クオールHD Research Memo(12):医薬品製造販売事業はグループシナジーを生かして高成長を目指す
[22/12/14]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■クオールホールディングス<3034>の中長期の成長戦略と進捗状況
3. 医療関連事業の成長戦略と進捗状況
医療関連事業の成長戦略として、「専門性の深化」と「グループシナジーの最大化」を掲げ、それぞれ売上規模の拡大とともに収益力を高めていく方針となっている。
(1) CSO事業
CSO事業におけるCMR市場の現状認識として、新薬の主軸が顧客ターゲット(医療施設や医師)の多いプライマリー薬(生活習慣病治療薬等)から、顧客ターゲットが限られるスペシャリティ薬(抗がん剤等)にシフトするなかで、製薬企業におけるMR人材の削減傾向が今後も続くと見ている。一方で、専門性の高いMRやITリテラシーの高いMRについての需要は拡大しており、そうしたなかで専門性の高いCMRの需要は堅調に推移するものと想定している。
実際、「2022年度版MR白書」によれば国内のMR人員は2013年度の6.5万人をピークに2021年度は5.1万人と減少傾向が続いている。一方、日本CSO協会が発表した「わが国のCSO事業に関する実態調査-2021年度-」によれば、CMRの稼働人員は2014年の4,148人をピークに2018年に3,110人まで減少したが、その後は持ち直し2021年は3,424人となっている。全MRに占めるCMRの比率については2018年の5.0%から2021年は6.4%と過去最高水準にまで上昇している。CMRの先進国である米国ではCMR比率が11.2%、英国では14.0%とそれぞれ10%台になっていることを考えれば、国内でも今後さらにCMR比率が上昇する可能性は十分にあると見られる。とは言え、米国のMR数が5.8万人でCMR数は約6,500人の規模であることを考えると、絶対数についての伸びしろは大きくなく、今後は専門性が求められるCMR人材の需要が伸びていくことが予想される。
こうした状況を踏まえて、同社では需要拡大が見込める専門領域に特化したCMRや幅広い領域をカバーできるCMRの採用や育成に注力していくほか、M&Aも視野に入れて業界シェアを拡大することで成長を目指していく戦略だ。具体的には、CMR人員を現状の約600名から1,000名程度に拡大し、業界シェアで現在の約15%から20%超に引き上げることを目標としている。同社のCSO事業の強みとして、MRを教育するためのスタッフが20名と業界トップクラスの陣容を誇り、基礎分野から高度な専門分野に至るまで幅広く充実した教育カリキュラムを構築している点が挙げられる。特に、最近はオンコロジー領域、炎症性腸疾患、中枢神経疾患領域のほか新型コロナウイルス感染症等のニーズが高く、こうした専門分野のCMRの育成ノウハウを有していることは強みになると考えられる。また、CRO事業についても同社が強みを持つ食品分野での受注獲得や、専門性の高い分野の受注獲得に注力していく方針だ。
(2) 医療系人材紹介派遣事業
医療系人材紹介派遣事業については、薬剤師、保健師、登録販売者等の医療従事者の派遣サービスの拡大に加えて、薬局の事業承継コンサルティングや法人向けの健康経営に関するコンサルティングなどサービスラインナップの拡充を図っている。今後はM&A等も活用しながら医療系人材サービスの多角化を図り、事業規模を拡大していく戦略となっている。
(3) 医薬品製造販売事業
同社が医薬品製造販売事業に進出を決めた背景には、総合ヘルスケアカンパニー構想がある。国内トップクラスの調剤薬局チェーンである同社は、一方で、医薬品の営業担当者であるCMRの派遣(CSO事業)や、医薬品の研究開発をサポートするCRO事業等も行っている。医薬品製造販売事業に進出することで研究開発から製造、販売、調剤を経て患者に至る、ヘルスケア分野において切れ目のないサービスを提供することが可能となる。
グループシナジーとしては、グループの調剤薬局で藤永製品の取扱店舗数を拡げている。今後は工場への設備投資を進めていくほか、M&Aも活用して事業規模を拡大し、次のステップとして大手製薬企業からの受託製造等にも展開していくことで事業規模を拡大していく戦略となっている。2022年3月期の売上規模は20億円前後とまだ小さいが、これら戦略を実行することで中期的には300億円を目指しており、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. 医療関連事業の成長戦略と進捗状況
医療関連事業の成長戦略として、「専門性の深化」と「グループシナジーの最大化」を掲げ、それぞれ売上規模の拡大とともに収益力を高めていく方針となっている。
(1) CSO事業
CSO事業におけるCMR市場の現状認識として、新薬の主軸が顧客ターゲット(医療施設や医師)の多いプライマリー薬(生活習慣病治療薬等)から、顧客ターゲットが限られるスペシャリティ薬(抗がん剤等)にシフトするなかで、製薬企業におけるMR人材の削減傾向が今後も続くと見ている。一方で、専門性の高いMRやITリテラシーの高いMRについての需要は拡大しており、そうしたなかで専門性の高いCMRの需要は堅調に推移するものと想定している。
実際、「2022年度版MR白書」によれば国内のMR人員は2013年度の6.5万人をピークに2021年度は5.1万人と減少傾向が続いている。一方、日本CSO協会が発表した「わが国のCSO事業に関する実態調査-2021年度-」によれば、CMRの稼働人員は2014年の4,148人をピークに2018年に3,110人まで減少したが、その後は持ち直し2021年は3,424人となっている。全MRに占めるCMRの比率については2018年の5.0%から2021年は6.4%と過去最高水準にまで上昇している。CMRの先進国である米国ではCMR比率が11.2%、英国では14.0%とそれぞれ10%台になっていることを考えれば、国内でも今後さらにCMR比率が上昇する可能性は十分にあると見られる。とは言え、米国のMR数が5.8万人でCMR数は約6,500人の規模であることを考えると、絶対数についての伸びしろは大きくなく、今後は専門性が求められるCMR人材の需要が伸びていくことが予想される。
こうした状況を踏まえて、同社では需要拡大が見込める専門領域に特化したCMRや幅広い領域をカバーできるCMRの採用や育成に注力していくほか、M&Aも視野に入れて業界シェアを拡大することで成長を目指していく戦略だ。具体的には、CMR人員を現状の約600名から1,000名程度に拡大し、業界シェアで現在の約15%から20%超に引き上げることを目標としている。同社のCSO事業の強みとして、MRを教育するためのスタッフが20名と業界トップクラスの陣容を誇り、基礎分野から高度な専門分野に至るまで幅広く充実した教育カリキュラムを構築している点が挙げられる。特に、最近はオンコロジー領域、炎症性腸疾患、中枢神経疾患領域のほか新型コロナウイルス感染症等のニーズが高く、こうした専門分野のCMRの育成ノウハウを有していることは強みになると考えられる。また、CRO事業についても同社が強みを持つ食品分野での受注獲得や、専門性の高い分野の受注獲得に注力していく方針だ。
(2) 医療系人材紹介派遣事業
医療系人材紹介派遣事業については、薬剤師、保健師、登録販売者等の医療従事者の派遣サービスの拡大に加えて、薬局の事業承継コンサルティングや法人向けの健康経営に関するコンサルティングなどサービスラインナップの拡充を図っている。今後はM&A等も活用しながら医療系人材サービスの多角化を図り、事業規模を拡大していく戦略となっている。
(3) 医薬品製造販売事業
同社が医薬品製造販売事業に進出を決めた背景には、総合ヘルスケアカンパニー構想がある。国内トップクラスの調剤薬局チェーンである同社は、一方で、医薬品の営業担当者であるCMRの派遣(CSO事業)や、医薬品の研究開発をサポートするCRO事業等も行っている。医薬品製造販売事業に進出することで研究開発から製造、販売、調剤を経て患者に至る、ヘルスケア分野において切れ目のないサービスを提供することが可能となる。
グループシナジーとしては、グループの調剤薬局で藤永製品の取扱店舗数を拡げている。今後は工場への設備投資を進めていくほか、M&Aも活用して事業規模を拡大し、次のステップとして大手製薬企業からの受託製造等にも展開していくことで事業規模を拡大していく戦略となっている。2022年3月期の売上規模は20億円前後とまだ小さいが、これら戦略を実行することで中期的には300億円を目指しており、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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