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日ピストン Research Memo(10):市場環境変化はあるがエンジン生き残りのシナリオも(2)

注目トピックス 日本株
■日本ピストンリング<6461>の成長戦略

(2) 新製品事業(非自動車エンジン事業)の育成・確立
非自動車エンジン事業では、医療分野や産業機械分野等における新製品事業の着実な進展と、M&A・オープンイノベーションを活用した早期事業化を目指す。

a) 医療分野
同社は、主力事業である自動車エンジン部品の製造販売事業で蓄積した金属材料技術や精密加工技術等のノウハウを活用して、2015年3月期より医療機器分野への事業展開を図っている。医療分野は現在、国内外の有力医療機器メーカーや大学等の研究機関と連携し、医療従事者や患者の立場に立った「人にやさしい医療機器」の開発に注力している。

医療用新材料チタン・タンタル合金「NiFreeT」は、ニッケルフリー・非磁性で生体適合性が高く、体内留置が可能で、医療機器用貴金属(プラチナ)と比較し安価という優位性がある。「NiFreeT」はピストンリング用に自社開発した形状記憶合金だが、ニッケルフリーで加工性に優れているため医療材料に転換した。歯科用スクリュー、ガイドワイヤ、カテーテル補強材など埋入型医療機器への応用が期待され、早期の製品化・事業化を目指している。2022年の世界埋入型医療機器市場の年間売上は約40億(約5,000億円)ドルの見込みとなっており、市場開拓余地は大きい。

2022年1月には、救急・災害用医療機器専門商社のノルメカエイシアを子会社化した。ノルメカエイシアは日本でいち早く災害医療の導入を提唱し、日本初の災害医療機器等の専門商社として、災害救急分野での豊富な知識・経験を有する。災害救急医療用資器材や感染症対策商品等を取り扱うほか、災害医療救助訓練の企画立案等も行っている。ノルメカエイシアが持つ幅広い顧客基盤並びにソリューション提供・開発力と、同社のコア技術やものづくり力、国内外の拠点活用を通じた組織対応力・販売力を融合させることでグループシナジーを創出し、非自動車エンジン事業の売上拡大を目指す。

2022年9月には、MIM工法による外科用インプラントの標準規格ASTM-F2885に準拠した医療用チタン合金新材料(チタン6アルミニウム4バナジウム)の開発に成功した。不純物を減らしたことにより、一般的なMIM工法によって製造されたものと比較し疲労強度が約40%向上したほか、従来の加工品と比較しコスト低減を実現した。強度が必要な外科用インプラント領域を中心に引き合いがあるようだ。引き続き材料や加工技術の開発を進め、医療製品の発展に貢献する方針だ。

このほか、世界最大手の医療機器メーカーであるMedtronicとの植込型医療機器協同開発プログラムでも新製品開発を進めている。

b) 産業機器分野
産業機器分野では、メタモールド工法の形状自由度や材料自由度の優位性を生かして、CASE関連部品、ロボット、センサー等へ展開する方針である。また、3D形状圧粉コアを用いたアキシャルギャップ型モータは、インホイールモータに最適で、電動カート、車いす、搬送・農業用ロボット、パワードスーツ等への用途を想定している。

(3) サステナビリティ経営の推進
SDGsへの取り組みについては、社会に存在する様々な課題の中から優先して取り組むべき重要課題として、地球環境との共生(製品を通じた環境貢献、事業活動における環境貢献)、ステークホルダーとの共生(お客様満足度向上、従業員の安全と健康、ダイバーシティの実現)、持続的な成長のための基盤醸成(人権尊重、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンスの遵守)を特定し、持続可能な社会の実現に向けた活動を展開している。

また、2021年10月にはサステナビリティ推進室を設置した。従来は、持続可能な環境・社会の実現に向けた各種取り組みをCSR推進委員会が中心となって進めてきたが、その取り組みを一層強化するため、サステナビリティ関連業務の実行・管理に関する企画推進のための専門組織として、経営企画部内に設置したものだ。

重要課題のうち、「事業活動における環境貢献」としては、2024年3月期にCO2排出量25%削減(2014年3月期比)、2031年3月期に46%削減(同)、2050年度頃にカーボンニュートラル実現を目指している。これまで「革新的生産ライン」の導入、排熱再利用、照明のLED化、岩手県県有林J-クレジットの活用などに取り組んでおり、省エネ・高効率設備への更新や再生可能エネルギー電力の導入なども検討している。カーボンニュートラル実現に向けた取り組みとしては、子会社の日ピス岩手が2022年8月、三井住友ファイナンス&リース(株)グループのSMFLみらいパートナーズ(株)とPPA(Power Purchase Agreement=電力購入契約)モデルを導入するエネルギーサービス契約を締結し、2023年中にサービスを開始する予定だ。

「従業員の安全と健康」としては、経済産業省及び日本健康会議が主催する「健康経営優良法人認定制度」において「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」の認定を受けた(2020年から3年連続の認定)。また、サステナビリティに関する国際的な評価機関である仏EcoVadisが実施した2022年サステナビリティ調査において、ブロンズ評価を獲得した。「ダイバーシティの実現」としては、本社所在地である埼玉県「多様な働き方実践企業」認定制度において「プラチナ」認定を受けている。

「コーポレート・ガバナンス」強化の取り組みとしては、2020年6月に指名・報酬諮問委員会を設置し、2021年6月に監査等委員会設置会社へ移行した。

このほか2021年8月には、原材料にコバルトを使用しない「コバルトフリーバルブシート」を開発した。これまでバルブシートの材料には、耐摩耗性向上を目的にコバルトが使われてきたが、コバルトはEV車載用電池に欠かせない原材料であるため市場価値が高騰してきていること、希少金属のため責任ある鉱物の調達という観点でリスクがあるなど、サステナビリティ面も含めて課題の多い資源であることが背景にある。「コバルトフリーバルブシート」の開発により、コバルトに依存することなく、従来と同水準の機能を確保できるようになった。同社は本製品の拡販に努めるとともに、今後も環境問題や人権その他の社会課題対応し、サステナブルな社会の構築に向けて積極的な取り組みを続ける方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)



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