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大石哲之:ビットメイン社IPOの仮想通貨業界に与える影響【フィスコ・仮想通貨コラム】

仮想通貨コラム
以下は、フィスコ客員アナリストの大石哲之(「ビットコイン研究所)」代表、ツイッター@bigstonebtc)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。

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※2018年7 月31 日に執筆

ビットコインのマイニング((新規発行や取引承認に必要となる計算作業)を行う機材であるASICをほぼ独占的に供給しているビットメイン(BITMAIN)社が、事業の透明性を高めるポリシーを策定し、公表した。ビットメイン社は、IPO(新規公開株)を控えているといわれており、そのための準備であるといわれている。

公表されたポリシーは、つぎのとおりである。
1.ASICの出荷の時期や、台数を明らかにする。顧客によらず、公平に出荷する。
2.自社保有のハッシュレート(マイニングの速度)を公表する
3.シークレット・マイニング(説明は後述)を行わない
4.エンプティ・ブロック(空のブロック)を掘らない

なかでも、1と3に関しては注目すべき事柄だ。

ビットメイン社は政治的な動きで知られ、昨年8月のビットコインとビットコイン・キャッシュの分裂や、その後のSegwit2X(未遂に終わった、ビットコインの仕様を変更する案)をめぐっては、自社の大きなハッシュレートをどこに振り向けるかどうかで世論を作った。

ビットメイン社は明らかにビットコイン・キャッシュを支持し、対抗する勢力には機材を売らなかったり、出荷を遅らせるといったようなことをしていると噂されていた。事実、最新ASICの販売にあたっては、米ドルやビットコインも受け付けず、唯一ビットコイン・キャッシュだけで販売するなど、あからさまな面が見られていた。

今回の宣言は、顧客の属性や政治的主張にかかわらず、受注順にASICを出荷するという宣言で、当たり前の話のように思えるが、この意味は大きい。ビットメインが政治的な主張を今後は行わず、メーカーとして中立的にふるまうということである。

ビットコインやビットコイン・キャッシュをめぐるマイナーの中央集権化や政治的な動きは長期的にコインの成長を阻害するものと思われてきたが、ビットメイン社のこの宣言によって、一定の落ち着きをみせそうだ。

シークレット・マイニングとは、最新のASICを開発したのち、顧客に出荷せずに自社だけでマイニングを行う行為だ。自社だけが性能のよいASICを持っているので、当然有利に採掘できる。収益性が高まってから、顧客に出荷をはじめればよい。独占企業だからできる手法で、度々行われていたのではという噂があったが、本当にこのようなことを行っていれば倫理上問題がある。シークレット・マイニングは行わないというのは正しい方針だ。

ビットメイン社はASICの供給の大部分を担う会社であるから、公共性の高い事業をしているとも言える。つまり、ガスや電気といった基礎的なインフラを担うようなインフラ企業であるともいえる。そのため、透明性や中立性、公共性といったことを企業のポリシーとして明確にしていく必要があるのは当然といえるだろうし、そのような方向に転換したことは、業界にとって好ましい。

見逃されがちなニュースであるが、私はビットメインのIPOが行われてパブリックな企業になることは、業界の発展にとって極めて重要なピースだと考えている。

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執筆者名:大石哲之
ブログ名:ビットコイン研究所



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