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富士ソフト Research Memo(7):「企業価値向上委員会」による一歩踏み込んだアウトプットに期待(1)

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

1. 2022年12月期の連結業績予想
富士ソフト<9749>による2022年12月期の連結業績予想は、売上高が前期比3.0%増の265,500百万円、営業利益が同2.7%増の17,300百万円、経常利益が同2.9%増の18,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.2%増の9,700百万円と、2013年に12月期決算へ移行してから実質的に9期連続での増収・営業増益を見込んでいる。

配当予想は、2021年12月期実績の年間52円/株(第2四半期末に26円/株、期末に26円/株)から年間109円(第2四半期末に54円/株、期末に55円/株)へと大幅に引き上げられ、8年連続増配となる見通しである。

業績予想及び配当予想は本年2月公表の期初予想から据え置かれているが、上期計画に対する達成率(親会社株主に帰属する四半期純利益は133.0%)や通期計画に対する進捗率(同60.3%)から見て、現時点では増額着地となる可能性が大きいと考えている。なお、期末配当55円/株については、業績に応じて通期での配当性向が35%以上になるよう見直すとしている。中間配当が期初計画通りの54円/株となり、その配当性向が29.0%(配当)であったことから、比較的大きな見直しになる可能性がある。

2. 新中期経営計画では2024年12月期に売上高3,000億円・営業利益200億円の突破を狙う
2022年2月、同社は「経営方針」と「各種戦略」、「財務方針」、「数値目標」を柱とする新たな中期経営計画を公表した。そこで掲げられた「経営方針」と「各種戦略」は連綿と続くブレない内容となっている。他方、「財務方針」と「数値目標」(2024年12月期に売上高3,000億円以上、営業利益200億円以上、ROIC8.0%以上、ROE9.0%以上、EBITDAマージン9.0%以上、配当性向35.0%以上)については、過去の中期経営計画に比べ内容的にも水準的にも一歩踏み込んだものとなっている。

とはいえ、「数値目標」について物足りなさを感じている市場関係者がいることも事実であろう。しかしながら、ここで注目したいのは新たな中期経営計画を策定する第一段階として、事業戦略や財務戦略の基本となる市場における自社の立ち位置が「理念や文化、スキルやリソース、実績と方向性」等を踏まえてしっかりと明確化されていることである。将来予測が困難なVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)時代を生き抜くために、「先ずは己を知り、次に負けない戦略を練る」という経営姿勢が貫かれたうえで今回の数値目標が設定されていることを素直に評価したい。

また同社は、「成長を目指さず、効率と利益を重視した縮小均衡型経営」を良しとしない「攻めの経営姿勢」を継続することを強調する一方で、「IT大手企業としてのしっかりとした振舞い」や「プライム市場対応」を明言し、ROEやROICをKPIに取り入れ、配当性向の引き上げにも踏み切っている。

こうした点を踏まえると、今回の新中期経営計画には「ベンチャーと大手」や「成長と効率」、「投資と分配」等を二項対立的に捉えるのではなく、二項動態的に捉えることで中長期的な企業価値向上を目指す同社の決意が感じられる。ベンチャー魂と大手IT企業の矜持を両立した成長ストーリーの実現に期待したい。

3.「企業価値向上委員会」では5つの経営課題を審議
同社は新中期経営計画を2022年2月に公表して以降、多くの投資家と建設的な対話を行ってきた。そして2022年8月、そこで得られた多角的な見識を活用しステークホルダーに対するさらなる価値向上を推進するために「企業価値向上委員会」を新たに設置した。

客観的視点を確保するため、「企業価値向上委員会」は取締役会出席者に加え外部アドバイザリーにより構成されており、同委員会の下には、1)企業統治検証、2)株主投資家対応、3)事業検証、4)企業グループ検証、5)不動産検証、という5つの課題別にワーキンググループ(WG)が設置されている。

1)と2)のWGはコーボレートガバナンスの高度化に関わる課題を担当するもので、その他3つのWGは経営財務戦略(事業戦略、長期的ビジョン、資本配分戦略、子会社上場や不動産所持の意義等)に関わる課題を担当する。そして、各WGは担当課題について調査・検証を実施し、同委員会はWGがまとめ上げた素案を審議することになる。

現状、WGの構成メンバー等は開示されていないが、ステークホルダーの一翼を担う従業員が組織横断的に集められ、別のステークホルダーが問題視する「同業他社比較で相対的に低いとされる収益性や資本効率」について現状認識と今後の在り方を徹底的に議論する場が設けられているとするならば、大いに注目できる。

なお、同社は「企業価値向上委員会」による課題の検証過程や最終報告(2023年2月)を受けた施策の実行状況を継続的に開示するとしており、従業員はじめ顧客や株主等の各ステークホルダーにとっての最適解を志向する一歩踏み込んだアウトプットがなされることに期待したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)



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