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極東貿易 Research Memo(1):日系企業などのグローバルなモノづくりを支援するエンジニアリング商社

注目トピックス 日本株
*14:01JST 極東貿易 Research Memo(1):日系企業などのグローバルなモノづくりを支援するエンジニアリング商社
■要約

極東貿易<8093>は、グループ企業の力を結集して、技術提案、導入・据付、運用・保守まで一貫した技術サポートができるエンジニアリング商社である。取扱商材は産業設備関連(プラント向け機械設備、資源掘削装置、地震計、航空機用機材など)、産業素材関連(樹脂・塗料、炭素繊維・関連素材、食肉加工品用副資材など)、そして、機械部品関連(精密ファスナー(ねじ類)、金属部品、特殊スプリング)と多岐にわたる。ワールドワイドで事業を展開しており、欧米、中国・台湾・東南アジア、さらにインド・メキシコなどの新興国に拠点を設け、日系企業などのグローバルなモノづくりを支援している。

1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の売上高・営業利益は、2021年3月期から、緩やかながら回復傾向にある。2024年3月期の連結業績は、売上高は前期比2.4%増の43,660百万円、営業利益は同11.2%増の1,112百万円、経常利益は同2.4%減の1,487百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同13.7%増の1,156百万円となった。営業利益は、2期連続の10億円超えとなり、2016年3月期の過去最高益水準近くまで戻り、完全回復した。収益の完全回復のポイントは2つある。第1は、同社の基幹事業である産業設備関連部門の売上・利益の回復である。産業設備関連部門は、国内プラント向け、海外プラント向け機器・設関連備とも好調で、特に国内プラント向けは直近3期連続受注増である。次に、業績不振が続いた特殊スプリング事業(機械部品関連部門)が「構造改革」を断行し、2025年3月期第1四半期においてセグメント利益を1年間で黒字転換を果たしたことである。

2. M&A戦略とその実行
M&A(合併・買収)は、同社のグループ経営を象徴する経営手法である。2008年の経営危機をM&A実行(新事業の組込と事業構造改革)で切り抜けた。それ以降、2018年までに6件のM&A(7年間)を連続して実施し、見事に成長戦略と高業績企業を実現した。このようなM&Aの成功体験が積み重ねながら、潤沢な成長投資のM&A枠(50億円)のもと、虎視眈々とM&Aを狙ってきたが、この度、2つのM&A契約が成立した。第1のM&Aは、(株)三幸商会で、汎用プラスチックなどを取り扱う専門商社である。同社の産業素材関連部門はこれまで事業の柱となる大きな塊がなかったが、三幸商会を取り込むことで、汎用プラスチック&エンジニアリングプラスチック分野の大きな事業の柱ができ、グローバルな事業拡大が見込める。第2のM&Aは、(株)ウエルストンで、船舶補修部品の輸出や国内卸を主体とする専門商社である。機械部品関連部門の基幹子会社であるヱトー(株)がウエストンを子会社化(同社からみれば孫会社)する。ヱトーとウエルストンは、業界や取引先は異なるが、金属切削部品という共通商材・技術を活用し、機械部品の商流も類似性があるため、中長期的視点でみれば、事業シナジーが大いに期待できる。

3. インド、米国を中心に海外事業の事業拡大
2008年にインドへ進出以来、インド事業はこれまで右肩上がりで成長してきた。米国ビジネスでは、これまで米国進出を狙う高い技術力を持った日系メーカーとともに積極的な顧客開拓を進め、新規事業を創出してきた。(株)西田技研との協業を深化させ、エラストマー製造分野の顧客へのソリューション提案を展開していく。

4. 想定外要因が起きているが、今後も新規ビジネス3分野の開発と育成に注力
国内の洋上風力発電の開発計画と公募・落札(ラウンド1・2)に伴う事業者が選定された。不確定要素が多い事業環境ではあるが、洋上風力発電関連事業は国内・海外問わず市場は大きく成長すると予測され、同社にとって絶好の事業機会と言える。当初の事業計画より2年遅れているが、2026年3月期には売上高5億円を見込んでいる。自動運転システム関連事業は、現在顧客企業での実証実験が進められている。技術的課題は解決しているものの、顧客企業側の車両の都合などにより、プロジェクト自体は遅れ気味である。実用化までにはもう少し時間がかかるため、同事業では3年以内に本格的事業化を目指している。また、バイオプロダクツ関連事業も当初の事業計画よりやや遅れているが、3年以内に本格的事業化を目指している。

■Key Points
・営業利益は過去最高水準(2016年3月期の1,203百万円)に戻りつつある
・2025年3月期に2つのM&A契約が成立
・インド、米国を中心に海外事業の事業拡大
・想定外要因が起きているが、今後も新規ビジネス3分野の開発と育成に注力

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)



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