propetec Research Memo(4):テクノロジーなどに特徴を持つマンション買取再販事業(1)
[24/02/19]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*15:54JST propetec Research Memo(4):テクノロジーなどに特徴を持つマンション買取再販事業(1)
■事業概要
2. 中古住宅再生事業
(1) マンション買取再販事業
マンション買取再販事業は、property technologies<5527>が仲介会社を通じ、売り主(所有者)から中古マンションを買い取って、リノベーションにより価値を高めたうえで再販する事業である。展開ブランド「FURVAL」では厳選された家具や生活必需品の家電、調理器具などを、デザインや機能、サイズなどリノベーション空間にあわせて取り揃え、時間的な労力をセーブするだけでなく、家具や家電を含めた価格で販売する(ローンに組む)ことで金銭的な負担も軽減するサービスを提供している。なお、ホームネットでの購入者に限定して、住宅設備の故障に10年間何度でも利用できるアフターサービス「住設あんしんサポート」も提供している。
マンション買取再販事業の特徴は、30代〜40代の一次取得者層をターゲットに、北海道から沖縄まで地方の主要都市部を中心に事業展開している点、仲介会社などとのリアルなネットワーク、データとテクノロジーによる仕組み、組織文化という独自の優位性を構築している点にある。ターゲットが一次取得者層であることのメリットは、子供の成長など顧客のライフサイクルからニーズが明確なうえ安定した実需が期待できることにある。一方で一次取得者層にとっても、東京都の中古マンション平均価格が56百万円であるのに対して同社は29百万円と、一般的な借入期間で一定の金利上昇があったとしても、住宅ローンの返済額が家賃以下になるという値ごろにメリットがある。また、地方圏の比率は同業他社が4割程度のところ同社は6割と高くなっている。地方圏の物件密度が薄く営業効率が低いという一般的なデメリットを、広く営業ネットワークを築き効率的な情報授受を行うことでカバーすることで、築30年以上の物件の増加で市場が成長しながらも競争が緩やかであるという、より大きなメリットを享受している。
(2) iBuyerビジネス
不動産テックを活用する一部企業が、iBuyerという取引形態を掲げて事業を行っているが、同社はリアルの不動産事業を展開している会社のため、販売に苦労することなくiBuyerビジネスを拡大できていることが特徴である。その原動力となっているのが、2021年にスタートしたiBuyerプラットフォーム「KAITRY」である。「KAITRY」は、複雑な不動産の売買プロセスをオンラインで容易に遂行できる仕組みとしているうえ、同社のAI査定によって、通常の売却では3ヶ月以上かかるところ、査定を最短5秒に短縮、販売(現金化)も最短3日で提供している。さらに、住みながら売りたい人にはセール&リースバック、新居を買ってから売りたい人には先日付買取保証、お得に売りたい人には共同投資型売却といったメニューを揃えることで住み替えニーズを後押ししている。
こうした新しいビジネスモデルのおかげで個人による不動産売買のハードルが下がり、将来的に住み替え市場自体が拡大することで、同社が目指す「誰もが」「いつでも」「何度でも」「気軽に」住み替えることのできる未来に近づいていくと思われる。同社は「KAITRY」を普及するため、2023年11月期にネット広告の継続運用、TVCMの試験運用、仕入クロージングの体制強化、UI/UXなどの基盤強化を推進した。この結果「KAITRY」の認知度が向上し、仕入件数が毎月安定的に増加、コンバージョンの拡大にもつながってきた。また、住み替えニーズに応え、新たな販路として活用していくため物件購入ページのリニューアルを実行した。なお、同社が直販売に乗り出したことで仲介会社とのコンフリクトが懸念されるが、買取再販事業者による直接販売はもはや特別なことではなく、住み替え市場の拡大を目指していること、仲介会社と共に業務効率化(DX)に取り組むことで、信頼関係を保っている。
(3) SaaSサービス
同社のAI査定や「KAITRY」が素晴らしい実績を上げつつあるなか、仲介会社などの要望によりそうしたテクノロジーを公開することとなり、2022年にスタートしたのがSaaSサービである。SaaSプロダクトが広く受け入れられれば、ターゲットは全国33,000社以上の仲介会社にとどまらず、不動産会社全体31万社や、不動産関連業務を幅広く扱っている弁護士など士業4万事業所、1,000の金融機関へとニーズが拡大していく可能性もあると思われる。一方で、SaaSプロダクトの提供により関係が強化されることで、物件紹介という形での収益へのフィードバックも期待できる。こうしたビジネス展開を実現するため、金融機関向け「KAITRY finance」、士業向け「KAITRY professional」、仲介会社向け「HOMENET Pro」の3つSaaSプロダクトを開発、提供を開始した。なお、「KAITRY finance」と「KAITRY professional」については、ニーズを捉えて早期に収益化するべく展開を急ぐ方針だが、「HOMENET Pro」は将来のサービス拡張を見据えて、まずは取引間口を広げるため無料登録拡大を急いでいる。
このなかで金融機関向け「KAITRY finance」は、AI査定機能(売出価格/成約価格)のほか、与信管理や資産活用提案などで活用する不動産価格調査書の作成が可能となっており、業務の効率化や金融サービスの高付加価値化につながることから、幅広い金融機関、しかも複数部署でニーズがあると思われる。このため、地方銀行を含む全国の金融機関向けに販促を展開、すでにみずほ銀行など4行が導入、または導入に向けた運用を開始した。各銀行では、法人融資において融資先資産実態把握の手間軽減や行内基準の統一化・属人性排除、個人業務においてはプライベートバンキングでの顧客資産全体を把握した総合的提案、遺言信託/遺産整理にまつわる商機拡大、住宅ローンでの借換え相談時の提案充実、債権管理においては保証会社/サービサーの査定業務の効率化などに利用しているようだ。
弁護士や税理士、司法書士など士業向け「KAITRY professional」は、AI査定機能(売出価格/成約価格)のほか、不動産の遺産分割や財産分与時に活用する不動産価格調査書の作成が可能となっている。士業による不動産価格の算定には客観性が求められるため、複数の不動産会社に調査を依頼する必要があるなど手間と時間がかかることが課題だった。しかし「KAITRY professional」は、スピーディかつ低コストで価格算定ができるうえ業務の効率化にもつながることから、相続や離婚など迅速な解決が必要な場合に適しており、士業での導入拡大が期待されているところである。一方、士業への領域拡大は、買取再販事業の新たな仕入ルートとして、同社のデータベースをさらに強化していくことが期待されている。
仲介会社向け「HOMENET Pro」は、同社が業務用に構築してきた業務効率化ツールをパッケージ化したもので、AI査定(売出価格/成約価格)や提案書作成、オンライン上で取り扱い可能物件の確認などの機能がついており、業務の効率化に貢献することが期待されている。当面は同社物件の仕入・販売強化の新たなチャネルとして活用する狙いもあって無料登録拡大を急ぐが、将来的には機能拡充により収益化を進める方針である。2022年11月のローンチ以降アカウント数は着実に増加しており、2023年11月期末で9,000を超え、査定数はのべ2,337件となった。「HOMENET Pro」により仲介会社を囲い込み、データベースの強化や仕入の拡大につなげていく考えである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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■事業概要
2. 中古住宅再生事業
(1) マンション買取再販事業
マンション買取再販事業は、property technologies<5527>が仲介会社を通じ、売り主(所有者)から中古マンションを買い取って、リノベーションにより価値を高めたうえで再販する事業である。展開ブランド「FURVAL」では厳選された家具や生活必需品の家電、調理器具などを、デザインや機能、サイズなどリノベーション空間にあわせて取り揃え、時間的な労力をセーブするだけでなく、家具や家電を含めた価格で販売する(ローンに組む)ことで金銭的な負担も軽減するサービスを提供している。なお、ホームネットでの購入者に限定して、住宅設備の故障に10年間何度でも利用できるアフターサービス「住設あんしんサポート」も提供している。
マンション買取再販事業の特徴は、30代〜40代の一次取得者層をターゲットに、北海道から沖縄まで地方の主要都市部を中心に事業展開している点、仲介会社などとのリアルなネットワーク、データとテクノロジーによる仕組み、組織文化という独自の優位性を構築している点にある。ターゲットが一次取得者層であることのメリットは、子供の成長など顧客のライフサイクルからニーズが明確なうえ安定した実需が期待できることにある。一方で一次取得者層にとっても、東京都の中古マンション平均価格が56百万円であるのに対して同社は29百万円と、一般的な借入期間で一定の金利上昇があったとしても、住宅ローンの返済額が家賃以下になるという値ごろにメリットがある。また、地方圏の比率は同業他社が4割程度のところ同社は6割と高くなっている。地方圏の物件密度が薄く営業効率が低いという一般的なデメリットを、広く営業ネットワークを築き効率的な情報授受を行うことでカバーすることで、築30年以上の物件の増加で市場が成長しながらも競争が緩やかであるという、より大きなメリットを享受している。
(2) iBuyerビジネス
不動産テックを活用する一部企業が、iBuyerという取引形態を掲げて事業を行っているが、同社はリアルの不動産事業を展開している会社のため、販売に苦労することなくiBuyerビジネスを拡大できていることが特徴である。その原動力となっているのが、2021年にスタートしたiBuyerプラットフォーム「KAITRY」である。「KAITRY」は、複雑な不動産の売買プロセスをオンラインで容易に遂行できる仕組みとしているうえ、同社のAI査定によって、通常の売却では3ヶ月以上かかるところ、査定を最短5秒に短縮、販売(現金化)も最短3日で提供している。さらに、住みながら売りたい人にはセール&リースバック、新居を買ってから売りたい人には先日付買取保証、お得に売りたい人には共同投資型売却といったメニューを揃えることで住み替えニーズを後押ししている。
こうした新しいビジネスモデルのおかげで個人による不動産売買のハードルが下がり、将来的に住み替え市場自体が拡大することで、同社が目指す「誰もが」「いつでも」「何度でも」「気軽に」住み替えることのできる未来に近づいていくと思われる。同社は「KAITRY」を普及するため、2023年11月期にネット広告の継続運用、TVCMの試験運用、仕入クロージングの体制強化、UI/UXなどの基盤強化を推進した。この結果「KAITRY」の認知度が向上し、仕入件数が毎月安定的に増加、コンバージョンの拡大にもつながってきた。また、住み替えニーズに応え、新たな販路として活用していくため物件購入ページのリニューアルを実行した。なお、同社が直販売に乗り出したことで仲介会社とのコンフリクトが懸念されるが、買取再販事業者による直接販売はもはや特別なことではなく、住み替え市場の拡大を目指していること、仲介会社と共に業務効率化(DX)に取り組むことで、信頼関係を保っている。
(3) SaaSサービス
同社のAI査定や「KAITRY」が素晴らしい実績を上げつつあるなか、仲介会社などの要望によりそうしたテクノロジーを公開することとなり、2022年にスタートしたのがSaaSサービである。SaaSプロダクトが広く受け入れられれば、ターゲットは全国33,000社以上の仲介会社にとどまらず、不動産会社全体31万社や、不動産関連業務を幅広く扱っている弁護士など士業4万事業所、1,000の金融機関へとニーズが拡大していく可能性もあると思われる。一方で、SaaSプロダクトの提供により関係が強化されることで、物件紹介という形での収益へのフィードバックも期待できる。こうしたビジネス展開を実現するため、金融機関向け「KAITRY finance」、士業向け「KAITRY professional」、仲介会社向け「HOMENET Pro」の3つSaaSプロダクトを開発、提供を開始した。なお、「KAITRY finance」と「KAITRY professional」については、ニーズを捉えて早期に収益化するべく展開を急ぐ方針だが、「HOMENET Pro」は将来のサービス拡張を見据えて、まずは取引間口を広げるため無料登録拡大を急いでいる。
このなかで金融機関向け「KAITRY finance」は、AI査定機能(売出価格/成約価格)のほか、与信管理や資産活用提案などで活用する不動産価格調査書の作成が可能となっており、業務の効率化や金融サービスの高付加価値化につながることから、幅広い金融機関、しかも複数部署でニーズがあると思われる。このため、地方銀行を含む全国の金融機関向けに販促を展開、すでにみずほ銀行など4行が導入、または導入に向けた運用を開始した。各銀行では、法人融資において融資先資産実態把握の手間軽減や行内基準の統一化・属人性排除、個人業務においてはプライベートバンキングでの顧客資産全体を把握した総合的提案、遺言信託/遺産整理にまつわる商機拡大、住宅ローンでの借換え相談時の提案充実、債権管理においては保証会社/サービサーの査定業務の効率化などに利用しているようだ。
弁護士や税理士、司法書士など士業向け「KAITRY professional」は、AI査定機能(売出価格/成約価格)のほか、不動産の遺産分割や財産分与時に活用する不動産価格調査書の作成が可能となっている。士業による不動産価格の算定には客観性が求められるため、複数の不動産会社に調査を依頼する必要があるなど手間と時間がかかることが課題だった。しかし「KAITRY professional」は、スピーディかつ低コストで価格算定ができるうえ業務の効率化にもつながることから、相続や離婚など迅速な解決が必要な場合に適しており、士業での導入拡大が期待されているところである。一方、士業への領域拡大は、買取再販事業の新たな仕入ルートとして、同社のデータベースをさらに強化していくことが期待されている。
仲介会社向け「HOMENET Pro」は、同社が業務用に構築してきた業務効率化ツールをパッケージ化したもので、AI査定(売出価格/成約価格)や提案書作成、オンライン上で取り扱い可能物件の確認などの機能がついており、業務の効率化に貢献することが期待されている。当面は同社物件の仕入・販売強化の新たなチャネルとして活用する狙いもあって無料登録拡大を急ぐが、将来的には機能拡充により収益化を進める方針である。2022年11月のローンチ以降アカウント数は着実に増加しており、2023年11月期末で9,000を超え、査定数はのべ2,337件となった。「HOMENET Pro」により仲介会社を囲い込み、データベースの強化や仕入の拡大につなげていく考えである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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