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クオールHD Research Memo(6):処方箋単価の下落を処方箋応需枚数の増加で吸収し、売上高は増収が続く

注目トピックス 日本株
*15:36JST クオールHD Research Memo(6):処方箋単価の下落を処方箋応需枚数の増加で吸収し、売上高は増収が続く
■クオールホールディングス<3034>の業績動向

2. 保険薬局事業の動向
(1) 調剤売上高の状況
保険薬局事業の売上高は、調剤薬局の調剤売上高と売店やEC等の商品売上高で構成される。2024年3月期の売上内訳を見ると、調剤売上高が前期比6.5%増の153,428百万円、その他売上高が同3.0%増の11,671百万円といずれも増収となった。調剤売上高の内訳を出店期・タイプ別で見ると、自力出店店舗のうち既存店については同8.6%増、金額ベースで3,894百万円の増収となり、新店(売店を除く)については16店舗の出店により同46.3%増、金額ベースで321百万円の増収となった。またM&A等で取得した店舗については、既存店と新店合わせて同5.3%増、金額ベースで5,175百万円の増収となった。

調剤売上高を処方箋応需枚数と処方箋単価に分解すると、処方箋応需枚数は前期比10.1%増の16,467千枚、処方箋単価は同3.2%減の9,317円となった。これらも出店期やM&A等の要因による影響を受けているため、以下ではそれぞれについてもう少し詳細に見る。

処方箋応需枚数の実態に近いと考えられる既存店の増減率は前期比10.2%増となった。前期はまだコロナ禍で受診控えの動きが残っていたが、2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが2類相当から季節性インフルエンザと同等の5類に移行したことに伴い、医療機関での患者受け入れ態勢も緩和されたことで、受診回数が増加し処方箋応需枚数の増加につながった。また、M&A等による店舗の応需枚数も同8.5%増となった。M&Aによる新規取得店舗数は17店舗にとどまったが、既存店の伸びに加えて2023年3月期下期に取得した59店舗分が通期で寄与したことも増加要因となった。

処方箋単価は全体で前期比3.2%減と3期連続で低下した。このうち既存店は同1.4%減、M&A店舗は同3.0%減となった。毎年改定されることになった薬剤料単価が低下したほか、調剤技術料単価も地域支援体制加算の経過措置終了により若干低下したことが影響したものと見られる。

店舗の付加価値分に相当する調剤技術料に関しては、定められた基準の達成度に応じて点数が加算される仕組みで、主に調剤基本料(応需枚数や特定医療機関への集中率等で分類)、GE医薬品調剤体制加算(GE医薬品の取扱比率で分類)、地域支援体制加算(在宅調剤等地域医療への貢献体制によって分類)がある。なかでも、GE医薬品調剤体制加算や地域支援体制加算については各薬局の取り組み状況で点数も変わる差別化ポイントとなる。調剤報酬改定は隔年で実施され、2022年4月の改定において調剤基本料は、薬局経営の効率性を踏まえた設定の変更、GE医薬品調剤体制加算は調剤数量割合の基準の引き上げと評価方法、地域支援体制加算は地域医療への貢献に係る体制や実績に応じた評価体系が見直され、改定で示された基準をクリアして加算点を取得すべく各調剤薬局店舗が取り組みを進めている。

2024年3月期の加算点別の取得店舗数の状況を見ると、調剤基本料については取得店舗の構成比率に大きな変化は見られなかった。一方、GE医薬品の取扱比率(数量ベース)は、最大加点となる30点取得店舗の比率が2023年3月時点の33.6%から2024年3月時点には48.4%と大きく上昇するなど、技術料単価においてプラスに寄与した。グループ全体のGE医薬品の取扱比率でも2023年3月時点の85.6%から2024年3月時点では88.0%と上昇傾向が続いており、厚生労働省が目標としている8割の水準を継続して超過した。後発医薬品の供給不足が続き、医薬品卸と厳しい仕入交渉を強いられるなかでも、国の方針に沿ってグループ全体で取り組みに注力してきた効果が出ているものと考えられる。

地域支援体制加算については、経過措置が2023年3月で終了※したことに伴い2023年3月期に47点または39点を取得していた店舗が39点または17点に引き下げられ、調剤技術料単価のマイナス要因となった。47点を取得していた店舗の構成比は2023年3月時点の28.6%から2024年3月時点では1.0%と大幅に低下し、39点取得店舗が同6.2%から22.6%、17点取得店舗が同15.0%から30.7%となった。同社は経過措置の終了に対応すべく、取得店舗0点の店舗の構成比を2023年3月時点の50.1%から2024年3月には30%程度に引き下げ、17点以上の取得店舗数の比率を引き上げることで経過措置終了によるマイナス影響を相殺する方針であったが、薬剤師の配置等のコントロールが上手くいかず、2024年3月時点でも45.7%の店舗が0点店舗にとどまった。店舗ごとの処方箋応需枚数を一定と仮定すると、1店舗当たりの地域支援体制加算点数は2023年3月時点の18.4点から2024年3月時点では14.5点に低下した計算となる。1点当たり10円のため39円の処方箋単価低下要因となり、これに処方箋応需枚数を掛け合わせたものが経過措置終了による減益要因と見ることができる。同様の計算方法で調剤基本料やGE医薬品調剤体制加算の点数を計算し、これらを合算すると2023年3月時点の67.2点に対して2024年3月時点では64.5点となり、27円の処方箋単価低下要因になったと推計される。

※2022年4月の調剤報酬改定において「調剤基本料1」(42点)から新設された「調剤基本料3のハ」(同一グループで処方箋受付回数が月40万回超または同一グループの保険薬局数が300以上、調剤基本料32点)に移行した店舗については、経過措置として2023年3月まで従来と同様、「調剤基本料1」の店舗と見なし、在宅調剤業務の回数や時間外、夜間・休日業務への対応状況等によって39点または47点を取得できたが、2023年4月以降は「調剤基本料3のハ」店舗の基準となる17点または39点で算定されることとなった。また、2023年4月から12月までの特例措置としてGE医薬品調剤体制加算対象店舗のうち、一定条件を満たした場合に地域支援体制加算に1点または3点を上乗せした点数で算定できることにした。


(2) 出退店とM&Aの状況
2024年3月末の店舗数は920店舗となり、前期末比で28店舗増となった。自力出店(売店を除く)で16店舗、M&Aによる取得で17店舗、売店2店舗の合計35店舗を出店し、7店舗を閉店した。前期は自力出店で20店舗、M&Aによる取得で48店舗、ビックカメラ内薬局1店舗、売店1店舗の合計70店舗の出店と12店舗の退店だった。自力出店については当初計画(10〜20店舗)の範囲での出店となったが、M&Aについては契約が2025年3月期にずれ込んだ案件もあったようで当初計画(30〜70店舗)を下回った。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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