テラプローブ Research Memo(4):ロジック製品の受注増を背景に、2022年12月期業績は大幅増収増益
[23/04/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*15:50JST テラプローブ Research Memo(4):ロジック製品の受注増を背景に、2022年12月期業績は大幅増収増益
■業績動向
1. 2022年12月期通期の業績
2022年12月期の連結業績は、売上高で前期比28.0%増の33,212百万円、営業利益で同64.3%増の6,839百万円、経常利益で同79.7%増の7,345百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同74.7%増の3,134百万円と、いずれも前期比2ケタ増とした。旺盛な半導体需要に押し上げられ、主力サービスが拡大したことと及び円安が進行したことも追い風となった。特に営業利益率が20.6%となり、収益率の改善が注目される。
製品別の売上高を見ると、メモリ製品の受託量は前期の5,344百万円から4,096百万円に減少した一方で、ロジック製品は受託量が増加し、前期の20,597百万円から29,115百万円(前期比41.4%増)に増加している。メモリ製品はコンシューマー向け製品の需給調整により受託量減少となった。ロジック製品はフラッシュメモリコントローラ、車載向けや5G基地局向け、サーバー用CPUの受託量が増加した。特に車載向けの受託増加分が増収の大きな要因となる。これは、自動車の生産台数の伸びに加え、自動車の電動化の進展によって、車載に搭載されるロジック製品が増加しているためである。テラプローブ<6627>が車載向けの設備投資を行ってきたことも、台数増産ニーズに応えることができた要因である。売上原価は、前期の19,774百万円から23,833百万円(同20.5%増)に増加したが、売上原価の構成比率が76.2%から71.8%に抑えられたため、売上総利益を押し上げた。ロジック製品の増収効果により売上総利益は前期の6,168百万円から9,378百万円(同52.1%増)と大幅増となった。販管費については533百万円増(同26.6%増)と、売上高の増加分とほぼ同水準となった。このため、営業利益は4,161百万円から6,839百万円(同64.3%増)に増加した。営業利益の増益分はロジック製品の売上増で稼ぎ出されている。
ロジック製品の売上高については、売上高で前期比41.4%増の29,115百万円と急拡大した。その背景には車載向けの売上高比率が46%と拡大したことに加え、先端ロジック品が第1四半期から第4四半期にかけて段階的に伸長してきたことが挙げられる。売上高に占める車載比率は日本国内がおよそ50%であるのに対して、台湾では40%となっている。これは継続成長をするために、市場環境の変動リスクに強いバランスの取れた受託に取り組んでいるためである。また、ファイナルテストの売上比率は全事業のおよそ30%超であり、こちらの拡大強化も推進した。売上高の車載比率は、今期以降も同水準で販売が続く見通しとなっている。
2. 2022年12月期の取り組み
同社は、ウエハテスト事業、ファイナルテスト事業で安定的な収益構造を構築しながら、後に続く収益柱を育成するため、「主要顧客との関係深化」「ターンキービジネスの推進」をテーマに取り組みを行った。具体的には、「共同開発」「新スキームの構築」「ターンキービジネス」への取り組みが報告されている。
(a) 共同開発
2023年2月時点で6社から、テスト分野の共同開発を受託している。公開されている事例として、2022年12月には、凸版印刷<7911>が子会社である(株)ブルックマンテクノロジと共同で開発した「三次元距離画像センサ」の量産化に向けた、開発サポートに関する業務委託基本契約を締結した。同社の次世代ToFセンサ※は、自律飛行ドローンや自律走行型搬送ロボットなどへの応用が期待され、2023年秋に販売開始予定である。このセンサは既存品の5倍以上の計測距離が可能で、屋外でも20m先まで計測可能とされている。他にも、電機メーカーのガスセンサーなどの開発に関するテストサポートを手掛けている。
※ ToF (Time of Flight) センサ:光の飛行時間を計測し、対象物までの距離計測を行うセンサ。
(b) 新スキームの構築
同社はこれまでも、顧客のピークカット(稼働調整)手段であるような外注モデルから、より付加価値が高く、安定的な事業構造の構築に注力しており、車載向けへの取り組みもその一つである。近年では、開発能力や技術的な提案力を生かした顧客との関係深化を図っており、その成果として、顧客と継続的な戦略パートナーとして、使用する装置の選定や、同社内での生産ライン構築を共同して行う事例や、顧客の開発拠点に当社技術者をオンサイトで提供し、製品の開発段階から量産段階まで、テストに関して一貫して受託する事例が実現している。このような取り組みは、半導体の高機能化とともに高度化が求められるテスト受託において、事業の安定化だけでなく、新規ビジネスの獲得にも貢献が期待される。
(c) ターンキービジネス
ターンキービジネスは、同一製品の複数工程をグループ内で受託することである。PTIとターンキービジネスに取り組み、グループ内のコミュニケーション効率化と品質向上の促進を推進した。担当工程間での調整・連携が必要な課題についても同じグループ内でのやり取りで済むため、情報漏洩や誤解のリスクも抑えられる。また複数工程を受託することで品質目標の設定が統一化できること、業務知識を共有し品質向上の効率化に向けた取り組みが望める。
3. 財務状況と経営指標
2022年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比9,295百万円増加の72,262百万円となった。変動要因を見ると、流動資産では現金及び預金の4,466百万円の増加によるものである。固定資産では、積極的な投資により、有形固定資産が3,994百万円増加し、なかでも機械装置及び運搬具が2,293百万円増加した。
負債合計は前期末から3,649百万円増加の30,055百万円となった。流動負債では未払金が1,396百万円増加し、固定負債では長期借入金が1,362百万円増加した。また、純資産は前期末比5,646百万円増加の42,206百万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益3,134百万円を計上した一方、154百万円の配当を行い、利益剰余金が3,020百万円、非支配株主持分が2,257百万円それぞれ増加したことによる。
経営指標を見ると、安全性を示す自己資本比率は財務強度が高いことを示す40%台を推移し、負債比率は前期の72.2%から71.2%へと低下した。また、流動比率も大きな変動なく推移している。2022年12月期も290.3%と安定しており、財務基盤の強化が進んでいる。
収益性指標を見ると、ROE(自己資本利益率)及びROIC(投下資本利益率)は上昇を続けている。ROEは前期の7.3%から11.2%へと大幅な上昇に転じた。ROEが上昇した要因は、業績におけるBPS(1株あたり純資産)とEPS(1株あたり当期純利益)の改善が挙げられる。EPSの改善については、ロジック売上高の上昇が主因であり、この売上高の拡大によってEPSが向上したことが影響した。また、BPSの改善についても、同様にロジック売上高の上昇が主因となっている。ROEの上昇に関して、財務レバレッジには大きな変動がないことに留意する必要がある。同社の場合は財務レバレッジは前期と同水準を維持しており、ROEの上昇はBPSとEPSの改善によって達成された。企業が収益性を向上させるために、財務リスクを高めることなく、自己資本や運転資金を活用して業績を改善していることが示唆されている。
ROIC(投下資本利益率)も同じく6.0%から9.5%へと大幅に上昇した。同社は従来と比べ、収益を上げるために多額の資本を必要としない財務体質になってきており、事業拡大に必要な資金調達などに余裕がでてきている。要因として、同社の投資に対する費用対効果の予測精度及び、稼働維持の取り組みの効果が上がっていることが窺える。
4. キャッシュ・フロー計算書
2022年12月期のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローで前期比49.1%増の17,030百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは12,191百万円の支出、フリー・キャッシュ・フローは同173.1%増の4,839百万円の収入となった。フリー・キャッシュ・フローは3,067百万円増加しているが、これは業績上振れ分に加えて、売上原価・販管費の抑制により収益性を高めていることが主因となっている。投下資本収益率も上がっていることから、リスクとリターンのバランスが取れたキャッシュマネジメントがされたと思われる。同社は、2023年12月期第1四半期に、一時的な受託量の減少と連結決算時の為替レートを円高に想定していることから、保守的な計画を見込んでいる。一方、株主価値の向上が促進されていること、資本コストの構成が改善されていることから、リスク耐性が高まっている。今後も、成長の持続可能性が高いと思われる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石灰達夫)
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■業績動向
1. 2022年12月期通期の業績
2022年12月期の連結業績は、売上高で前期比28.0%増の33,212百万円、営業利益で同64.3%増の6,839百万円、経常利益で同79.7%増の7,345百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同74.7%増の3,134百万円と、いずれも前期比2ケタ増とした。旺盛な半導体需要に押し上げられ、主力サービスが拡大したことと及び円安が進行したことも追い風となった。特に営業利益率が20.6%となり、収益率の改善が注目される。
製品別の売上高を見ると、メモリ製品の受託量は前期の5,344百万円から4,096百万円に減少した一方で、ロジック製品は受託量が増加し、前期の20,597百万円から29,115百万円(前期比41.4%増)に増加している。メモリ製品はコンシューマー向け製品の需給調整により受託量減少となった。ロジック製品はフラッシュメモリコントローラ、車載向けや5G基地局向け、サーバー用CPUの受託量が増加した。特に車載向けの受託増加分が増収の大きな要因となる。これは、自動車の生産台数の伸びに加え、自動車の電動化の進展によって、車載に搭載されるロジック製品が増加しているためである。テラプローブ<6627>が車載向けの設備投資を行ってきたことも、台数増産ニーズに応えることができた要因である。売上原価は、前期の19,774百万円から23,833百万円(同20.5%増)に増加したが、売上原価の構成比率が76.2%から71.8%に抑えられたため、売上総利益を押し上げた。ロジック製品の増収効果により売上総利益は前期の6,168百万円から9,378百万円(同52.1%増)と大幅増となった。販管費については533百万円増(同26.6%増)と、売上高の増加分とほぼ同水準となった。このため、営業利益は4,161百万円から6,839百万円(同64.3%増)に増加した。営業利益の増益分はロジック製品の売上増で稼ぎ出されている。
ロジック製品の売上高については、売上高で前期比41.4%増の29,115百万円と急拡大した。その背景には車載向けの売上高比率が46%と拡大したことに加え、先端ロジック品が第1四半期から第4四半期にかけて段階的に伸長してきたことが挙げられる。売上高に占める車載比率は日本国内がおよそ50%であるのに対して、台湾では40%となっている。これは継続成長をするために、市場環境の変動リスクに強いバランスの取れた受託に取り組んでいるためである。また、ファイナルテストの売上比率は全事業のおよそ30%超であり、こちらの拡大強化も推進した。売上高の車載比率は、今期以降も同水準で販売が続く見通しとなっている。
2. 2022年12月期の取り組み
同社は、ウエハテスト事業、ファイナルテスト事業で安定的な収益構造を構築しながら、後に続く収益柱を育成するため、「主要顧客との関係深化」「ターンキービジネスの推進」をテーマに取り組みを行った。具体的には、「共同開発」「新スキームの構築」「ターンキービジネス」への取り組みが報告されている。
(a) 共同開発
2023年2月時点で6社から、テスト分野の共同開発を受託している。公開されている事例として、2022年12月には、凸版印刷<7911>が子会社である(株)ブルックマンテクノロジと共同で開発した「三次元距離画像センサ」の量産化に向けた、開発サポートに関する業務委託基本契約を締結した。同社の次世代ToFセンサ※は、自律飛行ドローンや自律走行型搬送ロボットなどへの応用が期待され、2023年秋に販売開始予定である。このセンサは既存品の5倍以上の計測距離が可能で、屋外でも20m先まで計測可能とされている。他にも、電機メーカーのガスセンサーなどの開発に関するテストサポートを手掛けている。
※ ToF (Time of Flight) センサ:光の飛行時間を計測し、対象物までの距離計測を行うセンサ。
(b) 新スキームの構築
同社はこれまでも、顧客のピークカット(稼働調整)手段であるような外注モデルから、より付加価値が高く、安定的な事業構造の構築に注力しており、車載向けへの取り組みもその一つである。近年では、開発能力や技術的な提案力を生かした顧客との関係深化を図っており、その成果として、顧客と継続的な戦略パートナーとして、使用する装置の選定や、同社内での生産ライン構築を共同して行う事例や、顧客の開発拠点に当社技術者をオンサイトで提供し、製品の開発段階から量産段階まで、テストに関して一貫して受託する事例が実現している。このような取り組みは、半導体の高機能化とともに高度化が求められるテスト受託において、事業の安定化だけでなく、新規ビジネスの獲得にも貢献が期待される。
(c) ターンキービジネス
ターンキービジネスは、同一製品の複数工程をグループ内で受託することである。PTIとターンキービジネスに取り組み、グループ内のコミュニケーション効率化と品質向上の促進を推進した。担当工程間での調整・連携が必要な課題についても同じグループ内でのやり取りで済むため、情報漏洩や誤解のリスクも抑えられる。また複数工程を受託することで品質目標の設定が統一化できること、業務知識を共有し品質向上の効率化に向けた取り組みが望める。
3. 財務状況と経営指標
2022年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比9,295百万円増加の72,262百万円となった。変動要因を見ると、流動資産では現金及び預金の4,466百万円の増加によるものである。固定資産では、積極的な投資により、有形固定資産が3,994百万円増加し、なかでも機械装置及び運搬具が2,293百万円増加した。
負債合計は前期末から3,649百万円増加の30,055百万円となった。流動負債では未払金が1,396百万円増加し、固定負債では長期借入金が1,362百万円増加した。また、純資産は前期末比5,646百万円増加の42,206百万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益3,134百万円を計上した一方、154百万円の配当を行い、利益剰余金が3,020百万円、非支配株主持分が2,257百万円それぞれ増加したことによる。
経営指標を見ると、安全性を示す自己資本比率は財務強度が高いことを示す40%台を推移し、負債比率は前期の72.2%から71.2%へと低下した。また、流動比率も大きな変動なく推移している。2022年12月期も290.3%と安定しており、財務基盤の強化が進んでいる。
収益性指標を見ると、ROE(自己資本利益率)及びROIC(投下資本利益率)は上昇を続けている。ROEは前期の7.3%から11.2%へと大幅な上昇に転じた。ROEが上昇した要因は、業績におけるBPS(1株あたり純資産)とEPS(1株あたり当期純利益)の改善が挙げられる。EPSの改善については、ロジック売上高の上昇が主因であり、この売上高の拡大によってEPSが向上したことが影響した。また、BPSの改善についても、同様にロジック売上高の上昇が主因となっている。ROEの上昇に関して、財務レバレッジには大きな変動がないことに留意する必要がある。同社の場合は財務レバレッジは前期と同水準を維持しており、ROEの上昇はBPSとEPSの改善によって達成された。企業が収益性を向上させるために、財務リスクを高めることなく、自己資本や運転資金を活用して業績を改善していることが示唆されている。
ROIC(投下資本利益率)も同じく6.0%から9.5%へと大幅に上昇した。同社は従来と比べ、収益を上げるために多額の資本を必要としない財務体質になってきており、事業拡大に必要な資金調達などに余裕がでてきている。要因として、同社の投資に対する費用対効果の予測精度及び、稼働維持の取り組みの効果が上がっていることが窺える。
4. キャッシュ・フロー計算書
2022年12月期のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローで前期比49.1%増の17,030百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは12,191百万円の支出、フリー・キャッシュ・フローは同173.1%増の4,839百万円の収入となった。フリー・キャッシュ・フローは3,067百万円増加しているが、これは業績上振れ分に加えて、売上原価・販管費の抑制により収益性を高めていることが主因となっている。投下資本収益率も上がっていることから、リスクとリターンのバランスが取れたキャッシュマネジメントがされたと思われる。同社は、2023年12月期第1四半期に、一時的な受託量の減少と連結決算時の為替レートを円高に想定していることから、保守的な計画を見込んでいる。一方、株主価値の向上が促進されていること、資本コストの構成が改善されていることから、リスク耐性が高まっている。今後も、成長の持続可能性が高いと思われる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石灰達夫)
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