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澁澤倉庫 Research Memo(11):新規業務と新設拠点が貢献、2ケタ営業増益へ

注目トピックス 日本株
*17:01JST 澁澤倉庫 Research Memo(11):新規業務と新設拠点が貢献、2ケタ営業増益へ
■業績動向

2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の業績に関して澁澤倉庫<9304>は、営業収益78,000百万円(前期比6.2%増)、営業利益4,700百万円(同10.0%増)、経常利益5,300百万円(同4.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,100百万円(同10.0%増)を見込んでいる。物流事業で新規業務の通期寄与や新設拠点の稼働、業務効率化の収益貢献を見込むほか、特別損益で政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益の増加を想定しており、「中期経営計画2026」初年度は順調にスタートする予想である。

日本経済は、世界的な金融引締めの影響、地政学リスクの継続、中国の経済成長鈍化の長期化が懸念される一方、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復が続くことが期待される。物流業界は、物価上昇による個人消費の減速に加え、トラック輸送の能力不足の顕在化や人手不足などに伴う物流コストの増加により、厳しい環境が続くことが予想される。また不動産業界でも、空室率上昇や賃料水準下落のリスクが高まることが懸念される。

物流事業においては、経験値が上がって、立ち上がりがスムーズに進行するようになった新設拠点と、業域拡大につながっている新規業務への同社の期待は大きい。新設拠点では、前期に先進的な機器を導入して稼働を開始した千葉市の飲料物流特化型拠点と、前期に増床した松戸市の拠点が通期フル稼働、関西の危険物倉庫では需要に応じて建て替えた神戸市で2024年4月に稼働、特定顧客のニーズにより一棟貸しとなった茨木市で同年4月に稼働、山下ふ頭再開発に伴って新設する従前の2.5倍のキャパシティをもつ横浜市の本牧倉庫は同年10月竣工に向けて体制を構築中で、いずれも収益寄与が見込まれる。新規業務では、従来から強みとしている飲料の倉庫業務と陸上運送業務において同年2月に全国物流を初めて請け負うほか、化粧品のEC業務において従来のBtoBに加えBtoCも手掛けることになった。また、前期第4四半期にスタートした工場内物流請負業務は、第1四半期から第3四半期までの3四半期分の収益が新たにオンする見込みである。

以上から入出庫取扱量と保管残高平均は増加が見込まれる。輸出入海上貨物取扱量、コンテナ取扱本数、航空輸出貨物は、コロナ禍の影響から正常化するなかで、当初は弱い動きを想定している。この結果、物流事業全体で増収が予想される。また、不動産事業ではオフィスビルを中心に安定した稼働が見込まれる。利益面では、DX投資など先行投資費用や本牧倉庫の不動産取得税など一時費用の増加が見込まれるものの、物流事業の増収効果や業務の効率化、採算性の向上などにより営業総利益率の向上が期待され、営業利益の伸びは営業収益を超える予想となっている。

なお、懸念点があるとすれば、いわゆる「2024年問題」である。「2024年問題」とは、ドライバーの時間外労働時間の上限を2024年4月から960時間とする規制によって生じる様々な問題のことである。「2024年問題」では1人当たりの稼働時間が減るためトラックの需給が逼迫し、運送会社の利益の減少やトラックドライバー給与の減少、それに伴う離職などが懸念されている。したがって、同社にとって、下請けの労務管理の必要性も生じることになる。その点では、ごく短期的にはやや波乱要因になりそうだが、短中期的には、輸送運賃やドライバー給与の上昇につながるなどポジティブな面も大きい。また、同社が推進しているモーダルシフトは、CO2排出削減にもつながり、運賃面や配送時間面のデメリットが相対的に弱まっていくことから、需要の拡大が予測されており、同社の配送メニューの幅が広がる。働き方改革と環境問題の両面から、中長期的にも同社にとってポジティブな結果になると考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)



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