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USENNEX Research Memo(4):個人向けコンテンツ配信や店舗・施設向け運営支援サービスなどを展開(2)

注目トピックス 日本株
*13:04JST USENNEX Research Memo(4):個人向けコンテンツ配信や店舗・施設向け運営支援サービスなどを展開(2)
■会社概要

統合のプロセスは、2023年3月31日に「Paravi」を運営するPPJを「U-NEXT」に統合、6月末まで「Paravi」は従来どおりの運営を続けて、7月に「U-NEXT」内に「Paravi」のサービスを移管する。「Paravi」のユーザーは当面、現行の条件で「Paravi」のコンテンツに加え「U-NEXT」のコンテンツも視聴可能(一部対象外のジャンルあり)となる。「U-NEXT」のユーザーは、現行の条件のまま「Paravi」のコンテンツも視聴できる。なお、USEN-NEXT HOLDINGS<9418>によるPPJの経営統合については、株式交換で行われ、PPJ株主はそれぞれの意向により同社またはU-NEXTの株式を持つことになった。2023年8月期業績への影響については、PPJの業績やのれん、統合一次費用の算出に時間がかかるため、第3四半期以降に開示される見込みである。短期的統合効果はPPJの業績などからややネガティブなものになりそうだが、足元の好調である程度カバーできると思われる。のれんについては、単純計算で示された目途約30億円より縮小する可能性が高そうだ。

短期的統合効果に対して、2024年8月期以降に見込まれる中期的統合効果は、非常に期待の大きいものになると考えられる。統合により、ユーザー基盤の拡大やラインナップの充実、ブランディングの強化、新サービスの創出のほかコスト抑制の面でシナジーが見込まれるためである。ユーザー基盤の拡大に関しては、「U-NEXT」の課金ユーザー285万人に「Paravi」の85万人が加わることで、370万人のユーザー※を抱えることになる。ラインナップの充実については、「U-NEXT」が特に強みを持つ映画、アニメ、韓流など海外ドラマに、「Paravi」の有する日本最大級の国内ドラマ・バラエティのラインナップが加わるため、ユーザーの満足度は大きく向上することが期待される。また、「Paravi」はキー局2社のオリジナル作品が充実しており、そうした作品の先行・見逃し・アーカイブ配信が可能な点もユーザー満足度を引き上げることになるだろう。

※両サービスの重複加入を考慮しない単純計算ベース。ユーザー数は2022年11月末時点。


ブランディングの強化に関しては、「U-NEXT」のリスティング広告やアフィリエイトといったWebプロモーションなどの「デジタル」及びシネコンや家電量販店などの「リアル」、「Paravi」における地上波・Web連動型PRや情報番組での特集、TVCMによるマスプロモーションなど「放送」を組み合わせたマーケティングが可能となり、顧客獲得機会を最大化することができる。新サービスの創出については、「U-NEXT」のUI・UXやアプリなどのIT技術開発力と、「Paravi」のクリエイティブ力・プロダクション力が合体することで、オリジナルコンテンツやIP(Intellectual Property)の開発(コミック・書籍・映像などによるメディアミックス)など、新たなクロスエンターテイメントサービスの創出が可能となる。ただし、コンテンツ制作に関しては、プラットフォーム事業の同社にとってリスクが大きいため、同社が参画するにしても少額の出資程度で、ほとんど手を出さないものと思われる。コストシナジーに関しては、統合後6ヶ月〜15ヶ月(つまり2024年8月期)で徐々に顕在化する見込みである。現在精査中ではあるが、重複コンテンツの統合・整理、「U-NEXT」と「Paravi」のインフラ統合、プロモーションの共通化などにより「Paravi」の営業損失を吸収する規模のコストシナジーが期待される。

(2) 店舗サービス事業
店舗サービス事業は、60年以上の歴史を有する祖業でキャッシュカウな音楽配信サービス「USEN MUSIC」、及び店舗のDXを支援するサービスを行っている。対象は飲食店、小売店、理美容店、医療機関、オフィスなど全国に約300万件近くある業務店や施設で、個人店から地域密着チェーン、全国チェーンまでと幅広い。このうち全国約70万件の店舗や施設に対して、J-POPや洋楽などの専門チャンネルからリクエストチャンネルまで多彩な音楽や各種情報を放送する音楽配信サービスを提供するほか、周辺の音響機器の販売・施工や音楽著作権の管理も行っている(店舗向け音楽配信シェアは約90%と推定)。楽曲数は1,000万曲程度あり、AIによってどのような業種・業態にも適したプレイリストを作成できるうえ、来店客向けや従業員向けなど約1,000種類の店内アナウンスも標準搭載している。

店舗DXは、音楽配信サービスの周辺事業として展開してきた。近年、省人化・省力化に向けたデジタル支援のニーズが急増しているが、中小事業者が独力でIoTやDXなどを推進するのはハードルが高いため、同社が導入サポートをワンストップで行っている。音楽配信「USEN MUSIC」を軸に、POSレジ「USENレジ」や業務用Wi-Fi「USEN AIR」、来店客属性分析ができるAIカメラ「USEN Camera」、配膳ロボットなどの商品・サービスが一体となった店舗運営支援サービスである。こうしたDX商材やサービスを無線でつなげIoT化するワンストップソリューションを「USEN IoT PLATFORM」と呼んでいる。同社では、サービスが豊富になったことを背景に、店舗DXの商材・サービスをパッケージ化した「USENまるっと店舗DX」を開発し、新店などセット成約率の高い新規顧客向けに営業を推進している。音楽配信を加えると100万件を超える顧客基盤は、同社にとって最大の経営資源と言える。

同事業の強みは、顧客基盤のほか、グループで全国約150の拠点、1,200人のセールス人員と900人のフィールドエンジニアを擁する強力なサポート体制にある。音楽配信、店舗DXといったサービス提供とともに、機器の設置施工からアフターケア、面倒な著作権処理など開業から運営までを支援することができる。なお、音楽配信は、新店(新規契約)と閉店(契約解除)が拮抗し成長性に乏しいが、安定性と収益性が高くキャッシュカウであるため、グループ全体の成長戦略を資金面で支える事業となっている。店舗DXは、労働人口の減少に伴って省人化・省力化ニーズが急速に高まっているものの、顧客は個人店や中小チェーン店が多くデジタル化が進んでいないため、導入する余地が非常に大きい高成長事業と言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)



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