が含まれるため、ライセンス契約交渉において、同特許がサブライセンス契約の形となっているのは好ましくなく、子会社化することで契約交渉面でも今後有利に働くと見られる。
※株式交換にあたって普通株式238.55万株を新たに発行し、AAPの既存株主に割り当てる格好となり、総発行株数は約13%増加することになる。
AAPは科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業大学発新産業創出プログラムに基づき、大阪大学の中神教授の研究成果であるAJP001及び機能性ショートペプチド群の実用化を図るために2016年4月に設立され、現在は主にアンチエイジング機能を持つ機能性ショートペプチド「OSK9」※を、大手化粧品会社へ提供している。ただ、役員のみの会社であり、2021年12月期の業績も売上計上はなく、営業損失1百万円である。子会社化以降のグループ戦略としてAAPをどのように位置付けていくかは現在、経営陣で議論しており、今後決定していくことにしている。例えば、同社が手掛けている化粧品や除菌スプレー向けペプチド原薬の販売事業を、AAPに移管して医薬品事業以外をAAPで行うなどの案が考えられる。
※「OSK9」は、繊維芽細胞の増殖を促進し、ヒアルロン酸やコラーゲンの産生を促進する作用が確認されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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