極東貿易 Research Memo(4):海外向け重電事業、ねじ関連事業が好調
[22/09/30]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期の業績概要
極東貿易<8093>の2022年3月期の連結業績は、売上高39,705百万円(前期比17,700百万円減少)、営業利益759百万円(同397百万円増加)、経常利益1,296百万円(同562百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益781百万円(同502百万円増加)と減収増益となった。売上高が大幅減収となったのは、2022年3月期決算より新会計基準を適用したためであり、2022年3月期における売上高については、旧会計基準と比較して20,826百万円の減収となった。ただし旧会計基準では、実質増収である。顕著な事業部門としては、重電設備が約1/3の売上規模となった。これらの事業では大手メーカーの商材・エンジニアリングサービスの代理店業務が売上高では大きな部分が“代理”と見なされているためである。新会計基準での売上高は減少したが、旧会計基準では60,500百万円と、前期比3,100百万円の増収となった。基幹産業関連部門の海外プラント向け重電事業が好調に推移したことに加え、機械部品関連部門のねじ関連事業が新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)前の水準に復調し全体としても回復基調となった。親会社株主に帰属する当期純利益の増益要因としては、事業ポートフォリオ最適化を伴う構造改革の一環として実施のブラジル現地法人撤退による関係会社出資金評価損等の特別損失が発生したことなどによる。
同社ではビジネス領域が幅広く、不透明かつ不確実な事業環境(コロナ禍の影響継続、ウクライナ情勢、世界的インフレなど)のなか、同社のビジネスにも大きな影響があったようだ。具体的には、ウクライナ情勢の影響によりロシア向けビジネス(モスクワのEVバス向け車載リチウムイオン電池)は取引停止状態となり、消失した。また、航空機関連ビジネス(炭素繊維材料の輸入販売)がコロナ禍前の業績から回復していない。2023年3月期下期より徐々に復調すると見込んでおり、以降は堅調に推移するとしている。
2023年3月期第1四半期の連結業績は、売上高9,375百万円(前期比2.4%減)、営業損失2百万円(前年同期は11百万円の利益)、経常利益258百万円(前期比19.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益147百万円(同30.4%増)となった。売上高は順調に推移したが、機械部品関連部門以外の部門群は回復スピードに鈍さがあったようである。特に、同社では産業素材関連部門への業績回復を期待していたようだが、業績の回復が遅れた。自動車や半導体産業の低調、中国経済(ロックダウン)などの要因で思ったほど伸びが少なかったとしている。
2. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期のセグメント別業績
(1) 産業設備関連部門(旧 基幹産業関連部門及び旧 電子・制御システム関連部門)
2022年3月期の基幹産業関連部門の売上高は8,718百万円となり、売上総利益は1,965百万円(前年同期は1,920百万円)となった。コロナ禍の影響で鉄鋼関連事業及び資源開発機器事業において大型案件の翌期への納期遅延が発生したことに加え、検査装置事業は低調に推移したものの、海外プラント向け重電事業が新興国を中心に好調に推移した。
2022年3月期の電子・制御システム関連部門の売上高は3,829百万円となり、売上総利益は989百万円(前年同期は1,129百万円)となった。事業承継により2023年3月期より連結子会社で生産を開始した地震計に関連した事業が好調に推移したものの、計装システム事業は既に同事業における販売代理業務を終了したため受注済み案件の計上にとどまったほか、電子機器事業が低調に推移した。
2023年3月期より基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門が統合され、産業設備関連部門となった。2023年3月期第1四半期の売上高は2,135百万円(前期比25.2%減)となり、セグメント損失は208百万円(前年同期は191百万円の損失)となった。海外プラント向け重電事業が好調に推移したものの、ロシアEVバス向けリチウムイオン電池事業がウクライナ情勢の影響を受けて大きく落ち込んだこと、自動車業界向け検査装置事業の受注が伸び悩んだことにより減収・損失拡大となった。
(2) 産業素材関連部門
2022年3月期の売上高は10,875百万円となり、売上総利益は1,796百万円(前年同期は1,820百万円)となった。米国向け及び中国自動車業界向け樹脂・塗料が好調に推移したものの、メキシコ向けは、半導体不足に伴う部品供給制限による自動車メーカーの操業制限の影響を受けて落ち込み、また、コロナ禍の影響を受け食品関連事業が大きく落ち込んだ。
2023年3月期第1四半期の売上高は2,989百万円(前年同期比28.2%増)となり、セグメント利益は44百万円(同120.0%増)となった。前年同期に国内外ともに大きく落ち込んだ自動車業界向け樹脂・塗料事業は、北米及び国内向けにおいて持ち直しが見られた。
(3) 機械部品関連部門
2022年3月期の売上高は16,281百万円、売上総利益は3,453百万円(前年同期は2,710百万円)となり、大幅な増収増益となった。ねじ関連事業は、コロナ禍により2年ほど苦戦したが、コロナ禍前の水準にまで回復した。ばね関連事業は、車載備品用定荷重ばねの量産受注が好調に推移し増益となった。ねじやばねについては、素材提供(“流れモノ”)型ビジネスであり、「収益基準変更」の影響は受けなかった。
2023年3月期第1四半期の売上高は4,250百万円(前年同期比7.2%)となり、セグメント利益は161百万円(同12.0%減)となった。ねじ関連事業は引き続き好調のようだ。特に、住宅設備向け、建設機械向け、産業機械向けが好調に推移し増益傾向が見られた。ばね関連事業の落ち込みに加え、コロナ禍で停滞していた営業活動を再開し、積極的に展開したことから販売費及び一般管理費が増加した。
3. 財務状況
2022年3月期末の資産合計は、前期末に比べ6,277百万円減少し、45,513百万円となった。その主な要因は、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度末は受取手形及び売掛金)が4,691百万円減少、前渡金が1,419百万円減少したことなどによるものである。負債合計は、同6,642百万円減少し、22,889百万円となった。その主な要因は、支払手形及び買掛金が5,232百万円減少、契約負債(前連結会計年度末は前受金)が2,135百万円減少したことなどによるものである。純資産合計は、同365百万円増加し、22,623百万円となった。これは主として為替換算調整勘定が623百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が198百万円減少したことによるものである。
2023年3月期第1四半期末における資産合計は、前期末に比べ782百万円減少し、44,731百万円となった。その主な要因は、前渡金が373百万円増加、投資有価証券が118百万円増加した一方、受取手形、売掛金及び契約資産が1,355百万円減少したことなどによるものである。負債合計は、前期末に比べ1,217百万円減少し、21,671百万円となった。その主な要因は、契約負債が256百万円増加、その他流動負債が467百万円増加した一方、支払手形及び買掛金が623百万円減少、電子記録債務が546百万円減少したことなどによるものである。純資産は、前期末に比べ435百万円増加し、23,059百万円となった。その主な要因は、前期末に比べ為替換算調整勘定560百万円の増加及び、親会社株主に帰属する四半期純利益147百万円を計上した一方、配当金の支払い338百万円を実施したことによるものである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<SI>
1. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期の業績概要
極東貿易<8093>の2022年3月期の連結業績は、売上高39,705百万円(前期比17,700百万円減少)、営業利益759百万円(同397百万円増加)、経常利益1,296百万円(同562百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益781百万円(同502百万円増加)と減収増益となった。売上高が大幅減収となったのは、2022年3月期決算より新会計基準を適用したためであり、2022年3月期における売上高については、旧会計基準と比較して20,826百万円の減収となった。ただし旧会計基準では、実質増収である。顕著な事業部門としては、重電設備が約1/3の売上規模となった。これらの事業では大手メーカーの商材・エンジニアリングサービスの代理店業務が売上高では大きな部分が“代理”と見なされているためである。新会計基準での売上高は減少したが、旧会計基準では60,500百万円と、前期比3,100百万円の増収となった。基幹産業関連部門の海外プラント向け重電事業が好調に推移したことに加え、機械部品関連部門のねじ関連事業が新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)前の水準に復調し全体としても回復基調となった。親会社株主に帰属する当期純利益の増益要因としては、事業ポートフォリオ最適化を伴う構造改革の一環として実施のブラジル現地法人撤退による関係会社出資金評価損等の特別損失が発生したことなどによる。
同社ではビジネス領域が幅広く、不透明かつ不確実な事業環境(コロナ禍の影響継続、ウクライナ情勢、世界的インフレなど)のなか、同社のビジネスにも大きな影響があったようだ。具体的には、ウクライナ情勢の影響によりロシア向けビジネス(モスクワのEVバス向け車載リチウムイオン電池)は取引停止状態となり、消失した。また、航空機関連ビジネス(炭素繊維材料の輸入販売)がコロナ禍前の業績から回復していない。2023年3月期下期より徐々に復調すると見込んでおり、以降は堅調に推移するとしている。
2023年3月期第1四半期の連結業績は、売上高9,375百万円(前期比2.4%減)、営業損失2百万円(前年同期は11百万円の利益)、経常利益258百万円(前期比19.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益147百万円(同30.4%増)となった。売上高は順調に推移したが、機械部品関連部門以外の部門群は回復スピードに鈍さがあったようである。特に、同社では産業素材関連部門への業績回復を期待していたようだが、業績の回復が遅れた。自動車や半導体産業の低調、中国経済(ロックダウン)などの要因で思ったほど伸びが少なかったとしている。
2. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期のセグメント別業績
(1) 産業設備関連部門(旧 基幹産業関連部門及び旧 電子・制御システム関連部門)
2022年3月期の基幹産業関連部門の売上高は8,718百万円となり、売上総利益は1,965百万円(前年同期は1,920百万円)となった。コロナ禍の影響で鉄鋼関連事業及び資源開発機器事業において大型案件の翌期への納期遅延が発生したことに加え、検査装置事業は低調に推移したものの、海外プラント向け重電事業が新興国を中心に好調に推移した。
2022年3月期の電子・制御システム関連部門の売上高は3,829百万円となり、売上総利益は989百万円(前年同期は1,129百万円)となった。事業承継により2023年3月期より連結子会社で生産を開始した地震計に関連した事業が好調に推移したものの、計装システム事業は既に同事業における販売代理業務を終了したため受注済み案件の計上にとどまったほか、電子機器事業が低調に推移した。
2023年3月期より基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門が統合され、産業設備関連部門となった。2023年3月期第1四半期の売上高は2,135百万円(前期比25.2%減)となり、セグメント損失は208百万円(前年同期は191百万円の損失)となった。海外プラント向け重電事業が好調に推移したものの、ロシアEVバス向けリチウムイオン電池事業がウクライナ情勢の影響を受けて大きく落ち込んだこと、自動車業界向け検査装置事業の受注が伸び悩んだことにより減収・損失拡大となった。
(2) 産業素材関連部門
2022年3月期の売上高は10,875百万円となり、売上総利益は1,796百万円(前年同期は1,820百万円)となった。米国向け及び中国自動車業界向け樹脂・塗料が好調に推移したものの、メキシコ向けは、半導体不足に伴う部品供給制限による自動車メーカーの操業制限の影響を受けて落ち込み、また、コロナ禍の影響を受け食品関連事業が大きく落ち込んだ。
2023年3月期第1四半期の売上高は2,989百万円(前年同期比28.2%増)となり、セグメント利益は44百万円(同120.0%増)となった。前年同期に国内外ともに大きく落ち込んだ自動車業界向け樹脂・塗料事業は、北米及び国内向けにおいて持ち直しが見られた。
(3) 機械部品関連部門
2022年3月期の売上高は16,281百万円、売上総利益は3,453百万円(前年同期は2,710百万円)となり、大幅な増収増益となった。ねじ関連事業は、コロナ禍により2年ほど苦戦したが、コロナ禍前の水準にまで回復した。ばね関連事業は、車載備品用定荷重ばねの量産受注が好調に推移し増益となった。ねじやばねについては、素材提供(“流れモノ”)型ビジネスであり、「収益基準変更」の影響は受けなかった。
2023年3月期第1四半期の売上高は4,250百万円(前年同期比7.2%)となり、セグメント利益は161百万円(同12.0%減)となった。ねじ関連事業は引き続き好調のようだ。特に、住宅設備向け、建設機械向け、産業機械向けが好調に推移し増益傾向が見られた。ばね関連事業の落ち込みに加え、コロナ禍で停滞していた営業活動を再開し、積極的に展開したことから販売費及び一般管理費が増加した。
3. 財務状況
2022年3月期末の資産合計は、前期末に比べ6,277百万円減少し、45,513百万円となった。その主な要因は、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度末は受取手形及び売掛金)が4,691百万円減少、前渡金が1,419百万円減少したことなどによるものである。負債合計は、同6,642百万円減少し、22,889百万円となった。その主な要因は、支払手形及び買掛金が5,232百万円減少、契約負債(前連結会計年度末は前受金)が2,135百万円減少したことなどによるものである。純資産合計は、同365百万円増加し、22,623百万円となった。これは主として為替換算調整勘定が623百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が198百万円減少したことによるものである。
2023年3月期第1四半期末における資産合計は、前期末に比べ782百万円減少し、44,731百万円となった。その主な要因は、前渡金が373百万円増加、投資有価証券が118百万円増加した一方、受取手形、売掛金及び契約資産が1,355百万円減少したことなどによるものである。負債合計は、前期末に比べ1,217百万円減少し、21,671百万円となった。その主な要因は、契約負債が256百万円増加、その他流動負債が467百万円増加した一方、支払手形及び買掛金が623百万円減少、電子記録債務が546百万円減少したことなどによるものである。純資産は、前期末に比べ435百万円増加し、23,059百万円となった。その主な要因は、前期末に比べ為替換算調整勘定560百万円の増加及び、親会社株主に帰属する四半期純利益147百万円を計上した一方、配当金の支払い338百万円を実施したことによるものである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<SI>