ステーブルコインが持つ問題【フィスコ・仮想通貨コラム】
[18/11/29]
提供元:株式会社フィスコ
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仮想通貨コラム
仮想通貨の分野で最近話題になっているのがステーブルコイン(価格安定型通貨)だ。多くのステーブルコインは米ドルといった法定通貨に連動していて、価格の変動に比較的影響を受けないとされている。しかし、いつもそれが正しいとは限らないことは、最も知られているステープルコインであるテザー(USDT)の最近の大幅下落が示している。以来、USDTを追うように他のステーブルコインが台頭し、高い将来性をうかがわせている。それでも危険が潜んでいないわけではない。
ステーブルコインの問題
ステーブルコインに対する需要は、特に中国のような国では容易に理解できる。中国は昨年、仮想通貨取引所に対して法定通貨との取引を禁止した後、国内の仮想通貨取引所を閉鎖させた。多くの中国人にとって、ステーブルコインは仮想通貨に代わって法定通貨の代替となり得る。
問題は、ステーブルコインは従来の法定通貨の問題点を受け継いでいるだけでなく、新たな問題点も抱えていることだ。以下に、そのいくつかを挙げる。
過剰発行の誘惑
歴史は繰り返されるものだ。中央銀行が通貨を過剰に流通させてしまうような危険は、仮想通貨では予防できるはずだが、ステーブルコインの発行者は自分たちのコインを過剰に発行する誘惑に常にさらされている。ほぼ全くコストをかけず極めて高い利益を上げられる可能性があるのだから。
コインの発行者に対する低い信頼度
中央集権的な組織が発行するステーブルコインには高い信頼性が要求される。これらの組織に存在するリスクは即、コインの保有者にとってのリスクになり得るからだ。さらに、コインの時価総額が上昇するのに伴って信頼度も高まる必要がある。ほとんどの場合、ステーブルコインの信頼度は結局、時価総額に比べて大幅に低くなる。
不安定な仮想担保の時価と公正な価格への信頼の欠如
「イーサリアム・ブロックチェーンに基づく史上初の非中央集権的ステーブルコイン」を自称するDAIを例に取ってみよう。DAIが担保とするのは仮想通貨だが、仮想通貨そのものに高い価格変動率があり、頻繁なマージン・コールや手仕舞いの動きが想定される。非中央集権的なステーブルコインのリスクとしてます挙げられる点だ。しかし、よく考えてみれば、もう一つのリスクがある。スマートコントラクトの手仕舞いの価格はどのような水準であるべきか。このような公正な価格の維持という面で、信頼性が重要な中央集権的な制度と同じような問題に再び直面することになるかもしれない。
実効性のあるAMLソリューションの欠如
ステーブルコインが規制を順守するためには、マネーロンダリング(資金洗浄)対策への責任を少なくとも一部は負う必要がある。例えば、TUSDというステーブルコインはユーザーに対し、ウェブ上でのコインの購入あるいは換金の際にKYC/AMLプロセスを完了するよう求めている。しかし、様々なステーブルコインの保有者すべてがこのようなプロセスを経なくていけないというわけではなく、コイン発行時の取引にかかわる際のみ必須となっている場合もある。つまり、ステーブルコインの保有者は最初の取引の際のみ規制当局のチェックを通過すればよく、マネーロンダリング抑止は相当困難になる。
ブロックチェーン上のステーブルコインと「コードイズロー(code is law)」との不整合性
ステーブルコインは当初、仮想通貨というよりも債券に近かった。そのため、ハッキングが生じた場合に発行体による介入を求めることはより妥当だと思われた。ソースコードが唯一の正統性を持つという「コードイズロー(code is law)」思想に基づき中央集権的な権威が介入し問題を解決するような姿を想定しない仮想通貨の世界とは、極めて対照的だった。ステーブルコインに求められていることは、仮想通貨とは異なるかもしれないが、ステーブルコインの発行体が有効な対策をとれるかどうかは不明だ。
Huobiのステーブルコイン「HUSD」の例
仮想通貨取引所としては古株となったHuobi(フオビ)は最近、新たなソリューションとしてHUSDを導入した。ユーザーはPAX、GUSD、TUSDあるいはUSDCといったコインを預け入れる代わりにHUSDを受け取ることができ、4つのコインのいずれでも1対1の比率で引き出すことが可能になる。HuobiはHUSDとの通貨ペアを従来の市場と店頭市場の両方に上場させた。HUSDの総額はPAX、GUSD、TUSD、USDCの合計額を上回らないとされ、4コインの現在価値を単純平均がHUSDの実質価値になる。
HUSD導入の意図は良いもので、規制に違反するものでも偽装通貨でもない。新たなステーブルコインの登場は、Tether(テザー)が支配的位置を占める状況に伴うリスクの軽減にもなり得る。しかしHUSDも上に説明した問題は避けられないのだろうか。
過剰発行の誘惑
HUSDの発行はどのブロックチェーンにも基づいていないため、追加発行は全く制御ができない。我々にできるのはHuobiのプラットフォームを単に信頼することだけだ。Huobiが間違いを犯さなかったとしても、連動する4コインが過剰発行され、Huobiが対応しなくてはならなくなったらどうなるのか。
中央集権的な発行者に対する信頼の欠如
実際のところ、HUSDは別のステーブルコインの初回配布に基づいている。このような、二つの中央集権的な発行者が連動ベースの発行に関与している場合、Huboiあるいは連動するステーブルコインの発行者に対する信頼が危機的な状況に陥れば、全体的なHUSDの安定を損なう結果となる。
担保価格の変動
非中央集権的なステーブルコインとは違ってHUSDは価格変動の激しい仮想通貨を担保としていないが、一方で別の4つのステーブルコインを担保としていると見ることができる。したがって、他のステーブルコインよりも担保の比重が高いステーブルコインの価格が大きく変動すれば、HUSDの価格および信頼性に影響を及ぼすことは避けられない。Tetherの事例で見られた通り、ステーブルコインの価値はそれほど安定的ではない場合がある。
「コードイズロー」問題
現時点でHUSDは4つのERC20ステーブルコインとのみ交換できる。HUSDに連動するステーブルコインが増えれば、二重払いやブロックチェーン上での窃盗のリスクは高まる。
ステーブルコイン価格の急落を再度しのぐには、仮想通貨の世界は脆弱すぎる。さらに別のステーブルコインの危機が勃発する前に、HUSDの動向を注視すべきなのはそのためだ。
(記事提供:LONGHASH)
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ステーブルコインの問題
ステーブルコインに対する需要は、特に中国のような国では容易に理解できる。中国は昨年、仮想通貨取引所に対して法定通貨との取引を禁止した後、国内の仮想通貨取引所を閉鎖させた。多くの中国人にとって、ステーブルコインは仮想通貨に代わって法定通貨の代替となり得る。
問題は、ステーブルコインは従来の法定通貨の問題点を受け継いでいるだけでなく、新たな問題点も抱えていることだ。以下に、そのいくつかを挙げる。
過剰発行の誘惑
歴史は繰り返されるものだ。中央銀行が通貨を過剰に流通させてしまうような危険は、仮想通貨では予防できるはずだが、ステーブルコインの発行者は自分たちのコインを過剰に発行する誘惑に常にさらされている。ほぼ全くコストをかけず極めて高い利益を上げられる可能性があるのだから。
コインの発行者に対する低い信頼度
中央集権的な組織が発行するステーブルコインには高い信頼性が要求される。これらの組織に存在するリスクは即、コインの保有者にとってのリスクになり得るからだ。さらに、コインの時価総額が上昇するのに伴って信頼度も高まる必要がある。ほとんどの場合、ステーブルコインの信頼度は結局、時価総額に比べて大幅に低くなる。
不安定な仮想担保の時価と公正な価格への信頼の欠如
「イーサリアム・ブロックチェーンに基づく史上初の非中央集権的ステーブルコイン」を自称するDAIを例に取ってみよう。DAIが担保とするのは仮想通貨だが、仮想通貨そのものに高い価格変動率があり、頻繁なマージン・コールや手仕舞いの動きが想定される。非中央集権的なステーブルコインのリスクとしてます挙げられる点だ。しかし、よく考えてみれば、もう一つのリスクがある。スマートコントラクトの手仕舞いの価格はどのような水準であるべきか。このような公正な価格の維持という面で、信頼性が重要な中央集権的な制度と同じような問題に再び直面することになるかもしれない。
実効性のあるAMLソリューションの欠如
ステーブルコインが規制を順守するためには、マネーロンダリング(資金洗浄)対策への責任を少なくとも一部は負う必要がある。例えば、TUSDというステーブルコインはユーザーに対し、ウェブ上でのコインの購入あるいは換金の際にKYC/AMLプロセスを完了するよう求めている。しかし、様々なステーブルコインの保有者すべてがこのようなプロセスを経なくていけないというわけではなく、コイン発行時の取引にかかわる際のみ必須となっている場合もある。つまり、ステーブルコインの保有者は最初の取引の際のみ規制当局のチェックを通過すればよく、マネーロンダリング抑止は相当困難になる。
ブロックチェーン上のステーブルコインと「コードイズロー(code is law)」との不整合性
ステーブルコインは当初、仮想通貨というよりも債券に近かった。そのため、ハッキングが生じた場合に発行体による介入を求めることはより妥当だと思われた。ソースコードが唯一の正統性を持つという「コードイズロー(code is law)」思想に基づき中央集権的な権威が介入し問題を解決するような姿を想定しない仮想通貨の世界とは、極めて対照的だった。ステーブルコインに求められていることは、仮想通貨とは異なるかもしれないが、ステーブルコインの発行体が有効な対策をとれるかどうかは不明だ。
Huobiのステーブルコイン「HUSD」の例
仮想通貨取引所としては古株となったHuobi(フオビ)は最近、新たなソリューションとしてHUSDを導入した。ユーザーはPAX、GUSD、TUSDあるいはUSDCといったコインを預け入れる代わりにHUSDを受け取ることができ、4つのコインのいずれでも1対1の比率で引き出すことが可能になる。HuobiはHUSDとの通貨ペアを従来の市場と店頭市場の両方に上場させた。HUSDの総額はPAX、GUSD、TUSD、USDCの合計額を上回らないとされ、4コインの現在価値を単純平均がHUSDの実質価値になる。
HUSD導入の意図は良いもので、規制に違反するものでも偽装通貨でもない。新たなステーブルコインの登場は、Tether(テザー)が支配的位置を占める状況に伴うリスクの軽減にもなり得る。しかしHUSDも上に説明した問題は避けられないのだろうか。
過剰発行の誘惑
HUSDの発行はどのブロックチェーンにも基づいていないため、追加発行は全く制御ができない。我々にできるのはHuobiのプラットフォームを単に信頼することだけだ。Huobiが間違いを犯さなかったとしても、連動する4コインが過剰発行され、Huobiが対応しなくてはならなくなったらどうなるのか。
中央集権的な発行者に対する信頼の欠如
実際のところ、HUSDは別のステーブルコインの初回配布に基づいている。このような、二つの中央集権的な発行者が連動ベースの発行に関与している場合、Huboiあるいは連動するステーブルコインの発行者に対する信頼が危機的な状況に陥れば、全体的なHUSDの安定を損なう結果となる。
担保価格の変動
非中央集権的なステーブルコインとは違ってHUSDは価格変動の激しい仮想通貨を担保としていないが、一方で別の4つのステーブルコインを担保としていると見ることができる。したがって、他のステーブルコインよりも担保の比重が高いステーブルコインの価格が大きく変動すれば、HUSDの価格および信頼性に影響を及ぼすことは避けられない。Tetherの事例で見られた通り、ステーブルコインの価値はそれほど安定的ではない場合がある。
「コードイズロー」問題
現時点でHUSDは4つのERC20ステーブルコインとのみ交換できる。HUSDに連動するステーブルコインが増えれば、二重払いやブロックチェーン上での窃盗のリスクは高まる。
ステーブルコイン価格の急落を再度しのぐには、仮想通貨の世界は脆弱すぎる。さらに別のステーブルコインの危機が勃発する前に、HUSDの動向を注視すべきなのはそのためだ。
(記事提供:LONGHASH)
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