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ココナラ Research Memo(10):「ココナラ」の流通高1,000億円、営業利益率30%を経営目標に掲げる

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

2. 今後の成長戦略
ココナラ<4176>は国内におけるオンライン完結型のサービスECの潜在市場規模について、2020年の1,000億円規模から2030年にはEC化率上昇や法人利用の拡大によって9,600億円〜1.6兆円の規模に拡大するものと試算している。年平均成長率で換算すると25〜30%ペースで拡大していくことになる。こうした成長市場において同社は将来的に会員数で1,000〜2,000万人を獲得し、あらゆるサービス(スキル)が購入できる総合型サービスECプラットフォームとして「ココナラ」を、Amazonや楽天市場のように圧倒的なポジションを持つプラットフォームに育成する考えだ。

サービスのEC化については、出品者(サービス提供者)側の品質レベルが不明なため、購入リスクがあり普及率が今まで低い要因にもなっていた。これに対して、「ココナラ」では40万人の出品者のデータベースを保有し、希望するサービスを提供する出品者に簡単にリーチできることや、オンラインコミュニケーション機能の充実により、時間・場所に関係なくスピーディな交渉が可能なこと、複数の出品者のスキルを可視化したレビューを比較参照することで、最適な出品者を安心して選択できることが強みとなっている。また、対面取引と同じ品質のサービスを低コストで購入できるメリットが認知されるようになってきたことで、2020年以降は制作・ビジネス系を中心に成長が加速している状況にある。2020年後半以降の新型コロナウイルス感染症の拡大を契機とした特需的な伸びは落ち着きを見せ、2023年8月期の流通高成長率は25%と一旦減速すると見ているが、ビジネス利用拡大に向けて取り組みを開始している各種施策の効果が顕在化すれば、2024年8月期以降に成長が再加速する可能性は十分にあると弊社では見ている。

同社は「ココナラ」の中長期目標として流通高1,000億円、営業利益率で30%を目指している。流通高と営業利益率の達成時期については必ずしも一致しないが、流通高は年率25%成長が続いたとすると2031年8月期にも達成できることになる。テイクレート25%を前提とすれば営業収益は250億円となり、その段階では営業利益率も2ケタ台の水準になっているものと弊社では見ている。現在は1,000億円を達成するための先行投資期間として位置付けており、積極的な投資により期間損益が続くことも辞さないスタンスで経営に望む考えだ。

流通高拡大に向けては、現在2万社を超えた法人会員のさらなる開拓がカギを握ると見られる。国内には小規模企業だけで300万社を超えており、これら企業をマスマーケティングやアライアンス戦略を展開しながら獲得し、さらには大企業を獲得することで高成長を目指す。新たなマッチングサービスとして「ココナラエージェント」を開始することもあり、2023年8月期は法人会員を一段と拡大していくための重要な1年になると考えられる。

また、プロダクト拡張施策については、以下の5つの取り組みを推進し、「ココナラ」を業界随一となる利便性の良いプラットフォームに育成することを目指す。

(1) サービス提供手法の拡張
テキスト、電話、ビデオなどオンラインによる多様なコミュニケーション手法をさらにブラッシュアップしていく。具体的な取り組みとしては、「トークルーム※」の管理機能やコミュニケーション機能をさらに拡充し、より利便性の向上を図る。

※サービス購入後に出品者と購入者の2人だけが閲覧できる非公開のページ。取引相手とのやり取りや、添付ファイルの送受信ができる。


(2) カテゴリの拡張
制作・ビジネス系、相談・プライベート系などあらゆるユーザーニーズに応じてカテゴリの拡張を随時実施していく。現在は15のメインカテゴリ、全体では450を超える小カテゴリに分けてサービスを出品している。時代のニーズに合わせて新たなサービスが次々と生まれており、出品数や購買数がある程度増加すれば新たなカテゴリとして分類することになる。

(3) マッチング手法の拡張
マッチング手法として、カテゴリ検索による直接購入に加えて、「見積り相談」(2018年)、「公開依頼」(2016年)、「コンテンツ購入」(2020年)などのマッチング機能を導入してきた。「見積り相談」とは購入者が出品者に対して、出品中のサービスのカスタマイズ要望や依頼したい仕事内容をサービス購入前に出品者に相談できる機能のことを指す。「ココナラ」の取引実績の約30%が「見積り相談」機能を活用しており、なかでも制作・ビジネス系のサービスについては半分以上で利用されている。「公開依頼」とは、サービス購入者側が依頼内容や価格、条件などを決めてサービス提供者を募集する機能となる。クラウドソーシングとほぼ同様のスタイルのため取引実績は全体の3%未満と少ないものの、今後ビジネス用途の利用が増えてくれば増加する可能性がある。「コンテンツ購入」とは、出品者が作成したコンテンツをココナラブログ上で販売・購入できる機能を指す。また、IT分野ではプロジェクト期間が数ヶ月にわたる案件も多く、こうしたニーズに対応するため、新たなプラットフォームとして月次稼働型の「ココナラエージェント」を2023年1月より開始する。長期的な視点ではAI技術を活用したリコメンド機能も開発する予定で、マッチング機能のさらなる強化に取り組む考えだ。

(4) ユーザー属性の拡張
「ココナラ」では個人及び個人事業主が中心であったが、中長期的な成長を実現していくためには中小企業を中心とした法人市場の開拓も重要と考えており、既述のとおり法人ユーザーの開拓を2023年8月期より本格的に取り組む方針だ。法人ユーザーが「ココナラビジネス」を利用するメリットとしては、次の3点が挙げられる。第1に新規事業開発や新たな施策を打つ際に、「ココナラビジネス」を通じて該当するスキルを持つ出品者のサービスを購入することで、迅速かつ限られた予算で検証を行うことが可能なこと、第2に外部人材のスキルを活用することで、社内のリソース不足/不在への対応や社内業務の効率化に寄与すること、第3に購買コストの削減が可能になることの3点となる。

(5) 課金手法の拡張
課金手法については、従来サービス納品時の都度課金のみであったが、2023年8月期中にマイルストン課金が可能となる「高額取引向け決済機能」や、レッスンなど定期的なサービス提供が見込まれるカテゴリでの利用が見込まれる「サブスクリプション機能」を導入する計画となっている。課金手法を多様化することで、サービスの利便性向上と活性化を促進する効果が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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