JBR Research Memo(9):戸建て市場の開拓やACTGのPMIは着実に進行中
[23/07/20]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*12:39JST JBR Research Memo(9):戸建て市場の開拓やACTGのPMIは着実に進行中
■今後の見通し
2. 中期経営計画
(1) 中期経営計画の概要
ジャパンベストレスキューシステム<2453>は2022年9月期から3ヶ年の中期経営計画をスタートしている。経営戦略として、営業・業務の両面で「パートナーシップ戦略」を推進し、既存事業の成長と新規事業の育成を図っていく方針を打ち出している。既存事業については市場環境の変化に機敏に対応しながら、提携先の拡大やM&A等も活用することで収益基盤をさらに強固なものとし、持続的な成長を目指していく。特にM&Aについては、自社の成功体験を活用することでACTGの収益性が大きく改善するなど手応えを得たことから、今後も前向きに検討していく方針だ。新規事業については伊藤忠商事<8001>との協業やスタートアップ企業との連携、共同開発、M&A等によって創出していく。
業務戦略については、コールセンター業務や各カンパニーで行っていた業務を、新たに組織化した業務本部に一元化することで、業務品質の向上と効率化を図っていく。2022年9月期より新ERPシステムの運用を段階的に開始しており、最終的には受注から販売、決済、顧客管理までグループすべてのシステムを統一する。これにより、業務効率の向上だけでなく、今までは十分でなかった事業部間の連携による重層営業の効果も一段と向上することが期待される。このほかにも、人材の育成強化や施工パートナー等のサービスインフラの拡充も進めていく計画だ。
管理・財務戦略については、2022年4月の東京証券取引所市場再編に伴うプライム市場への移行に伴い、ガバナンス体制の強化を図っている。サステナビリティへの取り組みの推進と中長期的な企業価値の向上を目指すため、2022年5月の取締役会でサステナビリティ委員会の設置及びTCFD※提言への賛同表明について決議しており、今後、SDGs等の取り組みについても積極的に開示していく予定である。
※TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):G20の要請を受け、2015年に主要国の中央銀行や金融規制当局などが参加する国際機関である金融安定理事会(FSB)によって設立。企業に対して気候変動関連のリスク・機会の評価と財務への影響について開示することを提言している。
(2) 事業戦略
同社は、現在の事業を「収益性の高い成長・成熟事業」「育成事業」「課題事業」の3つに整理し、それぞれの戦略を推進している。「収益性の高い成長・成熟事業」は主力3事業となり、顧客を積み上げていくことで持続的な成長を図っていく。特に会員事業はACTGの子会社化により、集合住宅向け生活トラブル解決サービス市場450万件のうち約35%のシェア(同社調べ)を握る圧倒的トップの地位を確立している。第2位の事業者は約7%のシェアで残りの大半は不動産管理会社が内製化しているが、不動産管理会社ではコスト削減のためアウトソーシング化する傾向となっており、こうした需要を取り込んでいくことでさらなるシェアアップも可能と見ている。また、集合住宅市場では残り約1,800万件の未開拓市場が残っているほか、前述のとおりパートナーシップ戦略により戸建て住宅市場の開拓にも着手しており、これら戦略が順調に進めば成長スピードも加速していくことが予想される。
なおACTGとのPMIは事業運営、販売の両面で進めており、両社の強みを融合することで、統合効果の最大化を目指している。間接部門については2023年4月に管理部門を統合したほか、同年10月に人事・総務部門の統合を予定している。一方、システムやオペレーションについてはまだ独立して運営している状態で、2025年6月までに統合する予定だ。システムやオペレーションの完全統合による収益改善効果について年間200百万円を想定しているほか、管理部門の統合初期段階でも年間50百万円の収益改善効果を見込んでいる。そのほかACTGの不採算案件の整理については2023年9月期で完了し、ACTG商品の販売代理店を拡大することはせず、既存代理店での契約獲得及び解約のみとなる。このため、ACTG商品の会員数については2024年9月期以降、横ばいまたは微増で推移するものと予想される。
一方、保険事業は事業の性質上、極端に収益性を高めることは困難なため、収益性については若干の向上を図り、保険商品の拡充により売上規模を拡大していく戦略となる。資本業務提携先の伊藤忠商事のほか、レスキュー損害保険の株主でもあるミニミニグループ、日本生命保険などとも共同開発を進めている。なお、2024年9月期については責任準備金繰入額が減少する可能性が高いため、利益率は上昇するものと予想される。保証事業は住宅メーカーなど提携先を拡充することで会員数を拡大していくほか、サービス領域を住宅点検や修繕サービス、BPOサービスなどに広げていくことで収益拡大を図っていく。
新規事業に関しては、伊藤忠グループとの協業や新たな提携先の開拓等を進めながら、既存インフラも活用した新サービスの開発を進めていく。具体的には、中古携帯電話回収サービスに続いて、行政サービス支援などを視野に入れ準備を進めている。
(3) 経営数値目標
中期経営計画における数値目標としては、2024年9月期に売上高22,000百万円、営業利益2,500百万円、経常利益2,650百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,800百万円を掲げている。3年間の年平均成長率は売上高で17.8%、営業利益で21.1%となる。営業利益率については、ACTGの子会社化で2022年9月期に8.2%と一旦低下したが、統合効果が顕在化する2024年9月期には11.4%まで上昇する計画となっている。また、前提となるKPIである主力3事業の契約件数は年率11.6%で増加し、2024年9月期に5,471千件を目指す。
ただ、2022年9月期実績は業績及び会員数が当初計画を下回った。ACTGが不採算顧客の整理を進めた結果、計画を下回ったことが主因となっている。また、営業利益については、駆けつけ事業の低迷が続いたことに加え、保険事業の責任準備金の増加が下振れ要因となった。こうした状況から、駆けつけ事業については2023年9月期第1四半期で事業譲渡し、2023年9月期の業績及びサービス契約件数ともに当初計画から引き下げた。売上高は1,700百万円の減額となるが、このうち半分以上は駆けつけ事業の事業譲渡によるもので、残りはACTGの会員数減が要因となっている。また、親会社株主に帰属する当期純利益の減額幅が550百万円と大きくなっているのは、ジャパンワランティサポートの株式上場により、非支配株主持分利益が増加するためだ。会員数については前述のとおりACTGの主要顧客の解約が発生するため、現行の計画をさらに20万件弱下回る可能性がある。
このため、2024年9月期の目標達成に向けたハードルは高くなっており、2023年11月に発表される本決算に合わせて見直されるものと予想されるが、主力3事業の顧客の積み上げにより持続的な成長を目指す基本戦略に変わりはない。ACTGとの経営統合効果や戸建て市場の開拓、パートナーシップ戦略による新規事業等の収益貢献が本格化してくれば、2025年9月期以降に収益成長スピードが加速する可能性は十分あると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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■今後の見通し
2. 中期経営計画
(1) 中期経営計画の概要
ジャパンベストレスキューシステム<2453>は2022年9月期から3ヶ年の中期経営計画をスタートしている。経営戦略として、営業・業務の両面で「パートナーシップ戦略」を推進し、既存事業の成長と新規事業の育成を図っていく方針を打ち出している。既存事業については市場環境の変化に機敏に対応しながら、提携先の拡大やM&A等も活用することで収益基盤をさらに強固なものとし、持続的な成長を目指していく。特にM&Aについては、自社の成功体験を活用することでACTGの収益性が大きく改善するなど手応えを得たことから、今後も前向きに検討していく方針だ。新規事業については伊藤忠商事<8001>との協業やスタートアップ企業との連携、共同開発、M&A等によって創出していく。
業務戦略については、コールセンター業務や各カンパニーで行っていた業務を、新たに組織化した業務本部に一元化することで、業務品質の向上と効率化を図っていく。2022年9月期より新ERPシステムの運用を段階的に開始しており、最終的には受注から販売、決済、顧客管理までグループすべてのシステムを統一する。これにより、業務効率の向上だけでなく、今までは十分でなかった事業部間の連携による重層営業の効果も一段と向上することが期待される。このほかにも、人材の育成強化や施工パートナー等のサービスインフラの拡充も進めていく計画だ。
管理・財務戦略については、2022年4月の東京証券取引所市場再編に伴うプライム市場への移行に伴い、ガバナンス体制の強化を図っている。サステナビリティへの取り組みの推進と中長期的な企業価値の向上を目指すため、2022年5月の取締役会でサステナビリティ委員会の設置及びTCFD※提言への賛同表明について決議しており、今後、SDGs等の取り組みについても積極的に開示していく予定である。
※TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):G20の要請を受け、2015年に主要国の中央銀行や金融規制当局などが参加する国際機関である金融安定理事会(FSB)によって設立。企業に対して気候変動関連のリスク・機会の評価と財務への影響について開示することを提言している。
(2) 事業戦略
同社は、現在の事業を「収益性の高い成長・成熟事業」「育成事業」「課題事業」の3つに整理し、それぞれの戦略を推進している。「収益性の高い成長・成熟事業」は主力3事業となり、顧客を積み上げていくことで持続的な成長を図っていく。特に会員事業はACTGの子会社化により、集合住宅向け生活トラブル解決サービス市場450万件のうち約35%のシェア(同社調べ)を握る圧倒的トップの地位を確立している。第2位の事業者は約7%のシェアで残りの大半は不動産管理会社が内製化しているが、不動産管理会社ではコスト削減のためアウトソーシング化する傾向となっており、こうした需要を取り込んでいくことでさらなるシェアアップも可能と見ている。また、集合住宅市場では残り約1,800万件の未開拓市場が残っているほか、前述のとおりパートナーシップ戦略により戸建て住宅市場の開拓にも着手しており、これら戦略が順調に進めば成長スピードも加速していくことが予想される。
なおACTGとのPMIは事業運営、販売の両面で進めており、両社の強みを融合することで、統合効果の最大化を目指している。間接部門については2023年4月に管理部門を統合したほか、同年10月に人事・総務部門の統合を予定している。一方、システムやオペレーションについてはまだ独立して運営している状態で、2025年6月までに統合する予定だ。システムやオペレーションの完全統合による収益改善効果について年間200百万円を想定しているほか、管理部門の統合初期段階でも年間50百万円の収益改善効果を見込んでいる。そのほかACTGの不採算案件の整理については2023年9月期で完了し、ACTG商品の販売代理店を拡大することはせず、既存代理店での契約獲得及び解約のみとなる。このため、ACTG商品の会員数については2024年9月期以降、横ばいまたは微増で推移するものと予想される。
一方、保険事業は事業の性質上、極端に収益性を高めることは困難なため、収益性については若干の向上を図り、保険商品の拡充により売上規模を拡大していく戦略となる。資本業務提携先の伊藤忠商事のほか、レスキュー損害保険の株主でもあるミニミニグループ、日本生命保険などとも共同開発を進めている。なお、2024年9月期については責任準備金繰入額が減少する可能性が高いため、利益率は上昇するものと予想される。保証事業は住宅メーカーなど提携先を拡充することで会員数を拡大していくほか、サービス領域を住宅点検や修繕サービス、BPOサービスなどに広げていくことで収益拡大を図っていく。
新規事業に関しては、伊藤忠グループとの協業や新たな提携先の開拓等を進めながら、既存インフラも活用した新サービスの開発を進めていく。具体的には、中古携帯電話回収サービスに続いて、行政サービス支援などを視野に入れ準備を進めている。
(3) 経営数値目標
中期経営計画における数値目標としては、2024年9月期に売上高22,000百万円、営業利益2,500百万円、経常利益2,650百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,800百万円を掲げている。3年間の年平均成長率は売上高で17.8%、営業利益で21.1%となる。営業利益率については、ACTGの子会社化で2022年9月期に8.2%と一旦低下したが、統合効果が顕在化する2024年9月期には11.4%まで上昇する計画となっている。また、前提となるKPIである主力3事業の契約件数は年率11.6%で増加し、2024年9月期に5,471千件を目指す。
ただ、2022年9月期実績は業績及び会員数が当初計画を下回った。ACTGが不採算顧客の整理を進めた結果、計画を下回ったことが主因となっている。また、営業利益については、駆けつけ事業の低迷が続いたことに加え、保険事業の責任準備金の増加が下振れ要因となった。こうした状況から、駆けつけ事業については2023年9月期第1四半期で事業譲渡し、2023年9月期の業績及びサービス契約件数ともに当初計画から引き下げた。売上高は1,700百万円の減額となるが、このうち半分以上は駆けつけ事業の事業譲渡によるもので、残りはACTGの会員数減が要因となっている。また、親会社株主に帰属する当期純利益の減額幅が550百万円と大きくなっているのは、ジャパンワランティサポートの株式上場により、非支配株主持分利益が増加するためだ。会員数については前述のとおりACTGの主要顧客の解約が発生するため、現行の計画をさらに20万件弱下回る可能性がある。
このため、2024年9月期の目標達成に向けたハードルは高くなっており、2023年11月に発表される本決算に合わせて見直されるものと予想されるが、主力3事業の顧客の積み上げにより持続的な成長を目指す基本戦略に変わりはない。ACTGとの経営統合効果や戸建て市場の開拓、パートナーシップ戦略による新規事業等の収益貢献が本格化してくれば、2025年9月期以降に収益成長スピードが加速する可能性は十分あると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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