サスメド Research Memo(1):第三の治療法として注目されるデジタル治療を開発するベンチャー企業
[23/09/28]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
*12:41JST サスメド Research Memo(1):第三の治療法として注目されるデジタル治療を開発するベンチャー企業
■要約
サスメド<4263>は、ミッションに「ICTの活用によって持続可能な医療サービスを社会に提供し続けること」を掲げ、医薬品及び医療機器に次ぐ第三の治療法として注目されるデジタル治療(Digital Therapeutics、以下、DTx)を開発する研究開発段階のベンチャー企業である。
1. DTxプロダクト事業では治療用アプリを開発、不眠障害治療用アプリが医療機器製造販売承認を取得
DTxプロダクト事業においては治療用アプリを開発している。治療用アプリとは、薬剤や医療機器を用いた治療ではなく、患者のスマートフォンにダウンロードされたアプリケーションによって治療を施す新しいデジタル療法である。誰でも利用できる一般的なヘルスケアアプリ(ダイエットアプリ、歩行数計測アプリなど)とは異なり、治験によって確認された有効性・安全性に関わる医学的エビデンスに基づいて、薬機法上の医療機器として規制当局の薬事承認を得ることが必要になる。開発パイプラインは2023年8月時点で10件である。このうち不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」については2023年2月に厚生労働省より医療機器製造販売承認を取得し、日本における独占的販売権を供与している塩野義製薬<4507>とともに保険適用及び上市(2023年内の見込み)に向けて準備を進めている。製品上市後は塩野義製薬から販売額に応じたロイヤリティーを受領する。
2. DTxプラットフォーム事業では創薬開発プロセス効率化を支援
DTxプラットフォーム事業は不眠障害治療用アプリの開発過程で獲得したノウハウをベースに、治療用アプリ開発プラットフォームを活用したDTx開発支援サービス、医療ビッグデータを分析する機械学習自動分析システム、臨床試験の効率化を支援する汎用臨床試験システムなどを提供している。特に汎用臨床試験システム「SUSMED SourceDataSync(R)」(以下、「SUSMED SourceDataSync」)は、ブロックチェーン技術を実装したモニタリングシステムにより、臨床試験で求められる高い水準でのセキュリティとデータ改ざん耐性を同時に実現するとともに、モニタリングに関する工数と費用の大幅削減に貢献する。2022年6月にはバイオベンチャー企業のアキュリスファーマ(株)と、企業治験として世界初となるブロックチェーン技術を活用した治験の実施に関する契約を締結し、同年11月に「SUSMED SourceDataSync」を活用した1例目の治験を開始、2023年1月には2例目の治験を開始した。
3. 2023年6月期は損失が縮小
2023年6月期の業績(非連結)は、事業収益が前期比67.5%増の530百万円、営業損失が48百万円(前期は229百万円の損失)、経常損失が44百万円(同217百万円の損失)、当期純損失が50百万円(同233百万円の損失)だった。DTxプロダクト事業において不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」にかかる塩野義製薬からのマイルストン収入を計上し、DTxプラットフォーム事業も順調に伸長したため、全体として大幅増収となり損失が縮小した。売上面はおおむね計画水準だが、利益面は採用費の抑制(直接応募の増加やリファラル採用の進展)なども寄与して計画を上回る水準で着地した。なお、2023年6月期は治験を行っていない期間でもあり、研究開発費は前期比22.1%減の176百万円だった。前期比では50百万円減少したが、計画比では25百万円増加した。
4. 2024年6月期の見通し
2024年6月期の業績(非連結)予想については未定としている。DTxプラットフォーム事業はサービス利用料収入の順調な拡大を見込むが、DTxプロダクト事業において、期初時点では不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」の収益を合理的に算定することが困難であるため、開示が可能となった時点で速やかに開示するとしている。なお耳鼻科領域における治療用アプリ「SMD403」について、杏林製薬(株)からの契約一時金を受領済みだが、収益計上時期は未定としている。重点施策として、DTxプロダクト事業では開発パイプラインの進捗(ACP用プログラム医療機器「SMD402」及び腎臓病リハビリアプリ「SMD201」の検証的試験の着手、耳鳴を対象疾患とする「SMD403」の臨床研究の開始、乳がん切除後疼痛症候群を対象疾患とする「SMD105」の探索的試験の開始)を推進する。DTxプラットフォーム事業では汎用臨床試験システム「SUSMED SourceDataSync」の新規案件獲得、ブロックチェーン技術によるレジストリ構築開始などを推進する方針だ。
5. 長期的視点での収益最大化に向けて開発パイプライン拡充などを推進
同社は研究開発段階にあるため数値的な目標となる経営指標を設定していないが、当面の成長戦略として、DTxプロダクト事業では長期的視点での収益最大化に向けた開発パイプライン件数の拡充や臨床試験の進捗、DTxプラットフォーム事業では収益の継続的かつ累積的な増加を実現するため、契約件数の拡大や新サービスの拡充などを重要な経営指標と位置付けている。こうした経営指標を高めるために、医療機関・学術研究機関・製薬企業などとの共同研究やアライアンスなども推進している。さらにDTxプロダクト事業の海外展開として、法令の有無、保険償還の仕組み、市場規模、競合の有無などの要素を複合的に判断し、進出国を選定中である。
6. 中長期成長のポテンシャル
同社は研究開発段階のベンチャー企業であり、当面は研究開発費が先行して期間損益のマイナスが継続する見込みだが、医療機器製造販売承認取得の第1弾となった不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」の収益が2025年6月期以降に本格寄与することが予想され、その販売状況に注目したいと弊社では考えている。また、国の政策として厚生労働省がプログラム医療機器の普及促進に向けて承認環境の整備を推進していることも追い風であり、開発パイプラインの拡充・進捗にも注目したい。さらに、ブロックチェーン技術の応用によるDTxプラットフォーム事業の拡大や、DTxプロダクト事業とDTxプラットフォーム事業のシナジーも予想される。こうした点を勘案して中長期成長のポテンシャルは大きいと弊社では評価している。
■Key Points
・第三の治療法として注目されているDTx開発を軸に事業展開する研究開発段階のベンチャー企業
・不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」は2023年内に上市見込み
・2023年6月期は損失が縮小
・開発パイプライン拡充を推進。プラットフォーム事業の拡大も期待され、中長期成長のポテンシャルが大きい
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<SI>
■要約
サスメド<4263>は、ミッションに「ICTの活用によって持続可能な医療サービスを社会に提供し続けること」を掲げ、医薬品及び医療機器に次ぐ第三の治療法として注目されるデジタル治療(Digital Therapeutics、以下、DTx)を開発する研究開発段階のベンチャー企業である。
1. DTxプロダクト事業では治療用アプリを開発、不眠障害治療用アプリが医療機器製造販売承認を取得
DTxプロダクト事業においては治療用アプリを開発している。治療用アプリとは、薬剤や医療機器を用いた治療ではなく、患者のスマートフォンにダウンロードされたアプリケーションによって治療を施す新しいデジタル療法である。誰でも利用できる一般的なヘルスケアアプリ(ダイエットアプリ、歩行数計測アプリなど)とは異なり、治験によって確認された有効性・安全性に関わる医学的エビデンスに基づいて、薬機法上の医療機器として規制当局の薬事承認を得ることが必要になる。開発パイプラインは2023年8月時点で10件である。このうち不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」については2023年2月に厚生労働省より医療機器製造販売承認を取得し、日本における独占的販売権を供与している塩野義製薬<4507>とともに保険適用及び上市(2023年内の見込み)に向けて準備を進めている。製品上市後は塩野義製薬から販売額に応じたロイヤリティーを受領する。
2. DTxプラットフォーム事業では創薬開発プロセス効率化を支援
DTxプラットフォーム事業は不眠障害治療用アプリの開発過程で獲得したノウハウをベースに、治療用アプリ開発プラットフォームを活用したDTx開発支援サービス、医療ビッグデータを分析する機械学習自動分析システム、臨床試験の効率化を支援する汎用臨床試験システムなどを提供している。特に汎用臨床試験システム「SUSMED SourceDataSync(R)」(以下、「SUSMED SourceDataSync」)は、ブロックチェーン技術を実装したモニタリングシステムにより、臨床試験で求められる高い水準でのセキュリティとデータ改ざん耐性を同時に実現するとともに、モニタリングに関する工数と費用の大幅削減に貢献する。2022年6月にはバイオベンチャー企業のアキュリスファーマ(株)と、企業治験として世界初となるブロックチェーン技術を活用した治験の実施に関する契約を締結し、同年11月に「SUSMED SourceDataSync」を活用した1例目の治験を開始、2023年1月には2例目の治験を開始した。
3. 2023年6月期は損失が縮小
2023年6月期の業績(非連結)は、事業収益が前期比67.5%増の530百万円、営業損失が48百万円(前期は229百万円の損失)、経常損失が44百万円(同217百万円の損失)、当期純損失が50百万円(同233百万円の損失)だった。DTxプロダクト事業において不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」にかかる塩野義製薬からのマイルストン収入を計上し、DTxプラットフォーム事業も順調に伸長したため、全体として大幅増収となり損失が縮小した。売上面はおおむね計画水準だが、利益面は採用費の抑制(直接応募の増加やリファラル採用の進展)なども寄与して計画を上回る水準で着地した。なお、2023年6月期は治験を行っていない期間でもあり、研究開発費は前期比22.1%減の176百万円だった。前期比では50百万円減少したが、計画比では25百万円増加した。
4. 2024年6月期の見通し
2024年6月期の業績(非連結)予想については未定としている。DTxプラットフォーム事業はサービス利用料収入の順調な拡大を見込むが、DTxプロダクト事業において、期初時点では不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」の収益を合理的に算定することが困難であるため、開示が可能となった時点で速やかに開示するとしている。なお耳鼻科領域における治療用アプリ「SMD403」について、杏林製薬(株)からの契約一時金を受領済みだが、収益計上時期は未定としている。重点施策として、DTxプロダクト事業では開発パイプラインの進捗(ACP用プログラム医療機器「SMD402」及び腎臓病リハビリアプリ「SMD201」の検証的試験の着手、耳鳴を対象疾患とする「SMD403」の臨床研究の開始、乳がん切除後疼痛症候群を対象疾患とする「SMD105」の探索的試験の開始)を推進する。DTxプラットフォーム事業では汎用臨床試験システム「SUSMED SourceDataSync」の新規案件獲得、ブロックチェーン技術によるレジストリ構築開始などを推進する方針だ。
5. 長期的視点での収益最大化に向けて開発パイプライン拡充などを推進
同社は研究開発段階にあるため数値的な目標となる経営指標を設定していないが、当面の成長戦略として、DTxプロダクト事業では長期的視点での収益最大化に向けた開発パイプライン件数の拡充や臨床試験の進捗、DTxプラットフォーム事業では収益の継続的かつ累積的な増加を実現するため、契約件数の拡大や新サービスの拡充などを重要な経営指標と位置付けている。こうした経営指標を高めるために、医療機関・学術研究機関・製薬企業などとの共同研究やアライアンスなども推進している。さらにDTxプロダクト事業の海外展開として、法令の有無、保険償還の仕組み、市場規模、競合の有無などの要素を複合的に判断し、進出国を選定中である。
6. 中長期成長のポテンシャル
同社は研究開発段階のベンチャー企業であり、当面は研究開発費が先行して期間損益のマイナスが継続する見込みだが、医療機器製造販売承認取得の第1弾となった不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」の収益が2025年6月期以降に本格寄与することが予想され、その販売状況に注目したいと弊社では考えている。また、国の政策として厚生労働省がプログラム医療機器の普及促進に向けて承認環境の整備を推進していることも追い風であり、開発パイプラインの拡充・進捗にも注目したい。さらに、ブロックチェーン技術の応用によるDTxプラットフォーム事業の拡大や、DTxプロダクト事業とDTxプラットフォーム事業のシナジーも予想される。こうした点を勘案して中長期成長のポテンシャルは大きいと弊社では評価している。
■Key Points
・第三の治療法として注目されているDTx開発を軸に事業展開する研究開発段階のベンチャー企業
・不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」は2023年内に上市見込み
・2023年6月期は損失が縮小
・開発パイプライン拡充を推進。プラットフォーム事業の拡大も期待され、中長期成長のポテンシャルが大きい
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<SI>