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サンワテクノス Research Memo(7):2025年3月期に営業利益70億円達成に向けた取り組みは順調(2)

注目トピックス 日本株
*12:27JST サンワテクノス Research Memo(7):2025年3月期に営業利益70億円達成に向けた取り組みは順調(2)
■長期ビジョンと中期経営計画

(2) 戦略方針と進捗状況
「SNS2024」で取り組む基本方針としてサンワテクノス<8137>は、a) イノベーションが求められる成長分野への注力、b) より高付加価値な製品と新たなソリューションの提供、c) サステナビリティ経営による持続可能な社会の実現に貢献、の3点を掲げ、これらを遂行することで業績目標につなげる考えだ。各方針の進捗状況は以下のとおり。

a) イノベーションが求められる成長分野への注力
同社ではリソースを投入する顧客セグメントを、同社の強みと市場の魅力度(市場規模、成長率、利益率)を両軸にして、「積極的リソースを投入する分野」「選択的リソースを投入する分野」「その他分野」に分類し、顧客セグメント別に事業戦略を立案、実行することで売上総利益の拡大を目指す。

積極的リソースを投入する分野は、半導体製造装置、ロボット・マウンター、工作機械の3分野とした。半導体製造装置分野については半導体産業が国策として重要分野として位置付けられ、経済安全保障の観点からもさらなる成長が期待できるため、同社の強みが発揮できる重要セグメントと位置付けている。主な戦略として、顧客と性能向上につながる共同テーマの獲得、コスト低減につながるユニット組立の提案、新規有望顧客獲得のために必要となる仕入先の開拓を挙げ、これらを実行することにより売上総利益で年率15%以上の成長を目標に掲げた。2023年3月期下期の進捗としては、大手半導体製造装置メーカーと製造工程プラットフォーム構築で合意したほか、制御盤・電子電源BOX等の新規受注を獲得した。また、業界大手となる新規顧客の開拓にも成功している。2023年3月期の売上総利益は前期比24.8%増と計画を上回る滑り出しとなったが、2024年3月期については顧客先によって強弱が分かれており、一時的にブレーキがかかる可能性もあると見ている。

ロボット・マウンター分野に関しては技術革新が著しい高成長分野であり、同社が優位性を発揮しやすいセグメントである。主な戦略としては、顧客ごとの製品別インシェアアップや周辺機器の新規顧客開拓を進めるほか、顧客ニーズを集約し、業界に特化した製品の企画にも注力する方針がある。これら戦略により、売上総利益で年率10%以上の成長を目指す。2023年3月期下期の進捗としては、ターゲット顧客のインシェア把握とシェアアップ施策を立案したほか、ロボット・マウンターと親和性の高い製品の拡販に注力した。2023年3月期の売上総利益は前期比0.4%増と計画を下回る結果となったが、主にスマートフォン・パソコン市場の低迷長期化によるチップマウンターメーカーからの受注失速が要因と見られる。ただ、2024年3月期はEV関連を中心に自動車関連業界の投資拡大が見込まれるため、成長軌道に復帰するものと見ている。

工作機械分野は、世界のモノづくりを支える「マザーマシン」の高性能化、自動化、デジタル化で成長が見込めるセグメントと位置付けている。主な戦略は、周辺機器の新規顧客開拓、IoT化により重要度が増しているFAPC(産業用コンピュータ)の提案、BCP対策としてのグローバルSCMソリューションの提案などを推進する。これら戦略の実行により、売上総利益で年率10%以上の成長を目指す。2023年3月期下期の進捗としては、自動化機器へのソリューション&コンポーネントに関する新規顧客の商談を獲得したほか、ターゲット顧客・用途ごとにFAPCの提案を実施し、商談を獲得した。また、顧客のグローバル生産拠点に関するBCP関連情報の入手に取り組んだ。2023年3月期の売上総利益は前期比15.0%増とほぼ計画どおりの増益となった。ただ、2024年3月期については前期に伸長した反動もあって、伸び悩む可能性があると同社は見ている。

選択的リソースを投入する分野としては、FA装置、車載、設備の3分野を挙げている。選択的リソースの投入とは、状況によって資本提携や業務提携などを行い、パートナー企業と協業しながら事業を拡大する領域であることを意味している。FA装置分野に関しては、顧客層が広く製品品種も多岐に渡るため、同社のなかでは最も売上総利益の規模が大きい分野である。今後の戦略としては、グローバル規模でFAコンポーネント業界に注力するほか、量産アプリケーションを軸とした戦略製品の創出、デジタルツールの積極活用による情報発信の強化の3点を挙げ、これら戦略の実行により売上総利益で年率10%以上の成長を目指す。2023年3月期下期の進捗としては、超大手企業のグローバル拡販体制構築着手に伴う新規商談を発掘したほか、制御機器・検出機器の拡販及び提案活動により商談を獲得した。また、DMやオンライン営業等で戦略商品やイベントの紹介等の情報発信を実施した。2023年3月期の売上総利益は前期比31.0%増と計画を大きく上回る伸長を見せたが、2024年3月期はその反動もあって、伸び悩む可能性がある。

車載分野に関しては、自動車業界において100年に1度の変革期が到来しており、CASE※などによる車載電装システムの進化と市場拡大が期待できるセグメントと見ている。主な戦略としては、既存製品の横展開による新規顧客の開拓、新規戦略製品のグローバル展開、新規取引先開拓のための組織構築の3点を挙げ、これら戦略の実行により、売上総利益で年率10%以上の成長を目指す。2023年3月期下期の進捗としては、有力Tier1メーカーの新規開拓により商談を獲得し、試作や受注につなげたほか、特徴のある新規戦略製品・技術を各Tier1メーカーへ提案した。また、営業人員の増強と品質管理メンバーの商談への参画なども行った。こうした取り組みの結果、2023年3月期の売上総利益は前期比14.5%増と順調に伸長した。2024年3月期についても自動車生産の回復を背景に、同分野は2ケタ成長が見込まれる。

※CASE:Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語。自動車産業において、次世代に向けた動向を象徴するキーワード。


設備分野に関しては対象業界が広く、自動化やサステナビリティ対応への技術的ニーズが高まっているセグメントと位置付けている。主な戦略として、営業とエンジニアリングが一体となった顧客への付加価値提案、食品業界におけるSIerとの協業による案件獲得、設備のパッケージ化と横展開による収益性向上等を挙げ、これら戦略の実行により売上総利益で年率10%以上の成長を目指す。2023年3月期下期の進捗としては、新規設備の引き合い件数が増加したほか、SIerとの協業により食品業界からの案件を受注した。また、新たなソリューションとしてバーコード位置決めシステムや3Dカメラを用いたロボットピッキング、CO2排出データ収集などのパッケージ化構想案を策定した。2023年3月期の売上総利益は前期比10.5%減と唯一減益となり、2024年3月期についても景気減速の影響により伸び悩む可能性があると見ている。

なお、同社は計画期間の3年間でこれら6分野の売上総利益を合計で41億円増加させることを目標としており(その他分野の売上総利益も拡大を見込む)、2023年3月期については構成比の高いFA装置や半導体製造装置分野が好調だったこともあり、順調な滑り出しとなった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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