サイバーコム Research Memo(4):通信分野における高度な技術開発力を基盤とした高品質サービスが強み
[22/09/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
3. サイバーコム<3852>の強みと主要顧客、事業リスクについて
(1) 同社の強み
同社の最大の強みは、創業来培ってきた通信分野を基盤とした高度な技術開発力と、高品質なサービスを提供していることが挙げられる。特に顧客の現場レベルから出てきたニーズをくみ取り、求められる要件に対してプラスアルファの成果物を提供することで顧客から高い評価を受け、リピート受注につなげている。また、既存顧客からの口コミによって新規顧客の開拓にもつなげている。ここ数年は、企業のDXに対する取り組みの活発化に伴い業務支援システムの開発が伸長しているが、5Gの商用化やローカル5Gの普及に伴って本来の基盤技術を活用した開発案件も活発化している。クラウド導入支援などSIサービス等の受注も増加するなど事業領域の拡大も進んでおり、収益基盤の安定化につながっている。
また、業界大手の富士ソフトグループに属することで、独立系ソフト会社に比べて不況期においても経営の安定性があることも強みと言える。富士ソフトグループでは独立性を重んじているため、同グループへの売上構成比は2022年12月期第2四半期累計で6.2%と小さいものの、グループ内で積み重ねた通信技術を生かしたソフトウェア開発事業を分担・連携することで、グループ内のシナジーを享受している。
さらに、外注先として協力企業のネットワークを構築していることも、業務量変動時における調節弁の役割を果たしており、収益性を維持しながら事業を拡大できているという点で強みとなっている。ここ数年、IT業界は慢性的な人材不足が続いており、同社においても人員増強を進めているものの、まだ十分とは言えない状況にある。人的リソースの不足分を協力企業の活用(人的リソースで1,000名超)によって確保し、売上成長につなげている。ここ数年は旺盛な需要に応えるため外注を活用していたことから、外注費率は2017年12月期の32.7%から2021年12月期は37.9%と上昇傾向が続いているが、一方で労務費率は45.2%から40.3%に低下している。IT業界では外注費率の上昇が営業利益率の低下につながるケースもあるが、同社の場合、外注比率が上昇しても営業利益率は5%〜6%で安定して推移している。付加価値の高い受注案件を増やしつつ、外注先を上手くコントロールしていることがうかがえる。外注先の新入社員を受け入れて自社の社員と同様の研修を行うなど、良好な関係を構築していることが要因と考えられる。
(2) 主要顧客
2022年12月期第2四半期累計における主要顧客の売上構成比を見ると、主に通信用や車載向け制御用ソフトウェア開発を受注しているNECグループが31.2%と最大顧客となっている。次いで、日立グループが19.0%となり、上位2社で売上高の約5割を占めている。主要顧客上位5社は年によって多少の変動があるものの、ここ数年は顔ぶれにほとんど変化はなく安定している。
(3) 事業リスク
主な事業リスクとして、主力であるソフトウェア開発事業の通信ソフトウェア開発では、NTT<9432>グループなど大手通信事業者が主な最終顧客となっており、通信事業者の設備投資動向によって受注が左右される点にある。なかでも携帯電話網基地局システムや5Gコアネットワークシステムについては、2020年の5G商用化以降、通信事業者の投資拡大とともに開発プロジェクトも増加してきたが、2022年に入ってやや一巡感が出てきている。ローカル5Gの開発案件が今後増加する見込みであるとはいえ、次世代通信規格である6Gへの投資が始まるまで端境期に入る可能性がある。
また、受託開発案件において不採算プロジェクトが発生するリスクが挙げられる。受託開発では要件定義の変更などで想定以上に工期が延伸したり不具合が発生することで、不採算プロジェクトとなるケースがある。同社はこうしたリスクを軽減するため、受注時の見積もり精度の向上やプロジェクト管理体制の強化に取り組んでおり、ここ数年は大きな不採算案件は発生していない。
そのほか、旺盛な受注に対応するためのエンジニアの採用が予定どおり進まない場合に、採用コストや教育研修コストが増加するリスクがある。同社では人財不足を解消するため、2019年以降の新卒採用において未経験者の採用も開始しており、新卒採用は2020年以降3年連続で100名以上を採用した。新人研修は通常2ヶ月間実施して現場に配属されるが、未経験者の場合は3ヶ月の研修期間を要するため研修コストはかかるものの、教育研修を充実させることで早期の戦力化に取り組んでいる。なお、2023年の新卒採用は130名を予定している。
また、中途採用についても2022年から未経験者の採用を開始し、従来の年間40名ペースの採用を継続している。ソフトウェア受託開発業界では、IT業界のなかでも採用に苦戦する企業が多いが、同社は既述のとおり横浜だけでなく、仙台、新潟、東京、福岡、愛知などにも事業拠点を有しているため現地採用が可能であり、採用環境が厳しいなかでもエンジニアの増員を図れている。また、離職率(入社3年後)も1ケタ台と業界平均より低い。定期的なフォローアップ研修やスキル向上のための教育研修などの充実に加えて、働きやすい環境づくりに取り組むことで離職率の低減につなげている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. サイバーコム<3852>の強みと主要顧客、事業リスクについて
(1) 同社の強み
同社の最大の強みは、創業来培ってきた通信分野を基盤とした高度な技術開発力と、高品質なサービスを提供していることが挙げられる。特に顧客の現場レベルから出てきたニーズをくみ取り、求められる要件に対してプラスアルファの成果物を提供することで顧客から高い評価を受け、リピート受注につなげている。また、既存顧客からの口コミによって新規顧客の開拓にもつなげている。ここ数年は、企業のDXに対する取り組みの活発化に伴い業務支援システムの開発が伸長しているが、5Gの商用化やローカル5Gの普及に伴って本来の基盤技術を活用した開発案件も活発化している。クラウド導入支援などSIサービス等の受注も増加するなど事業領域の拡大も進んでおり、収益基盤の安定化につながっている。
また、業界大手の富士ソフトグループに属することで、独立系ソフト会社に比べて不況期においても経営の安定性があることも強みと言える。富士ソフトグループでは独立性を重んじているため、同グループへの売上構成比は2022年12月期第2四半期累計で6.2%と小さいものの、グループ内で積み重ねた通信技術を生かしたソフトウェア開発事業を分担・連携することで、グループ内のシナジーを享受している。
さらに、外注先として協力企業のネットワークを構築していることも、業務量変動時における調節弁の役割を果たしており、収益性を維持しながら事業を拡大できているという点で強みとなっている。ここ数年、IT業界は慢性的な人材不足が続いており、同社においても人員増強を進めているものの、まだ十分とは言えない状況にある。人的リソースの不足分を協力企業の活用(人的リソースで1,000名超)によって確保し、売上成長につなげている。ここ数年は旺盛な需要に応えるため外注を活用していたことから、外注費率は2017年12月期の32.7%から2021年12月期は37.9%と上昇傾向が続いているが、一方で労務費率は45.2%から40.3%に低下している。IT業界では外注費率の上昇が営業利益率の低下につながるケースもあるが、同社の場合、外注比率が上昇しても営業利益率は5%〜6%で安定して推移している。付加価値の高い受注案件を増やしつつ、外注先を上手くコントロールしていることがうかがえる。外注先の新入社員を受け入れて自社の社員と同様の研修を行うなど、良好な関係を構築していることが要因と考えられる。
(2) 主要顧客
2022年12月期第2四半期累計における主要顧客の売上構成比を見ると、主に通信用や車載向け制御用ソフトウェア開発を受注しているNECグループが31.2%と最大顧客となっている。次いで、日立グループが19.0%となり、上位2社で売上高の約5割を占めている。主要顧客上位5社は年によって多少の変動があるものの、ここ数年は顔ぶれにほとんど変化はなく安定している。
(3) 事業リスク
主な事業リスクとして、主力であるソフトウェア開発事業の通信ソフトウェア開発では、NTT<9432>グループなど大手通信事業者が主な最終顧客となっており、通信事業者の設備投資動向によって受注が左右される点にある。なかでも携帯電話網基地局システムや5Gコアネットワークシステムについては、2020年の5G商用化以降、通信事業者の投資拡大とともに開発プロジェクトも増加してきたが、2022年に入ってやや一巡感が出てきている。ローカル5Gの開発案件が今後増加する見込みであるとはいえ、次世代通信規格である6Gへの投資が始まるまで端境期に入る可能性がある。
また、受託開発案件において不採算プロジェクトが発生するリスクが挙げられる。受託開発では要件定義の変更などで想定以上に工期が延伸したり不具合が発生することで、不採算プロジェクトとなるケースがある。同社はこうしたリスクを軽減するため、受注時の見積もり精度の向上やプロジェクト管理体制の強化に取り組んでおり、ここ数年は大きな不採算案件は発生していない。
そのほか、旺盛な受注に対応するためのエンジニアの採用が予定どおり進まない場合に、採用コストや教育研修コストが増加するリスクがある。同社では人財不足を解消するため、2019年以降の新卒採用において未経験者の採用も開始しており、新卒採用は2020年以降3年連続で100名以上を採用した。新人研修は通常2ヶ月間実施して現場に配属されるが、未経験者の場合は3ヶ月の研修期間を要するため研修コストはかかるものの、教育研修を充実させることで早期の戦力化に取り組んでいる。なお、2023年の新卒採用は130名を予定している。
また、中途採用についても2022年から未経験者の採用を開始し、従来の年間40名ペースの採用を継続している。ソフトウェア受託開発業界では、IT業界のなかでも採用に苦戦する企業が多いが、同社は既述のとおり横浜だけでなく、仙台、新潟、東京、福岡、愛知などにも事業拠点を有しているため現地採用が可能であり、採用環境が厳しいなかでもエンジニアの増員を図れている。また、離職率(入社3年後)も1ケタ台と業界平均より低い。定期的なフォローアップ研修やスキル向上のための教育研修などの充実に加えて、働きやすい環境づくりに取り組むことで離職率の低減につなげている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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