マイナーのインセンティブ問題、ビットコインは崩壊しないのか【フィスコ・仮想通貨コラム】
[18/02/22]
提供元:株式会社フィスコ
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仮想通貨コラム
ビットコインは、その発行量に上限を設けられている。この設定が、ゆくゆくのネットワーク維持について多大な影響を与えるのではないかという疑問が以前から存在する。この疑問に対してよく述べられている、技術革新とBTC価格高騰によって解決できるとする予測について考察してみたい。
ビットコインの発行量が上限を迎えると、マイナーがマイニングを行うことで得られる報酬はビットコインの取引手数料のみとなる。このような状況であると、誰もマイニングを行うインセンティブが起こらなくなり、ネットワークを維持できないのでないかという懸念がある。
ビットコインのネットワークは、マイニングと呼ばれる取引を成り立たせる膨大な計算作業を、不特定多数のマイナーと呼ばれる参加者が行うことで維持されている。この計算作業は、高性能のコンピューターを利用し、多大な電力を消費することで行われる。
これに対してマイナーには報酬として1ブロックをマイニングするたびに新規発行されるビットコインが与えられ、この利益がマイニングを行う動機となっている。また、マイナーは1ブロック内の取引手数料も得ることができる。
2018年時点では1ブロックのマイニングにつき12.5BTCが新規発行され、報酬としてマイナーに支給されている。この新規発行ビットコインは約4年(21,000ブロック毎)に一度半減していき、2140年頃までにすべてのビットコインがマイニングされるようプログラムされている。
つまり2140年に近づく過程で、マイニングをすることで得られる報酬はどんどん減少していき、新規発行分がなくなった後の報酬は1ブロック内の取引手数料分のビットコインのみとなるのだ。
この問いに関する議論の中でよく述べられる見解のひとつは、技術の進歩が問題を解決するというものだ。年月の経過とともにマイニングを行うためのマイニング・チップ(半導体チップ)がより小さく、安価になることで、どのようなエレクトロニック・デバイスでもマイニングできるようになれば、現在のようにコストがかかるものではなくなる。
マイニング機器が安価になり、マイニングの際にかかる消費電力も抑えられることによって、マイニングという行為が現状のように多大な設備投資の下で行われるビジネスではなく、日常的に誰もが参加できる行為となるというものだ。また、マイニング・マシーンのエネルギー効率性が高くなることで、取引手数料だけでも十分に消費電力+ハードウェアのコスト以上の利益を出すことができるようになるのではないかというものである。
またもうひとつの見解は、ビットコインの価格が現在よりもさらに高騰することで、取引手数料を得るだけで十分な利益となるというものである。では、実際問題どれだけ価格が上昇すればよいのだろうか。
2月13日時点で、過去一ヶ月における大手のマイニングプールの計算力(ハッシュレート)が全体に占めるシェアと、その報酬に占める取引手数料の割合、また各ブロックにおける取引手数料の平均は下記となる。(BTC.comより)
BTC.com 全体に占めるハッシュレート、23.7%
ブロック毎の平均取引手数料 1.58BTC
報酬に占める取引手数料の割合 12.6%
AntPool 全体に占めるハッシュレート、18.1%
ブロック毎の平均取引手数料 1.65BTC
報酬に占める取引手数料の割合 13.2%
BTC.TOP 全体に占めるハッシュレート、12.1%
ブロック毎の平均取引手数料 1.66BTC
報酬に占める取引手数料の割合 13.3%
上は上位三つの取引所の数値を紹介しているが、2月13日時点でネットワーク全体における過去一ヶ月(4,801ブロック)におけるブロック毎の平均取引手数料は1.6BTC、報酬に占める取引手数料の割合は約13%となっている。
(BTC.comより)
もし仮にブロック毎の取引手数料が現在の水準を維持し、かつ各マイニングプールを維持するのに現状と同程度の収入が必要とした場合、1ブロックあたりの平均取引手数料である1.6BTCが現時点での1ブロック毎にマイナーの得られる利益12.5BTC+1.6BTC=14.1BTC BTCの価格に匹敵する必要がある。
これには1BTCがここ1カ月の平均価格の8.8倍となる90,569.6ドル(約975万円)となる必要がある(ドル/円は107.7円、BTC価格は2月13日時点の過去1カ月におけるBTC/USD価格の平均価格、10,292ドルより計算、数値はCoin Market Capより)。
また、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)の在北京アナリストであるソフィー・ルー氏は2月6日、一時ビットコイン価格が約7,000ドルまで下落したことを受けて、電力消費が非常に少ない一部のマイナーを除いて多くが利益の出ない状況に陥っていると報告していた。
仮に現状で1BTC=7,000ドルが損益分岐点となっているとしてみた場合には、マイニングによる利益が取引手数料だけとなった時にはビットコイン価格は54,600ドル(約588万円)となっている必要がある。
これらの概算は、マイニング・マシーンの性能向上による電力消費の将来的な低下や、ライトニングネットワークなどの技術革新による取引手数料の短縮がどのように進められるのかといったいくつかの要素を省いた考察だが、少なくとも現状では、ビットコインは今後120年あまりの間にビットコイン価格が高騰することに依拠した設計となっているといえる。
<DM>
ビットコインの発行量が上限を迎えると、マイナーがマイニングを行うことで得られる報酬はビットコインの取引手数料のみとなる。このような状況であると、誰もマイニングを行うインセンティブが起こらなくなり、ネットワークを維持できないのでないかという懸念がある。
ビットコインのネットワークは、マイニングと呼ばれる取引を成り立たせる膨大な計算作業を、不特定多数のマイナーと呼ばれる参加者が行うことで維持されている。この計算作業は、高性能のコンピューターを利用し、多大な電力を消費することで行われる。
これに対してマイナーには報酬として1ブロックをマイニングするたびに新規発行されるビットコインが与えられ、この利益がマイニングを行う動機となっている。また、マイナーは1ブロック内の取引手数料も得ることができる。
2018年時点では1ブロックのマイニングにつき12.5BTCが新規発行され、報酬としてマイナーに支給されている。この新規発行ビットコインは約4年(21,000ブロック毎)に一度半減していき、2140年頃までにすべてのビットコインがマイニングされるようプログラムされている。
つまり2140年に近づく過程で、マイニングをすることで得られる報酬はどんどん減少していき、新規発行分がなくなった後の報酬は1ブロック内の取引手数料分のビットコインのみとなるのだ。
この問いに関する議論の中でよく述べられる見解のひとつは、技術の進歩が問題を解決するというものだ。年月の経過とともにマイニングを行うためのマイニング・チップ(半導体チップ)がより小さく、安価になることで、どのようなエレクトロニック・デバイスでもマイニングできるようになれば、現在のようにコストがかかるものではなくなる。
マイニング機器が安価になり、マイニングの際にかかる消費電力も抑えられることによって、マイニングという行為が現状のように多大な設備投資の下で行われるビジネスではなく、日常的に誰もが参加できる行為となるというものだ。また、マイニング・マシーンのエネルギー効率性が高くなることで、取引手数料だけでも十分に消費電力+ハードウェアのコスト以上の利益を出すことができるようになるのではないかというものである。
またもうひとつの見解は、ビットコインの価格が現在よりもさらに高騰することで、取引手数料を得るだけで十分な利益となるというものである。では、実際問題どれだけ価格が上昇すればよいのだろうか。
2月13日時点で、過去一ヶ月における大手のマイニングプールの計算力(ハッシュレート)が全体に占めるシェアと、その報酬に占める取引手数料の割合、また各ブロックにおける取引手数料の平均は下記となる。(BTC.comより)
BTC.com 全体に占めるハッシュレート、23.7%
ブロック毎の平均取引手数料 1.58BTC
報酬に占める取引手数料の割合 12.6%
AntPool 全体に占めるハッシュレート、18.1%
ブロック毎の平均取引手数料 1.65BTC
報酬に占める取引手数料の割合 13.2%
BTC.TOP 全体に占めるハッシュレート、12.1%
ブロック毎の平均取引手数料 1.66BTC
報酬に占める取引手数料の割合 13.3%
上は上位三つの取引所の数値を紹介しているが、2月13日時点でネットワーク全体における過去一ヶ月(4,801ブロック)におけるブロック毎の平均取引手数料は1.6BTC、報酬に占める取引手数料の割合は約13%となっている。
(BTC.comより)
もし仮にブロック毎の取引手数料が現在の水準を維持し、かつ各マイニングプールを維持するのに現状と同程度の収入が必要とした場合、1ブロックあたりの平均取引手数料である1.6BTCが現時点での1ブロック毎にマイナーの得られる利益12.5BTC+1.6BTC=14.1BTC BTCの価格に匹敵する必要がある。
これには1BTCがここ1カ月の平均価格の8.8倍となる90,569.6ドル(約975万円)となる必要がある(ドル/円は107.7円、BTC価格は2月13日時点の過去1カ月におけるBTC/USD価格の平均価格、10,292ドルより計算、数値はCoin Market Capより)。
また、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)の在北京アナリストであるソフィー・ルー氏は2月6日、一時ビットコイン価格が約7,000ドルまで下落したことを受けて、電力消費が非常に少ない一部のマイナーを除いて多くが利益の出ない状況に陥っていると報告していた。
仮に現状で1BTC=7,000ドルが損益分岐点となっているとしてみた場合には、マイニングによる利益が取引手数料だけとなった時にはビットコイン価格は54,600ドル(約588万円)となっている必要がある。
これらの概算は、マイニング・マシーンの性能向上による電力消費の将来的な低下や、ライトニングネットワークなどの技術革新による取引手数料の短縮がどのように進められるのかといったいくつかの要素を省いた考察だが、少なくとも現状では、ビットコインは今後120年あまりの間にビットコイン価格が高騰することに依拠した設計となっているといえる。
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