ユビAI Research Memo(3):M&Aにより事業領域・基盤を拡充し、新たな成長ステージへ(2)
[24/06/26]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
*14:33JST ユビAI Research Memo(3):M&Aにより事業領域・基盤を拡充し、新たな成長ステージへ(2)
■会社概要
2. 沿革
ユビキタスAI<3858>は、ユビキタス・ネットワーク化の進化により、携帯電話、家電、ゲーム機器、AV機器、自動車など身の周りのあらゆるものがネットワークに接続されたコンピュータで制御されるようになると考え「いつでも、どこでも、誰でも」面倒な操作なしにユビキタス・ネットワークの利便性を享受できる快適な生活を実現させるために、2001年5月に(株)ユビキタスとして設立された。創業者の一人、鈴木仁志氏(元同社CTO:最高技術責任者)はマイクロソフト創業者ビル・ゲイツとのプログラミング勝負で勝利した逸話を持つ天才プログラマーである。
同年11月には主力製品となる「Ubiquitous TCP/IP」を開発した。これは、インターネット通信プロトコルであるTCP/IPを、車載機器、医療機器、産業機器など多岐にわたる組込み機器向けに最適設計したもので、省メモリでの実装が可能な「小ささ」、非力なCPUでも動作する「軽さ」、効率よく通信する「速さ」を実現した製品だ。この製品を組み込めば、開発者は組込み機器をインターネットに接続し、データ通信を行えるようになる。2002年8月には「Ubiquitous TCP/IP」「Ubiquitous SSL(インターネットでデータを暗号化して送受信するためのプロトコル)」が「ニンテンドーDS」用の通信ライブラリに採用され、任天堂<7974>との間でソフトウェア使用許諾契約を締結した。2008年8月には「Ubiquitous TCP/IP」の累計出荷ライセンス数は1億本を突破し、通信機能を実装するためのミドルウェア「Ubiquitous Network Framework」も2010年9月には累計出荷数2億本を突破した。
2010年3月には主力製品である「Ubiquitous QuickBoot」の販売を開始した。これは、デジタル家電や車載情報端末など高機能化された機器を、電源オフからユーザーの操作性を損なわずに瞬間起動を実現するソリューションであり、2023年4月には累計ライセンス数7,000万本を突破し、直近の2024年3月には累計8,000万本突破と1年間で1,000万本近くを販売する同社の代表的な商品である。カーナビゲーション、ディスプレイオーディオ、ドライブレコーダーなどの車載システム分野でのニーズが高く、JVCケンウッド<6632>や(株)デンソーテンのAVナビゲーションシステムに搭載されるなど、国内外を含め出荷数を伸ばしてきた。
そのほか、ネットワーク、データベース、セキュリティに関連するソフトウェアの自社開発製品を多数リリースしてきたが、2016年4月には自社製品の拡販のための受託開発力強化を目的として、1987年の設立以来組込み系ファームウェアの受託開発を行ってきた独立系のソフトウェア開発会社であるエイムを100%子会社化した。エイムは、組み込みシステム、WEB・クラウド、スマートフォン・PCアプリケーションなど、顧客のニーズに応じた機器・システムのシステム提案から開発・実装、運用保守までトータルエンジニアリングサービスを提供しており、特に音楽関係、カーナビゲーションシステム、AV機器製品の開発経験が豊富で、音楽レコメンドシステムの開発も手掛けている。日本語CDDB(Compact Disk DataBase:音楽の演奏者や制作年度などの情報が格納されたデータベース)の運営を独自に開始し、米国Gracenoteの楽曲認識テクノロジーと連携したアルバム名、曲名、アーティスト名のフリガナデータ「YOMI」や、ニックネーム、短縮名、間違った読み方等で構成されるアーティスト情報「別名」をコンテンツ・サービスとして提供する。また、Gracenoteの公式開発パートナーとしてカーナビゲーションを中心にしたデバイスへの組込み制御システムの開発やデバイスへのGracenote製品の組込み、顧客のソフトウェア受託開発などを手がけてきた。
2017年4月には、製品ラインアップ拡充と案件獲得体制強化を目的として、1985年の設立以来海外の組込みソフトウェアベンダー製品を取り扱ってきた専門商社である(株)エーアイコーポレーションを100%子会社化した。その後2018年7月には、両社の連携をより密にし、エーアイコーポレーションの海外パートナー企業と同社との共同開発や、パートナーを通じた海外での自社製品販売活動を通じたシナジー創出を加速・強化するため、エーアイコーポレーションを吸収合併し、社名を(株)ユビキタスAIコーポレーションに変更した。エーアイコーポレーションは、機器組込み用ソフトウェアの専門輸入商社として、ネットワーク、コネクティビティ、ストレージ分野などの各種ミドルウェア、品質向上支援・テストツール、キャリアグレード分野の各種ソフトウェア、UEFI-BIOSなど、30社を超える世界のトップメーカーから最先端の技術を持つユニークなスタートアップ企業までの代理店としてライセンス販売を行ってきた。またオープンソースをベースとした自社開発による高性能なリアルタイムOSも提供してきた。加えて、これらの製品群の販売やサポートのみならず、車載・民生・通信・産業機器など幅広い分野の顧客の要望に応じた移植やカスタマイズなどによって、高い付加価値の提供に注力してきた。
2016年から2018年にかけての上述2社の連結により、同社のビジネスは顧客の製品の企画・開発段階からソフトウェアの設計・開発・実装、そして製品の品質向上・検証・サポートまで開発工程すべての要素に対応できる事業基盤を確立した。売上高は2016年3月期の970百万円から、2019年3月期は2,406百万円に急成長した。2022年4月には東京証券取引所の市場変更に伴い東証スタンダード市場に上場し、同年7月には社名を「(株)ユビキタスAI」に変更した。
2023年4月には、次の成長ステージに向けて事業領域を拡大することを目的にライトストーンを連結子会社化した。1995年3月に設立されたライトストーンは、子会社化・吸収合併したエーアイコーポレーションと同様、海外ソフトウェアベンダーの製品を取り扱う専門商社であり、「Origin」「Stata」など研究開発で使用される統計・数値データ解析などの技術系ソフトウェア商品を取り扱い、全国の大学・高専などの教育機関、政府系研究機関、企業の研究開発・調査部門などに多くのユーザーを抱えている。これにより、製品ラインアップとして研究開発に必要なソフトウェアが新たなポートフォリオとして加わるとともに、新たな販路を獲得することで、顧客数の増加や一部製品のクロスセルなどによる新たな収益獲得機会を創出した。
2023年10月には、続けてグレープシステムを連結子会社化した。1991年7月に設立されたグレープシステムは、2022年3月に同社が一部株式を取得し資本・業務提携を行っていた。両社は、いずれも組込み機器開発に必要とされるソフトウェアの開発・販売および受託開発を行う企業であり、同社の多彩かつ豊富な製品ラインアップにグレープシステムの組込み機器を中心とした受託開発力という強みを生かした事業連携の強化によって事業上のシナジーが広がる可能性を確信し、2023年10月に100%子会社化した。
2024年8月には、エイムを吸収合併する。人材の交流も含めてより連携を深め開発力を強化していく考えだ。また、それに先立ちエイムとグレープシステムの本社事務所を統合する。より人材、業務の連携を進め、開発力をさらに強化していく予定である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
<HN>
■会社概要
2. 沿革
ユビキタスAI<3858>は、ユビキタス・ネットワーク化の進化により、携帯電話、家電、ゲーム機器、AV機器、自動車など身の周りのあらゆるものがネットワークに接続されたコンピュータで制御されるようになると考え「いつでも、どこでも、誰でも」面倒な操作なしにユビキタス・ネットワークの利便性を享受できる快適な生活を実現させるために、2001年5月に(株)ユビキタスとして設立された。創業者の一人、鈴木仁志氏(元同社CTO:最高技術責任者)はマイクロソフト創業者ビル・ゲイツとのプログラミング勝負で勝利した逸話を持つ天才プログラマーである。
同年11月には主力製品となる「Ubiquitous TCP/IP」を開発した。これは、インターネット通信プロトコルであるTCP/IPを、車載機器、医療機器、産業機器など多岐にわたる組込み機器向けに最適設計したもので、省メモリでの実装が可能な「小ささ」、非力なCPUでも動作する「軽さ」、効率よく通信する「速さ」を実現した製品だ。この製品を組み込めば、開発者は組込み機器をインターネットに接続し、データ通信を行えるようになる。2002年8月には「Ubiquitous TCP/IP」「Ubiquitous SSL(インターネットでデータを暗号化して送受信するためのプロトコル)」が「ニンテンドーDS」用の通信ライブラリに採用され、任天堂<7974>との間でソフトウェア使用許諾契約を締結した。2008年8月には「Ubiquitous TCP/IP」の累計出荷ライセンス数は1億本を突破し、通信機能を実装するためのミドルウェア「Ubiquitous Network Framework」も2010年9月には累計出荷数2億本を突破した。
2010年3月には主力製品である「Ubiquitous QuickBoot」の販売を開始した。これは、デジタル家電や車載情報端末など高機能化された機器を、電源オフからユーザーの操作性を損なわずに瞬間起動を実現するソリューションであり、2023年4月には累計ライセンス数7,000万本を突破し、直近の2024年3月には累計8,000万本突破と1年間で1,000万本近くを販売する同社の代表的な商品である。カーナビゲーション、ディスプレイオーディオ、ドライブレコーダーなどの車載システム分野でのニーズが高く、JVCケンウッド<6632>や(株)デンソーテンのAVナビゲーションシステムに搭載されるなど、国内外を含め出荷数を伸ばしてきた。
そのほか、ネットワーク、データベース、セキュリティに関連するソフトウェアの自社開発製品を多数リリースしてきたが、2016年4月には自社製品の拡販のための受託開発力強化を目的として、1987年の設立以来組込み系ファームウェアの受託開発を行ってきた独立系のソフトウェア開発会社であるエイムを100%子会社化した。エイムは、組み込みシステム、WEB・クラウド、スマートフォン・PCアプリケーションなど、顧客のニーズに応じた機器・システムのシステム提案から開発・実装、運用保守までトータルエンジニアリングサービスを提供しており、特に音楽関係、カーナビゲーションシステム、AV機器製品の開発経験が豊富で、音楽レコメンドシステムの開発も手掛けている。日本語CDDB(Compact Disk DataBase:音楽の演奏者や制作年度などの情報が格納されたデータベース)の運営を独自に開始し、米国Gracenoteの楽曲認識テクノロジーと連携したアルバム名、曲名、アーティスト名のフリガナデータ「YOMI」や、ニックネーム、短縮名、間違った読み方等で構成されるアーティスト情報「別名」をコンテンツ・サービスとして提供する。また、Gracenoteの公式開発パートナーとしてカーナビゲーションを中心にしたデバイスへの組込み制御システムの開発やデバイスへのGracenote製品の組込み、顧客のソフトウェア受託開発などを手がけてきた。
2017年4月には、製品ラインアップ拡充と案件獲得体制強化を目的として、1985年の設立以来海外の組込みソフトウェアベンダー製品を取り扱ってきた専門商社である(株)エーアイコーポレーションを100%子会社化した。その後2018年7月には、両社の連携をより密にし、エーアイコーポレーションの海外パートナー企業と同社との共同開発や、パートナーを通じた海外での自社製品販売活動を通じたシナジー創出を加速・強化するため、エーアイコーポレーションを吸収合併し、社名を(株)ユビキタスAIコーポレーションに変更した。エーアイコーポレーションは、機器組込み用ソフトウェアの専門輸入商社として、ネットワーク、コネクティビティ、ストレージ分野などの各種ミドルウェア、品質向上支援・テストツール、キャリアグレード分野の各種ソフトウェア、UEFI-BIOSなど、30社を超える世界のトップメーカーから最先端の技術を持つユニークなスタートアップ企業までの代理店としてライセンス販売を行ってきた。またオープンソースをベースとした自社開発による高性能なリアルタイムOSも提供してきた。加えて、これらの製品群の販売やサポートのみならず、車載・民生・通信・産業機器など幅広い分野の顧客の要望に応じた移植やカスタマイズなどによって、高い付加価値の提供に注力してきた。
2016年から2018年にかけての上述2社の連結により、同社のビジネスは顧客の製品の企画・開発段階からソフトウェアの設計・開発・実装、そして製品の品質向上・検証・サポートまで開発工程すべての要素に対応できる事業基盤を確立した。売上高は2016年3月期の970百万円から、2019年3月期は2,406百万円に急成長した。2022年4月には東京証券取引所の市場変更に伴い東証スタンダード市場に上場し、同年7月には社名を「(株)ユビキタスAI」に変更した。
2023年4月には、次の成長ステージに向けて事業領域を拡大することを目的にライトストーンを連結子会社化した。1995年3月に設立されたライトストーンは、子会社化・吸収合併したエーアイコーポレーションと同様、海外ソフトウェアベンダーの製品を取り扱う専門商社であり、「Origin」「Stata」など研究開発で使用される統計・数値データ解析などの技術系ソフトウェア商品を取り扱い、全国の大学・高専などの教育機関、政府系研究機関、企業の研究開発・調査部門などに多くのユーザーを抱えている。これにより、製品ラインアップとして研究開発に必要なソフトウェアが新たなポートフォリオとして加わるとともに、新たな販路を獲得することで、顧客数の増加や一部製品のクロスセルなどによる新たな収益獲得機会を創出した。
2023年10月には、続けてグレープシステムを連結子会社化した。1991年7月に設立されたグレープシステムは、2022年3月に同社が一部株式を取得し資本・業務提携を行っていた。両社は、いずれも組込み機器開発に必要とされるソフトウェアの開発・販売および受託開発を行う企業であり、同社の多彩かつ豊富な製品ラインアップにグレープシステムの組込み機器を中心とした受託開発力という強みを生かした事業連携の強化によって事業上のシナジーが広がる可能性を確信し、2023年10月に100%子会社化した。
2024年8月には、エイムを吸収合併する。人材の交流も含めてより連携を深め開発力を強化していく考えだ。また、それに先立ちエイムとグレープシステムの本社事務所を統合する。より人材、業務の連携を進め、開発力をさらに強化していく予定である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
<HN>