ケアネット Research Memo(9):2026年12月までの3年間で売上高はCAGR10%〜20%の成長目指す
[24/09/18]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*11:09JST ケアネット Research Memo(9):2026年12月までの3年間で売上高はCAGR10%〜20%の成長目指す
■ケアネット<2150>の新中期経営ビジョン
製薬業界は、2023年より本格的なプロセス改革フェーズへ突入し、同社の事業環境にも劇的な変化をもたらしている。同社はこうした背景から、新たな方向性として新中期経営ビジョン「ビジョン2026」を公表した。最終年度の2026年12月期に売上高でCAGR10%〜20%の成長を目指す。一方、開発投資の拡大、M&Aによるのれん等が影響し、営業利益率は20%程度に低下する見通しである。
また、2024年12月期から2026年12月期までの3年間を「開発重点期間」と位置付けている。既存のeプロモーションサービスにおける安定した収益基盤を維持しつつ、製薬企業に対し医師とのエンゲージメントを仲介・代行するサービスを開発する「治験/医薬営業のプロセス改革支援」、治験営業支援サービスを通じて新薬導入を促進し、日本の医薬品市場の成長促進を目指す「市場創出・社会課題の解決」、医薬DX事業やメディカルプラットフォーム事業の安定化、新サービス開発を通じて事業の多角化を図る「ポートフォリオ拡充」の3つの重点施策により「ビジョン2026」の達成及び成長加速を目指す。
(1) 治験/医薬営業のプロセス改革支援
現時点では医薬DX事業の進化に注力している。製薬企業に対し医師とのエンゲージメントを仲介・代行するサービスを軸に成長を目指す。製薬企業の新薬についてはスペシャリティ領域が多く、ターゲットとする病院や医師は限られる。製薬企業は自社のMRを積極的に活用してアプローチを試みるも医師と会えない状況にあるが、既に同社と関係を有する医師や同社サービスの医師会員であるケースが多い。こうしたケースを活用した製薬企業と医師をマッチングさせるサービスの提供を進めている。既にクライアントとのパイロットプロジェクトが進行中である。また、同社のデータベースを活用してMRが会えない医師の特性について調査分析を行い、分析結果に基づきターゲット医師が興味を示すテーマによるアプローチを展開している。
(2) 市場創出・社会課題の解決
ドラッグロス対策に寄与するビジネスモデルを開発し、中長期目標としてシードインキュベーション事業として参入することを掲げている。日本ではドラッグロス問題が深刻化しており、2017年から拡大している。新薬は医薬品市場の成長源であるが、日本では薬価引き下げと治験の高コスト構造が足かせとなり、現在世界の新薬の約70%を開発する欧米EBPの日本進出を阻んでおり、先進国で唯一2030年までゼロ成長が予測されている。
こうした背景から同社はEBPを対象に新薬調達から効率的な治験、営業までを一貫して提供する新たな製薬事業モデルを開発するため、LinDoへの資本参加とグループアライアンスの構築を2024年2月に発表した。LinDoは、シードインキュベーターの役割を担い、難病・希少疾患にフォーカスした製薬企業として、欧米で開発した新薬の日本への導入を推進している。その実現のため、有力バイオベンチャーへの投資実績と強いパイプを有するメディカルインキュベータジャパンが、海外から有望シーズを探索・導入する。同社はCRO・SMO・CSOのネットワークを最大限に活用し、効率的でローコストな治験・営業代行サービスを提供する。
日本の医薬品市場において、1%のプラス成長は1,000億円市場の創出効果と同義である。難病・希少疾患新薬の導入により、社会課題の解決に貢献しつつ、業界の成長にも寄与する方針だ。足元では、LinDoの新規医薬品開発の支援を目的として、メディカルインキュベータジャパンの希少疾患開発を支援するファンド「MIJ BG2 Limited Partnership」に出資した。
(3) ポートフォリオ拡充
医薬DX事業における既存事業の安定化、メディカルプラットフォーム事業における新サービス開発等により、事業ポートフォリオの一層の充実を図り、成長を重層的に支える。足元では、2024年5月にCRO企業であるSattの全株式取得を発表しており、同社におけるCRO事業の機能強化が見込まれる。また、同社は同月に(株)Method360を設立し、製薬企業向け新薬ローンチのプラニング、メディカルライティング、各種制作を請負う体制構築を目指す。スペシャリティ領域における新薬のプロモーションは、申請から1〜2年後の販売承認を見越して活動が行われる。Method360では上市前のプロモーション活動を、上市後は同社サービスの「MRPlus」や同社グループのCSO企業によるMR業務代行によりサポートを行う。
医薬DX事業では、既存事業である「MRPlus」等のeプロモーションサービスにおいて、医師会員の獲得と視聴率の向上に引き続き注力する。eプロモーションを活用した医薬広告は、今後も既存薬を中心に医薬品マーケティングの主要手段として今後も需要が見込まれる。また、成長が見込まれる中国・東南アジアの医薬品市場への進出も開始する。製薬業界におけるアジア市場は、医療制度や薬価制度が各国で異なるため、日本の手法をそのまま適用できない。中国においては新薬開発スピードが速く、自由診療を選択できる富裕層も多いことから、日本にも引けを取らない規模の市場がある。一方、東南アジアでは安価な薬を広く普及させる方針を取っており、新薬の市場は限定的で薬価制度も異なるため、スペシャリティ医薬品やeプロモーションの普及には時間がかかる。しかし、いずれの国でもKOLが新薬の開発から採用、使用法に強い影響を与えるという点は共通しており、KOLとのネットワーク構築は将来の市場形成に不可欠と言える。特に華僑が多いシンガポールやマレーシアは中国からも情報を収集しており、中国のKOLとネットワークを構築することが市場進出の重要なカギになる。KOLとのネットワークを生かしながら、コンテンツを制作し医師の囲い込みを行う同社のプロセスがアジアで成功すれば、アジア以外での進出も視野に入れることができるため、今後の動向が注目される。
メディカルプラットフォーム事業では、既存事業である「CareNeTV」のコンテンツの多様化(スクール形式の導入ほか)によりブランディングを強化しつつ、看護師向けコンテンツの導入を進める。キャリア事業は順調であり、組織の拡充により成長継続を見込む。2023年11月に、病院経営コンサルティング事業を展開するメディカルクリエイトとDALIの2社を傘下に収めるバリューネクストの株式を過半取得し、医療機関経営支援事業に参入を果たしており、同社グループとの連携により成長シナジーを創出していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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■ケアネット<2150>の新中期経営ビジョン
製薬業界は、2023年より本格的なプロセス改革フェーズへ突入し、同社の事業環境にも劇的な変化をもたらしている。同社はこうした背景から、新たな方向性として新中期経営ビジョン「ビジョン2026」を公表した。最終年度の2026年12月期に売上高でCAGR10%〜20%の成長を目指す。一方、開発投資の拡大、M&Aによるのれん等が影響し、営業利益率は20%程度に低下する見通しである。
また、2024年12月期から2026年12月期までの3年間を「開発重点期間」と位置付けている。既存のeプロモーションサービスにおける安定した収益基盤を維持しつつ、製薬企業に対し医師とのエンゲージメントを仲介・代行するサービスを開発する「治験/医薬営業のプロセス改革支援」、治験営業支援サービスを通じて新薬導入を促進し、日本の医薬品市場の成長促進を目指す「市場創出・社会課題の解決」、医薬DX事業やメディカルプラットフォーム事業の安定化、新サービス開発を通じて事業の多角化を図る「ポートフォリオ拡充」の3つの重点施策により「ビジョン2026」の達成及び成長加速を目指す。
(1) 治験/医薬営業のプロセス改革支援
現時点では医薬DX事業の進化に注力している。製薬企業に対し医師とのエンゲージメントを仲介・代行するサービスを軸に成長を目指す。製薬企業の新薬についてはスペシャリティ領域が多く、ターゲットとする病院や医師は限られる。製薬企業は自社のMRを積極的に活用してアプローチを試みるも医師と会えない状況にあるが、既に同社と関係を有する医師や同社サービスの医師会員であるケースが多い。こうしたケースを活用した製薬企業と医師をマッチングさせるサービスの提供を進めている。既にクライアントとのパイロットプロジェクトが進行中である。また、同社のデータベースを活用してMRが会えない医師の特性について調査分析を行い、分析結果に基づきターゲット医師が興味を示すテーマによるアプローチを展開している。
(2) 市場創出・社会課題の解決
ドラッグロス対策に寄与するビジネスモデルを開発し、中長期目標としてシードインキュベーション事業として参入することを掲げている。日本ではドラッグロス問題が深刻化しており、2017年から拡大している。新薬は医薬品市場の成長源であるが、日本では薬価引き下げと治験の高コスト構造が足かせとなり、現在世界の新薬の約70%を開発する欧米EBPの日本進出を阻んでおり、先進国で唯一2030年までゼロ成長が予測されている。
こうした背景から同社はEBPを対象に新薬調達から効率的な治験、営業までを一貫して提供する新たな製薬事業モデルを開発するため、LinDoへの資本参加とグループアライアンスの構築を2024年2月に発表した。LinDoは、シードインキュベーターの役割を担い、難病・希少疾患にフォーカスした製薬企業として、欧米で開発した新薬の日本への導入を推進している。その実現のため、有力バイオベンチャーへの投資実績と強いパイプを有するメディカルインキュベータジャパンが、海外から有望シーズを探索・導入する。同社はCRO・SMO・CSOのネットワークを最大限に活用し、効率的でローコストな治験・営業代行サービスを提供する。
日本の医薬品市場において、1%のプラス成長は1,000億円市場の創出効果と同義である。難病・希少疾患新薬の導入により、社会課題の解決に貢献しつつ、業界の成長にも寄与する方針だ。足元では、LinDoの新規医薬品開発の支援を目的として、メディカルインキュベータジャパンの希少疾患開発を支援するファンド「MIJ BG2 Limited Partnership」に出資した。
(3) ポートフォリオ拡充
医薬DX事業における既存事業の安定化、メディカルプラットフォーム事業における新サービス開発等により、事業ポートフォリオの一層の充実を図り、成長を重層的に支える。足元では、2024年5月にCRO企業であるSattの全株式取得を発表しており、同社におけるCRO事業の機能強化が見込まれる。また、同社は同月に(株)Method360を設立し、製薬企業向け新薬ローンチのプラニング、メディカルライティング、各種制作を請負う体制構築を目指す。スペシャリティ領域における新薬のプロモーションは、申請から1〜2年後の販売承認を見越して活動が行われる。Method360では上市前のプロモーション活動を、上市後は同社サービスの「MRPlus」や同社グループのCSO企業によるMR業務代行によりサポートを行う。
医薬DX事業では、既存事業である「MRPlus」等のeプロモーションサービスにおいて、医師会員の獲得と視聴率の向上に引き続き注力する。eプロモーションを活用した医薬広告は、今後も既存薬を中心に医薬品マーケティングの主要手段として今後も需要が見込まれる。また、成長が見込まれる中国・東南アジアの医薬品市場への進出も開始する。製薬業界におけるアジア市場は、医療制度や薬価制度が各国で異なるため、日本の手法をそのまま適用できない。中国においては新薬開発スピードが速く、自由診療を選択できる富裕層も多いことから、日本にも引けを取らない規模の市場がある。一方、東南アジアでは安価な薬を広く普及させる方針を取っており、新薬の市場は限定的で薬価制度も異なるため、スペシャリティ医薬品やeプロモーションの普及には時間がかかる。しかし、いずれの国でもKOLが新薬の開発から採用、使用法に強い影響を与えるという点は共通しており、KOLとのネットワーク構築は将来の市場形成に不可欠と言える。特に華僑が多いシンガポールやマレーシアは中国からも情報を収集しており、中国のKOLとネットワークを構築することが市場進出の重要なカギになる。KOLとのネットワークを生かしながら、コンテンツを制作し医師の囲い込みを行う同社のプロセスがアジアで成功すれば、アジア以外での進出も視野に入れることができるため、今後の動向が注目される。
メディカルプラットフォーム事業では、既存事業である「CareNeTV」のコンテンツの多様化(スクール形式の導入ほか)によりブランディングを強化しつつ、看護師向けコンテンツの導入を進める。キャリア事業は順調であり、組織の拡充により成長継続を見込む。2023年11月に、病院経営コンサルティング事業を展開するメディカルクリエイトとDALIの2社を傘下に収めるバリューネクストの株式を過半取得し、医療機関経営支援事業に参入を果たしており、同社グループとの連携により成長シナジーを創出していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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