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MDNT Research Memo(7):細胞加工業では新たな細胞加工品目や受託メニューの拡大を図る

注目トピックス 日本株
■事業活動の進捗と今後の取り組み

1. 細胞加工業の進捗と今後の取り組み
細胞加工業は、2019年9月期に初めて黒字化を達成したが、その後コロナ禍で免疫細胞治療を受ける患者(特にインバウンド患者)の低迷が続いており、細胞加工件数の回復も限定的で2022年9月期も減収と損失拡大を余儀なくされた。特定細胞加工物製造業は、コロナ禍により加工件数が急減し、国内で最初の新型コロナウイルス感染症確認時以前となる2019年9月期の売上高1,050百万円に比べて約40%落ち込んだ。2020年9月期第3四半期に細胞加工件数は一旦下げ止まり、以降は徐々に回復傾向にあったが、2022年1月以降のコロナ禍の第6波、2022年6月下旬から始まった第7波の影響により、一転減少傾向となった。2022年9月以降、政府はコロナ禍の行動制限や水際対策を大幅に緩和したが、メディネット<2370>では医療インバウンド患者に依存せずとも売上が拡大できるよう、新たな細胞加工の品目や受託メニューの拡大を図る考えである。

CDMO事業は、かねてより進めていたヤンセンファーマとの治験製品製造における技術移転が完了した。そして、同社と治験製品製造受託に関する契約を2021年5月に締結し、同年6月よりヤンセンファーマが日本国内で実施する国際共同治験(第III相臨床試験:CARTITUDE-4)のなかで、日本国内で試験に用いる治験製品製造工程の一部の製造受託を開始した。本製造受託を皮切りに再生医療等製品全般の製造受託へ本格拡大する考えである。

細胞加工業の事業構造は特定細胞加工物製造業の“1本足打法”であったため、今回のコロナ禍の影響で大打撃を受けた。その教訓を生かし、環境変化に強い事業構造への転換・拡大を推進している。事業戦略は、1)非がん治療領域への領域拡大(細胞種と品目数の拡大)、2)CDMO事業の育成強化、3)バリューチェーン事業の拡大加速、4)国内外の企業とのアライアンス活動強化の4つとなる。CDMO事業の拡大強化のため、細胞培養加工の環境・体制整備として専門人材の採用(細胞加工技術者等40名程度)、資金調達(第18回新株発行、調達総額1,690百万円のうち437百万円を使途)を実施した。また、事業目標については「事業基盤の強化による売上拡大」を目指す。一時的な黒字化だけに留めず医療インバウンド患者依存の事業体質を改め、同社のコア事業として持続的安定成長型の事業構造を確立することに主眼を置いている。

1) 非がん治療領域への領域拡大(細胞種と品目数の拡大)
再生・細胞医療に取り組む製薬企業、大学、医療機関、研究機関等から製造受託する特定細胞加工物における細胞種・品目数の取り扱いを増やしていくほか、従来の免疫細胞治療に用いる免疫細胞以外の免疫細胞の加工受託メニューのさらなる拡充を推進する。同社は以前から、患者自身の組織を用いて治療に合わせた細胞加工の製造受託を行っており、今後も最新の「がんの個別化医療」に貢献しつつ、業績拡大に向け推進する。

特定細胞加工物製造業が回復・再成長するために、同社は免疫細胞以外の新たな細胞加工の品目や受託メニューの拡大に最優先で取り組んでいる。第1に、第19回日本免疫治療学会(2022年5月)で「脂肪由来間葉系幹細胞」に関わる自社技術を確立したことを発表した。様々な疾患に対して臨床応用されており、間葉系幹細胞治療への期待は大きい。脂肪由来間葉系幹細胞の提供計画数は年々増加傾向にあり、間葉系幹細胞を用いた再生医療提供医療機関は281施設が登録されている。現在、安全性確認や追加データを取得中であり、今後は同社から医療機関(治療施設)に提案する予定である。なお実用化には数年程度かかる見込みとしている。

第2に、「歯科診療領域における骨造成治療法の実用化」の取り組みである。同社とセルアクシアは、セルアクシアが保有する「ダイレクトコンバージョン法」を活用して歯科診療領域における先進的な骨造成治療法の実用化に向けた共同研究を行うという基本合意書を、2022年10月に締結した。この技術を説明すると、歯科インプラント手術で歯を入れ戻した時、歯茎をキッチリと安定させる必要がある。その際、歯茎から細胞を採取・再生し、インプラントとともに埋め込むことでしっかりと固定できるようになる技術である。ダイレクトコンバージョン法のメリットとしては、インプラント手術のスピード化やインプラントの安定性が挙げられる。ただし、この骨造成治療法の実用化にはまだまだ時間かかりそうである。

2) CDMO事業の育成強化
2022年9月末に、ヤンセンファーマの多発性骨髄腫に対する製品「カービクティ(R)点滴静注」が国際共同治験(第Ib/II相臨床試験)にて製造・販売承認された。同社はこれまで治験製品に関してヤンセンファーマの製造受託基準をクリアし、製造受託してきた実績と経験があり、今回の製品の製造受託を目指している。正式に製造受託が決定すれば公表されるが、弊社は業績拡大につながる動きとして注目している。

また、同社はCDMO事業において、国内外製薬企業やバイオベンチャー企業に対し、アプローチを強化している。ヤンセンファーマとの契約締結に次ぐ、治験製品製造受託の第2・第3の案件獲得に向け、製薬企業・大学病院を中心に顧客開拓活動を推進している。

3) バリューチェーン事業の拡大
同社は“フロー型バリューチェーンビジネス”として、再生・細胞医療のコンサルティング、細胞培養加工施設の運営管理、細胞加工技術者の派遣・教育システムの提供といった、特定細胞加工物を取り扱ううえで必要な一連の知見やノウハウを提供している。アカデミア(大学、研究機関)を中心として施設運営管理業務をリピート(継続受託)するとともに、新たに再生・細胞医療分野へ参入を企図しているアカデミアや製薬企業の様々なニーズに合わせたサービスに取り組み、販売強化につなげていく。2022年9月期通期は2022年第3四半期から売上高は好調で継続して伸長している。なかでも「施設運営管理」は顧客と2023年度の契約を更新し安定売上を確保しており、「再生医療関連サービス」も、固定顧客からの売上が順調に推移している。

4) 国内外の企業とのアライアンス活動強化
同社は、2019年10月に台湾Medigen Biotechnology Corp.(MBC)とガンマ・デルタT細胞培養加工技術のライセンス契約を締結し、技術移転を完了した。この技術を用いたがん免疫細胞治療は台湾当局の承認後、MBCが提携する医療機関である新光醫院が台湾当局へ申請している。現在、規制当局より使用予定の培養資材に関する追加資料提出の要請があり、その資料を提出したところである。台湾国内で免疫治療を受診できる申請が許可※されれば、台湾のがん患者が現地医療機関で同社の細胞培養加工技術を用いたがん免疫細胞治療を受けられるようになる。がん免疫細胞治療が始まれば治療実績に応じてロイヤリティ収入が同社に得られる見込みである。また、世界各国の医療法制度に応じて現地の医療機関に再生・細胞医療が健全に提供されるよう、同社が培った技術と経験を積極的にライセンス供与していく。さらに、日本での治療を待ち望んでいる多数の患者もおり、同社は日本で円滑に受診・治療できる仕組みを構築していくとしている。

※台湾政府の登録手続き作業がコロナ禍により一時ストップしているが、コロナ禍が終息すれば手続きは再開される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)



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