早稲アカ Research Memo(4):中期経営計画は順調な滑り出し。大学受験部、個別指導部門の今後の成長に期待
[23/11/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*15:04JST 早稲アカ Research Memo(4):中期経営計画は順調な滑り出し。大学受験部、個別指導部門の今後の成長に期待
■業績動向
3.中期経営計画の進捗状況
早稲田アカデミー<4718>は2024年3月期からスタートする3ヶ年の中期経営計画を2023年5月に発表した。業績目標として2026年3月期に売上高353.4億円、経常利益30.0億円を掲げ、増収増益の継続と利益率の向上を目指す。1校舎当たりの生徒数増加と費用統制に取り組むことで、経常利益率は2023年3月期の7.9%から2026年3月期に8.5%に引き上げ、ROEについても12%台を維持する計画となっている。
2024年3月期以降の2年間の年平均成長率で見ると、売上高は3.1%、経常利益は5.6%の安定成長を計画している。2023年3月期までの3年間は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)により私国立中学への受験熱が高まったことや、オンライン授業等に積極的に取り組んだことが評価され、小学部を中心に塾生数が年率6%の勢いで伸びてきたが、今後は年率2〜3%増と巡航速度に落ち着くことを前提としている。
企業目標として、「子どもたちの未来を育む 独自の価値を提供し続け 教育企業No.1を目指す」ことを掲げ、本来の価値である「成績向上と志望校合格」に加えて、本質的な価値となる「ワセ価値」を提供することで他社との差別化を図り持続的成長を実現していく考えだ。「ワセ価値」とは、「本気でやる子を育てる」という同社の教育理念を徹底実践することを起点に、生徒の本気を引き出す授業によって成績向上や志望校への合格を実現するだけでなく、前向きな思考やチャレンジ精神、問題を発見し解決する力や困難を乗り越える力を育み、その後の豊かな人生を送る礎となる姿勢と能力を身に付けることにある。
市場環境の前提として、全国で深刻化している少子化の影響については当中期経営計画内ではほとんど受けないものと見ている。同社が展開している首都圏エリアにおける6歳から17歳までの人口分布はほぼ同じ水準となっているためだ。また、私国立中学への受験熱についても首都圏では今後も変わらないと見ており、難関校への合格実績を伸ばし続けることで、今後も塾生数は安定して増加するものと見ている。
2023年3月期における早稲田アカデミー単体の売上構成比率を見ると、標準校舎(中高受験集団指導型)が86.6%と大半を占めており、大学受験部が3.0%、個別指導が8.4%とそれぞれ小さい。このため、同社は大学受験部と個別指導に伸びしろがあると見ており、今回の中期経営計画では標準校舎の着実な成長に加えて、両校舎の取り組みを強化することで収益基盤を拡大していく戦略となっている。中期経営計画における主な取り組みは以下の通り。
a) 標準校舎の着実な成長
標準校舎については年間1校程度の新規開校ペースに留め、既存校の移転・リニューアルによる学習環境の改善・向上や、講師・事務スタッフの育成強化による授業サービスの品質向上及びICTを活用した付加サービスの提供により顧客満足度の向上を図り、1校舎当たりの塾生数増加につなげていく。
b) 大学受験部の新領域開拓
大学受験部では、「東進衛星予備校ネットワーク・東進中学NET」に新たに加盟したことを2023年11月に発表し、同サービスを2025年3月期より開始する。大学受験・進学に向けて様々な生徒のニーズに応じた授業サービスを提供することが可能で、今まで取りこぼしていた卒塾生の一部を同サービスの開始によって獲得できるものと見ている。今までは東大や早慶大など難関大学志望の学生をターゲットにしていたため、大学受験部の塾生数は2千人弱、売上高で9億円弱に留まっていたが、同サービスの開始によって2027年3月期に塾生数約4千人、売上高で約18億円と2倍に拡大することを目指している。
c) 個別指導部門の展開加速
個別指導部門では2023年10月末時点でFC校も含めて67校を展開しているが、2027年3月期に100校体制まで拡大し、首都圏における難関校受験対策の個別指導としてNo.1の地位確立を目指す。FCオーナーの投資意欲も旺盛で年間8〜9校のペースで校舎を開設すれば目標を達成することになる。校舎も標準校舎の近隣に開設できれば、集団塾と併用する塾生の率も上昇する傾向にあるため※、今後はロケーションも考慮に入れながらシナジーを高めていく戦略だ。売上高は2023年3月期の約25億円から2027年3月期は約35億円と1.4倍増を目指す。
※校舎が隣接している場合、併用率は6〜7%で受験直前期になると9〜10%に上昇する。
d) DX戦略強化と差別化促進
同社はコロナ禍以降、双方向Web授業や「早稲田アカデミーOnline」などICTを活用した様々なサービスを積極的に提供したことで、顧客から高い評価を得て塾生数の拡大につなげてきた。このため、今回の中期経営計画においてもDX戦略を継続し、競合塾との差別化を図っていく戦略だ。
「早稲田アカデミーOnline」については引き続き機能の拡充に取り組み、生徒・保護者の利便性向上につなげていく。2024年3月期は新たに講座申込や料金内容の確認画面を追加した。また、個々の塾生の成績データとほかの塾生や卒塾生のデータを比較分析することが可能な成績管理システムをリリースした。同システムでは外部機関が実施する公開模擬試験の結果なども反映されており、進路指導部門においてこれらビッグデータを活用することで生徒に対して細やかな学習指導や志望校対策をアドバイスできることになり、合格率の向上(=顧客満足度の向上)とその結果として塾生数の増加につながる効果が期待される。
e) 人材育成の強化
成長の源泉となる人材の育成に関しては、映像研修ツールの充実と各種マニュアルの刷新を継続的に行っており、効率的な人材育成に取り組んでいる。また、採用面においては内部リクルートの強化(非常勤職員から正社員への登用、卒塾生の非常勤職員としての採用等)や採用手法の改革(募集広告の効率向上、本社と校舎が一体となった採用手順の強化)によって優秀な人材を確保しているほか、2023年10月には新たな取り組みとして首都圏の私立中学高等学校協会等と協力して、教育業界への就業に興味を持つ学生を対象とした教育就活セミナーを開催した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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■業績動向
3.中期経営計画の進捗状況
早稲田アカデミー<4718>は2024年3月期からスタートする3ヶ年の中期経営計画を2023年5月に発表した。業績目標として2026年3月期に売上高353.4億円、経常利益30.0億円を掲げ、増収増益の継続と利益率の向上を目指す。1校舎当たりの生徒数増加と費用統制に取り組むことで、経常利益率は2023年3月期の7.9%から2026年3月期に8.5%に引き上げ、ROEについても12%台を維持する計画となっている。
2024年3月期以降の2年間の年平均成長率で見ると、売上高は3.1%、経常利益は5.6%の安定成長を計画している。2023年3月期までの3年間は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)により私国立中学への受験熱が高まったことや、オンライン授業等に積極的に取り組んだことが評価され、小学部を中心に塾生数が年率6%の勢いで伸びてきたが、今後は年率2〜3%増と巡航速度に落ち着くことを前提としている。
企業目標として、「子どもたちの未来を育む 独自の価値を提供し続け 教育企業No.1を目指す」ことを掲げ、本来の価値である「成績向上と志望校合格」に加えて、本質的な価値となる「ワセ価値」を提供することで他社との差別化を図り持続的成長を実現していく考えだ。「ワセ価値」とは、「本気でやる子を育てる」という同社の教育理念を徹底実践することを起点に、生徒の本気を引き出す授業によって成績向上や志望校への合格を実現するだけでなく、前向きな思考やチャレンジ精神、問題を発見し解決する力や困難を乗り越える力を育み、その後の豊かな人生を送る礎となる姿勢と能力を身に付けることにある。
市場環境の前提として、全国で深刻化している少子化の影響については当中期経営計画内ではほとんど受けないものと見ている。同社が展開している首都圏エリアにおける6歳から17歳までの人口分布はほぼ同じ水準となっているためだ。また、私国立中学への受験熱についても首都圏では今後も変わらないと見ており、難関校への合格実績を伸ばし続けることで、今後も塾生数は安定して増加するものと見ている。
2023年3月期における早稲田アカデミー単体の売上構成比率を見ると、標準校舎(中高受験集団指導型)が86.6%と大半を占めており、大学受験部が3.0%、個別指導が8.4%とそれぞれ小さい。このため、同社は大学受験部と個別指導に伸びしろがあると見ており、今回の中期経営計画では標準校舎の着実な成長に加えて、両校舎の取り組みを強化することで収益基盤を拡大していく戦略となっている。中期経営計画における主な取り組みは以下の通り。
a) 標準校舎の着実な成長
標準校舎については年間1校程度の新規開校ペースに留め、既存校の移転・リニューアルによる学習環境の改善・向上や、講師・事務スタッフの育成強化による授業サービスの品質向上及びICTを活用した付加サービスの提供により顧客満足度の向上を図り、1校舎当たりの塾生数増加につなげていく。
b) 大学受験部の新領域開拓
大学受験部では、「東進衛星予備校ネットワーク・東進中学NET」に新たに加盟したことを2023年11月に発表し、同サービスを2025年3月期より開始する。大学受験・進学に向けて様々な生徒のニーズに応じた授業サービスを提供することが可能で、今まで取りこぼしていた卒塾生の一部を同サービスの開始によって獲得できるものと見ている。今までは東大や早慶大など難関大学志望の学生をターゲットにしていたため、大学受験部の塾生数は2千人弱、売上高で9億円弱に留まっていたが、同サービスの開始によって2027年3月期に塾生数約4千人、売上高で約18億円と2倍に拡大することを目指している。
c) 個別指導部門の展開加速
個別指導部門では2023年10月末時点でFC校も含めて67校を展開しているが、2027年3月期に100校体制まで拡大し、首都圏における難関校受験対策の個別指導としてNo.1の地位確立を目指す。FCオーナーの投資意欲も旺盛で年間8〜9校のペースで校舎を開設すれば目標を達成することになる。校舎も標準校舎の近隣に開設できれば、集団塾と併用する塾生の率も上昇する傾向にあるため※、今後はロケーションも考慮に入れながらシナジーを高めていく戦略だ。売上高は2023年3月期の約25億円から2027年3月期は約35億円と1.4倍増を目指す。
※校舎が隣接している場合、併用率は6〜7%で受験直前期になると9〜10%に上昇する。
d) DX戦略強化と差別化促進
同社はコロナ禍以降、双方向Web授業や「早稲田アカデミーOnline」などICTを活用した様々なサービスを積極的に提供したことで、顧客から高い評価を得て塾生数の拡大につなげてきた。このため、今回の中期経営計画においてもDX戦略を継続し、競合塾との差別化を図っていく戦略だ。
「早稲田アカデミーOnline」については引き続き機能の拡充に取り組み、生徒・保護者の利便性向上につなげていく。2024年3月期は新たに講座申込や料金内容の確認画面を追加した。また、個々の塾生の成績データとほかの塾生や卒塾生のデータを比較分析することが可能な成績管理システムをリリースした。同システムでは外部機関が実施する公開模擬試験の結果なども反映されており、進路指導部門においてこれらビッグデータを活用することで生徒に対して細やかな学習指導や志望校対策をアドバイスできることになり、合格率の向上(=顧客満足度の向上)とその結果として塾生数の増加につながる効果が期待される。
e) 人材育成の強化
成長の源泉となる人材の育成に関しては、映像研修ツールの充実と各種マニュアルの刷新を継続的に行っており、効率的な人材育成に取り組んでいる。また、採用面においては内部リクルートの強化(非常勤職員から正社員への登用、卒塾生の非常勤職員としての採用等)や採用手法の改革(募集広告の効率向上、本社と校舎が一体となった採用手順の強化)によって優秀な人材を確保しているほか、2023年10月には新たな取り組みとして首都圏の私立中学高等学校協会等と協力して、教育業界への就業に興味を持つ学生を対象とした教育就活セミナーを開催した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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