バルテスHD Research Memo(4):主力はソフトウェアテストだが、Web/モバイルアプリ開発も行う(2)
[24/06/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*13:54JST バルテスHD Research Memo(4):主力はソフトウェアテストだが、Web/モバイルアプリ開発も行う(2)
■事業概要
c) KPI
バルテス・ホールディングス<4442>の受注案件に対応していくためにはエンジニアが必要であり、「エンジニア数」は同社の事業にとって重要な要素となる。同社のエンジニア数はメーカーにおける生産能力に等しく、一定の知識・知見を持ったエンジニアを増やしていくことが同社の生産能力を増やすことであり、結果として売上高を増やすことにつながる。なおエンジニアには、正社員と契約社員に加え、ビジネスパートナーと呼ばれる企業のエンジニアも含まれる。2024年3月期末の稼働エンジニア数は1,222名で、内訳は正社員695名(構成比56.9%)、契約社員112名(同9.2%)、ビジネスパートナー415名(同34.0%)であり、全エンジニア数も直近5年間で順調に増加している。
2つめの重要な要素は、「エンジニア1人当たりの売上高」である。同社ではこの数値を「単価(月間)」と定義し、「ソフトウェアテストサービス事業の売上高÷エンジニア数」としている。2020年3月期は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響もあり低下したものの、その後は順調に上昇しており、2024年3月期の単価は、765千円となった。
3つめの要素は「案件数」である。同社の業務は「準委任契約」が大部分であり、不採算プロジェクト化するリスクのある「請負契約」は少ない。基本は案件ごとの契約となるが、次々と開発プロジェクトや開発課題が出てくることや、一度受注したシステムの更新時などに顧客からの要望で継続契約につながることも多く、これが相当の参入障壁になっているとも言える。受注金額は案件によって様々で、数百万円〜数千万円と幅広いが、プロジェクトが継続した場合には、結果として当該顧客への売上高は数億円単位になる場合もある。これら各案件の売上高を累積したものがセグメント売上高の大部分を占めるので、「案件数」が同社の業績におけるKPIの1つであると言える。2024年3月期の案件数(ソフトウェアテスト)は3,384件となっており、直近5年間は順調に拡大している。
d) テスト工程をアウトソーシングする理由
顧客が同社のような外部企業にソフトウェアテストを依頼(発注)する理由の1つめは、一般的なシステムエンジニアはテストに関する体系的な教育を受けておらず、テストのプロではないため、効率が悪いからである。特に下請け小規模SIerは、開発を行ったエンジニアがテストを実行しがちである。しかしながら、一般的に自分で作ったプログラムに関しては客観的なテストの実行が難しいと言われている。これは、雑誌記者やレポーター等が、自分の書いた記事を自身で校正・校閲すると見落としが多くなることと類似する。さらに、体系的・網羅的なテスト手法を知っている開発者は少数であり、かつ開発者はテスト作業自体を好まないことから、開発者がテスト工程を行うことは結果的にテスト工程の長期化と品質の低下(バグが未発見のままローンチ)につながることが多い。これらの問題点解消のために、外部企業への発注が近年進んでいる。
2つめの理由は、現状の国内IT産業でのエンジニア不足である。DX施策等により、国内のIT市場は今後も拡大が続くと見込まれているが、一方でエンジニアが不足しているのも事実で、多くのSIerでは引き合いはあるが人員不足によって受注が難しい状況が多々発生している。そのような状況下で、開発全行程の約40%を超えるテスト工程を外注できれば、空いたリソースで新しい開発案件を受注できる。また、工程の短期化や品質担保に加え、人的リソースの最適化によっても生産性が向上することから、テスト工程を外注する大手SIerやユーザーが増えているのも事実だ。
3つめの理由として、DXの推進によるユーザー企業の負担増が挙げられる。ユーザーは自社システムの再開発や新パッケージシステムの導入を、SIerやパッケージベンダーへ委託した際、「受入テスト」に関してユーザーサイドで実施する必要がある。この「受入テスト」に対しては、ユーザーは自社が保有する少ないIT人材で適切に実施する必要があり、近年DX投資が活発化する中、ユーザーにとって非常に大きな負担となっている。この負担低減のため、ユーザー企業が「受入テスト」工程や、遡って総合的なテスト支援及び品質管理を、第三者機関としてテスト専門事業者に外注するケースが増えている。
このような現状から、ソフトウェアテストのアウトソーシング化は、今後さらに増加する可能性が高いと言える。
(2) Web/モバイルアプリ開発サービス事業(同12.1%)
連結子会社のバルテス・モバイルテクノロジー(株)が、Webアプリ/モバイルアプリ開発、セキュリティ診断(脆弱性診断)サービスを提供する。Webアプリ/モバイルアプリ開発では、企画から、要件定義、開発、デザイン、リリース、運用までワンストップで提供可能だ。また、ソフトウェアの品質向上をグループ経営方針としており、同社によるソフトウェアテスト、セキュリティサービスチームの教育によるセキュアコーディングを施したソフトウェア開発サービスを提供している。セキュリティ診断サービスでは、安全性の調査を提供している。熟練したエンジニアの診断ノウハウを手順化しており、潜在的な脆弱性が発見できる。
このほか、連結子会社の(株)アール・エス・アールが、コンピュータソフトウェアの開発、システムの開発請負及び開発要員派遣等を行っている。さらに2024年3月期からは、ソフトウェア開発、システム保守、パッケージ開発を行うシンフォーと、主にSAPソリューションを提供するフェアネスコンサルティングがこのセグメントに加わった。
(3) オフショアサービス事業(同0.3%)
主にフィリピンで事業展開している連結子会社のVALTES Advanced Technology, Inc.が、グループ会社とのノウハウ共有により、製造業やソフトウェアベンダーを営む顧客に対して、ソフトウェアテストサービスとソフトウェア開発サービスを提供している。現地の安価で豊富な労働力を背景に、同社の教育コンテンツを受講した現地のエンジニアが、同社を窓口とした日本企業や在比日系企業に向けてサービスを提供している。
(4) M&Aと持株会社への移行
同社はM&Aも積極的に行っており、2022年4月にはミントを、2023年4月にはシンフォーを、同年11月にはフェアネスコンサルティングを子会社化している。このように子会社が増加してきたことから、同社は2023年10月から「持株会社体制」に移行し、現在は7社が事業展開を行っている。移行した目的としては、1) ソフトウェア品質向上の価値提供を行う事業の強化、2) グループガバナンスの強化、3) 経営者人材の育成を挙げている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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■事業概要
c) KPI
バルテス・ホールディングス<4442>の受注案件に対応していくためにはエンジニアが必要であり、「エンジニア数」は同社の事業にとって重要な要素となる。同社のエンジニア数はメーカーにおける生産能力に等しく、一定の知識・知見を持ったエンジニアを増やしていくことが同社の生産能力を増やすことであり、結果として売上高を増やすことにつながる。なおエンジニアには、正社員と契約社員に加え、ビジネスパートナーと呼ばれる企業のエンジニアも含まれる。2024年3月期末の稼働エンジニア数は1,222名で、内訳は正社員695名(構成比56.9%)、契約社員112名(同9.2%)、ビジネスパートナー415名(同34.0%)であり、全エンジニア数も直近5年間で順調に増加している。
2つめの重要な要素は、「エンジニア1人当たりの売上高」である。同社ではこの数値を「単価(月間)」と定義し、「ソフトウェアテストサービス事業の売上高÷エンジニア数」としている。2020年3月期は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響もあり低下したものの、その後は順調に上昇しており、2024年3月期の単価は、765千円となった。
3つめの要素は「案件数」である。同社の業務は「準委任契約」が大部分であり、不採算プロジェクト化するリスクのある「請負契約」は少ない。基本は案件ごとの契約となるが、次々と開発プロジェクトや開発課題が出てくることや、一度受注したシステムの更新時などに顧客からの要望で継続契約につながることも多く、これが相当の参入障壁になっているとも言える。受注金額は案件によって様々で、数百万円〜数千万円と幅広いが、プロジェクトが継続した場合には、結果として当該顧客への売上高は数億円単位になる場合もある。これら各案件の売上高を累積したものがセグメント売上高の大部分を占めるので、「案件数」が同社の業績におけるKPIの1つであると言える。2024年3月期の案件数(ソフトウェアテスト)は3,384件となっており、直近5年間は順調に拡大している。
d) テスト工程をアウトソーシングする理由
顧客が同社のような外部企業にソフトウェアテストを依頼(発注)する理由の1つめは、一般的なシステムエンジニアはテストに関する体系的な教育を受けておらず、テストのプロではないため、効率が悪いからである。特に下請け小規模SIerは、開発を行ったエンジニアがテストを実行しがちである。しかしながら、一般的に自分で作ったプログラムに関しては客観的なテストの実行が難しいと言われている。これは、雑誌記者やレポーター等が、自分の書いた記事を自身で校正・校閲すると見落としが多くなることと類似する。さらに、体系的・網羅的なテスト手法を知っている開発者は少数であり、かつ開発者はテスト作業自体を好まないことから、開発者がテスト工程を行うことは結果的にテスト工程の長期化と品質の低下(バグが未発見のままローンチ)につながることが多い。これらの問題点解消のために、外部企業への発注が近年進んでいる。
2つめの理由は、現状の国内IT産業でのエンジニア不足である。DX施策等により、国内のIT市場は今後も拡大が続くと見込まれているが、一方でエンジニアが不足しているのも事実で、多くのSIerでは引き合いはあるが人員不足によって受注が難しい状況が多々発生している。そのような状況下で、開発全行程の約40%を超えるテスト工程を外注できれば、空いたリソースで新しい開発案件を受注できる。また、工程の短期化や品質担保に加え、人的リソースの最適化によっても生産性が向上することから、テスト工程を外注する大手SIerやユーザーが増えているのも事実だ。
3つめの理由として、DXの推進によるユーザー企業の負担増が挙げられる。ユーザーは自社システムの再開発や新パッケージシステムの導入を、SIerやパッケージベンダーへ委託した際、「受入テスト」に関してユーザーサイドで実施する必要がある。この「受入テスト」に対しては、ユーザーは自社が保有する少ないIT人材で適切に実施する必要があり、近年DX投資が活発化する中、ユーザーにとって非常に大きな負担となっている。この負担低減のため、ユーザー企業が「受入テスト」工程や、遡って総合的なテスト支援及び品質管理を、第三者機関としてテスト専門事業者に外注するケースが増えている。
このような現状から、ソフトウェアテストのアウトソーシング化は、今後さらに増加する可能性が高いと言える。
(2) Web/モバイルアプリ開発サービス事業(同12.1%)
連結子会社のバルテス・モバイルテクノロジー(株)が、Webアプリ/モバイルアプリ開発、セキュリティ診断(脆弱性診断)サービスを提供する。Webアプリ/モバイルアプリ開発では、企画から、要件定義、開発、デザイン、リリース、運用までワンストップで提供可能だ。また、ソフトウェアの品質向上をグループ経営方針としており、同社によるソフトウェアテスト、セキュリティサービスチームの教育によるセキュアコーディングを施したソフトウェア開発サービスを提供している。セキュリティ診断サービスでは、安全性の調査を提供している。熟練したエンジニアの診断ノウハウを手順化しており、潜在的な脆弱性が発見できる。
このほか、連結子会社の(株)アール・エス・アールが、コンピュータソフトウェアの開発、システムの開発請負及び開発要員派遣等を行っている。さらに2024年3月期からは、ソフトウェア開発、システム保守、パッケージ開発を行うシンフォーと、主にSAPソリューションを提供するフェアネスコンサルティングがこのセグメントに加わった。
(3) オフショアサービス事業(同0.3%)
主にフィリピンで事業展開している連結子会社のVALTES Advanced Technology, Inc.が、グループ会社とのノウハウ共有により、製造業やソフトウェアベンダーを営む顧客に対して、ソフトウェアテストサービスとソフトウェア開発サービスを提供している。現地の安価で豊富な労働力を背景に、同社の教育コンテンツを受講した現地のエンジニアが、同社を窓口とした日本企業や在比日系企業に向けてサービスを提供している。
(4) M&Aと持株会社への移行
同社はM&Aも積極的に行っており、2022年4月にはミントを、2023年4月にはシンフォーを、同年11月にはフェアネスコンサルティングを子会社化している。このように子会社が増加してきたことから、同社は2023年10月から「持株会社体制」に移行し、現在は7社が事業展開を行っている。移行した目的としては、1) ソフトウェア品質向上の価値提供を行う事業の強化、2) グループガバナンスの強化、3) 経営者人材の育成を挙げている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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