STIフードHD Research Memo(8):新商品、既存商品ともに好調で大幅増収増益を達成
[24/09/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*12:38JST STIフードHD Research Memo(8):新商品、既存商品ともに好調で大幅増収増益を達成
■STIフードホールディングス<2932>の業績動向
1. 2024年12月期第2四半期の業績動向
2024年12月期第2四半期の業績は、売上高16,694百万円(前年同期比12.5%増)、営業利益1,491百万円(同44.1%増)、経常利益1,495百万円(同39.2%増)、親会社株主に帰属する中間純利益1,010百万円(同46.9%増)と好決算だった。期初の通期業績予想に対する進捗率も売上高で49.1%、営業利益で62.2%と、前年同期に対してそれぞれ2.4ポイント、17.3ポイント上回るなど順調で、既述のとおり通期業績予想を上方修正した。
日本経済は、好調なインバウンド需要や堅調な企業業績から底堅く推移する一方、幅広い分野における物価上昇の影響により実質賃金の減少が継続、生活防衛意識の高まりから個人消費の回復は停滞した状況にある。世界経済は、金融資本市場の変動リスクや中国経済の停滞、国際紛争の長期化など先行き不透明な状況が続いている。食品業界においては、円安進行による原材料・資材価格の上昇や人件費・水道光熱費の上昇により製造コストの増加が続くなかで、消費者の節約志向や多様化するニーズに対応した商品企画が求められている。
このような環境のなか、同社は「持続可能な原材料・製造への取り組み」「フードロスの削減への取り組み」「環境への配慮」「原料調達から製造・販売まで一貫した垂直統合型の展開」「健康志向と魚文化を重視した中食への取り組み」を基本方針に掲げ、中長期的な企業価値の向上と持続的な成長の実現を目指している。さらに、食品メーカーとして消費者と従業員の安全と安心のために、安定した製造・供給を継続すべく、グループ全体で社会的にも重要な使命の遂行にも取り組んでいる。この結果、販売面では、主力のセブン-イレブン向けデイリー食品が引き続き好調で、焼き魚やカップデリなど定番商品が販売個数を伸ばしたほか、2024年1月に関東地域で発売した「さばの味噌煮」の販売エリアを順次拡大し、5月に全国約21,500店での販売を開始、また、6月にはカップデリの新商品「いかと海老ブロッコリーオリーブオイル仕立て」を全国で発売、いずれも好評を博している。
セブン-イレブンの既存店売上伸び率が、2024年2月期第4四半期が0.4%増、2025年2月期第1四半期が±0%、続く6月、7月が微減となるなど若干低迷しており、同社への影響がやや懸念される状況となっている。しかし、セブン-イレブンの足元の低迷は、小商圏化の加速と多様化にフォーカスした戦略によってコロナ禍後に好調を継続した反動に加え、ファミリーマートとローソンが値ごろ感を打ち出すなど思い切った販売戦略をとったことが要因と思われる。こうした状況に対して、セブン-イレブンはセブンプレミアムなど顧客接点の高い商品のプロモーションを強化するなどの対策を進めており、短中期的に業況を改善することは可能と考えられる。そうしたプロモーションの中心となっているのが、ファミリーマートやローソンにはなく、圧倒的に高い付加価値でセブン-イレブンのなかでも2ケタ増と特異的に伸びている同社商品である。低迷しているからこそセブン-イレブンは好調な同社商品に頼ることになるのだが、セブン-イレブンのプロモーションは同社にとっても強い追い風になっているようだ。
具体的には、セブン-イレブンのTVCM「セブンプレミアムのお惣菜」で、同社の「さばの味噌煮」が秋需商戦を盛り上げる一押しの戦略商品になっている。既述のとおり「さばの味噌煮」は5月に全国販売を開始したばかりだが、パウチ型からトレー型にパッケージを変更したことでより利便性が増し、販売は好調にスタートしたようだ(イトーヨーカドー、ヨークベニマル、ヨークなどではパウチタイプでの販売)。特徴は、北大西洋海域を中心とした脂の乗った大型のさばを使用し、骨取り作業は一つひとつ丁寧に手作業で実施、湯ぶり工程を加えて魚の雑味を低減、3種類の味噌をブレンドすることで従来よりも深いコクとまろやかな味わいを実現、加熱後6時間鍋止めをする専門店と同じ工程により味を浸透、スライス生姜を加えてすっきりとした味わいに仕上げているところにあり、人気の秘訣になっている。
また、セブン-イレブンが同社を推す理由は、これまで多くのヒット商品を世に出し、現在も人気が続いている商品が多いことにもある。代表的なものに、自然な焼き目と抜群の香ばしさで人気の「さばの塩焼」があるが、「魚は食べたい」が臭いや洗い物の大変さから「調理はしたくない」という要望に応えるために開発した商品である。特徴は、「さばの味噌煮」と同様に北大西洋海域を中心とした脂の乗った大型のさばを使用、骨取り作業も一つひとつ丁寧に手作業で実施しているほか、さばの下処理方法を見直して塩水で手洗いすることで臭みや雑味を軽減したうえ、魚本来のうま味を醸し出すため味付け後に冷蔵庫で寝かせる工程を加え、スチームで身をふっくら仕上げた後、焼く前に遠赤外線で皮目を炙ることで自然な焼き目と抜群の香ばしさを実現するなど、毎期改良を加えてきたところにあり、2014年の発売以来人気を継続している。このため、2023年度に累計売上15兆円を突破したセブンプレミアムのなかで、年間売上10億円以上の300アイテムのうち第5位にランクインした。
ほかにも、脂の乗った銀鮭を直火でしっかり皮まで香ばしく焼き上げているのでレンジで温めるだけで手軽に食べられる「銀鮭の塩焼」や、ふっくらと蒸し上げたたことブロッコリーやじゃがいもを組み合わせてバジルソースをかけた「たことブロッコリーバジルサラダ」など、好調を長く続ける商品が多い。2024年6月にイカと海老にブロッコリー、じゃがいも、パプリカなどを入れ、アンチョビやにんにくを程よくきかせたオリーブオイル仕立ての「いかと海老ブロッコリーオリーブオイル仕立て」を投入したが、当初は似た商品の「たことブロッコリーバジルサラダ」との自社競合が懸念されたものの、「たことブロッコリーバジルサラダ」は引き続き販売が順調に推移、「いかと海老ブロッコリーオリーブオイル仕立て」の販売が純増したようだ。もちろん、同社がこれまでに生産を中止した商品はあるが、食する機会・スタイルの変化や供給効率・採算を考慮した集中と選択の結果で、同社のほかの商品の販売を強化することが目的である。
利益面では、円安の進行により原材料・資材価格が上昇するなか、消費者に支持される最高の商品を提供するため、重点施策に基づいて高品質な原材料の使用を継続した。この結果、2023年12月期第1四半期に実施した価格改定の残余効果、採算のよい既存商品の販売個数の増加、絞り込んだアイテムを大量生産することによる生産性向上※、新商品のプラスオンなど、販売増や採算・生産効率の向上で原価高を吸収したため、売上総利益率の向上につながった。販管費は運賃や人件費、水道光熱費が増加したが、増収効果により販管費率は低下した。このため営業利益は大幅に増加し、営業利益率は前年同期の7.0%から8.9%へと向上した。なお、同社は第2四半期の業績予想を公表していないが、営業利益の通期予想に対する進捗率が62.2%と高くなったのは、セブン-イレブンの業況を保守的に見ていたこと、新商品、既存商品ともに想定以上に好調だったこと、魚惣菜を買う習慣が広がっている最中のためマクロ(同社にとってはセブン-イレブンの業況)に左右されなかったことが要因と思われる。
※ 全国各地にあるセブン-イレブンの共同配送センター向け物流を考慮する必要があるが、石巻工場の焼き魚など一部商品については、1つの工場に寄せて大量生産することで生産性を上げることができた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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■STIフードホールディングス<2932>の業績動向
1. 2024年12月期第2四半期の業績動向
2024年12月期第2四半期の業績は、売上高16,694百万円(前年同期比12.5%増)、営業利益1,491百万円(同44.1%増)、経常利益1,495百万円(同39.2%増)、親会社株主に帰属する中間純利益1,010百万円(同46.9%増)と好決算だった。期初の通期業績予想に対する進捗率も売上高で49.1%、営業利益で62.2%と、前年同期に対してそれぞれ2.4ポイント、17.3ポイント上回るなど順調で、既述のとおり通期業績予想を上方修正した。
日本経済は、好調なインバウンド需要や堅調な企業業績から底堅く推移する一方、幅広い分野における物価上昇の影響により実質賃金の減少が継続、生活防衛意識の高まりから個人消費の回復は停滞した状況にある。世界経済は、金融資本市場の変動リスクや中国経済の停滞、国際紛争の長期化など先行き不透明な状況が続いている。食品業界においては、円安進行による原材料・資材価格の上昇や人件費・水道光熱費の上昇により製造コストの増加が続くなかで、消費者の節約志向や多様化するニーズに対応した商品企画が求められている。
このような環境のなか、同社は「持続可能な原材料・製造への取り組み」「フードロスの削減への取り組み」「環境への配慮」「原料調達から製造・販売まで一貫した垂直統合型の展開」「健康志向と魚文化を重視した中食への取り組み」を基本方針に掲げ、中長期的な企業価値の向上と持続的な成長の実現を目指している。さらに、食品メーカーとして消費者と従業員の安全と安心のために、安定した製造・供給を継続すべく、グループ全体で社会的にも重要な使命の遂行にも取り組んでいる。この結果、販売面では、主力のセブン-イレブン向けデイリー食品が引き続き好調で、焼き魚やカップデリなど定番商品が販売個数を伸ばしたほか、2024年1月に関東地域で発売した「さばの味噌煮」の販売エリアを順次拡大し、5月に全国約21,500店での販売を開始、また、6月にはカップデリの新商品「いかと海老ブロッコリーオリーブオイル仕立て」を全国で発売、いずれも好評を博している。
セブン-イレブンの既存店売上伸び率が、2024年2月期第4四半期が0.4%増、2025年2月期第1四半期が±0%、続く6月、7月が微減となるなど若干低迷しており、同社への影響がやや懸念される状況となっている。しかし、セブン-イレブンの足元の低迷は、小商圏化の加速と多様化にフォーカスした戦略によってコロナ禍後に好調を継続した反動に加え、ファミリーマートとローソンが値ごろ感を打ち出すなど思い切った販売戦略をとったことが要因と思われる。こうした状況に対して、セブン-イレブンはセブンプレミアムなど顧客接点の高い商品のプロモーションを強化するなどの対策を進めており、短中期的に業況を改善することは可能と考えられる。そうしたプロモーションの中心となっているのが、ファミリーマートやローソンにはなく、圧倒的に高い付加価値でセブン-イレブンのなかでも2ケタ増と特異的に伸びている同社商品である。低迷しているからこそセブン-イレブンは好調な同社商品に頼ることになるのだが、セブン-イレブンのプロモーションは同社にとっても強い追い風になっているようだ。
具体的には、セブン-イレブンのTVCM「セブンプレミアムのお惣菜」で、同社の「さばの味噌煮」が秋需商戦を盛り上げる一押しの戦略商品になっている。既述のとおり「さばの味噌煮」は5月に全国販売を開始したばかりだが、パウチ型からトレー型にパッケージを変更したことでより利便性が増し、販売は好調にスタートしたようだ(イトーヨーカドー、ヨークベニマル、ヨークなどではパウチタイプでの販売)。特徴は、北大西洋海域を中心とした脂の乗った大型のさばを使用し、骨取り作業は一つひとつ丁寧に手作業で実施、湯ぶり工程を加えて魚の雑味を低減、3種類の味噌をブレンドすることで従来よりも深いコクとまろやかな味わいを実現、加熱後6時間鍋止めをする専門店と同じ工程により味を浸透、スライス生姜を加えてすっきりとした味わいに仕上げているところにあり、人気の秘訣になっている。
また、セブン-イレブンが同社を推す理由は、これまで多くのヒット商品を世に出し、現在も人気が続いている商品が多いことにもある。代表的なものに、自然な焼き目と抜群の香ばしさで人気の「さばの塩焼」があるが、「魚は食べたい」が臭いや洗い物の大変さから「調理はしたくない」という要望に応えるために開発した商品である。特徴は、「さばの味噌煮」と同様に北大西洋海域を中心とした脂の乗った大型のさばを使用、骨取り作業も一つひとつ丁寧に手作業で実施しているほか、さばの下処理方法を見直して塩水で手洗いすることで臭みや雑味を軽減したうえ、魚本来のうま味を醸し出すため味付け後に冷蔵庫で寝かせる工程を加え、スチームで身をふっくら仕上げた後、焼く前に遠赤外線で皮目を炙ることで自然な焼き目と抜群の香ばしさを実現するなど、毎期改良を加えてきたところにあり、2014年の発売以来人気を継続している。このため、2023年度に累計売上15兆円を突破したセブンプレミアムのなかで、年間売上10億円以上の300アイテムのうち第5位にランクインした。
ほかにも、脂の乗った銀鮭を直火でしっかり皮まで香ばしく焼き上げているのでレンジで温めるだけで手軽に食べられる「銀鮭の塩焼」や、ふっくらと蒸し上げたたことブロッコリーやじゃがいもを組み合わせてバジルソースをかけた「たことブロッコリーバジルサラダ」など、好調を長く続ける商品が多い。2024年6月にイカと海老にブロッコリー、じゃがいも、パプリカなどを入れ、アンチョビやにんにくを程よくきかせたオリーブオイル仕立ての「いかと海老ブロッコリーオリーブオイル仕立て」を投入したが、当初は似た商品の「たことブロッコリーバジルサラダ」との自社競合が懸念されたものの、「たことブロッコリーバジルサラダ」は引き続き販売が順調に推移、「いかと海老ブロッコリーオリーブオイル仕立て」の販売が純増したようだ。もちろん、同社がこれまでに生産を中止した商品はあるが、食する機会・スタイルの変化や供給効率・採算を考慮した集中と選択の結果で、同社のほかの商品の販売を強化することが目的である。
利益面では、円安の進行により原材料・資材価格が上昇するなか、消費者に支持される最高の商品を提供するため、重点施策に基づいて高品質な原材料の使用を継続した。この結果、2023年12月期第1四半期に実施した価格改定の残余効果、採算のよい既存商品の販売個数の増加、絞り込んだアイテムを大量生産することによる生産性向上※、新商品のプラスオンなど、販売増や採算・生産効率の向上で原価高を吸収したため、売上総利益率の向上につながった。販管費は運賃や人件費、水道光熱費が増加したが、増収効果により販管費率は低下した。このため営業利益は大幅に増加し、営業利益率は前年同期の7.0%から8.9%へと向上した。なお、同社は第2四半期の業績予想を公表していないが、営業利益の通期予想に対する進捗率が62.2%と高くなったのは、セブン-イレブンの業況を保守的に見ていたこと、新商品、既存商品ともに想定以上に好調だったこと、魚惣菜を買う習慣が広がっている最中のためマクロ(同社にとってはセブン-イレブンの業況)に左右されなかったことが要因と思われる。
※ 全国各地にあるセブン-イレブンの共同配送センター向け物流を考慮する必要があるが、石巻工場の焼き魚など一部商品については、1つの工場に寄せて大量生産することで生産性を上げることができた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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