ザイマックス Research Memo(5):オフィス、商業施設などを中心に、投資主価値の向上を目指す(1)
[22/11/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の成長戦略
1. 今後の運用成長戦略
ザイマックス・リート投資法人<3488>では、2023年2月期(第10期)、2023年8月期(第11期)の運用成長戦略について、上場以来、継続してきた内部成長に加え、外部成長を実施していくことで、これまで以上のスピードで成長を続け、巡行DPU(DPU:1口当たり分配金)の向上を通じて、さらなる投資主価値の向上を目指す考えだ。
内部成長戦略では、2018年8月期(第1期)〜2020年8月期(第5期)に、オフィス・商業施設で、ザイマックスグループのマネジメント力を最大限活用し、良好な賃貸マーケットという好機を捉えた着実な内部成長を実現した。2021年2月期(第6期)以降はコロナ禍の影響によりオフィスの稼働率が一時的に弱含んだが、早期に稼働率及び収益力を回復した。また、ホテルはコロナ禍の影響を大きく受けていたが、2022年2月期(第8期)からは安定収益を回復している。今後については、オフィス・商業施設は、高稼働率を維持した安定的な運営を図る。ホテルでは、売上げの回復による変動賃料の発生が期待できる見通しだ。
また、外部成長戦略では、2021年2月期(第6期)〜2021年8月期(第7期)には、低LTVを生かして、借入金を資金源に外部成長を実行し、2022年2月期(第8期)には、資産入替による含み益の還元を実行し、2022年8月期(第9期)には、公募増資により資産規模を拡大している。今後も、戦略的な資産入替により、含み益の還元を継続的に検討する。
これらの成長戦略に加えて、同投資法人ではESGへの取り組みを強化し、GRESB(欧州の主要年金グループを中心に2009年に創設された不動産会社・ファンドのESG配慮を評価する制度)認証の取得により、投資家層の拡大や資金調達手段の多様化を目指す計画だ。
ポートフォリオの用途別成長戦略は以下のとおりである。
2. オフィスの成長戦略
同投資法人にとって、オフィスはポートフォリオのなかで最大を占め、今後も注力する事業である。
オフィスの市場環境について、(株)ザイマックス不動産総合研究所の分析によれば、コロナ禍に伴いリモートワークが増えてきたが、コミュニケーションが難しい、業務・評価などのマネジメントが難しいなどのデメリットが見えてきており、人や機能が集まる場としてのオフィスの機能が再認識されているという。さらに、コロナ禍収束後(ポストコロナ)の出社率について、50%程度とする企業の割合が最も多いものの、中小規模企業では大規模企業と比較して、100%出社を考える割合も多くなっている。
東京23区におけるオフィス賃貸の成約件数分布を分析すると、過去から現在の賃貸マーケットにおいて、おおむね1坪当たり賃料単価が1万円〜2万円台までに旺盛なテナントニーズが存在し、また、最寄駅から徒歩5分圏内の物件は、5分超の物件に比べて空室率が低い。一方、中小規模のオフィスビルは新規供給が限定的であり、その希少性は今後も高まると考えられる。オフィス規模別の新規成約賃料の推移を見ると、中小規模ビルは大規模ビルに比べて賃料のボラティリティが低く、収益の安定性が高いことが示されている。
同投資法人では、現在はコロナ禍を契機に、オフィスの多様化が加速していると見ている。企業規模や業種によって将来的な社員の出社計画に差がある。また、ワークプレイスの多様化を進めている企業では、各ワークプレイスに求める要素が多様化している。メインオフィスは、社員が「集まる場」としての拠点であり、社員の集合に利便性の高い立地(都心部)、安全な建物性能(耐震性能、セキュリティ性能)、ビルの清掃衛生や維持管理の状態が良いことなどが求められる。一方、メインオフィス以外は、タッチダウンとしての拠点(他のオフィスから来る利用者が作業できる環境を整えた場所)や自宅近くで働くための拠点であり、往訪先や従業員の居住地に近い立地、高いセキュリティ性能、インターネット環境(安全なWi-Fi環境)などが必要と考えられる。
このように、コロナ禍を契機にワークプレイスの多様化が加速しているが、「立地の良さ」と「管理の質の高さ」を強みとする同投資法人の保有オフィスは、ポストコロナにおいて優位性を持つと考えられる。同投資法人は、「不動産の使われ方」や企業のオフィス戦略の動向を把握する不動産マネジメント事業やジザイワーク事業を有し、また、ザイマックス不動産総合研究所での調査・研究によって培ったグループの知見・ノウハウの活用によって競争優位に立てると弊社は見ている。
実際、同投資法人が保有するオフィスの平均稼働率推移を見ると、リーマンショック後に他のJ-REIT保有オフィスは稼働率が低下したのに対し、同投資法人の保有オフィスは一貫して高い稼働率を維持していた。2021年8月期(第7期)は、コロナ禍をきっかけに在宅勤務が増え、退去が増えたことで一時的に稼働率が低下した。しかし、2022年2月期(第8期)には空室区画を順調に埋戻し、新たな退去もなかったことから稼働率は98.8%に回復し、2022年8月期(第9期)には99.2%に上昇している。2023年2月期(第10期)も99.0%の高水準を維持すると予想しており、スポンサーグループの運営力によって、今後も安定稼働に向けて順調に推移する見通しだ。
同投資法人が2022年8月31日時点に保有するオフィスは10物件であり、取得価格ベースではポートフォリオ全体の58.3%を占める。附置住宅(一定規模以上のオフィスビル等の建設・開発を行う事業者に対し、開発に合わせて義務付けられた一定戸数以上の集合住宅など)を除くオフィステナント80件の分散状況を見ると、テナントは業種の偏りが少なく、また、賃貸面積上位10社の平均入居期間は12年8ヶ月に達し、同投資法人の保有オフィスの全テナント平均の10年11ヶ月や、ザイマックス不動産総合研究所が「東京23区オフィステナントの入居期間分析(2018年)」にて公表した東京23区オフィスビルの平均入居期間9.6年を上回っており、高い粘着性を持ち、同投資法人の管理の質に対する満足度が高いことが示されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<NS>
1. 今後の運用成長戦略
ザイマックス・リート投資法人<3488>では、2023年2月期(第10期)、2023年8月期(第11期)の運用成長戦略について、上場以来、継続してきた内部成長に加え、外部成長を実施していくことで、これまで以上のスピードで成長を続け、巡行DPU(DPU:1口当たり分配金)の向上を通じて、さらなる投資主価値の向上を目指す考えだ。
内部成長戦略では、2018年8月期(第1期)〜2020年8月期(第5期)に、オフィス・商業施設で、ザイマックスグループのマネジメント力を最大限活用し、良好な賃貸マーケットという好機を捉えた着実な内部成長を実現した。2021年2月期(第6期)以降はコロナ禍の影響によりオフィスの稼働率が一時的に弱含んだが、早期に稼働率及び収益力を回復した。また、ホテルはコロナ禍の影響を大きく受けていたが、2022年2月期(第8期)からは安定収益を回復している。今後については、オフィス・商業施設は、高稼働率を維持した安定的な運営を図る。ホテルでは、売上げの回復による変動賃料の発生が期待できる見通しだ。
また、外部成長戦略では、2021年2月期(第6期)〜2021年8月期(第7期)には、低LTVを生かして、借入金を資金源に外部成長を実行し、2022年2月期(第8期)には、資産入替による含み益の還元を実行し、2022年8月期(第9期)には、公募増資により資産規模を拡大している。今後も、戦略的な資産入替により、含み益の還元を継続的に検討する。
これらの成長戦略に加えて、同投資法人ではESGへの取り組みを強化し、GRESB(欧州の主要年金グループを中心に2009年に創設された不動産会社・ファンドのESG配慮を評価する制度)認証の取得により、投資家層の拡大や資金調達手段の多様化を目指す計画だ。
ポートフォリオの用途別成長戦略は以下のとおりである。
2. オフィスの成長戦略
同投資法人にとって、オフィスはポートフォリオのなかで最大を占め、今後も注力する事業である。
オフィスの市場環境について、(株)ザイマックス不動産総合研究所の分析によれば、コロナ禍に伴いリモートワークが増えてきたが、コミュニケーションが難しい、業務・評価などのマネジメントが難しいなどのデメリットが見えてきており、人や機能が集まる場としてのオフィスの機能が再認識されているという。さらに、コロナ禍収束後(ポストコロナ)の出社率について、50%程度とする企業の割合が最も多いものの、中小規模企業では大規模企業と比較して、100%出社を考える割合も多くなっている。
東京23区におけるオフィス賃貸の成約件数分布を分析すると、過去から現在の賃貸マーケットにおいて、おおむね1坪当たり賃料単価が1万円〜2万円台までに旺盛なテナントニーズが存在し、また、最寄駅から徒歩5分圏内の物件は、5分超の物件に比べて空室率が低い。一方、中小規模のオフィスビルは新規供給が限定的であり、その希少性は今後も高まると考えられる。オフィス規模別の新規成約賃料の推移を見ると、中小規模ビルは大規模ビルに比べて賃料のボラティリティが低く、収益の安定性が高いことが示されている。
同投資法人では、現在はコロナ禍を契機に、オフィスの多様化が加速していると見ている。企業規模や業種によって将来的な社員の出社計画に差がある。また、ワークプレイスの多様化を進めている企業では、各ワークプレイスに求める要素が多様化している。メインオフィスは、社員が「集まる場」としての拠点であり、社員の集合に利便性の高い立地(都心部)、安全な建物性能(耐震性能、セキュリティ性能)、ビルの清掃衛生や維持管理の状態が良いことなどが求められる。一方、メインオフィス以外は、タッチダウンとしての拠点(他のオフィスから来る利用者が作業できる環境を整えた場所)や自宅近くで働くための拠点であり、往訪先や従業員の居住地に近い立地、高いセキュリティ性能、インターネット環境(安全なWi-Fi環境)などが必要と考えられる。
このように、コロナ禍を契機にワークプレイスの多様化が加速しているが、「立地の良さ」と「管理の質の高さ」を強みとする同投資法人の保有オフィスは、ポストコロナにおいて優位性を持つと考えられる。同投資法人は、「不動産の使われ方」や企業のオフィス戦略の動向を把握する不動産マネジメント事業やジザイワーク事業を有し、また、ザイマックス不動産総合研究所での調査・研究によって培ったグループの知見・ノウハウの活用によって競争優位に立てると弊社は見ている。
実際、同投資法人が保有するオフィスの平均稼働率推移を見ると、リーマンショック後に他のJ-REIT保有オフィスは稼働率が低下したのに対し、同投資法人の保有オフィスは一貫して高い稼働率を維持していた。2021年8月期(第7期)は、コロナ禍をきっかけに在宅勤務が増え、退去が増えたことで一時的に稼働率が低下した。しかし、2022年2月期(第8期)には空室区画を順調に埋戻し、新たな退去もなかったことから稼働率は98.8%に回復し、2022年8月期(第9期)には99.2%に上昇している。2023年2月期(第10期)も99.0%の高水準を維持すると予想しており、スポンサーグループの運営力によって、今後も安定稼働に向けて順調に推移する見通しだ。
同投資法人が2022年8月31日時点に保有するオフィスは10物件であり、取得価格ベースではポートフォリオ全体の58.3%を占める。附置住宅(一定規模以上のオフィスビル等の建設・開発を行う事業者に対し、開発に合わせて義務付けられた一定戸数以上の集合住宅など)を除くオフィステナント80件の分散状況を見ると、テナントは業種の偏りが少なく、また、賃貸面積上位10社の平均入居期間は12年8ヶ月に達し、同投資法人の保有オフィスの全テナント平均の10年11ヶ月や、ザイマックス不動産総合研究所が「東京23区オフィステナントの入居期間分析(2018年)」にて公表した東京23区オフィスビルの平均入居期間9.6年を上回っており、高い粘着性を持ち、同投資法人の管理の質に対する満足度が高いことが示されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<NS>