エージェント・インシュアランス・グループ Research Memo(4):安定的な収益構造を確立し事業を展開(2)
[24/03/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*16:44JST エージェント・インシュアランス・グループ Research Memo(4):安定的な収益構造を確立し事業を展開(2)
■事業概要
2. 市場環境
保険業界の国内市場規模についてエージェント・インシュアランス・グループ<5836>によると、2023年3月時点での生命保険が38.0兆円(保険料等収入ベース)、2023年3月時点での損害保険は9.1兆円(正味保険料ベース)であった。生命保険は損害保険の4倍超で、かつ米国、中国に次ぐ第3位の規模であったが、2022年においては4位へと下降。国策の影響で、NISAやiDeCoなどをはじめとした投資に興味を持った人も多く、2023年3月時点の国内の生命保険市場規模は一時的に拡大したものの、少子高齢化や労働力人口の減少などにより、今後は緩やかな減少傾向が続くと見られている。一方、同社が属する損害保険市場は、近年増加傾向にある天災リスクやサイバーリスク等により毎年その規模が拡大しており、2023年3月時点では初めて9兆円を突破した。ポートフォリオの内訳では、自動車保険及び自賠責保険合計で全体の約55%(正味保険料ベース)を占めている。
国内の損害保険市場規模は年間9兆円台を突破し、拡大傾向が続いている。一方で、損害保険代理店数は1999年以降大幅に減少しており、2023年3月時点では15.6万店となった。今後も減少傾向が続くと見られているが、これは保険代理店に求められる募集品質レベルや管理体制等の高度化、保険代理店事業主及び従業員の高齢化問題(代理店主の年齢のうち50歳以上は75.5%、60歳以上は40.6%)が背景にある。
このような市場環境の下、同社は後継者不足などから存続が困難である保険代理店及び保険募集人をパートナー社員もしくは勤務型代理店として受け入れる「保険代理店支援プラットフォーム」を展開している。具体的には、営業・事務両面からのサポートとして、週1回の面談による業務フォロー、定期勉強会やe-ラーニングを活用した研修支援、FP(ファイナンシャル・プランナー)資格を持った社員の営業同行支援等を通じて、保険業法や各保険会社の規則に則った業務の継続をサポートし、合流したパートナー社員もしくは勤務型代理店が「あんしん」して働ける環境を創出している。
3. 手数料ポイント制度
手数料ポイント制度とは、損害保険代理店の主な収益源である損害保険会社からの手数料率が、損害保険会社が定める基準によって変動する制度のことである。全国商工新聞によると、同制度導入前は一定の基準を満たせば一律20%前後の手数料が相場であったが、ポイント制度の導入によって20〜120のポイント格差が生じるようになった。一例を挙げると、保険料10万円の自動車保険を販売した場合、同制度導入前は20%の20,000円が代理店に手数料として支払われた。一方、同制度導入後は、ポイントが20であれば手数料は4,000円、100であれば20,000円、120であれば24,000円と大きく変動する。
手数料ポイントが収益に直結するため、いかにポイントを高めるかが重要であり、代理店の規模(年間の収入保険料)と前年対比の増収率がポイント決定の大きな要因と見られる。これに代理店のグレードに応じた認定ランクや業務品質、専属性(自社損害保険のシェア)、損害率、各損害保険会社が推進する施策の達成率など、様々な要素が上乗せされ手数料ポイントが決まる。ポイント決定の大きな要因と見られる代理店規模と増収率をそれ以外でカバーするのは難しい。このことから、損害保険会社は保険代理店に対して、手数料ポイント制度の改定を通じて代理店の事業規模拡大や統廃合の推進を求めているとも考えられる。このため、同社は、手数料ポイントの獲得が難しい中小規模代理店を中心に、M&A及び事業承継を通じて事業規模の拡大を進め、高い手数料ポイントの獲得・維持を図り全体の収益を最大化している。
同制度導入の背景には、損害保険会社が効率化を図るため、損害保険代理店数の削減を必要としていることが考えられる。地方に多い個人経営の代理店を合併し、損害保険会社が出資している保険代理店に吸収合併するなど、様々な施策を講じている。これに対し同社は、同社グループの営業収益の約半分を占める東京海上日動火災保険をはじめとした各損害保険会社に対して事業承継のための営業活動を積極的に行い、事業承継を必要とする中小規模代理店の紹介を受けている。株式上場により知名度が向上し、代理店が同社に直接問い合わせるケースも増えているようだ。なお、損害保険会社が同制度導入を通じて代理店の統廃合を進める中、代理店の大規模化や効率化がどのように進むかが注目される。
いずれにしても、大規模代理店が有利となる同制度が維持される限り、中小規模代理店の統廃合は進み、代理店の大型化、効率化の流れは避けられないと言える。損害保険会社が提示する代理店手数料体系は毎年改定されるが、同社のような上位代理店はM&A及び事業承継を通じて相対的に収益性を維持できる環境にあると弊社では考える。なお、従来は同社が事業承継した保険代理店の1件当たり取扱保険料は平均2,000〜3,000万円だったが、最近では1億円規模の代理店からの相談も増えているようだ。同社への事業承継元はこれまで保険代理店業を専業とする専業代理店が大半を占めていたが、今後はより規模が大きく、数も多い兼業代理店(自動車ディーラーや不動産業者など他の事業と合わせて保険販売を行う)のM&A及び事業承継も推進する方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 田窪芳人)
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■事業概要
2. 市場環境
保険業界の国内市場規模についてエージェント・インシュアランス・グループ<5836>によると、2023年3月時点での生命保険が38.0兆円(保険料等収入ベース)、2023年3月時点での損害保険は9.1兆円(正味保険料ベース)であった。生命保険は損害保険の4倍超で、かつ米国、中国に次ぐ第3位の規模であったが、2022年においては4位へと下降。国策の影響で、NISAやiDeCoなどをはじめとした投資に興味を持った人も多く、2023年3月時点の国内の生命保険市場規模は一時的に拡大したものの、少子高齢化や労働力人口の減少などにより、今後は緩やかな減少傾向が続くと見られている。一方、同社が属する損害保険市場は、近年増加傾向にある天災リスクやサイバーリスク等により毎年その規模が拡大しており、2023年3月時点では初めて9兆円を突破した。ポートフォリオの内訳では、自動車保険及び自賠責保険合計で全体の約55%(正味保険料ベース)を占めている。
国内の損害保険市場規模は年間9兆円台を突破し、拡大傾向が続いている。一方で、損害保険代理店数は1999年以降大幅に減少しており、2023年3月時点では15.6万店となった。今後も減少傾向が続くと見られているが、これは保険代理店に求められる募集品質レベルや管理体制等の高度化、保険代理店事業主及び従業員の高齢化問題(代理店主の年齢のうち50歳以上は75.5%、60歳以上は40.6%)が背景にある。
このような市場環境の下、同社は後継者不足などから存続が困難である保険代理店及び保険募集人をパートナー社員もしくは勤務型代理店として受け入れる「保険代理店支援プラットフォーム」を展開している。具体的には、営業・事務両面からのサポートとして、週1回の面談による業務フォロー、定期勉強会やe-ラーニングを活用した研修支援、FP(ファイナンシャル・プランナー)資格を持った社員の営業同行支援等を通じて、保険業法や各保険会社の規則に則った業務の継続をサポートし、合流したパートナー社員もしくは勤務型代理店が「あんしん」して働ける環境を創出している。
3. 手数料ポイント制度
手数料ポイント制度とは、損害保険代理店の主な収益源である損害保険会社からの手数料率が、損害保険会社が定める基準によって変動する制度のことである。全国商工新聞によると、同制度導入前は一定の基準を満たせば一律20%前後の手数料が相場であったが、ポイント制度の導入によって20〜120のポイント格差が生じるようになった。一例を挙げると、保険料10万円の自動車保険を販売した場合、同制度導入前は20%の20,000円が代理店に手数料として支払われた。一方、同制度導入後は、ポイントが20であれば手数料は4,000円、100であれば20,000円、120であれば24,000円と大きく変動する。
手数料ポイントが収益に直結するため、いかにポイントを高めるかが重要であり、代理店の規模(年間の収入保険料)と前年対比の増収率がポイント決定の大きな要因と見られる。これに代理店のグレードに応じた認定ランクや業務品質、専属性(自社損害保険のシェア)、損害率、各損害保険会社が推進する施策の達成率など、様々な要素が上乗せされ手数料ポイントが決まる。ポイント決定の大きな要因と見られる代理店規模と増収率をそれ以外でカバーするのは難しい。このことから、損害保険会社は保険代理店に対して、手数料ポイント制度の改定を通じて代理店の事業規模拡大や統廃合の推進を求めているとも考えられる。このため、同社は、手数料ポイントの獲得が難しい中小規模代理店を中心に、M&A及び事業承継を通じて事業規模の拡大を進め、高い手数料ポイントの獲得・維持を図り全体の収益を最大化している。
同制度導入の背景には、損害保険会社が効率化を図るため、損害保険代理店数の削減を必要としていることが考えられる。地方に多い個人経営の代理店を合併し、損害保険会社が出資している保険代理店に吸収合併するなど、様々な施策を講じている。これに対し同社は、同社グループの営業収益の約半分を占める東京海上日動火災保険をはじめとした各損害保険会社に対して事業承継のための営業活動を積極的に行い、事業承継を必要とする中小規模代理店の紹介を受けている。株式上場により知名度が向上し、代理店が同社に直接問い合わせるケースも増えているようだ。なお、損害保険会社が同制度導入を通じて代理店の統廃合を進める中、代理店の大規模化や効率化がどのように進むかが注目される。
いずれにしても、大規模代理店が有利となる同制度が維持される限り、中小規模代理店の統廃合は進み、代理店の大型化、効率化の流れは避けられないと言える。損害保険会社が提示する代理店手数料体系は毎年改定されるが、同社のような上位代理店はM&A及び事業承継を通じて相対的に収益性を維持できる環境にあると弊社では考える。なお、従来は同社が事業承継した保険代理店の1件当たり取扱保険料は平均2,000〜3,000万円だったが、最近では1億円規模の代理店からの相談も増えているようだ。同社への事業承継元はこれまで保険代理店業を専業とする専業代理店が大半を占めていたが、今後はより規模が大きく、数も多い兼業代理店(自動車ディーラーや不動産業者など他の事業と合わせて保険販売を行う)のM&A及び事業承継も推進する方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 田窪芳人)
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