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富士ソフト Research Memo(4):顧客の価値向上に資する多彩なICTサービス・プロダクトを提供(2)

注目トピックス 日本株
■事業内容

3. 特需剥落影響はあるが、富士ソフト<9749>らしさを発揮し続ける狭義のプロダクト・サービス
SI事業のプロダクト・サービスは、狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに区分される。狭義のプロダクト・サービスが全社に占める構成比は売上高が32.6%(2022年12月期上期)、営業利益が28.3%(同)であった。2022年12月期上期の売上高は前年同期比6.1%減、営業利益は同25.5%減となり、セグメント利益率は前年同期比1.5ポイント低下の5.5%であった。主な減収要因は、前年に売上計上したGIGAスクール関連の大型案件剥落とグループ会社における販売代理店契約終了であり、大幅減益は減収効果にプロダクトミックス悪化影響が重なったことによる。

一方、2022年12月期上期における受注高は、他社ライセンスの増加等を受けて前年同期比14.6%増となり、同期末の受注残高は同51.6%増と急拡大している。

狭義のプロダクト・サービスは、1)自社プロダクト(ペーパーレスシステムの「moreNOTE」、情報化社会における総合教育ソリューションの「みらいスクールステーション」、個人所有のスマートフォンなどを会社の業務で活用するツールである「smartBYOD」、コミュニケーションロボットの「PALRO」、SIMフリー向けモバイルルータ「FS030W、FS040W」、仮想空間活用ツールである「FAMシリーズ」等)、2)ライセンスビジネス(マイクロソフト製品、AWS、VMware等)、3)物販等(PC、サーバー等)から成る。

特需一巡的な要因により自社プロダクトと物販等は減速気味ながら、ライセンスビジネスについてはWindows7のサポート終了(2020年1月14日)特需のピークアウト後も成長が継続している。この点、ライセンスビジネスのメインプロダクトに育ったMicrosoft365(旧Office)や各種クラウドサービスがサブスクリプションモデル(売り切り商売ではなく、利用期間に応じて料金を徴収するビジネスモデル)を採用していることが、事業の安定性向上につながっているように見える。

結果、2022年12月期上期における区分内売上比率は、自社プロダクトが25%程度、ライセンスビジネスが40%程度、物販等が35%程度と想定される。なお、同社の場合、ライセンス製品の導入サポートに関わる売上は自社プロダクトに計上され、厚い利幅を確保しているもようである。

2021年8月、同社はPCのライフサイクル管理に関するすべての作業(PCの選定・レンタル、キッティング、管理・サポート、更新プログラム適用等)をワンストップで対応する「デスクトップフルサービス」の提供をスタートした。この自社サービスではMicrosoft365の導入/利活用を推奨しており、狭義のプロダクト・サービス全般をグロースし収益性を高める力を持つ。マイクロソフトがサブスクリプションモデルであるWindows365(企業向け仮想デスクトップ=クラウドPC)のサービス提供を2021年8月から、次期OSであるWindows11の提供も同年10月から開始していることもあり、同社の「デスクトップフルサービス」は順調な立ち上がりを見せている。

独立系SIerとして特定のハードウェアに縛られない柔軟なシステム構築力を強みの1つとする同社が、リモート教育関連製品やコミュニケーションロボット、モバイルルータ等のハードウェアを含む自社ブランド・プロダクトを投入していることは、ユニークな挑戦に見える。

一例を挙げると、リモートワーク用社内ツールであった仮想オフィス空間「FAMoffice(ファムオフィス)」の外販(2021年6月開始)は、EX(従業員エクスペリエンス)とCX(顧客体験)を融合した典型的なドッグフーディング事例としてだけでなく、メタバース市場への取り組み事例としても大いに注目できよう。「FAMoffice」はバーチャル空間上に再現されたオフィスであり、実際のオフィスに近い臨場感や一体感、利便性を提供する製品である。「FAMoffice」にアバター(バーチャル空間上の自分を表すキャラクター)として出社することで、全体の俯瞰や特定メンバーの状況把握が容易になるだけでなく、他のメンバーとの資料・情報共有やチャット・ビデオ通話を素早く行える等の仕組みによりメンバー同士のコミュニケーション(会議、相談、雑談)が簡単に行えるため、リモートワークのメリット(BCP対策、経費削減、業務効率化、働き方改革等)を高め、デメリット(セキュリティ問題、コミュニケーションロス問題等)を軽減することが可能となる。

同社は、2022年4月にバーチャル教育空間である「FAMcampus(ファムキャンパス)」、オンライン商談ルームである「MEMTOM(メントム)」、バーチャルイベント空間である「FAMevent(ファムイベント)」の提供・販売を相次いで開始した。

「FAMcampus」と「FAMevent」は、その名の通り「FAMoffice」で培われた技術やコンセプトをベースにしており、前者は学研ホールディングス<9470>のグループ会社である(株)学研塾ホールディングス及び(株)学研メソッドとの共同実証を経て、後者は「厚生労働省予防・健康インセンティブ推進事業」として医療保険者、企業健康増進担当者、自治体、事業主を対象に開催された「データヘルス・予防サービス見本市2021」での先行導入を経て、商業サービスへと磨き上げられている。また、「MEMTOM」は、従来のビデオ会議システムでは難しかった双方向での資料の共有や操作、申込書記入等の契約締結までに至る一連の手続きを可能としたサービスである。

いずれのプロダクトも、「ICTの力で社会課題に取り組む事業」かつ「自社のDXを顧客の競争力向上に貢献させる事業」という点で同社らしさが感じられる。また、同社が自身のコアコンピタンスである「技術力と提案力」を注ぎ込んだ自社プロダクトにより、新たな付加価値の創造に取り組む戦略は「挑戦と創造」という社是に沿った動きと言え、会社側は「投資局面後の収益性については高い水準を求めている」としている。

この点、これまで全社水準を下回って推移してきた狭義のプロダクト・サービスのセグメント利益率が、2018年12月期の2.9%から2020年12月期には6.4%と3.5ポイントもの大幅改善を示していた。2022年12月期上期はプロダクトミックス要因等による採算性悪化で5.5%へと低下しているが、依然として2019年12月期の4.5%を上回った水準に踏みとどまっていることは評価に値しよう。狭義のプロダクト・サービス事業は、採算性に幅がある商材のスポット的な売上計上に左右されるため、セグメント利益率の短期的な変動に一喜一憂する必要はないものの、今後の推移については期待を持って見守りたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)



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