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アップル Research Memo(6):中古車流通市場が発展し続ける海外市場に経営資源を投入(2)

注目トピックス 日本株
*14:26JST アップル Research Memo(6):中古車流通市場が発展し続ける海外市場に経営資源を投入(2)
■アップルインターナショナル<2788>の中長期の成長戦略

2. 東南アジア市場
中古車輸出事業は、気候変動問題からEVを含む次世代車へのシフトが急速に進むことや、市場環境の変化に伴う日本車の国際競争力維持といったリスク要因がある。また、業績動向が為替レートの変動など外部要因に大きく影響を受ける。一方、東南アジア諸国は、経済成長とともにモータリゼーションが進んでおり、このような事業環境の下、同社グループは経営リソースを活用し、オートオークション事業の多国展開に経営資源を投入することで、東南アジア諸国の中古車流通市場トップを目指している。

(1) リープフロッグ型の発展
既存の社会インフラが整備されていない新興国で、先進国が歩んできた技術進展を飛び越えて新しいサービス等が一気に広まることを「リープフロッグ(Leapfrogging)型発展」と呼ぶ。代表例は、東南アジア諸国で固定電話の普及を待たずに、携帯電話やスマートフォンが急速に普及したことである。社会のデジタル化、ペーパーレス化、キャッシュレス化を一気に推し進める原動力となった。弊社では、自動車市場でもリープフロッグ型発展が起こりうると考えている。

自動車業界の既存のインフラはガソリンスタンドになる。日本での建設費は、ガソリンスタンドが7,000万〜8,000万円、水素ステーションは5億〜6億円と高額だ。また、既存のインフラでは製油所からガソリンスタンドに「危険物」を配送する必要があるが、運転手不足がボトルネックとなっている。電気自動車の充電スタンドであれば、急速充電器を使用する場合でも設置費用は300万〜1,000万円程度、戸建て向けであれば、4万〜12万円と安価であることに加え、EVカーディーラーが顧客の自宅に充電設備を設置することもできる。電力不足という問題はあるものの、EV用充電設備は設置が容易、低コスト、短い工期などのメリットが多く、新興国でガソリンスタンドを飛び越えて普及する可能性が高い。

(2) 世界の新車販売動向
世界の新車販売台数は、2021年にバッテリー式EV(Battery Electric Vehicle:BEV)がハイブリッド車(HV)を上回った。BEVの販売台数は2021年に前年比2.2倍、2022年に同68%増の約780万台と全体の10%を占めた。また、新車販売のBEVの割合は中国が19%、欧州が11%、米国が6%であった。国内のBEV新車販売台数は登録車が3.1万台だが、軽自動車を含むと5.8万台となり、構成比は同1.1ポイント上昇の1.7%となった。

欧米では、ガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止する動きが加速している。英国及びフランスは2017年、2040年までにEV以外の新車販売を禁止することを発表した。英国はこれを前倒しし、ガソリン車・ディーゼル車を2030年に、ハイブリッド車を2035年に販売禁止するとした。米カリフォルニア州の環境当局は、2026〜2035年にかけてガソリン車の販売を段階的に禁止する。自動車メーカーは、新車販売台数のうちゼロエミッション車(ZEV=排ガスゼロ車)の割合を、2026年式で35%、30年式で68%、35年式では100%に引き上げることが求められる。プラグインハイブリッド車(PHV)はZEVと認められるが、2035年には州内の新車販売が禁止される。中国政府は、2030年までにEV比率を40%に引き上げるよう自動車メーカーに義務付けている。一方、国内では、東京都が2030年までに都内でのガソリン車の新車販売禁止を宣言している。また、2025年からは新築マンションへのEV充電器の設置を義務付けており、2023年度には都内4万〜5万棟の中古マンションを対象に充電器設置補助金の上限を2倍に引き上げる。

(3) タイの自動車市場
タイは、アジアのデトロイトと称されており、世界11位、ASEANで最大の自動車生産国である。2022年は自動車生産台数が188.3万台、国内販売が84.9万台、輸出が100.0万台であった。これまでは日系メーカーが同国の自動車産業の発展をけん引してきたが、電動化により状況の変化が著しい。タイの国家経済社会開発委員会(NESDC)は、2021年に第13次国家経済社会開発計画(2023〜2027年)の立案を始め、タイ投資委員会(BOI)はEVの製造事業を奨励している。投資額合計が50億バーツ(約190億円)以上の場合、BEVの生産事業者は8年間の法人所得税が免除される。研究開発投資についても、BEVの生産・普及を支援するための補助金として29.24億バーツ(約111億円)を予算に組み込んだ。

同社のタイにおける中古車オートオークション事業では、不透明な中古車の品質を数値化し、安心して競りに参加できる環境を提供する「日本式インスペクション基準」を導入し、業界トップの地位を築いている。タブレット端末を利用した査定登録システムの開発により、1台当たりの登録時間を大幅に短縮しただけでなく、オークション参加者は専用アプリを用いたスマートフォンやパソコン、タブレット画面で検索、入札、落札までワンストップで行うことができ、省人化、効率化、利用者の便利性に優れている。また、画像AI技術を実証実行しており、導入されればデータ登録の時間短縮、人的リソースの極小化、個人のノウハウに依存しない査定品質が実現できる。

Apple Auto Auction (Thailand)は2022年9月、バンコクの基幹オークション会場を移転するとともに、地方のサテライト会場を新たに5ヶ所開設して26ヶ所にした。基幹オークション会場は敷地面積を15,000坪から25,000坪に拡大し、普通車用に4レーン、データ連携されたサテライト会場とのコネクト用に1レーンを設けた。同業他社は、拠点数が多い企業はIT化が進んでおらず、IT化している企業は拠点が少ない傾向にあり、Apple Auto Auction (Thailand)は両方の機能を併せ持つ点で優位性が高い。一方、同月にワンストップサービス「APPLE SERVICE PLUS」の提供を開始した。買取・販売・整備を同社が、ファイナンスと保険を銀行系のパートナー企業が担うことで、収益リソースの多様化と安定化を図る。2023年12月期後半からリターンが得られると想定している。

(4) オートオークション事業の海外展開
システム開発に従事するタイ人の技術者は英語が堪能なため、同システムを近隣諸国に横展開する際に従事できる。また、開発費用をタイ一国だけでなく、新たな進出国とシェアできるため新規市場開拓の参入障壁が下がる。タイにおいてシステムが完成しているため、立上げ費用や期間も勘案でき、現地パートナー候補企業との交渉もしやすい。これらのことから、同社はタイで完成された事業パッケージを、近隣諸国へ横展開することで事業拡大を目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)



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