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紀文食品 Research Memo(7):価格改定と市場の需要回復により業績の改善が進む

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

1. 2023年3月期の業績見通し
食品メーカーを取り巻く環境は大きく変化している。ロシアのウクライナ侵攻は、両国が主要輸出国である小麦や大豆、コーンなどの原材料価格の上昇を引き起こした。また、2021年後半から進行している原油価格の高騰は企業収益を圧迫している。こうした複数の要因から、食品メーカーは2022年に値上げラッシュを行ってきた。値上げはするものの、原料高を補うまでとはならず、2回目、3回目の値上げをする企業もある。紀文食品<2933>もこれらの外部環境の影響を受け、原材料価格とエネルギーコストが業績に影響する見通しである。この環境に対し通期業績の達成に向け具体的な取り組みを行っている。事業セグメントごとに利益が多少変動する可能性はあるが、2023年3月期の業績見通しは売上高104,052百万円、営業利益3,831百万円、経常利益3,319百万円、親会社に帰属する当期純利益は2,192百万円と増収増益であり、現時点では期初の計画を据え置きとしている。同社は第3四半期から第4四半期にかけての売上の構成比が2022年3月期では57.1%、営業利益が95.2%を占める、下期に大半の利益が上がる季節性のあるビジネスモデルである。2023年3月期も前期の進捗を見ながら、下期は国内食品事業で秋冬商戦を中心に季節性の高い商品カテゴリ、正月商戦でのおせち商品セットなどで拡販を図る。海外食品事業でも好調である「水産練り製品」「Healthy Noodle(糖質0g麺)」の売上増加の展開を図りながら、北米、中国以外のアジア、欧州において前期比2ケタ増収の更新を目指す。利益面では経済状況が不透明な見通しであるものの、原材料価格の高騰、エネルギー価格上昇は増収効果で吸収する見通しである。また、タイ工場における生産効率の改善に向けた取り組みも続けており、コスト上昇分を補う見通しである。

2. 国内食品事業
売上高は前期比3.0%増の72,972百万円、営業利益では2.4%増の2,059百万円を見込んでいる。同社は収益率かの確保のため、2度目の価格改定を実施しているため、販売数量を伸ばすことが、価格改定の効果を最大化することになる。秋冬の需要期を考慮したプロモーション施策の展開を行い、水産練り製品では「おでん」訴求などを通じた需要喚起を展開し、販売数量の上乗せを図る。顧客に高付加価値を提供できる「糖質0g麺」の認知率拡大と購買意欲喚起に向けても、費用対効果の高いSNSなどで訴求し商品販売の拡充を図る。同社はプロモーション戦略を総合的かつ包括的に行うことで、プロモーション戦略のリーチや頻度、販促物や配置など、顧客基盤のあらゆる側面に訴求する戦略が可能となっている。

3. 海外食品事業
売上高は前期比18.4%増の13,185百万円、営業利益では同14.2%増の1,276百万円を見込んでいる。経済活動の平準化に伴い実需が顕在化している市場では、需要の増加が見込まれる。同社は自社製品の既存チャネルにおける売上の積上げのほかに、新規顧客獲得のため、マーケティングを強化し販路拡大も積極的に行う。SNSを導入して、複数のオンラインチャネルを活用した潜在顧客にアプローチし、検索エンジン最適化、コンテンツマーケティングといった、さまざまなオンラインプラットフォームを通じて、国別・エリア別の状況に適したウェブサイトの可視性を高めることに重点をおいたプロモーションを行う。これによって、上期好調であった「水産練り製品」「Healthy Noodle(糖質0g麺)」の売上増加の展開を図る。また農産品などの仕入れ商品を含めた新規マーケットエリア・新規チャネルへの展開拡大を行う。これにより、同社の製品は新規市場での製品の知名度やブランド認知度の向上につながる要因があり既存製品とのシナジー効果を高め、市場価値の認識を高めることも可能となる。ブランドとしての知名度が市場で高まれば、それだけ新規顧客の獲得に効果を発揮することが考えられる。2023年3月期は欧州でも売上拡大を見据えつつ、上期から好調な米国とアジアでの売上を拡大に注力していく方針だ。

4. 食品関連事業
食品関連事業では国内において食品運送に関連した事業を行っている。上期は主力である物流事業において、社会活動の停滞により減少していたが、百貨店・駅ビル向けの物流量が行動制限の終了に伴い回復基調となり、売上増となっている。下期も引き続き社会活動の平準化が見込まれるため、コロナ禍で落ちた分の需要が回復基調であり、コロナ前までの外食需要は戻ると見込んでいる。利益面では物流センターでの電力代が想定以上に増加しているものの配送効率や業務効率の向上に向けた取り組みが功を奏しており、下期も運行便の集約による積載率の向上等の改善努力によって補い、前期並みの営業利益率を確保する方針である。リスク要因として原油価格や為替の変動によるコストの上昇が挙げられるが、2023年3月期においては、同社はエネルギーコスト増を前提として事業を運営していることから、燃料費用の増加が利益を棄損する影響は少ないと考えられる。想定外のエネルギー価格上昇という局面が起こった際は、顧客企業への負担要請、作業の効率化・販管費の削減により、コスト上昇分をカバーする考えだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 石灰達夫)



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