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大石哲之:本来のICOと、現行のICOに感じる意識のズレ【フィスコ・仮想通貨コラム】

仮想通貨コラム
以下は、フィスコ客員アナリストの大石哲之(「ビットコイン研究所)」代表、ツイッター@bigstonebtc)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。

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※2018年5月14日に執筆

ICOに関する意識のズレを感じることが最近多々ある。多くの人のICOに関する認識は、「創業まもないベンチャーにとっての資金調達手段であって、株式の希釈化をせずに、簡単な手続きで短期間に事業資金を公募できる」というものだろう。

その認識が広まっていることは否定しないが、ここではICOが生まれた本来の経緯から、現在の認識が危ない方向にいっていることを述べる。

もともとICOは、2013年にMaidsafe coinが当初資金を集めたのが最初だといわれている。Maidsafe coinは分散型のリソースシェアアプリで、CPUやディスクスペースなど、コンピュータの余っているリソースを貸し出すことによりMAIDコインを手に入れることができ、それを必要に応じて他人のリソースを借りるのに使う。

その後イーサリアムがICO方式に目をつけ、2014年の夏にETHトークンを売り出すとまたたく間に15億円があつまり、当時としては最大のICOとなった。その後、いくつかのICOの案件があったが、2015年の夏頃まではそれほど数が多くなかった。

この頃のICOはいずれも分散型のプロトコルがどのように初期のユーザーと開発資金を獲得するかということに対する革命的な回答であった。分散プロトコルは本質的に誰かがコントロールしているわけでもなく、開発はオープンソースで、ICO以前はボランティアによる運営がほとんどであった。プロトコルができて利用されても、開発者には一銭のお金も入らなければ、開発を支援する資金もなかった。プロトコルはお金を産まなかったからだ。

暗号通貨ではプロトコル自身がお金のように振る舞った。そのためトークンを発行し、開発が進んで多くの人が利用するようになることでトークン自体の価値が上がれば、コミュニティ全体が潤うようになる。その潤い方は、鉄道会社が地域に鉄道を引くことでその周りに駅やビルがたち、不動産価値が上がることで地域が発展することになぞらえて「レイルウェイ・モデル・マネタイゼーション」という。

あくまで主体は、プロトコルであり、分散型であり、統治する人もいないというプロジェクトが、普通のやりかたでは資金を調達できないものを、トークンとからめてICOをしたことが画期的であったのである。

しかしとりわけ日本では、先程述べたように、ICOがベンチャー企業の資金調達手段として語られており違和感がある。ベンチャー企業はすでに、株式の発行や、社債ほか、健全な資金調達手段を持っているのであって、それら厳しい法制に乗っ取る手段ではなく簡単に資金を得る手段としてICOを行うという魂胆が見え隠れする。

とりわけ企業によるICOの疑問点は、資金がどこにいくかということだ。トークンホルダーが拠出した資金は、現在の日本の税制では、企業の「売上高」になってしまう。企業の売上になり、そこから経費を引いて残ったものは株主に帰属する。トークンホルダーに帰属するものではない。

企業にとって資金の使いみちは限定されておらず、他の事業に流用したり、当初と関係ないことにも好きなことに利用できてしまう。究極の理論でいうと、トークンホルダーの資金をそのまま株主に配当してしまうこともできる。トークンの資金調達が、そのまま株主配当になるのである。トークンは株式ではなく、会社に対してなんの請求権を持たないためこういうことが理論上起こりうる。トークンホルダーは詐欺にあったようなものである。

企業がまやかしのトークンを発行し資金をあつめて、それを自社の売上としてしまうのは制度的にも倫理的にも問題であり、規制すべきである。ICOは、分散型プロトコルなり、DAOが主体のものに限るべきであろう。

一方、企業は株式や社債を法律に乗っ取り発行し、その株式を流通しやすいようにブロックチェーンを使いトークン化することは可能だろう。その場合トークンは株式そのものであり、トークンホルダーは法律で保護された株主の権利を持つ。これであれば何ら問題なく、証券のブロックチェーン化として時代を先駆けるものになるだろう。

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執筆者名:大石哲之
ブログ名:ビットコイン研究所




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