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紀文食品 Research Memo(5):国内事業の安定成長と海外事業の拡大を目指す

注目トピックス 日本株
*14:05JST 紀文食品 Research Memo(5):国内事業の安定成長と海外事業の拡大を目指す
■中期経営計画

1. 中期経営計画
紀文食品<2933>は上場直後の2021年5月に、収益性向上と財務体質改善による「持続的成長サイクルの確立」を基本戦略とする3ヶ年の中期経営計画(2022年3月期〜2024年3月期)を発表した。

(1) 環境認識
同社は中期経営計画で、ブランド力、商品企画・開発力、物流システムなどの「強み」、健康志向や和食文化への関心の高まりなどの「機会」、財務体質や利益率などの「弱み」、漁獲の減少などの「脅威」を提起し、「強み」の強化と「機会」の獲得、「弱み」と「脅威」の克服を重要課題とした。「強み」の強化と「機会」の獲得としては、海外市場への積極展開、国内外の健康ニーズの取り込み、ロングライフ商品の開発拡充、簡便・即食ニーズへの対応強化、ものづくりDXのさらなる進化を推進する。一方、「弱み」と「脅威」の克服として、増資による資本増強、設備刷新による生産性の向上、持続可能原料の調達・研究、フードロス対応の推進、ESG・SDGsへの取り組み強化を掲げた。

(2) 中期経営計画
中期経営計画で成長性と収益性の基盤を構築することにより、2025年3月期からの次期中期経営計画で持続的に成長できる強固な企業体質への進化を目指す。中期経営計画では、国内事業の安定成長と海外事業の拡大による成長の加速、トータルコスト見直しによるコスト競争力のある強靭な企業体質の構築による経営効率の改善、社会に求められ支持される存在であるための経営進化(ESG・SDGsへの取り組み強化)による経営基盤の整備を推進する。経営目標としては、2024年3月期に売上高108,419百万円(2021年3月期比10.2%増)、営業利益4,593百万円(同26.4%増)、経常利益4,001百万円(同21.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,813百万円(同9.1%増)、海外売上比率13.0%(同4.0ポイント上昇)、営業利益率4.2%(同0.6ポイント上昇)、自己資本比率30.0%(同14.0ポイント上昇)を掲げている。

2. 成長戦略
中期経営計画に基づいた成長戦略によって各事業の成長性と収益性の基盤を構築し、2024年3月期に国内食品事業で売上高762億円(2021年3月期比43億円増)、セグメント利益29億円(同4億円増)、海外食品事業で売上高138億円(同45億円増)、セグメント利益11億円(同5億円増)、食品関連事業で売上高183億円(同12億円増)、セグメント利益5億円(同1億円増)を目指している。

(1) 国内食品事業
シェア拡大、商品拡充と販売チャネル拡大、生産設備の増強、ウィズコロナへの適合を推進する。シェア拡大としては、水産練り製品や惣菜などの健康価値の訴求や、正月など和食文化の保護継承の推進とともに、顧客とのコミュニケーションの充実を図る。また、簡便性による付加価値向上や顕在・潜在ニーズに対応した商品開発、原材料調達力や製品供給力の強化に取り組む。商品拡充と販売チャネル拡大としては、減塩・糖質オフ・アレルギー対応などの健康志向商品やタンパク加工技術による商品、新規カテゴリー商品を拡充する。また、ECなど伸長の著しい流通形態への展開に加え、水産品や食品原材料の取引ノウハウを生かした調達と国内卸販売及び輸出を強化する。生産設備の増強としては、ライン集約による定番商品の生産性向上、商品のロングライフ化による生産の平準化、自動化・省人化・省エネ化・食品ロス削減など環境負荷低減設備への更新、品質向上や労働安全対策設備への更新を進める。ウィズコロナへの適合としては、オンライン会議やテレワークの推進、グループ企業の連携強化による業務プロセスの見直し、共通業務の集約化などによるコスト削減を目指す。

(2) 海外食品事業
和食や水産練り製品の現地食文化への展開拡大、市場トレンドである健康志向ニーズに対する商品展開、マーケティングや商品開発の機能強化、グローバルワイドでの供給能力の強化を推進することで、グローバル市場での同社ポジションの確立を目指す。地域に合った商品を投入することで新規顧客を開拓するほか、各地の販売体制を強化しローカルマーケットを拡大する。また、タイでは生産能力の増強を図る。

(3) 食品関連事業
ITとチルド物流システムの連動を強化し、より高い鮮度・品質・スピードで納品することで同社チルド製品の高付加価値化を図り、荷主や運送パートナーとの高い信頼関係を構築する。また、共同配送・仕分サービス・在庫管理など多様な機能で外部売上を伸ばす一方、配送ネットワークやコストの見直しによって効率化を図り、高品質で環境負荷を低減したチルド物流サービスを推進する。他にも食品安全衛生管理に関するノウハウの外販も考えているようだ。

(4) 経営基盤の整備
社会や株式市場に配慮し、社是である「感謝 即 実行」に基づき、SDGsの達成を柱にESG経営を推進する。環境(E)については省エネルギー、環境負荷軽減、商品ロングライフ化、フードロス削減、持続性資源の調達と研究開発により、自然への感謝を示しながら持続性の探求を目指す。社会(S)については人材育成と職場環境の整備、健康と安全・安心の提供、伝統文化・和食文化の保護と継承により、人材の活性化と文化社会貢献を進める。統治(G)については、内部通報制度や法令遵守強化、危機管理対策(BCP策定、ものづくりDX2.0など)、誠実なIR、指名報酬委員会設置を通じて、内部統制強化と透明性の確保を図る。

(5) 中期的なキャッシュ・フローと配当政策
上場時の増資資金と3年間で創出する予定の営業キャッシュ・フローの合計126億円を、設備投資や借入返済、配当などに充てる方針である。設備投資は3年間で63億円程度を予定しており、内訳は国内食品事業の成長戦略に17億円、生産設備の刷新に32億円、その他2億円、海外食品事業の世界戦略商品の増産に12億円としている。また、借入金依存度35%以下を目指して借入返済に44億円、20%程度を当面の配当性向目標として残額を配当などに充当する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)



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