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イノベーション Research Memo(1):IFA事業の成長やM&A仲介事業の参入で収益基盤の拡大を進める

注目トピックス 日本株
*13:11JST イノベーション Research Memo(1):IFA事業の成長やM&A仲介事業の参入で収益基盤の拡大を進める
■要約

イノベーション<3970>は、法人営業の生産性向上を目的にインターネットを活用した各種マーケティング支援サービスを展開している。IT製品の比較・資料請求サイト「ITトレンド」(資料請求件数に応じて売上が発生する成果報酬型ビジネスモデル)を中心としたオンラインメディア事業、中堅・中小企業を対象としたマーケティングオートメーション※(以下、MA)ツール「List Finder」を提供するITソリューション事業、IFA(Independent Financial Advisor:独立系ファイナンシャルアドバイザー)による証券・保険・不動産などの資産コンサルティングサービスを行う金融プラットフォーム事業、ベンチャー企業などへの投資を行うVCファンド事業を手掛けている。

※マーケティングオートメーションとは、マーケティング活動におけるプロセスの自動化や効率化を支援するシステムの総称で、見込み顧客情報を管理し、中長期にわたって良好な関係性を築くためのコミュニケーションや最適なタイミングで営業に引き渡す際に必要な煩雑な業務を自動化するために開発されたツールのことを指す。


1. 2024年3月期上期の業績概要
2024年3月期上期の連結業績は、売上高で前期比12.4%減の2,110百万円、営業利益で同16.3%減の231百万円、経常利益で15.6%減の234百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で同1.2%減の136百万円となった。特に主力のオンラインメディア事業の売上高が前期比17.9%減の1,458百万円、セグメント利益が同8.6%減の610百万円となったことが大きく響いたが、オンラインメディア事業の売上高のうち過半を占める「ITトレンド」は依然としてユーザー側のIT製品を探す意欲は強く、ITトレンド単体では前期比で2ケタ%程度の堅調な増収基調が続いたものの、オンライン展示会の開催による出展料が売上高のベースとなる「ITトレンドEXPO」において、2023年3月期は年間3回の展示会が開催されたものの、2024年3月期上期は開催がなかったことで大幅減収となった。なお、1回の展示会開催による平均売上高は2〜3億円と同社の売上規模に比べて大きく、開催の有無やその規模が四半期業績の大きな変動要因となる点に留意する必要がある。なお、同社では2025年3月期は2024年3月期とは異なり、年複数回のオンライン展示会の開催を計画している。

2. 2024年3月期通期の業績見通し
2024年3月期通期の連結業績見通しは、売上高で前期比11.3%増の5,087百万円、営業利益で同147.8%増の850百万円、経常利益で同145.9%増の849百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同712.1%増の509百万円である。第3四半期累計の売上高が前期比0.6%減の3,375百万円、営業利益が同20.8%減の311百万円と、通期計画に対しての進捗率が売上高で66.4%、営業利益で37.2%と低く、第4四半期にITトレンドEXPOの開催による売上寄与が期待されることを踏まえても計画達成は容易ではなく、業績下振れリスクが大きそうだ。同社の競合企業においても金利上昇に伴う米国テクノロジー市場の成長鈍化に起因した外資系顧客からの収益減少、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)収束によるフィジカルへの揺り戻しからのデジタルイベント需要減少などを主因に大幅な減収を余儀なくされているが、外部環境の厳しさは同社においても同様とみられる。ただし、同社のITトレンド単体の売上高は増収基調を維持していることを踏まえると、ITトレンドEXPOを主体としてデジタルイベント関連の売上高が減少しているのは同様の傾向だが、全体としては競合比で相対的に健闘していると言えよう。

3. 中期経営計画の進捗状況とList Finderの価格改定
同社は2023年6月28日に発表した「事業計画及び成長可能性に関する事項」において、中期経営計画の業績目標の変更を行っている。これはITソリューション事業におけるアライアンス進捗の遅延、金融プラットフォーム事業における仕組債の問題などを受けた市場停滞の影響などから当初の業績目標と実績に乖離が発生したことによるものである。従来の中期経営計画では2025年3月期を最終年度とし、売上高8,300百万円、営業利益1,840百万円を目指していたが、同社では達成年度を1年間先送りとし、2026年3月期にこの財務目標の達成を再度狙う。また、全体の売上高、営業利益の数値目標に変化はないが、事業別ではITソリューション事業の売上高、営業利益目標を引き下げる一方、オンラインメディア事業の目標は引き上げた。金融プラットフォーム事業は従来計画から売上高、営業利益ともに変更はない。

従来計画よりも数値面での進捗は遅れているものの、中期経営計画期間中に大幅な増収を狙っている金融プラットフォーム事業においては、引き続きIFA事業の体制強化を進めるとともに、M&A仲介事業も連結に取り込むことで売上高の加速を目指す。一方、List Finderの売上が大半を占めるITソリューション事業は2020年3月期にアカウント数拡大戦略から収益力強化に向けた戦略に転換しており、SaaS事業であるアカウント数やARPUは横ばい傾向が続いている。そのため、収益力向上の一環として、同社では2024年6月1日以降の契約更新分よりList Finderの価格改定を実施する方針を打ち出した。スタンダードプランでは従来、初期費用10万円、月額費用59,800円(税抜き)であったが、価格改定後は月額費用が69,000円へと約15.4%の値上げとなる。直近で値上げを実施している他SaaS企業と同様に値上げ後の解約率の上昇を一定程度に抑えられれば利益率の大幅な改善につながる可能性があるため、今後の動向に注目したい。

■Key Points
・2024年3月期上期業績はコロナ禍からの経済正常化の流れのなか、オンライン展示会の開催回数の減少、顧客の広告予算の削減などが外部環境の逆風に
・2024年3月期の会社業績予想達成ハードルは高い。ただし、2025年3月期はオンライン展示会の開催回数増、List Finderの値上げなどで収益は回復へ転じよう
・直近で値上げを実施した他SaaS企業とは異なり同社の直近のKPIは伸び悩みを示していたことから、値上げ後に解約率の上昇が発現しないかに注視する必要

(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)



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